転生したけど原作の千年前   作:フィークス2号

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9話 ヴァイスおじいちゃんと東洋巡り

 

 

 

 東洋にある大帝国、烈王朝の山にて一人の男が瞑想をしてた。

 彼は黒く結われた髪で竹林の中で座り、静かに座禅を組んで瞑想をしていた。そしてその男はふと目を開けて振り返りもせずに後ろに声をかける。

 

 「何ようですかな?」

 

 声をかけられた二人の男の一人、アントニオ・ヴァイスは答えた。

 

 「なーに、ちょっとお前さんに用事があってのう。どれ、土産もんもある。」

 

 アントニオ・ヴァイスはそう言うと、菓子類や酒の入った袋を揺らした。

 

 

 「烈帝国の大仙人、リー・ハオシェン(李皓軒)様。どうかお話を聞いてくれないでしょうか。」

 

 そして隣にいる水色の髪の少年、ネルソン・Xも丁寧に頼み込んだのだった。

 

 「いいでしょう。こんなところで話すのもアレです。私の小屋にお招きしましょう。」

 

 そう言うと仙人、ハオシェンは立ち上がり柔和な笑顔を向けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なるほど、グローリア魔法学園ですか。」

 

 「そうじゃそうじゃ、その学園には優秀な教師が必要になる。だからこそここ烈帝国でも名高いおぬしに教師になって欲しいのじゃ。」

 

 アントニオ・ヴァイスおじいちゃんはお土産に持ってきたお酒を、ハオシェンさんと一緒に飲みながら話している。

 俺たちは目の前の魔法使い、ハオシェンさんを魔法学園の教師として勧誘するべくこの東洋の地にある、烈帝国までやってきたのだ。

 

 「ふむふむ、実に興味深いですね。ところで……そちらの少年は?未来の生徒さんですか?」

 

 ハオシェンさんは俺のことを見ながら尋ねた。

 

 「ああ、そうじゃ。そしてワシらと共にグローリア魔法学園を創設し運営する大切な仲間じゃ。

 紹介しよう、ワシの大切な仲間。ネルソン・Xじゃ。」

 

 「ネルソン・Xと申します。よろしくお願いします。」

 

 俺はハオシェンさんに頭を下げて挨拶する。

 

 「ふむふむ……一つ、不躾かもしれませんがお聞きしてもよろしいですかな?」

 

 ハオシェンさんは俺に尋ねてきた。

 

 「いいですよ。」

 

 「ではネルソンさん……あなた、もしかしてミスペルでは?」

 

 ハオシェンさんの一言に俺はぎくりとした。

 もしかしたらハオシェンさんがミスペルに対して偏見持ってたりするかもしれない……。

 でも下手に隠そうとしても、うちに教師として就職したら絶対バレるしなぁ。ここは正直に答えておこう。

 

 「はい、そうですよ。よくお分かりになりましたね。」

 

 俺は冷や汗をかきながら答えた。

 

 「なるほど、貴方の気の巡り方で、そうではないかと思ったのですがやはり……。

 というと、貴方が作ろうとしている魔法学園には、ミスペルも通える学園ということで宜しいでしょうか?」

 

 ハオシェンさんはどこか嬉しそうに尋ねた。

 

 「ああ、ワシらの作る学園は名門だけでなく非魔法族(コモンズ)出身の魔法使いや、ミスペル。果ては非魔法族もが学校に通えるようにすることを考えておる。」

 

 ヴァイスおじいちゃんがそう言うと、ハオシェンさんは明らかに嬉しそうな顔をした。

 

 「それは素晴らしいですね!魔法族と非魔法族が肩を並べて共に学べる学舎。そこにはミスペルだからと言う理由で学べぬ子供もいない。まさに最高の学校です!」

 

 ハオシェンさんは立ち上がり興奮しながら言う。お土産としてめちゃくちゃいいお酒をプレゼントした時よりも遥かに機嫌がいいぞ!?

 

 「私は名門の魔法族の家に生まれました……そして妹はミスペルでした。」

 

 ポツリ、ポツリとハオシェンさんは自分の過去について語り出した。

 

 ハオシェンさんは俺みたいに名門の魔法族の家系だったそうだ。そして仲の良い妹、リンファ(凜風)がいたが、彼女がミスペルだとわかると両親は妹を露骨に差別するようになったそうだ。

 そして妹はあまりにも酷い扱いを受けた為、家出してしまい離れ離れになってしまったそうだ。

 

 それ以来ハオシェンさんはミスペルとそうでない自分たちとの違いは何か?そもそも魔法族と非魔法族(コモンズ)に違いはあるのか?などと疑問を抱くようになったそうだ。

 そして彼は魔法族とミスペルと非魔法族(コモンズ)が共生出来る社会を夢見るも、自分の力ではどうにもできないことを悟り、圧倒的な魔法力を持ちつつもこの山で半隠居生活を送っていたそうだ。

 

 そんな折に俺たちがやってきて、学園の教師をやらないかとスカウトしにきたそうだ。それも魔法族と非魔法族(コモンズ)、そしてミスペルの全てが楽しく共生出来る学舎の教師として……。

 

 「ヴァイスさん、ネルソンさん。どうかその申し出受けさせてください!

