あとオマケもあります。
では第十三話をどうぞ。
夏油傑は激怒した。
必ず、かの天上天下唯我独尊の
「さぁ~とぉ~るぅ~……!
後ろから急にズボンを下ろして良いのは、やり返される覚悟のある人だけだ……!」
「ギャハハハ!! 傑のパンツ! 白パンツ!」
――実は、五条さんって結構子どもっぽいよね……。
今日の午後はグラウンドでの体術訓練だった。
こんな日は三人について行って、みんなの訓練を見学したり、偶に混じってボクの術式を見てもらったりするのだ。
因みに、午前中は座学。
冒頭のやり取りは、五条さんのおふざけに怒る夏油さんである。
「あはは、ばっかで~」
「ですね……」
ボクと家入さんは階段で座って、ケンカしている二人を眺めていた。
ドドドド! と夏油さんが五条さんをダッシュで追いかける。
夏油さんもズボンを下ろし返そうとしているようだ。
「夜蛾センが戻ってくるまで、続きそうだね」
――親の目を気にする子どもみたいだ……。
――あ、無限バリアでズボンに届いてない……。
五条さんの術式は無下限呪術といって、周囲の無限を自在に操れるらしい。
あの無限バリアはそれを使って、対象を自分に触れられなくする。
なんでそんなチート技をこんなことに使ってるんだろう……、と苦笑する。
「あ、バカ共がこっち来た」
「え」
煽る五条さんがこっちに向かって走ってくる。
怒る夏油さんは遂には呪霊を出してそれに乗り、追いかけ始めた。
その呪霊に高専結界が反応して高専結界のアラートが鳴る。
「凜! 一緒に飛んで逃げるぞ!」
「悟ゥ!」
「えッ、えッ! い、家入さん、どうし……あれいない!?」
――もう、逃げてるゥ!?
気づいたら、忽然といなくなっていた家入さんは既に避難している。
遠くの方でピュー、っと走っているのを見つけた。
目の前の五条さんは手を伸ばしながら、もう直ぐ側に近づいてきた。
しょうがないからフワッと浮いてボクも手を伸ばす。
よし、掴んだ。
「俺の動きに合わせろ!」
「えぇええ!!」
「凜くんを巻き込むんじゃない! 悟ゥ!」
このあと、ボクは五条さんの変態軌道について行けず、一人で地上に不時着した。
まだ二人はお空で仲良くケンカしている――
「イテテ……」
「災難だったね?」
「逃げるの早いですね……家入さん……」
――逃げたの気づかなかったし……。
なんとか地面に激突するのは防げたが、あちこち擦り剥いてしまった。
術式の出力の調整がやっぱり難しい。
少ない呪力量でいい分、細やかな呪力操作が大変だ。
他には、方向転換のための呪力出力の瞬発力も課題かな。
((あれほど危ないことに巻き込むなと……くどくど……くどくど……。))
因みに、ケンカしてた五条さんと夏油さんは向こうで夜蛾さんに怒られている。
高専結界内で未登録の呪力が発生するとアラートが鳴るのだが、戻ってきた夜蛾さんはカンカンに怒っていた。
普段は事前に申告しているらしいが、今日は体術訓練だったから、していなかったのだろう。
「私が治してあげるよ、こっちおいで」
「……治す?」
「あれ、言ったことなかったっけ? 反転術式」
家入さんが医学の勉強をしているのは知っていたけれど、反転術式というのは知らない。
近づくと、家入さんは手をかざして呪力でボクを包んだ。
すると、擦り傷がみるみるうちに治ってしまった。
「わあ! スゴい!」
「ふぅ、集中力がいるから疲れるんだよね、これ」
「だから、いつも疲れてるんですね」
いつも寮に帰ってきたときに疲れているのは、その反転術式のせいだったらしい。
仕組みとしては、負の呪力同士を掛け合わせて生み出した正の呪力で回復できるとのことだ。
――“正負の数”って、たしか中一の範囲じゃなかったっけ?
――あまり、反応しないでおこう……。
ボクが日頃の疑問を解消していると、五条さんと夏油さんが戻ってきた。
随分と長い説教が終わったようだ。
「硝子~、俺らも治して~」
「唾でも付けときなよ。
それか自分で治しな~」
「五条さんも反転術式出来るんですか?」
「私たちは出来ないんだ、凜くん」
五条さんと夏油さんは出来ないらしい。
ケンカして出来た傷と、夜蛾さんのげんこつで出来たたんこぶを痛そうにしている。
「コイツらセンスないからな~」
「ったく、教え方が悪いんだよ
なんだよ、ひゅーっとやってひょいって」
「えぇ……」
――家入さん……流石にわかんないよ、それ……。
どうやら反転術式というのは、この“最強たち”でも難しい技らしい。
確かに、呪力を掛け合わせるとかよくわからない。
――ボクの腕が治ったのも反転術式なのかな?
