呪いを焚べる   作:N島 ジュン太郎

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どうしよう棘の描写がめちゃくちゃ難しゾ!?

第二十四話、どぞ~。


第二十四話 始まりの異能と咎人の呪難

 

 

「僕は……もう誰も傷つけたくなくて……閉じこもって消えようとしたんだ……」

 

 赤暗い呪霊の腹の内。

 学徒たちの号哭が響いていた。

 

「でも、一人は寂しいって言われて……言い返せなかったんだ」

『君の恋人はよっぽど――君に生きて欲しいんだろうね?』

 

――里香ちゃんが亡くなってからは孤独だったから。

――寂しかったから……辛かったから……。

 

「誰かと関わりたいッ……誰かに必要とされてッ……」

『精一杯生き抜こうよ――少年!』

「生きてていいって、自信が欲しいんだ……」

 

 (のち)に『現代の異能』と呼ばれる少年は、眩しい闇に身を投じる。

 

「里香ちゃん……力を貸して……」

 

 

 

 

 

 

 ボクたちは任務に向かうため、補助監督が車で待っている場所まで歩いていた。

 トコトコ……トコトコ……。

 校舎の廊下を五人、いや四人と一匹で歩く。

 

「あ、あのよろしくお願いします」

「……オマエ、いじめられてたろ」

 

――うわ、キッツ!

 

 憂太がペアになった彼女にバッサリ切られてしまった。

 禪院真希……呪術御三家と呼ばれる禪院家の人はやっぱり怖いのだろうか。

 ボクはスススッ、っと後ろの方に移動して離れる。

 

「図星か。分かるわぁ私でもいじめる。

 呪いのせいか? 善人ですってセルフプロデュースが顔に出てるぞ、気持ち悪ィ。

 何で守られてるくせに被害者ズラしてんだよ」

 

――ワァ……ぁ……。

 

 泣いちゃった! 心が!

 乙骨くんはピシリと固まってしまった。

 御三家はやっぱり怖いとこ……ってコト!?

 

「ずっと受け身で生きてきたんだろ。

 何の目的もなくやっていけるほど呪術高専は甘くねぇぞ」

「真希! それくらいにしろ!」

「おかか!」

 

 パンダと狗巻くんが禪院さんの口撃を諫めた。

 そういえばこのパンダ、ゆるふわなのに良い声をしてらっしゃる。

 

「分ーったよ、うるせぇな。

 ……それよりオマエ……鈴月、後でツラかせ」

「禪院さんごめんなさい、タイプじゃないんです」

「そういう意味じゃねぇ!? なんでフラれたみたいになってんだゴラァ!?

 あと苗字で呼ぶな!」

 

――やっぱり面白い人かも……?

 

「オッケー真希って呼ぶね」

 

 真希はフン! とそのまま先に歩いて行ってしまった。

 この後乙骨くんと彼女の任務に着いていくため、結局合流することになるのだけれど。

 ボクは憂太の肩をポンポンっとして温かい目を向ける。

 

「頑張れ憂太、何とかなるって!」

「すまんなぁ、アイツは少々他人を理解した気になる所がある」

「ツナマヨ」

「いや……本当のことだから……」

 

 ボクたちの励ましに、本当のコトだからと言う乙骨。

 やれやれと肩をすくめながらも、真希の言い分にも理解出来るところがある。

 しかし、憂太の変わりたいと願う気持ち、凜は大事だと思うわけ。

 

――……一応、改めて自己紹介しておくか。

 

「改めてよろしく。気軽に凜って呼んでよ」

「正道から聞いてると思うがパンダだ、よろしくな。凜」

「しゃけしゃけ!」

「お、呼び捨てで良いの? じゃあよろしく棘、パンダ」

「えぇ!? 言ってること分かるの!?」

 

 分かる訳ないじゃないか。

 こう……仲良くなるにはフィーリングが大事なのだ憂太。

 勢いというのは時に便利である。

 

「コレくらいのことで狼狽えてると今日の実習は大変だよ?」

「うッ……」

「っと、そろそろちゃんと彼女を追った方がいいかな」

 

 あまり待たせてしまうのも、また彼女を苛立たせてしまうだろう。

 憂太が再び標的にされてしまうのは避けねばならぬ。

 

「それじゃあ棘とパンダはまた後でね! ボクは憂太の補助だから!」

「「おう!/しゃけ!」」

「ほら憂太! 走るぞー!!」

「わわッ」

 

 慌てる憂太を引き連れて、ボクたちは走っていった。

 

 

 

~ 少年少女移動中 ~

 

 

 

「ここは……?」

「ただの小学校だよ。ただの校内で児童が失踪する小学校」

「失踪!?」

 

――ありゃ~、でっかい呪いがいるね。二人で大丈夫かな?