 皆が共生出来る素晴らしき学園、私もその輪に加わりたいのです!」

 

 ハオシェンさんはヴァイスおじいちゃんの手を取り、懇願した。

 

 「ああ!おぬしほどの魔法術の達人が教師として加わってくれるのであれば百人力じゃ!」

 

 ヴァイスおじいちゃんはハオシェンさんの手を握り返して答えた。

 

 「しかし妹さん……リンファさんの行方が気になりますね……。

 ヴァイスおじいちゃん、シャヒーラ様から習った魔法でリンファさんを探せたりしない?」

 

 「ああ、人探しの儀式魔法を使えば簡単にできるぞ。」

 

 それを聞いたハオシェンさんは目の色を変えた。

 

 「ほ、本当ですか!?」

 

 「ああ、本当じゃ。ワシも知らんかったがの、南洋では初歩のレベルの魔法で民間に伝わってるそうなのじゃ。

 こんな簡単な魔法でも知識がないと使えないモノなのかと驚いたものじゃよ。

 この魔法をシャヒーラから教えてもらったとき、改めて魔法学園の設立の重要性を再確認したものじゃ。」

 

 そういうとヴァイスおじいちゃんは家を出て、地面に魔法を放った。

 

 

 

 そして魔法を放たれた地面はここ周辺の地図を描き、ある一点を差し示した。

 

 「なるほど、この場所にいるようじゃな。」

 

 「ここは泉陽の街ですね。ここからすぐ近くですが……。」

 

 ハオシェンさんは言葉を濁した。

 

 「泉陽?その街に何か問題でもあるの?」

 

 「その街は最近、疫病が広がっているとの噂でして。もしかしたら妹のリンファもかかってしまってるのではないかと不安で……。」

 

 青ざめた表情でハオシェンさんは言った。

 

 「それはいかん!疫病対策の呪文をかけた後、今すぐ向かうとしよう。

 そうそうハオシェン殿、空の旅はお嫌いかの?」

 

 「……空の旅?」

 

 そして俺たちはハオシェンさんに、俺たちが乗ってきた空飛ぶ馬車を紹介した。

 

 「これは……すごい。エンチャント呪文がここまでの傑作を産み出すとは。

 む?この魔力……もしかしてネルソンさん、あなたが作ったのですか!?」

 

 ハオシェンさんは驚愕の表情を浮かべている。

 てか付与した魔力だけで俺が作ったことを見抜くとか、ハオシェンさんやばいな!?

 

 「はいそうです、俺が作りました。どうですか?」

 

 「素晴らしい……素晴らしいの一言につきますよこれは!

 拡張呪文に浮遊魔法に安定化魔法。それに風力魔法や高高度に備えた耐寒魔法も加わっている。

 ここまでの付与魔法をつけただけではなく、実際に空に浮かぶ際の問題点を全て潰している。正しく実用的な代物です。

 ミスペルの方がここまでの物を作り上げることが出来たとは!」

 

 ハオシェンさんは興奮しながら俺の使った航空馬車について喋っている。

 

 「ふふふ、実はのうハオシェン殿。ネルソンが本当に凄いのは付与魔法で魔法道具を生み出す才能ではないのじゃ。」

 

 「なんですと!?ここまでの逸品を作ることが出来るのに、それよりも凄い才能があるというのですか!?」

 

 ヴァイスおじいちゃんが自慢するように言う。この言い方、なんだかエルメスを思い出すな。

 

 「そうじゃ、ネルソンの真の才能。それは商才なのじゃ!続きはこの馬車の中でゆっくりと話すとするかのう。」

 

 そして俺たちは馬車に乗り、ヴァイスおじいちゃんは俺のことを褒めまくって、ハオシェンさんに驚かれながら移動した。

 

 

 

 

 

 

 泉陽の街にて

 

 

 「ここが泉陽ですが……。都と比べると寂れていますね。」

 

 泉陽にたどり着いた矢先に、ハオシェンさんはそうポツリとつぶやいた。

 

