アニメの九十九さん良すぎて「なんだこのいい女は!?」って声が出ました。
では第十九話をどぞ!
あれから一年――
星漿体護衛任務が終わってから、ボクは夏油さんと一緒に任務に向かうようになった。
一緒に様々な場所へ行き、呪霊を祓ってきた。
「む? すまない、話の途中だが呪霊だ――」
夏油さんと任務の帰り道。
蝉時雨に紛れて、ボクに呪霊が寄ってきていたようだ。
夕飯に何を食べるのか話していたのに。
「夏油さん、蠅頭まで取り込むんですか?」
「あぁ……手数は多いことに越したことはないからね」
ゴッ、クン
夏油さんは丸めた呪霊玉を嚥下する。
今は、都内某所の廃ビル内に湧いた呪霊を祓った帰りだ。
「帰り道で寄ってきた呪霊まで取り込まなくても良いと思いますけど。
夕飯前の間食は良くないですよ?」
「ハハハ……別に呪霊でお腹が膨れるわけじゃないさ」
とは言いつつも、最近の夏油さんは食が細くなっている。
本人は夏バテと言うが、体調が心配だ。
任務も昨年頻発した災害の影響で多く、忙しいのだ。
――そうだ、今日の夕飯は夏油さんの好きな食べ物にしよう。
「夏油さん! 今日は蕎麦が食べたいです! えび天付きのヤツです!
帰りに食べていきましょう! ボクが奢りますよ!」
「ふふッ……それはいいね。
でも、奢るといっても高専の援助金だろう?」
「あはは! それはそれです!」
夜蛾さんが見逃してくれているからいいのだ。
貰えるお金は有効活用だ。
『凜、アイツらを見習ってはいけない』
夜蛾さん似の天の声が聞こえるが無視だ。
何故だか、空の雲も夜蛾さんの顔に見える――すみません、無視で。
これくらいは許して欲しい。
「夏油さんオススメの蕎麦屋に行きましょう!」
「……よし、とびきり高級なところにしようか」
「そうしましょう! 高専のお金で!」
帰ったら、五条さんに羨ましがられた。
次は五条家御用達のお店に連れていってくれるらしい。
次の日、ボクは夏油さんと家入さんと一緒に訓練していた。
今日も元気に蝉は鳴いている。
「爆ッ!」
パァン!
夏油さんが出していた呪霊が破裂する。
最近のボクは夏油さんに頼んで、よく戦闘訓練をするようになった。
「飛びながらの戦闘にもだいぶ慣れたね」
「はい! 夏油さんのおかげです!」
「どういたしまして。
三級までの呪霊を呪符で祓えるなら、一人の時でも安心かな?」
六歳になって、術式の出力も段々と上げられるようになってきたのだ。
今の炉心順転の出力は、大人一人を持ち上げられるくらい。
結構なパワーを出せるようになった。
「鈴月もここまで呪力操作が上手になるとはね~」
「ずっとツカモトJr.を抱いていた甲斐がありました」
「チョーカーを付けての戦闘も少しだけ出来る様になったしね。
頑張ったね、凜くん」
「えへへ……そんなに褒めても飴玉くらいしかないですよ?」
呪力特性で、呪力密度が高いから呪力効率が良い。
つまり、少ない呪力量で術式を使える。
そういう理屈でチョーカーを付けても多少戦えるのだ。
ボクは二人に飴玉を渡す。
――あとは……。
「あと、拡張術式のことなんで――「お、いたいた!」――五条さん?」
「試したいことがあるんだ。
術式効果の検証に付き合ってよ。」
五条さんがグラウンドに降りてくる。
両手にペンと消しゴムを持って。
――ペンと消しゴム……?
「コレ、俺に投げてくれ」
「無限バリアの検証ですか?」
「うん、そう。
まぁ投げてみてよ。あ、凜はそこら辺の石で」
ボクは石を拾う。
夏油さんと家入さんはペンと消しゴムを受け取った。
――そうだ、石に呪力を篭める拡張術式を使って投げよ。
最近は石にも呪力を篭めているのだ。
五条さんならどうせ大丈夫だし、ボクも練習の成果も検証してみよう。
それじゃあ、振りかぶって――
「五条、いっくよー」
「おりゃあ!」
バヒュンッ!
プロ野球選手のようなスピードが出る。
ビタッ!