――うーん、どんな感覚だったかな……やっぱり分からぬゥ……。
まぁ、五条さんと夏油さんでも出来ない、そんな回復役が家入さんなのか。
つまり――
「二人は“最強”ですけど、三人なら“最強無敵”なんですね――」
「「「……」」」
「……あ、あれ?」
――もしかして、スベった!?
きょとん、と顔を合わせる三人。
恥ずかしくなってオロオロしていると、みんなが同時に笑い出した。
よかった……どうやらスベったわけではないらしい。
「そうだね、凜くん。
三人合わせたら私たちは“最強無敵”だ」
「凜のくせに良いこと言うじゃん!」
「あはは、しょうがないからバカ共も治してやるか~」
わっはっはっ、とみんなで笑い合っていると――
“ぐぅ~”
ボクのお腹の音が鳴った。
結局、恥ずかしい思いをして顔を赤くする。
そういえば、もう夕ご飯の時間も近くなってきていた。
――五条さん、笑いすぎてお腹抱えてるし……。
「ははは、良いことを言ってくれたお礼はマ○クでいいかい?」
「え!? 良いんですか!?」
「凜くんは外出できないからね、買ってきてあげるよ」
「俺がやった飴玉でも舐めて待ってな」
この前も、任務帰りにみんなが買ってきてくれたのだ。
久しぶりに食べたので、年相応に嬉しくなって、はしゃいでしまった。
そのことを覚えてくれていたようだ。
因みに、ナゲットのソースはマスタード派。
「傑! 呪霊に乗ってドライブスルーしようぜ!」
「するわけないだろう?」
「面白そうですね、それ」
「凜くん!?」
“悟を真似してはいけないよ”、と夏油さんに割とマジトーンで言われた。
その後、ボクは食べたいメニューを伝えた。
そして、ケンカして追いかけっこしてた時とは真逆の表情の最強たちは、夕日の向こうへ歩いて行った。
「ああいうの“雨降って地固まる”って言うんでしたっけ」
「お、よくそんな言葉知ってるじゃん?」
「あ、えっ……と、……本で、読みました……」
「?」
――ははは……よかった、バレてないや。
この人たちと一緒に過ごしていると、楽しくて自分が四歳であることを忘れがちになるから困ったものだ――
五条さんと夏油さんは帰ってきたら、ハンバーガー十個早食い勝負を始め、どっちが僅差で勝ったかで再びケンカをしていました――
~窓による報告~
「窓からの報告です。
午後六時頃、都内某所のマク○ナルドにて術式行使を確認」
妙齢の補助監督が報告書を持ち、内容を読み上げた。
夜蛾は手元のぬいぐるみをチクチクと縫いながら聞いている。
「報告に寄りますと、五条・夏油呪術師が……」
「む?」
「えー、列の前にいた泣いている赤子を笑わせるために、術式を行使していたとの事です」
「……」
夜蛾の手が止まった。
「窓の報告書の追記に……アオハル助かる、と……」
「……そうか」
夜蛾の創作意欲・愛弟子への愛が深まった!
~いい子のクリスマス~
「傑! 傑! 起きたら枕元にプレゼントが置いてあった! 俺こんなの初めてだ!」
「はは、良かったじゃないか。悟」
「いい子にしてたからじゃない?」
ロビーにて、夏油と家入が微笑ましい様子で五条を迎える。
鈴月はまだ寝ている時間だろう。
「おおおおお!! マフラーと手袋だこれ!!」
――ふ~。サンタの仕事後のタバコは美味しいね、夏油
――私も朝一の紅茶は美味しいよ、硝子
どうやら夏油と家入が前日に買って、五条の枕元に置いておいたプレゼントはお気に召したようだ。また、鈴月の枕元にもプレゼントは置いてある
まだ寝ている鈴月が起きてくるのが楽しみな夏油と家入であった。
「でも、オマエらもいい奴なのにサンタ来てないのか?」
「……あ、あぁ。そういえば来てなかったね」
「私たちは小さい頃いっぱい貰ってたからな~」
「は? オマエらが貰えないの変だろ!?
よし、俺がオマエらの分を買う! この後すぐ行くぞ!」
――……。
――……。
この後、五条家の財力を持ってして、寮の中が大量のプレゼント箱で埋まった。
どもっす!<(_ _)>
N島ジュン太郎です。
読了!感謝!
流石にひゅーっとやってひょいじゃあ凜くんも分からないよね!
でも反転術式の素質はあるから、そのうち出来る様になるでしょ!
凜くんガンバ!