呪いを焚べる   作:N島 ジュン太郎

15 / 33
作者「凜くん初めてのまともな戦闘やで!!」
カエデ「凜!! 頑張れ~!! うお~!!」
では、第十四話どぞ~。


第十四話 再会は未だ遠く

 

「君の課題は“戦う”ということに慣れることだ。

 激情のままに戦ったことはあるが、意識的に戦ったことはないだろう?」

 

 そう……夜蛾さんが言うように、ボクは基本的に戦うということが苦手だ。

 前世のボクもそうだったが、普通の人は誰かを殴ったり蹴ったり等はしたことないのだから。

 

「初めから“戦う”ことが出来るのは、イカれている奴だけだ。アイツらみたいにな」

 

――まぁ、……うん。

 

 脳裏にあの“最強たち”を思い浮かべる。

 自然と思い浮かぶのは、スーパー悪童である彼らの悪い顔である。

 

「だからこそ、君は戦う方法を考えるべきだ。

 慣れていないなりに、より戦いやすい方法を。

 しかし、今はまだ高出力の攻撃は、身体がついていかずに自身が怪我を負ってしまう。

 そこで、これだ――」

「これは……?」

「■■だ。これなら君でも扱いやすいだろう

 呪力操作の訓練にもなる――」

 

 

 

 

 

 

 三月も下旬にさしかかり、次の春の足音がよく聞こえるようになった頃。

 ボクはカーテンを開けて、朝のヒバリと挨拶を交わす。

 今日は重要な日だ――。

 

「よし!」

 

 つまりは外出許可のための試験日――

 

 コンコンコン、とドアをノックする音がボクの部屋に響く。

 ガチャリと入ってきたのは夏油さんだった。

 因みにボクの部屋の鍵は基本的にいつも閉めていない。

 

「凜くん、起きているかい?」

「おはようございます」

「うん、おはよう。

 気合いが入っているようで何よりだよ」

 

 むん! と朝から気合いが入っている。

 それは勿論、外出許可を取って、カエデのお墓参りに行くことを、ずっとモチベーションにしてきたからだ。

 そんなボクに夏油さんは微笑ましそうに笑っている。

 

「改めて言うけれど、今日の試験を担当するのは私だ。

 試験を甘くしたりはしないが、もしもの事なんて起こらないから安心して欲しい。

 悟と硝子もいるしね」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 今日の試験担当は夏油さんが務める。

 呪霊操術の利便性が試験にちょうどいいと判断されたのだろう。

 何しろ、危なくなったら直ぐ止められる。

 

――安心させるために来てくれたのか。

 

「それじゃあ、朝からすまなかったね。

 これだけは伝えときたかったんだ。

 私はもう教室に行く、午後の試験時間まで学んだことを振り返っておくと良いよ」

 

 夏油さんはひらひらと手を振ってボクの部屋を出て行った。

 午前中、一年ズは座学の時間だ。

 ボクはその時間で戦闘試験に向けた準備を始めた――

 

 

 

 

 

 

 今まで学んだことを振り返っていると、試験の時間はあっという間にやってきた。

 お昼ご飯は量をそこそこに。

 そして、頼んであった子どもサイズの高専服もちゃんと着てきた。

 “戦い”の準備も完了している。

 後は試験に合格するだけだ――

 

「準備は良いかな? 凜くん」

「……出来ています」

「じゃあ試験の説明をしよう――」

 

 グラウンドで夏油さんと相対する。

 五条さん、家入さん、そして夜蛾さんは向こうの階段で座っている。

 緊張して、ドキドキしてきた。

 

((凜! 早く終わらせてマ○カーやるぞ!))

 

 遠くで多分応援してくれる五条さんで緊張がほぐれた気がする。

 気が抜けた気もするが……。

 

「ははは……」

「試験は、呪霊三体に対して行う戦闘試験だ。その呪霊は蠅頭を使う。

 合格の条件は、蠅頭三体の祓除。そして、戦闘終了後に継戦可能であることだ」

「蠅頭三体……」

「夜蛾先生から習っただろう?

