呪いを焚べる   作:N島 ジュン太郎

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星漿体護衛任務中の高専での出来事、みたいな感じ。
今回はオマケが二つあります。

では第十七話をどぞ~。


第十七話 懐玉〈焚〉-弐-

 

「最近、五条さんとの任務ってないですね。

 五条さんが一人で……なんて言うか……少し心配です」

「はは、確かにある意味心配かもね。

 でも、悟はもう一人でも大丈夫だよ」

「うーん。まぁ、そうですね。

 あ、五条さんに貰った飴舐めますか?」

「……あぁ、貰おうかな」

 

――術師としての責任を果たさなければ……。

 

 凜くんに貰える飴は口直しとして非常に有り難いが、あんまりにも欲しがると呪霊玉の味を知られてしまうかもしれない。

 

――隠さなければ……。

 

 呪霊玉の味を知れば、凜くんはきっと不必要な責任を感じてしまうだろう。

 呪霊誘因体質は彼のせいではない。

 私は包みを開いて、飴玉を口に放り込んだ――

 

「あ、間違えて飲み込んでしまった……」

「え!?」

 

 

 

 

 

 

 夜蛾さんとの任務も終わり、高専に戻ってきて時間が経った。

 ボクは高専寮でツカモトJr.を抱きしめ、呪力操作訓練をしていた。

 映画も見終わり、現在の時刻は午後九時過ぎくらい。

 

「ん~、そろそろ見てない映画がなくなってきた」

 

――今日も今日とて呪力操作~。

 

 因みに今はチョーカーを付けながら訓練していた。

 夜蛾さんと任務にいったとき、コレを付けながらの呪力の捻出に苦戦したからだ。

 呪力を抑えられた状態でも一定量練り、コントロールしなければ。

 

「術式の訓練もしたいけどな~

 出力ミスるとフィードバック酷いからな~」

 

――不思議高密度呪力のせいで簡単に高出力になっちゃうのが難点。

 

 術式の呪力効率が良いのも、呪力操作が難しくなるので、もどかしいところだ。

 身体の成長や呪力強化で出力の幅が大きくなるだろうと、五条さんに言われたが、ずっと呪力操作の訓練は飽きる。

 もうちょっと戦うことに慣れたいのもある。

 

 今のところ、呪符に呪力と術式を篭めてフィードバックを誤魔化している感じだ。

 呪力を流し込み、それを外側への運動エネルギーに変換し対象を内側から爆発させる。

 

「呪霊誘因体質を利用する、か……」

 

――呪力を篭めて、呪符から漏れ出させる……とか?

――うん、ないな。ボク自身がデコイなのに追加でデコイを作っても……。

 

 そんなことを考えていると、寮の入り口がガラガラっと開く。

 誰だろう、とそちらの方向を向くと家入さん、七海さん、灰原さんが帰ってきたようだ。

 

「お帰りなさい、みんな」

「鈴月たっだいま~。今日も疲れた~」

「はい、ただいま。といっても私と灰原はこれから――「ただいま! 凜くん! 今日も呪力操作の訓練偉いね!」――灰原……遮らないでください……」

「あ! ごめん七海!」

 

 今日もお疲れの様子の家入さんと七海さん。

 それと元気いっぱい灰原さん。

 

――何か言いかけてたけど、これから出かけるのかな?

 

「はぁ……私と灰原はこれから星漿体護衛任務の応援に行きます」

「応援、ですか?」

「うん! なんだか沖縄に行くみたいだ!

 夏油さんにいいところを見せるチャンスだから燃えるよ!」

「え!? 沖縄……羨ましい……!」

 

――いや、任務なんだけどさァ……。

 

 帰ってきたばかりだが、直ぐに向かうらしい。

 七海さんと灰原さんは任務終わりだし、これから行くのは大変そうだ。

 頑張れの意味を込めて飴玉をいっぱい渡しておこう。

 

「飴ありがとう! 凜くん! 先輩たちにも渡しておくね!」

「灰原、そろそろ準備を……」

「二人……待って……」

 

――ん? 家入さん?

 

 家入さんが七海さんの肩をガシッ、っと掴んだ。

 なんか震えてる……?

 

「私が反転術式で治したり、検死したりでクソ忙しいのにクズ共はバカンス……?」

「……任務ですよ」

「いや、絶対遊んでる……。

 詳しく……説明して……私は今、冷静さを欠こうとしてる……!」

 

――あぁ! あまりに疲れてご乱心なさっている!?