 「寂れているというよりかは、悲惨と言った方が正しいのう。」

 

 泉陽に並び立つ建物は全体的に薄汚れていて、街からは活気が感じられない。

 道端には浮浪者や病人が倒れていて疫病の酷さを感じさせる。

 街の離れには炎の煙がモクモクと立ち上っていて、おそらく人を火葬しているのであろうと予想できる……。

 

 「こんな街にリンファが……。ヴァイスさん!リンファのもっと詳しい場所を探すことはできませんか!」

 

 「安心せい、それもできるぞ。ほれ、ちょちょいのちょいじゃ。」

 

 そういうとヴァイスおじいちゃんはローブからカップを取り出して、そこに水を注いでコインを浮かべた。

 そしてコインがスーとカップの水の上を滑り、俺たちがゆくべき方向を指し示した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ここがリンファの住む家……かなり慎みが深いというか」

 

 (口さがなくいうとボロボロだな……)

 

 俺たちが訪れたリンファさんの家、それはかなり古く老朽化したこぢんまりした家であった。

 寂れた街で古い建物が多いこの泉陽の街でも古い部類の家だ。

 

 「と、とりあえず入ってみるとするかのう?」

 

 そういうとヴァイスおじいちゃんは戸を叩き、返事を待った。

 少しして、「はーい」と言う可愛らしい声が聞こえ、トタタタと走る音がした後に戸が開かれた。

 

 「どなたですか……って、お……お兄さん?」

 

 戸を開けて出てきた女性、それは長い銀髪に緑の目をした東洋の質素な着物を着た人物であった。

 

 「リンファ……リンファなのか!?」

 

 「お兄ちゃん……ハオシェンお兄ちゃん!」

 

 そう言うと二人はギュッと強く抱きしめ合い、お互いに声をあげて泣き始めた。

 

 

 「……感動的じゃのう」

 

 「そうだね、二人とも再会できてよかったね。」

 

 俺とヴァイスおじいちゃんは、再会した二人が落ち着くまでその光景を眺めていた。

 

 

 

 

 

 「なるほど、ハオシェンお兄ちゃんの方ではそんなことがあったんだね。」

 

 「ええ、そうです。お前が家を追い出された事でわたしは本家を見限り、山で半隠居の暮らしをしていました。

 だが魔法学園設立とその勧誘を受けて、大陸中央に移住することを決めたのです。

 どうかリンファ、あなたも一緒に来ませんか?」

 

 その勧誘にしてリンファは渋い顔をして答えた。

 

 「それは素晴らしい提案なのですが……すいません、私にはやることがあります。」

 

 「やることじゃと?」

 

 ヴァイスおじいちゃんの質問に対してリンファさんは答えた。

 

 「ええ、そうなの。私は家を追放されたあと、ミスペルである自分ができることを探し、医の道に辿り着いたの。

 錬金術魔法を使った薬の調合よ。私がこの街に来たのは、今流行ってるこの疫病の治療薬を作るためなのよ。」

 

 「そうなんだ……。リンファさんは立派だね、でもこの疫病の治療薬なんて作れるの?」

 

 そう尋ねるとリンファさんは目を逸らした。

 

 「一応理論は出来てるけど、肝心の材料を購入する費用が足りないの……。たとえ買えたとしても、実験用の分を作るのが限界で……。」

 

 「かわいい妹のためです!いくらでも出しますよ!いくら必要なんですか?」

 

 「………………20」

 

 「2、20両ですか!?……貯金を集めればそのくらいは」

 

 「……………20万両」

 

 その言葉を聞いたハオシェンさんは顔を青ざめた。うーん、20万両か……大金だけど、持ってきた俺のお小遣いの範囲で余裕でなんとかなるな。

 

 そう思っているとヴァイスおじいちゃんが口を開いた。

 

 「なるほどなるほど、20万両がいかほどかはわからんがネルソンよ、お主の持ってきたお金で払うというのはどうじゃ?」

 

 「うん、全然問題ないね。リンファさん、みんなの治療のためなら俺がお金を出すよ。」

 

 そう言って俺は、拡張魔法をかけた腰の袋から金貨を取り出してみせた。

 

 「…………………え?」

 

 「ちょ、ネルソンさん!?」

 

 するとハオシェンさんとリンファさんは激しく動揺した。

 

 「どうしたのハオシェンさん?」

 

 「どうしたもこうも、20万両ですよ!?そんな軽々しく出せるお金じゃないでしょう!?」

 

 「でもこのまま黙って見てるわけにもいかないじゃん?