 

 呪力感知によってここの呪霊の規模を感知する。

 何となく五条さんの“ねらい”を察したので、黙っておくことにした。

 

「場所が場所だからね。恐らく自然発生した呪いによるモノだろう」

「子どもが呪いに拐われたってことですか?」

「そ。今んとこ二人」

 

 大勢の思い出の場所には呪いが吹き溜まりやすい。

 例えば、学校や病院。

 その場所が負の感情の受け皿になり、それ積み重なって呪いが発生するのだ。

 ……と。真希が見習い術師に解説した。

 

「呪いを祓い子供を救出、死んでたら回収だ」

「じゃあ帳を下ろしますね、五条さん」

「いいや、僕がやるよ」

 

――ホワイ?

 

 今回、ボクは補助のはずだが? と首を傾げるとともに嫌な予感がする。

 そういえば、補助監督ではなく補助って言われたっけ、と思い出す。

 ボクの思案を余所に五条さんが帳を下ろした。

 

「君たちを外から見えなくし、呪いをあぶり出す結界だ」

 

 五条さんとともに帳の外に出るボク。

 手を振りながら健闘を祈る。

 

「くれぐれも、死なないように」

「じゃ! 二人とも頑張って!」

「死って……凜くん!? 先生!?」

 

 憂太の言葉を遮るように帳は完成した。

 ボクたちは彼らの様子を外から眺めるのみ。

 ちょうど、三体の呪霊が出てきたのが見える。

 

「……五条さん、ここの呪霊って結構強いですよね?」

「うん、そうだね」

「折本里香を顕現させるつもりでしょ」

「うん、そうだね」

 

――はぁ……やっぱり……。

 

 だからこその、フィジカルギフテッドと新米呪術師という二人組なのだ。

 呪力感知が苦手な彼らに任せることで、バレないようにしたのだろう。

 そして、補助監督ではなく補助ということは……。

 

「もしかしてですけど、折本里香の相手をボクにさせるつもりですか?」

「せいかーい! 久しぶりだし今の実力を知りたくてね!」

「はぁ……言っておきますけど、前回のは不完全顕現だったから楽に対処できただけです」

 

――完全顕現されたら、しんどいなぁ……。

 

 もしもボクが対処できなかったら、この町一帯が大変なことになるだろう。

 一気に責任重大になってしまった。

 というか、報告、連絡、相談をしっかりして欲しい大人なら。

 

「ま! 無理だったら僕が何とかするよ?

 でも、コレくらいは祓えるようにして貰わないと、期待外れになっちゃうなぁ」

「はぁん? 禿げる呪いをかけるぞ?」

「コワッ! 凜がグレた!」

 

 誰が思春期少年か! 絶賛思春期でしょ! とツッコみ合い、じゃれ合う。

 破天荒な兄貴分たちの期待に応えるのは大変だ。

 

――これで先生をやれてるのは不思議だなぁ……。

 

 暫くボクたちがケラケラとふざけ合っていると、憂太と真希が呪霊に喰われた。

 真希は呪具を落として、憂太は気を失ったように見える。

 

「ホントに大丈夫ですかコレ?」

「大丈夫大丈夫」

 

――まぁ、ガチで不味いときはちゃんと動くか……この人は。

 

 呪具を落とした真希じゃあ、呪霊の体内からはどうこうできない。

 つまり、憂太が里香ちゃんに頼るしかない、ということだ。

 ボクの出番はそろそろだろう。

 

「はぁ、めんど――「凜」――……なんです?」

「入学忘れてたのって津美紀の件のせいでしょ」

「…………」

 

――今……!?

