書き溜めが溜まったので投稿を再開します!
平日の11時半に投稿します!
書き溜めがなくなるまで投稿していきますので、よろしくお願いします!
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
鼻につく血の匂い。
その不快な匂いが、先ほどの惨劇は現実のモノだと突きつけてくる。
――また……里香ちゃんが……。
ロッカーから滴り落ちる朱い朱い血――
血に濡れる教室の床――
膝を抱えて座り込む僕――
キィイ……、とロッカーの扉が開く。
その中にあるのは――いや……、いるのは四人の同級生たち。
無理矢理ロッカーに詰められ、血だるまになってしまった姿がそこにはあった。
「うわ、グロいね……。ん~ちょっと間に合うかなコレ?」
突然、教室に知らない声が響く。
僕は予想外の出来事に顔を上げる。
凄惨な現場への乱入者――少し黒を残した白髪の少年――がそこに立っていた。
「……え?」
「え~と、君は大丈夫?」
――来ちゃ駄目だ……。
白髪の少年はコツンコツンと僕に近づいてくる。
それは駄目だ。
また、同じように里香ちゃんが出てきてしまうから。
「来ちゃ駄目だ……! まだ里香ちゃんが怒って「あ“あ”あ“あ”ぁぁ」」
「ん?」
「ゆ“う”だにぃぃ……!!!! 近づくなぁぁ……!!!!」
だが時は既に遅し。
少年のすぐ後ろに里香ちゃんが出てきてしまった。
きっと、同じ光景を繰り返すようにグチャグチャにされて――
「縛」
――されてはいなかった。
里香ちゃんは少年に触れられて固まっている。
どうやら上手く力が入らないようだ。
「うんッ変換しているとはいえ、強いねッ……!」
「だい…じょうぶ……?」
「うん、大丈夫大丈夫。あと質問なんだけど――」
未だにへたれ込んでいる僕は少年を見上げたまま。
そんな僕に彼は問うた――
「――彼女、殺さない方が良い?」
――……え?
「――わかった。……わかったから泣きそうな顔しないで、殺さないよ」
一瞬、少年が何を言っているか分からなかった。
僕は泣きそうな顔をしていたらしい。
そして漸く言葉を理解したときには、彼は両手で印を結んでいた。
そこで、僕の意識は途切れた――
2017年4月――桜の花が咲き乱れる頃。
ボク――鈴月凜は懐かしき東京都立呪術高等専門学校へ訪れていた。
「お疲れサマンサ!」
「はいはい、お疲れ様ですよ~五条さん」
何故かボクの部屋にいる目元を包帯で巻いた不審者。
鍵はかかっていたはずだ。
「一応聞きますけど、鍵かかってましたよね?」
「うん、かかってたね」
「じゃあ何で入れてるんですかね」
「合鍵♡」
――はぁ……この人は……。
「まあ、いいですけどイタズラはしないでくださいね?」
「いいんだ……」
今更見られて困るモノとか置いてない。
そもそも最近は秋頃しか帰って来てなかったから、別に部屋を使われて無問題。
ボクは持っていたトランクからお土産を包んだ風呂敷を取り出す。
「はいコレ、お土産です。
群馬名物、焼きまんじゅう。甘いヤツです」
「ん、ありがと。凜」
「で……なんでボクを呼んだんですか?」
今回、高専に帰ってきたのは五条さんに呼びつけられたからだ。
メールで“超重要だから帰ってこい”、とまで言われたから何かと思って帰ってきたのだ。
普段は拒否したり、無視したりする。勿論、五条さん限定で。
「え、マジで分かんないの?」
「……何かありましたっけ?」
「今年から高専入学でしょ~が! いつまでも放浪してるんじゃありません!」
――あ……そういえばそうだった……。
「同級生はみんな仲良くなってるよ~家出少年くん?」
最近……というかここ数年間、ボクはずっと日本中を放浪していた。
数年前に小中高の教育課程が終わり、一級術師の階級も得て、一人でも外出できるようになったのだ。
そんなこんなで放浪三昧だったから、高専入学が今年だと忘れていた。
「家出って大袈裟な……あはは……」
「ってことでコレ入学祝いね。ま! 高専の制服だけど!」
「……? 高専の制服持ってますよ?」
「サイズがもう合わないでしょ! ほらほら開けてみなって!」
五条さんから渡された大きな紙袋を開けてみる。
フード付きの白い制服。
それを取り出して、サイズを確認。
――わお、ホントに丁度いいサイズ。
「おー、よく丁度いいサイズを用意できましたね?」
「僕、最強だから」
「キッショ、何で分かるんだよ」
最近は任務も受けても受けてなくても、面倒くさいから適当な服で過ごしていた。
久しぶりに制服で過ごすのもいいかもしれない。
結局のところ服を選ぶ必要のない、楽な格好が一番いいのだ。
「あぁそうだ。この前の乙骨憂太くん、高専で預かることになったからよろしくね」
「え! ホントですか!」