 

 七海さんの説明によると、護衛中の星漿体の身内が人質に取られ、その取引場所が沖縄に指定されたらしい。

 何で沖縄なんだろう、と思わなくはない。

 だけど、確かに五条さんと夏油さんは遊んでそうだ。

 

「ナマコ投げながら“めんそーれ!”とか言って遊んでる!」

「そんなことないですよ! ほら凜くんのほっぺで落ち着いてください!」

「え!?」

 

 灰原さんに人柱として差し出されて、ボクは家入さんにモチモチされている。

 一年の二人はその隙に沖縄に向かう準備に行った。

 しばらく頬を触られていると、準備が終わったようで戻ってきた。

 

「何かお土産よろしく~」

「任せてください! サーターアンダギー買ってきます!」

「お酒に合うしょっぱい奴で」

「え~と、……じゃあ探してみます!」

「ボクはサーターアンダギーをお願いします」

 

 そうして二人は沖縄に向かった。

 残ったボクたちは、寝る時間まで一緒に映画を見ていたのでした。

 

「家入さん、お酒臭くて集中出来ません」

「あはは、ごめんね~」

 

 

 

 

 

 

 次の日。午後一時

 星漿体護衛組の二人から人質を取り戻したと連絡があった。

 今頃はみんなでバカンスでもしているのだろうか。

 

――いつか、ボクも一緒に行きたいな……。

 

 そんなボクは、今日一日夜蛾さんと一緒にいた。

 午前中は帳についての勉強。

 今は帳の練習のために、グラウンドに向かっている途中だ。

 

「昨日の任務で呪霊誘因体質が使い方次第で利用できることが分かった。

 上層部は能力の相性から、君を傑の補助監督として側に付けることにしたらしい」

「補助監督……、これから帳を練習するのはそういうことですか?」

「あぁ、そうだ。

 傑も帳は張れるが、君も出来る様になって損はない」

 

――結界術か~……。

 

 結界術と言えば藍沢を思い出してしまい、嫌な気持ちになる。

 ブンブン、と頭を振って邪念を振り払う。

 

 補助監督をするのは、ボクがまだ呪術師として任務にいけない代わりの処置だそうだ。

 ボクの外出には保護者の同伴が必要だが、補助監督になれば任務にもついて行ける。

 つまり、行動範囲がより広がるということだ。

 

――これは、頑張らねば……!

 

「午前中にも帳の概要を教えたが一応振り返っておこう」

「えっと、非術師の心の平穏を守るための、非術師に視認不能な呪いをあぶり出す結界……ですよね?」

「正解だ。……補足するとしたら、副次的効果として電波が遮断され、また術師は帳の破損を知覚することも出来る」

 

――あとは、呪術の足し引きの概念とか……。

 

 結界術は奥が深い。

 実際、結界術は当人の才能に寄るところが大きいらしい。

 夜蛾さんが言うには、帳は簡単な方だから大丈夫とのことだ。

 

「君が呪霊を誘き寄せ、帳で閉じ込める」

「今更ですが、なんだか餌見たいですね、ボク」

「……身も蓋もない事を言えばな」

 

 ま、自身の体質が呪われているのなら、それを知恵と努力で補おうという話だ。

 こんなのはホントに今更な軽口だ。

 帳の復習をしていると、グラウンドに着いた。

 

「それでは早速だが始めよう。

 教えた印と呪詞で自分の中に術式を0から構築、言霊を乗せ、呪力を流して発動してみなさい」

「いきなりですね?」

「何事も一歩踏み出してみることが大事、ということだ――」

 

 

 

 

 

 

 帳の習得訓練は日暮れ前に終わった。

 ボクは夜蛾さんにおんぶされながら、高専寮に送られていた。

 

「まさか日が暮れる前に使えるようになるとは。

 長い間、呪力操作の訓練をしてきた甲斐があったということか――」

「夏油さんとの任務なら……遠出できるかと思って張り切っちゃいました……」

「フッ、そうか。

 これからは逆にお土産を頼むことがありそうだな」

「今までの恩を返しますから、期待していてください……」

 

――……流石に、疲れた。

 

