学校の先生が作ってくれる空きコマでの自由時間って何であんなに楽しいんですかね?
では! 第十五話をどぞ~!
「今年度もオマエ達の担任になった夜蛾だ。
また一年よろしく――」
「「「げぇぇええ」」」
「なんだ……」
「また、夜蛾セン? 女の美人教師とかいねぇの!?」
「……呪術師は万年人手不足だ、残念だったな」
春――それは出会いと別れの季節。
よく言われる文句だ。但し、この教室に居るメンバーに何一つ変わりはない。
つまり、夜蛾さん――もう一年、続投である。
――夜蛾さんも、大変だなぁ……。
今日から皆の学年が一つ上がった。
留年というものが呪術高専にあるのかどうかは分からないがめでたい。
なんだかんだ言って五条さんや夏油さん、家入さんは優秀だということだろう。
――でも……。
「夜蛾さん、今日はなんでボクもここに呼ばれたんですか?」
「そのことだが……オマエ達――」
「「「???」」」
「全員、今日と明日は完全オフだ――」
――なん……だと……!?
あぁ! あまりの異常事態、二日も休みという事実にみんなが宇宙ネコ状態に!
最近は偶然任務続きだったのだ。無理もない……。
春休みも返上して呪霊を祓う日々は、ボクが端から見ても恐ろしかったのだ。
――呪術師ってブラックだよね……。
五条さんの血糖値は遂に天元突破し。
夏油さんはボクのほっぺを触らないと禁断症状を発し。
家入さんのゴミ袋にはおびただしい数のストロングゼロが……!
何という無情なり――
「……但し!」
ピクッ……
――く、空気が急に重くッ……!
ボクは今、五条さんと夏油さんの席の間に座っている。
左右の空気が極寒だ……。
夜蛾さんの次の言葉を怖いくらい静かに待っている――
「はぁ……落ち着けオマエ達。
但し、新一年生の歓迎会をしてもらう。そのためのオフだ――」
「ボクはそのために……?」
「せっかくだからな、人数は多い方が盛り上がるだろう」
――ボクたちにも出会いの季節は実在したのか……!
「「「……」」」
「ん? どうしたオマエた――「うおおおお夜蛾セン! 俺、今年も夜蛾センの生徒でよかった!」――都合がいいな……」
「これは本当かい? うん、凜くんのほっぺは今日も柔らかい……」
「ほんと? 私も触る」
「いまは……やめへ、くらはい……」
錯乱している夏油さんと家入さん、そしてはしゃいでいる五条さん。
ボクはされるがままに頬をムニムニされている。
最近、みんなに“俺/私たちがこの頬を育てました”と言われる。何だそれ……?
「とにかく! 午前中、一年生はガイダンスを行っている。
オマエ達はその間、午後の新入生歓迎会の準備に取りかかれ!」
「「「サー! イエッサー!」」」
「今まで見たことない連帯感だ……」
この後、キャラ崩壊しているみんなと教室の飾り付けに取りかかった。
超! 新入生歓迎会! welcome!
と大きく黒板に書かれている。これは五条さんが書いた。
「新入生を! 紹介! しやす!!
テンション上げろ! オマエらー!!!」
「灰原雄です! よろしくお願いします!」
「……七海建人です」
パチパチパチパチ――
いつものテンションに戻った夏油さんと家入さんが拍手している。
五条さんははしゃいだままだ。
新入生二人は“本日の主役”と書いてあるタスキを肩にかけている。
灰原雄、さっぱりとした短髪の元気な人 「好きな食べ物は米です!」
七海建人、七三分けのクールな人 「好きな食べ物……? パンです」
七海さんが灰原さんに合わせて好きな食べ物言ってる……。
ところで、何故ボクも本日の主役タスキを掛けているのか。
「……なんでボクも新入生側なんですか?」
「だって、凜の歓迎会してなかったし。
ほら、サングラス貸してやるよ!」
「わッ」
――何だこれ? 何も見えない……。
ボクの顔にかけられる、見慣れたサングラス。
しかし、それは普通のサングラスと言うには真っ暗すぎた。
黒く、暗く、ボクをスタンさせる闇がありすぎた。
なんていうか、それはまさしく五条さんのサングラスだった――
「あはは、鈴月固まってる~」
「……何なんですか、この子」
「その子は呪術高専で身元を預かっている子だ。
凜、そろそろ戻ってきなさい」
「……ハッ」
夜蛾さんにサングラスを取られて、魂の尾が戻る。
確かに、高専に子どもが居たら気になるだろう。
「鈴月凜です。高専で皆さんにお世話になっております。
今後ともよろしくお願いします」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「よろしくね!! 凜くん!!」
「鈴月、めっちゃ丁寧でウケる」
五条さんの時は失敗してしまったから、今回は丁寧にいくのだ。
ペコペコと二人にお辞儀をする。
「あー俺らのことは敬って……」
――おや?