「なにかあったらよろしく。あ、この焼きまんじゅう美味しいねェ~」
――死ななくてよかった……。
乙骨憂太くんというのは、この前助けた少年だ。
聞いた報告によると、折本里香ちゃんという彼の恋人の怨霊に取憑かれてしまい、周囲に被害を出してしまっていたらしい。
完全秘匿死刑が下されたと聞いて、五条さんに“何とかしてください” とお願いしていたのだ。
「ふぅ、ご馳走様。これから彼のところに行くけどどうする?」
「行きます。乙骨くん元気してますか?」
「してるんじゃない? 知らないけど」
――確認してないな、コレ。
――大丈夫か乙骨くん……。
なんだか不穏になってきた。
早速、ボクは貰った制服を着て、乙骨くんのところに向かった。
「コレは何かな? 乙骨憂太くん」
四方八方が呪符で埋め尽くされている部屋。
灯籠の光が乙骨くんを照らしていた。
「ナイフ……だったモノです」
――ナイフ……ね……。
乙骨くんは部屋の中で自殺未遂を起こしていた。
しかし五条さんが持っているのは、死ねそうもないグチャグチャのナイフ。
「死のうとしました。……でも里香ちゃんに邪魔されました」
「暗いね。今日から新しい学校だよ?」
放り投げられるナイフ。
カランッカランッ――と落ちた残響が耳に残った。
里香ちゃんが自殺を止めたらしい。
部屋の中央で彼は膝を抱えて俯いている。
「行きません。もう誰も傷つけたくありません。
だからもう……外には出ません」
――……似てる。
「でも、一人は寂しいよ?」
いつかのボクを思い出す。
カエデと一緒にいるために、病院に閉じこもろうとしていた自分――
そして、死者に生きてと願われる自分――
――でも……似てるけど、違うな。
ボクは独りになろうとはしなかった――
彼は今、独りになるために閉じこもろうとしている――
「……ムカつく」
「……え?」
「お、ようやく顔を上げたね? 久しぶり、乙骨くん」
ボクは片手を上げて挨拶をしながら、転がり落ちているナイフを拾う。
改めて見ると、すっごい曲がり方をしている。
「このナイフ凄いよね。ホントにグニャグニャだ」
「あの……」
「君の恋人はよっぽど――君に“生きて”欲しいんだろうね?」
「――」
そうだ――このナイフが証明している。
里香ちゃんは君に死んで欲しくない、と思っている。
これは、間違いようにない事実のはずだ。
「“私は死んでしまったけど、彼には生きて欲しい。だけどその彼は自殺をしようとしていました”、なんて確かにムカつくよ」
「……里香、ちゃん……」
「死者が生者に対して思うのは“生きて欲しい”ということ……とは決して断言できないけどさ?」
――ボクは背中を押して貰った。
――だからこそ、彼を引っ張ってあげたい。
「好きな子に“生きて”って背中を押されたなら、精一杯生き抜こうよ――少年!」
まるで友達みたいな気軽さで――ボクは手を差し伸ばした。
握り返してくれるのが――さも当然が如く。
あの日の幽霊のように。
「でも……僕は……」
「いや~! 青春だね、凜!」
「こらそこ、青春おじさんは黙ってください」
「おじッ……!?」
ただでさえ包帯を巻いた不審者なのに茶化さないで欲しい。
いや、ここまで黙ってただけマシな方か。
「まだ、悩んでる?」
「……うん」
「確かに誰かを傷つけるのは嫌だよね。めっちゃ分かる。
でも、その答えは外に出なくちゃ見つからないよ? ね、五条さん?」
五条さんは前に出て来て、ボクの頭をグリグリする。
相変わらず乱暴にこねくり回される。
「凜の言う通りだ、乙骨憂太くん」
――恥ずかしいから止めてくれないかな……。
「君にかかった呪いは、使い方次第で人を助けることも出来る。
それこそ凜のようにね――」
「エッヘン!!」
「力の使い方を学びなさい。全てを投げ出すのは、それからでも遅くはないだろう」
ボクたちは呪われている。
お互い、呪いの子として呪術高専に通うことになる。
「一緒に行こう乙骨くん――呪術高専に――」
前世を含めても初めての高校……いや高専生活。
今年入学ということは忘れていたけど、どうやら楽しくなりそうだ。
――まともに、生きられるかな……?
――ま、何とかなるでしょ!
どもっす!<(_ _)>
N島ジュン太郎です。
読了!感謝!
凜くんと乙骨くんの共通点を考えたらこんな感じになってた。
ちょっと押しつけっぽいところが呪術師らしくなった凜くんを感じて好きです。
良ければ気軽に感想をください。作者は泣いて喜びます。
解説!炉心呪術!
炉心反転――縛:運動エネルギーを呪力に変換する術式反転を応用した拡張術式。相手の動きを止めて縛り付ける。自己への呪力の還元率は低いものの、自己補完も含めるとほぼ呪力消費がなくコスパがいい。
領域展開――■■■■■:詳細はまだ不明。