 いつかみんなと一緒に沖縄に行くことがあるのだろうか? と夜蛾さんの大きな背中で思う。

 背中の体温がなんだか心地よくて眠くなってしまいそうだ。

 ウトウトしているとやがて高専寮の入り口に着いた。

 

――背中で寝ちゃうのは申し訳ないから、ここで下ろして貰おう。

 

「ありがとうございます。ここまでで大丈夫です」

「ん? そうか。

 今日はもうゆっくり休んでおきなさい」

「はい、お疲れ様でした」

 

 夜蛾さんが帰るのを見送り、ボクは寮の入り口を開ける。

 ガラガラ、と寮の入ると家入さんがソファに座っていた。

 今日もタバコを吸っている様子。

 

「ただいまです、家入さん」

「……おかえり~」

「今日もお疲れですか?」

「クズ共……沖縄滞在……延長……」

 

――あッ、察し……。

 

 沖縄滞在を一日延ばすということは、今日ではなく明日帰ってくるということか。

 どんなことがあったのか分からないが、遊びを延長してそうだ。

 

「鈴月……ほっぺ……」

「……いいですよ」

 

 モチモチモチモチ、と結局いつもの光景。

 ボクは家入さんの膝の上に座って甘んじて受け入れる。

 

「……少し心配ですね」

「そう? 私はアイツらがいつも通りバカやってる様に思えるけど」

「あはは、確かに」

「多分、大人になっても図体だけ大きくなって、中身そのまま一緒にバカやってるよ」

 

――少しは大人になって欲しいけど。

 

 あの“最強たち”は大人になったら何をやっているんだろうと、思案する。

 意外と二人して教師をやっていたりして……。

 ボクにとって、みんなは呪術師としての教師みたいなものだ。

 

――ま、それだけじゃないけど……。

 

「家入さん、ボク、呪術師になる前に補助監督から始めるらしいですよ。

 いつか、みんなで旅行に行きたいですね」

「――……。」

 

 後ろからボクの頬を揉んでいる家入さんの顔は見えない。

 けれど、少し笑っているような気がした。

 

「それは……楽しみだね」

「はい、楽しみです」

 

 

 

 

 

 

~名探偵わんこ、灰原~

 

「あれ、このTシャツ誰のだろ?」

 

 体育館で運動した後、誰かがTシャツを忘れたようだ。

 

「あ、凜くん! 僕匂いで分かるよ、貸して!」

「あ、はい。どうぞ」

 

 置きっぱなしになっていたTシャツを渡す。

 灰原さんはTシャツの首下をクンクンと嗅いだ。

 

「分かった! コレ夏油さんのだ!

 僕が持って行って渡しとくね!!」

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 “夏油さんって五条さんと同じ柔軟剤使ってるんだ!” と言いながら体育館を出て行く灰原さん。

 どうして同じ柔軟剤なのに分かるのか。

 汗のにおいか?

 

「忠犬……いや、“名探偵わんこ”か……」

 

 

 

 

 

 

~無量空処された歌姫with冥冥~

 

「五条と夏油いる~?」

 

 ある日、高専寮のロビーでゴロゴロしていると見知らぬ女の人二人がやって来た。

 

「五条さんと夏油さんなら今任務でいません」

「ん? 子ども?」

「高専でお世話になってます、鈴月凜です。

 初めまして」

「礼儀正しいじゃないか、坊や」

 

 庵歌姫、巫女服を着た黒髪の女の人 「いないのかよ、アイツら」

 冥冥、ポニーテールの白髪の女の人 「しょうがない、坊やに渡しておくかい?」

 

「届け物ですか?」

「この前助けて貰ったのよ。そのお礼を一応ね? ……一応」

「渡しておいてもらえるかい?」

「はい、分かりました」

 

 多分、お菓子が入っているだろう箱を受け取る。

 

「いい? 君は五条や夏油みたいになっちゃダメよ?」

「二人は基本的にいい人ですよ?」

「…………………………………………………………………………???」

「魂の尾が出ているよ、歌姫。

 それはそうと、坊やは将来有望そうだ。今のうちに名刺を渡しておくよ」

 

 名刺を受け取ると、冥冥さんは庵さんを連れて帰っていった。

 

 

 




どもっす!<(_ _)>
N島ジュン太郎です。
読了!感謝!

学生の頃、匂いで誰の物なのか当てる人いましたよね?
多分、五条さんが夏油さんの柔軟剤を無断で借りて使ってる。
そんな妄想。
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