 ここでリンファさんが治療薬を作らなかったら疫病が流行ったままでしょ?それは可哀想じゃん。

 それに雰囲気的にハオシェンさんもお金は出せないけど、ここに残ってリンファさんを手伝うみたいな感じになりそうだし……。そしたら俺たちの優れた教師を勧誘するっていう目的が果たせないから……。」

 

 俺がそう言うけどリンファさんは納得できないようで、怯えた顔で聞いてきた。

 

 「で……でも20万両ですよ!?家がいくつ買えると思ってるんですか!?

 そんな軽々しく出せるようなものじゃ……」

 

 「お嬢ちゃんは知らなかったかの?このこはかの有名な大商人、ネルソン・Xなのじゃ!」

 

 ヴァイスおじいちゃんは胸を張って言う。

 

 「いや誰ですか!?」

 

 だがリンファさんは俺のことを知らなかったようだ……。まぁ、俺の活動の中心は大陸中央だし、流石にこの東洋の地にまでは名前が届いてないようだ。ハオシェンさんも俺のこと知らなかったしね。

 

 「まぁ……俺はすごいお金持ちで、お金に余裕があるってことだよ。

 それに俺も東洋の医術に興味があるしね。リンファさんどう?もしよかったらリンファさんも、ハオシェンさんみたいにうちの学園に来ない?

 あ、これは別にただ誘ってるだけだから、別にうちに来なくてもお金は出すよ!」

 

 俺はウィンクしながらリンファさんに言った。

 

 「……何というかあまりにも急な話で、心の整理が落ち着きません。

 とりあえず話をまとめると、お兄ちゃんがすごいお金持ちを連れてきてくれて、そのお金持ちが私の薬作成のお金を出してくれて、ついでに学園に勧誘してる……。

 こんな感じですか?」

 

 「そうだね!」

 

 「……とりあえず実験のためのお金だけもらってもいい?」

 

 「いいよ!いくら!?」

 

 「とりあえず7匁(もんめ)ほど……。」

 

 「念の為に一両渡しとくね!はい!」

 

 「……あ、ありがとうございます。」

 

 手と声を震わせながらリンファさんは俺の金を受け取った。

 

 そしてその光景をドン引きしながらハオシェンさんは眺め、逆にヴァイスおじいちゃんは微笑ましそうにその光景を眺めていた。

 

 「ネルソンさん、ヴァイスさん……その、お二人の金銭感覚はズレているのでは?」

 

 「ワシ?あー、金勘定とかは息子や孫に任せっきりだからのう。よく家族に怒られてたわい。」

 

 「俺の方は商売とかやってて、もっと大きい単位のお金を扱うからね。確かにちょっと感覚麻痺してたかも。都市とか買ってたし。」

 

 「都市!?」

 

 そんなふうなやり取りの後、リンファさんは薬の材料を買い、見事に治療を成功させた。

 

 

 その後、俺は残りのお金を出して街全員分の材料を確保して街全員の治療を行なった。

 そのおかげでこの街の人々とコネクションができ、ハオシェンさん以外にも目ぼしい教師候補が見つかったり、素晴らしい魔法道具を治療の貢献に対する報酬として貰うことができた……。

 

 

 

 

 

 

 「本当に、本当にありがとうございました!」

 

 「あなたのおかげで妹は街を救うことができました、何とお礼を言えばいいか……」

 

 病気が終息した泉陽の街にて、俺はリンファさんとハオシェンさんの二人に感謝されていた。

 

 「いえいえ、本当に立派なのはリンファさんですよ。この街の住人を救ったんですから。

 そういえばリンファさん、俺の勧誘の話、答えは出ましたか?」

 

 「そうね……。一つ聞きたいのだけれどネルソンさん、ヴァイスさん、あなた達の作ろうとしてる学園は教育だけでなく研究も行なったりする?」

 

 「するぞするぞ、ワシらの作るグローリア魔法学園では、ネルソンの出資を主な資金源として各種様々な研究も行うことが会議で決まったんじゃ。」

 

 それを聞いたリンファさんは目を輝かせて言った。

 

 「それ本当!?その研究って、もちろん医学に関する研究もあるわよね!?」

 

 「当然です!リンファさんほどの医者が研究をしてくれるなら大歓迎ですよ!」

 

 「それじゃあわたしもグローリア魔法学園に入るわ!」

 

 「ということは……私はまたリンファと二人で過ごせるということですね!」

 

 ハオシェンさんはとびきりの笑顔で言った。

 

 

 

 こうして俺は東洋の地で、様々な魔法アイテム手に入れて、気功魔術の使い手であるハオシェンさん、そして東洋医術魔法使いのリンファさん(+泉陽の街の魔術師達)を教師として迎え入れることに成功したのだった。

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