 四級にも満たない呪霊。木製バットで倒せる程度だよ」

 

――今のボクは木製バット振れないけど……。

 

 夏油さんが小さな蠅頭三体を呼び出す。

 文字どおり蠅のような気持ち悪い呪霊だ――

 

「君の呪霊誘因体質を考慮した多対一の戦闘試験。

 継戦可能かどうか、というのは“死んで勝つのでは意味が無い”からだよ。」

「なるほど……」

 

 つまり、ボクは普段から常に複数戦を想定し、生き残ることを意識しなければならないということだ。

 この試験でボクが気を付けなければならないことを羅列してみる。

 一つ、ボクの呪力は密度が高く、出力が上がりやすいから注意。

 一つ、高出力での術式使用はフィードバックが発生して継戦不可になってしまう。

 一つ、今の実力で空中の多対一は悪手だろう。……三次元戦闘は無理。

 後は――

 

「試験開始と同時に蠅頭を自律制御に切り替える。

 朝も言ったが、もしもなんて起きないから安心してほしい」

 

――ボクがどれだけ“戦えるか”!

 

 キィィイイイ――

 運動エネルギーを吐き出す炉心が稼働する。

 快音を奏で、出番はまだかまだかと唸りを上げている。

 

――炉心、起動……。

 

 夏油さんがボクと蠅頭たちから離れて右腕をあげる。

 そして、開始の合図と同時に右腕を下ろした。

 

「では、始め!」

 

――炉心接続ッ!

 

 

 

 

 

 

「凜なら余裕だろ」

「どうかな、蠅頭とはいえ三体だ。彼の体躯で捕まれば、行動不能になるだろう」

「夜蛾せんせー、鈴月に何教えたの?」

「……すぐ分かる」

 

 ボクは蠅頭から一定の距離を取りながら走っていた。

 炉心を順転させて、出来る範囲で身体能力を上げる。

 

――多対一の基本は距離を取ること!

――そして、隙をうかがって一対一を複数行うッ!

――問題は……。

 

「……蠅頭がまとまって凜くんを追いかけているね」

 

 ボクの呪力に反応して一直線に向かってくるせいで、蠅頭三体がばらけないこと。

 隙が生まれず、一対一が作れない状況だ――

 

――ならッ!

 

「お、逃げるのやめた」

 

 蠅頭に向かって猛スピードで突貫する――

 懐に手を入れて、用意したモノを強く握る――

 

――すれ違いざまに攻撃すれば、一瞬だけ一対一を作れるッ……!!

 

「喰らえッ!!」

 

 ボクはすれ違いざま、蠅頭の顔面に向けて握ったモノを叩きつけた。

 そして、直ぐに離脱する。

 人差し指と中指を立てて印を結んだ――

 

「お~!!」

「事前に呪力や術式を篭めることによって効果を発揮する。

 呪力を運動エネルギーに変換する彼には相性がよく、使いやすい――」

 

 

「爆ッ!」

 

 

 パァン!!

 蠅頭の顔面が破裂する。

 気持ち悪い液体がグラウンドに飛び散った。

 

()()――対象に流し込んだ自己の呪力を外側への運動エネルギーに変換して破裂させる」

「やったッ……!」

 

 用途に応じ用いられる呪力を篭めた札。

 “まだ”呪力強化しても自身の攻撃で自傷してしまうボクが戦う方法――

 “まだ”戦うことが怖くても、戦いやすい方法――

 それが、この呪符――

 

「なるほど、呪符を通して術式を使用すれば身体へのフィードバックはない。

 そういうことですか、夜蛾先生」

「あぁ、そうだ」

 

 残りの蠅頭二体は仲間が死んだことに怯んでいる。

 

――今度は隙が生まれたッ!

 

 ボクは先ほどと同じヒットアンドアウェイでもう一体にも呪符を貼り付けた。

 そして印を結ぶ――

 

「爆ッ!」

「やるね、凜くん」

 

 パァン!!

 二体目の蠅頭が内側から爆ぜた。

 これで残り一体を祓えば試験終了だ――

 

「残り一体ッ! ……え?」

 

 キュイイイイイイ!!

 最後の蠅頭が叫び声を上げてボクから逃げ出した。

 空に――

 

「クソッ」

 

――カエデのお墓参りに行くんだ! 多少の不利くらい!

 

 ボクは重力を運動エネルギーで打ち消した。

 フワッと宙に浮き、最後の蠅頭を追い始める。

 

「逃げちゃってるけどいいの? 夏油」

「大丈夫じゃないか?

 だって、悟と一緒に空を飛んでたんだ――」

 

 

「爆ッ……!!」

 

 

 パァン!!