「五条先輩様、前髪先輩、タバコ先輩って呼べよ~」
「……悟、前髪先輩ってなんだい?」
「はー? 自分だけ様付けで呼ばせるとか子どもかよ」
「きゃ~怖い~。前髪先輩が怒った~」
「……は?」
ギャーギャー、やいのやいの、バカスカバカスカ。
五条さんと夏油さんの喧嘩が勃発してしまった。
頼みの夜蛾さんはため息をついて諦めている。
「五条いいぞ~、夏油もガンバ~。
あ、写メ撮ろ」
「まったく……オマエ達……」
「……もしかして、鈴月くんが一番まともでは……?」
「面白い先輩達だね!! でも僕たちは仲良くしようね、七海!!」
「ええ」
――本性バレはっや……。
五条さんと夏油さんが喧嘩してるとみんな不安よな、夜蛾動きます――ってことで喧嘩は無事止められた。
この後は、高専寮で新入生歓迎パーティーをすることになったのだった。
次の日、朝八時。
みんなが夜更かしで朝起きられていない中、ボクは昨晩早めに寝たのでいつも通り起きていた。
今は寮のロビーで一人飴を舐めている。
カラコロカラコロ――
今日も五条さんに貰った飴は甘くて美味しい。
「おや、おはようございます。鈴月くん」
「あ、七海さん。おはようございます」
一番初めに起きてきたのは、七海さんだった。
どうやらみんなと夜遅くまで起きていたのではなく、割と早めに寝ていたようだ。
他の人はまだ爆睡しているらしい。
「朝ご飯はもう食べたのですか?」
「はい、いつも朝は寮母さんのご飯です。
七海さんは食べましたか?」
「ええ、私は自炊してますから」
高専寮には非術師の寮母さんが常駐している。
事前に申告しておけば食事の用意をしてくれるのだ。
昼や夜のご飯は現二年生と食べている。
一緒に食べた人の分を一緒に高専に申告すれば、その分金銭的援助をもらえる。
ま、夜蛾さんは見ない振りしてくれているからOKだろう。
「あ、七海さんも飴舐めますか?
五条さんによくもらうんですけど、食べきれないので」
「……いただきます」
二人してロビーのソファーで飴玉を舐める。
なんだか昨日初めて会ったのに、不思議と落ち着いた時間だった。
「そういえば……。
飴玉は六歳を過ぎてからじゃないと窒息のリスクがあるらしいですよ」
「……え」
「まぁ今まで大丈夫だったのなら、平気なのでしょう」
――そうなんだ……。
五条さんはそのことを知らなかったのだろう。
ボクも飴玉が小さい子の食べ物であるイメージがあったから自然と受け入れていたし。
けれど、七海さんが言うように大丈夫ならいいだろう。
「……聞きました。君のこと――」
――……ん?
「……お互い頑張りましょう、呪術師として。」
「あ……はい」
「飴、甘くて美味しいですね。
では、私はこれで……」
そう言うと、七海さんは自分の部屋へと戻って行ってしまった。
同情……してくれたのだろうか?
七海さんは優しい人なのだなと、他のみんなが起きてくるまでボクは飴玉を舐め続けていた。
みんなが起きてきた後、七海さんはボクにコーラを買ってきてくれた。
炭酸は何歳からでもいいらしい。
「確かに……ほっぺた柔らかいですね」
「すごい柔らかいね!! 七海!!」
「「「俺/私たちが育てた――」」」
――コーラ飲んでるときはやめて欲しいなァ!!
~“ごは○ですよ”を初めて食べる五条~
「ご飯の上に謎の黒い物体が乗ってる!?」
「悟、それはごは○ですよだ」
「五条さん! 美味しいんですよ!」
どうやら五条さんは“ごは○ですよ”を知らないみたいだ。
灰原さんは激推ししている。
「いやいやいや、流石に食べ物じゃないって分かるわw」
「本当だよ、“ご飯”と“ごは○ですよ”は最強なんだ――」
「は~~~~?」
と、そこに通りすがりの夜蛾さんが現れる。
「せんせ~! 夏油くんが嘘ついてま~す!」
「……悟」
「?」
「傑の言っていることは本当だ」
「……まじかよ」
どもっす!<(_ _)>
N島ジュン太郎です。
読了!感謝!
飴玉って年齢制限あるんだ……と愕然した作者です。