ペンと石ころだけが無限バリアに止まり、消しゴムだけが五条さんにヒットした。
「げ、何今の」
「爆」
パァン!
石ころが五条さんの目の前で爆竹みたいに破裂する。
けれど、予想通り破片は止まってしまった。
「うおッ! 凜! 脅かすなよ!」
「あはは、ごめんなさい!」
「それは凜くんの拡張術式だね。悟のは……術式対象の自動選択か?」
「そ。正確には術式対象は俺だけど」
今までマニュアルでやっていたものをオートマにしたらしい。
物体の危険度を選別して、自動防御する。
これなら最小限のリソースで術式をほぼ出しっぱに出来るようだ。
「毒物なんかはまだ難しいかな」
「術式出しっぱなんて脳が焼き切れるよ」
「自己補完の範疇で反転術式も回し続ける。
いつでも新鮮な脳をお届けだ――」
他にも掌印の省略や、「赫」や「蒼」のそれぞれ複数同時発動も出来る様になったらしい。
なんだか本当に最強になってきた。
「後の課題は領域と長距離の瞬間移動かな
硝子、実験用のラット貸してよ」
「えー……」
――ネズミさん南無……。
心の中でネズミに合掌する。
というか長距離移動できるのか、と無下限呪術の応用性に驚く。
「傑、ちょっと痩せた? 大丈夫か?」
――んー、やっぱり五条さんも痩せたように見えるらしい。
「大丈夫、ただの夏バテさ」
「昨日、蕎麦食い過ぎた?」
――昨日もあんまり食欲なかったみたいだし、ホントに大丈夫かな……。
「外は暑いですし、もう終わりにしませんか?」
「そうだな、寮に戻ってシャワーでも浴びようぜ。傑」
「あぁ、少し休もうかな」
このときボクは知らなかった――
夏油さんの頭の中では拍手の乾いた音が反響していたことに――
寮に戻る夏油さんの背中は、夏の陽炎に揺らいでいた――
分厚い雲が空を泳ぐ。
そのうち雨が降りそうな空模様の中、ボクは歩いている。
喉が渇いたボクは自販機のある休憩所に向かっていた。
――今の気分は……コーラ、かな。
ドンッ……。
向かう途中、曲がり角で誰かとぶつかった。
「おッ? 坊やは……」
「あッ、と……すみませんボーッとしてました」
「いやこちらこそ、すまないね。あぁ君はそうか……例の……」
――例の? もしかして変なこと言われてないよね……?
金髪ロングヘアーの女の人はボクをまじまじと見ている。
というか誰なんだろうこの人? と思う。
まぁなんにせよ、自己紹介だろう。
「えっと、鈴月凜です。初めまして」
「うん初めまして、私は九十九由基。
噂は聞いているよ、不思議な体質をしているんだってね?」
「あぁ、例のってそういう……」
金髪のお姉さんは、九十九由基という名前らしい。
取り合えず休憩所に向かって一緒に歩く。
「先ず聞きたいのだけど――」
九十九さんはボクに何を聞きたいんだろうか。
呪霊誘因体質のことか? と頭を傾げる。
「――どんな女の子が
――……わっつ?
「私のセンサーが告げてる――君、初恋は済ませているだろう?」
「うわッ……」
「え、ガチで引かれた!?」
――this is 初対面ですよ~?
そりゃ当たり前である。
九十九さんを変な人リストに入れておき、一応答えておく。
「笑顔が綺麗で……話していて楽しい人……ですかね……?」
「うん、いいじゃないか。
きっと素敵な人なんだね――」
――む? これカエデじゃん……?
無自覚に頭に浮かんでいたカエデの姿。
そのことに、なんだかスゴい恥ずかしくなって熱くなる。
頭を振って顔の熱を冷ます。
「あっはっはっ、初恋というのは特別だもんね?」
「うるさい……です」
「ごめんごめん、ジュース奢るから許して」
「……しょうがないですね」
“ふッ、チョロい” と呟いたのは無視してあげよう。
なにせボクの中身は見た目通りじゃないのだ。
大人の対応が出来る子どもなのだ――
「君のことは聞いているよ。
呪霊誘因体質――まさしく君は、まともに生きられない訳だ」
「なんとか生きてますよ」
「うん、立派だ」
九十九さんに頭を撫でられる。
最近思うのだが、ボクの頭はそんなに撫でやすいのだろうか。
いろんな人にされる気がする。
「私はね、呪霊の生まれない世界を作りたいんだ」
「呪霊の生まれない……」
「そうなれば、君も普通に生きられる。……素敵なことだろう?」
――そんなこと出来るのだろうか?