 空とはいえ既に一対一だ。

 ボクと蠅頭、一直線なら三次元戦闘とは言わない。

 直ぐに追いついた。 

 

「……ほらね?」

「当然だろ、さっさとマ○カーやるぞ」

「お~やるじゃん、鈴月~」

「……合格、だな」

 

 ボクは最後の蠅頭を祓うと、ユルユルと地上に降りる。

 今日は不時着などせず、しっかりと足で地上を踏みしめることが出来た。

 浮遊、呪符の同時操作は大変だった。

 肩で息をする。

 気づくと、夏油さんが目の前に来ていた。

 

「はぁッ、はぁッ……。疲れた……!」

「お疲れ様、凜くん。

 この試験結果により、君は必要最低限の呪力操作を獲得しているとして、保護者同伴に限り外出が許可される、おめでとう――」

「あ、ありがとうございます……!」

 

 ボクはこの後、急いで夜蛾さんに外出許可をお願いした。

 そして、幸いなことに、明日ちょうど夜蛾さんが開いているとのことでお墓参りに行けることになった――

 約半年も呪術高専に居たため、ようやくカエデに自分の今を話せるのは嬉しい限りだ。

 明日、カエデに高専のみんなと楽しくマ○カーをしたことも話そう――

 

 

 

 

 

 

「よく寝ているな……」

 

 試験を合格した次の日、俺は凜と一緒に彼の友達の墓参りに来ていた。

 今はその帰り道、彼は車の中で眠ってしまった。

 呪骸を抱きしめながらスヤスヤと涎を垂らしている。

 

――何の夢を見ているのだろうな……。

 

 隣で寝ている凜の首にはチョーカーが付けられている。

 これには、彼の呪力を抑えるための呪力が籠められた呪符が編み込んである。

 摧魔怨敵法……またの名を、転法輪法を用いた呪力を抑える封印具だ。

 かの両面宿儺の指を封じているものと同等の封印――

 

 凜が外出するときはこれを付けることが条件なのだ。

 それでも、呪霊を多少呼び寄せてしまうので、保護者が必要ということだ。

 呪力操作が未熟だった場合など、これ以上に酷いことに成っていたところだろう。

 彼が成長し、余裕を持って呪霊を祓えるようになれば、きっと一人でも外出できるようになる。

 

「……ぐぅ」

 

『――幸せに生きたい』

 

 そう言った凜はこの半年、呪霊誘因体質を抑えるために必死に努力した。

 まだ幼いながらに呪力操作だけでなく、術式までも訓練していたのだ。

 そんな日々を過ごしていた彼は――

 

――凜は今、幸せだろうか?

 

 普段の凜はとても大人びている。

 家族を失ったショックからか、彼は幼いながらにそうなるしかなかったのだろう。

 悟や傑、硝子と過ごしている姿はまるで同級生と一緒に居るようで――

 

――アイツたちと仲良く出来ているのはよかった……。

 

 しかし、夕方時に凜が一人で居る姿を見かけると、どこか悲しそうな雰囲気を見せる。

 彼が何を思ってそんな顔をしているのかは分からない。

 

 結局、我々は彼に生き延びるすべを教えることしか出来ないのだろう。

 呪いと向き合って生きていくしかない彼が、目標を叶えられるように――

 

 墓参り中の凜を思い出す――

 彼は夕方時のような雰囲気を見せていた。

 

『……カエデ、久しぶり』

 

 墓に向かってそう挨拶した凜は、線香をあげて、長い間しゃがんで手を合わせていた。

 半年分の出来事を話していたのだろう。

 確かに、彼にとっては濃密な半年だった。

 

『夜蛾さん、カエデとのお話――終わりました』

 

 暫くすると、凜は立ち上がって私にそう言った。

 当時の取り調べで知ってはいたが、友達の名前はカエデ、というらしい。

 お節介だとしても、とある事を彼に提案してみることにした。

 心の穴を埋める――慰めには多少なるかと思ったのだ。

 

『凜、今年の秋は紅葉を見に行ってみるか……?』

『』

『――どうした?』

 

 

 

『すみません、夜蛾さん。

 それは先約があるんです――』

 

 

 

 その時の凜に悲しそうな雰囲気はなく、何か大切な宝物を抱えているような眩しい笑顔を咲かせていた。

 叶うなら彼が呪術師になっても、この寝顔やその笑顔のような日々が多く訪れるようにと、車の中で静かに祈ったのだ――

 

 




どもっす!<(_ _)>
N島ジュン太郎です。
読了!感謝!
四歳児が戦うならこんな感じかと!
原作で余り描かれない呪符を使ってみました!
凜くん未だゴリラ廻戦に未参戦……ま、そのうちね?


あ、土日はお休みです。月曜日にまた会いましょう!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。