 

 正確には、津美紀の件で入学を思い出して、解決しようと方々を訪ねてたらまた忘れたのだ。

 ボクとしては“寝たきり”というのは非常ににトラウマ案件だったので。

 

「今、話すことですかそれ……?」

「いいからいいから」

「……えっと、九十九さんのとこに行ってました」

 

 訪ねた先は、特級術師九十九由基のところだ。

 しかし、結局の所あまり収穫はなかった。

 

「結局ボクたちはもう何も出来ない、ということが分かっただけです」

「……そっか」

 

 首に触れる――

 

「凜のせいじゃないさ、僕が断言する」

「でも……いえ、そうですね」

 

 六眼を持つ五条さんが言うならそうなんだろう。

 気を遣って嘘をつくような人じゃない。

 そんな人だったら苦労はしない。……いやホントに。

 

『イ“ア”ァア“ア”ア“!!!!』

「お! いよいよ出番だね!」

「運良く引っ込んでくれないかなぁ……」

「無理でしょ、だって凜がいるし」

 

――呪霊誘因体質はクソ、分かるとも!!

 

 やけくそだ。

 今日という日ほどこの体質を恨んだ日はないだろう。

 もう一度、首を撫でる。

 

「凄まじいね。これが特級過呪怨霊、折本里香の全容か。

 ククッ……女は怖いねぇ」

「笑ってる場合か」

「それじゃあ頑張って! いってらー!」

 

 もう何度目か分からないため息を吐いて、帳に入る。

 校内は帳の影響で夜のような暗さだ。

 そんな闇の中、憂太が真希と小学生二人を背負っていた。

 

『頑張れ憂太』

「うん……頑張るよ!!」

 

――……格好いいじゃん。

 

 少年を励ましている少女を見た気がした。

 きっと気のせいだろう。しかし、頑張る憂太を見て気合いが入った。

 

――ボクも負けてられないな。

 

「おつかれ憂太、後は任せてよ」

 

 イメージは炉心。

 運動エネルギーを生み出す疑似アークリアクター。

 稼働する熱に身を委ねる。

 

 順転する炉は快音を唄い――

 焚べる呪力は波打つこともなく静謐に――

 

 

「炉心順転――変奏(へんそう)

 

 

 

 

 

 

 

 

~金欠呪術師、鈴月凜~

 

「……」

 

「…………」

 

「………………路銀が尽きた……」

 

 お腹が空いて座り込む。

 何もないのが分かっていても、何かを求めてトランクを空ける。

 

「あああ、何もないよォ……」

 

 ひゅ~、と虚しい風が吹いた気がした。

 こんな辺鄙な所で野垂れ死ぬ訳にはいかない。

 肩たたきしたらご飯をくれそうな、田舎のお婆ちゃんも見当たらないし。

 

――しょうがない……。

 

「ちくせう……任務を受けるか……。

 腕っぷしが強くなっても、結局お金がなきゃ無力だなんて世知辛い……」

 

 プルル……ガチャ

 ワンコールで繋がった。

 

「もしもしもしもし? こちら鈴月凜、どうぞ?」

「こちら五条悟、ナイスガイさ。どうぞ?」

「お金ないからご飯奢ってください。そしたら任務を受けます」

「二週間」

 

――むむむ……二週間はキツい……。

 

「ノー、三日」

「一週間」

「…………オッケー、ナイスガイ。ご飯と賞与期待してます」

 

 ピッ……。

 五条さんが次の話を切り出す前に通話を切る。

 めんどくさいから。

 

「んッ~~!! それじゃあ五条さんのとこまで飛びますか!!」

 

 バヒュン!!

 凜は “そらをとぶ” を使った!

 ご飯は何がいいかと考えながら、ボクは空の旅に繰り出したのだった。

 

 

 




どもっす<(_ _)>
N島ジュン太郎です。
読了!感謝!

金欠の凜くんは田舎のお婆ちゃんと仲良くなってご飯食べさせて貰ってる……と言う妄想。
それと未公開の十年。何があったのかをチラリズム。津美紀の件とかね。いろいろあったらしいですよ?

次回! VS. 特級過呪怨霊――折本里香

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