「だから、君の体質は研究してみたいところではあるんだ」
「ごめんなさい」
「即答!?」
「だって怪しいし……」
「たはー! ファーストインプレッション失敗したー!」
研究者とか先ず怪しい。
とりあえず、と九十九さんはボクに自分の連絡先を渡してきた。
“気が変わったら連絡して” だそうだ。
「君の術式、私と似てるから色々教えられると思うんだけどなー」
「はぁ、そうなんですか……」
――というか何しに来たんだこの人……?
聞くと、どうやら夏油さんと五条さんを訪ねに来たらしい。
先日、特級になった二人に挨拶を、だそうだ。
五条さんは現在任務中だからいない。
「マジんか~。いないのか五条君」
――っていうか、九十九さんも特級なのか。
――特級の人って変な人しかいないの……?
そんなこんな話をしていると自販機のところに着いた。
夏油さんと灰原さんの声が聞こえる。
ちょうど夏油さんもそこにいたようだ。
((自分に出来ることを精一杯頑張るのは、気持ちが良いです))
「灰原さんの声だ」
「ふふ、イイ子じゃないか」
そう言うと九十九さんは休憩所に入っていった。
「君が夏油君?
どんな女が――
「うわッ……また言ってる……」
ボクは今、灰原さんと一緒に寮に戻っている。
夏油さんと九十九さんは休憩所に残して先に帰っている最中だ。
歩きながら同じコーラを飲む。
「……灰原さんって、いっぱい食べる人が好きなんですね」
「うん! ご飯って誰かと食べるのが一番美味しいと思うんだ!
だから、僕は一緒にいっぱい食べてくれる人が良い!」
「いいですね、それ。……確かに、一緒に飲むコーラはサイコーです」
「……あぁ! そうだね!」
ゴキュッ! ゴキュッ! プハー!!
二人で豪快にコーラを飲み、笑い合った。
「はは! そういえば凜くんは九十九さんの質問になんて答えたの?」
「ボクですか? 笑顔が素敵で、話していて楽しい人です」
「いいね! 素敵だ!」
「なんだか照れますね……」
もう一度、コーラを飲む。
九十九さんとは違って、この話題があまり恥ずかしくない。
むしろちょっと楽しい。
でも、ちょっぴり恥ずかしいから、何か別の話題に切り替えよう。
「夏油さんと何を話してたんですか?」
「うん? 呪術師は辛くないかって聞かれたよ」
「そんなこと聞くって……やっぱり夏油さん疲れてますよね……」
――最近の夏油さんはやつれているまであるし……。
「夏油さんなら大丈夫! 僕が今度の任務で美味しいお土産を買ってくるから!
凜くんは何がいい?」
「五条さんも食べるので甘い物でお願いします」
ボクの返答に灰原さんは笑った。
どうやらボクは夏油さんと同じことを言っているらしい。
任務でしょっちゅう一緒だから似てきたのかもしれない。
「凜くんは呪術師はやっていけそう?」
「ボク、ですか……?」
「僕には妹がいるんだけど、妹には高専に来ないよう言ってるんだ。
呪術師が大変なお仕事なのは分かってるから。……けど君には選択肢がなかったじゃないか」
「……そうですね」
灰原さんがこういうことを聞くのは珍しい。
ホントに珍しいから、真剣に答えることにした。
「呪術師のお仕事は、正直しんどいです。
呪霊は怖いし、死ぬのも怖い、やっぱり退屈で平凡な日常の方がハッピーです」
「……」
「――でも、自分に出来ることを一生懸命やるのは、気持ちがいいですから。
ボクはそれを続けて幸せな人生を送りますよ」
休憩室で聞こえてきた、灰原さんの言葉を返してあげる。
“自分に出来ることを精一杯頑張るのは、気持ちがいいです”
灰原さんの快活な考えをボクも信じてみたくなったから。
「――はは! そうだね!! そうだよね!!」
「あはは、そうなのです」
どもっす!<(_ _)>
N島ジュン太郎です。
読了!感謝!
夏油さんとの任務帰り。
凜くんの戦力確認と五条さんのオートマチックバリア。
九十九さんとの出会い。
灰原さんと乾杯
でした!
例のごとく、休日は投稿お休みします。