転生したけど原作の千年前   作:フィークス2号

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10話 シャヒーラ様と暗黒大陸での旅

 

 東西南北洋中央に分かれる超大陸マグナス。その西南にはこの世界の人類の発祥の地である、暗黒大陸と呼ばれる大陸があった。

 この大陸は俺たちが住む大陸マグナスよりも魔法技術が盛んで、先進的な魔法を持つ部族が何百と存在していた。

 

 

 そんな魔法に優れた暗黒大陸に、ネルソンはシャヒーラ、ウマルと共に訪れていた。

 目的はこの地にある優れた魔法を学ぶこと、そして優れた魔法使いを勧誘することだった。しかし……。

 

 

 

 「非魔法族(コモンズ)出身の魔法族どころか、ミスペル、果てはコモンズすらも受け入れる学校!?悪いがそんなところに私は行きたくないね。よそをあたってくれ。」

 

 「わざわざマグナスなんかの田舎に?すまないがうちの魔法は門外不出でね……。他所の魔法を知る気もないし教え合うというのにも反対だ。」

 

 「ミスペルは帰れ!」

 

 その作業は難航していた。

 暗黒大陸は魔道に関して先進的であり、わざわざ魔法に関して発展途上であり、東西南北からなる四洋大陸にまできて教師をやろうとするものは少ない。

 ましてや差別意識が残るご時世、ミスペルであるネルソンに対して冷たく当たるものも少なくなかった。

 ミスペルは詠唱魔法が使えないこと以外は、他の魔法使いと違いがない。

 そのため、魔法族以外のコミュニティならばミスペルも普通に重宝されて丁寧に扱われる。しかし3人が交渉を行おうとしている相手は魔法族、そのことは今は何の慰めにもならなかった。

 

 「またミスペルやコモンズが入学できることを理由に断られてしまった……。

 ネルソン君のメンタルの方は大丈夫だろうか。」

 

 買い出しが終わり宿に戻る途中、シャヒーラの夫であるウマルはネルソンのことを案じていた。

 ネルソンはまだ歳若く成人と看做される16歳にもなっていない。そんな彼が遠く離れた地で差別される。心理的な負担は相当なものだろう。

 ウマルはネルソンを励ます方法をいくつも考えてから、シャヒーラとネルソンが待つ宿屋へと戻った……。

 

 「あったよシャヒーラ様!暗黒大陸のエロ本が!」

 

 「でかしたネルソン!」

 

 そんなウマルの目に映ったのは、エロ本でキャッキャと騒ぐ二人の少年少女であった……。いや片方の褐色肌の少女の方は、若作りしてるだけで立派な成人女性なのだが。

 

 「意外と元気そう!?……ていうかシャヒーラ!僕がいない間にネルソンとエロ本で盛り上がってたの!?」

 

 「あ!ウマルだ、ウマル〜!ネルソンが買ってきたエロ本3人で読もう!」

 

 「ちょっとシャヒーラ!未成年相手にエロ本読まそうとするのやばいから!ネルソン君もこういうのは大人になってからにしなさい!」

 

 ウマルは困惑しつつも、シャヒーラとネルソンを止めた。

 

 「異議あり!ウマル、あなたが最初にエッチな本とか読んだの何歳だった?」

 

 「………………」

 

 ウマルは沈黙で返した。

 

 「それにウマル、性知識は若い時から触れてた方がいい。性的に無知だと悪い大人に騙されてしまうかもしれない。ほら、ネルソンって可愛い顔してるし」

 

 「えへへ」

 

 シャヒーラに容姿を褒められたネルソンは照れて顔を掻いた。

 

 「いやでも、エロ本を3人で読み始めるのはおかしいって!」

 

 それでもウマルは食い下がった。

 

 「ご、ごめんなさいウマルさん。辛いことばっかだったからたまにはバカやろうと思って、ウマルさんそういうの好きだって聞いたから……。

 シャヒーラ様!ウマルさんエッチなのめっちゃ苦手そうなんですけど!?」

 

 「大丈夫大丈夫、私はオープンスケベ、ウマルはムッツリスケベ、ネルソンはフツーのスケベ。

 ここにいるのはみんなスケベ!ウマルは口ではこう言ってるけど、本当はエッチなことが大好き!特にロリ!私はウマルのハートを射止める為だけにこのロリ体型を維持してる!」

 

 「シャヒーラ!?人の性癖暴露するのやめよう!それともうこのさいだから僕がエッチなの好きなの認めるけど、妻以外の人とエロ本読むのはハードル高いから!」

 

 ネルソンとシャヒーラの間で立案されたエロ本読書会計画、それはウマルの必死の抵抗により阻止されたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

エロ本読書会が頓挫した後、空いた時間は今後の暗黒大陸での活動についての議論に移った。

 

 「で、これからの方針だけど……流石に暗黒大陸から教師引っ張ってくるの諦めた方がいいんじゃないかな?」

 

 最初に口を開いたのはウマルであった。

 

 「でもウマル、せっかく暗黒大陸まで来たのに手ぶらで戻るの?」

 

 「そうだよウマルさん。勿体無いよ」

 

 「いや、何もしないで帰るわけじゃない。暗黒大陸での活動の目的を教師を探すことから、魔法に関する技術や知識の習得に変えるんだ。

 人を暗黒大陸から呼ぶのは難しいかもしれないけど、知識だったら比較的に容易なはずだと僕は思う。

 この暗黒大陸にある書籍やマジックアイテム、それらの蒐集に専念するべきじゃないかな?」

 

 ウマルの発言を聞いたシャヒーラは目を輝かせた。

 

 「本!私本大好き!そうしようウマル!

 もう私わざわざ名門貴族の家に行って、拒否られるの疲れたし!」

 

 「そうだね……俺も交渉とか何度もやってるけど、ここまで断られると精神的にくるから、暗黒大陸での教師の勧誘をやめるのには賛成かな。」

 

 「よし、それじゃあ今後の活動は教師の勧誘から、本やマジックアイテムの確保に変更ということで……」

 

 ウマルがそう言った後、ネルソンが発言した。

 

 「待ってウマルさん、教師役の人を探すのをやめるのはいいけど、俺は生徒の勧誘は続けたいと思うんだ。」

 

 「それは構わないけど……暗黒大陸の人達はわざわざマグナス大陸の中央にある学園にやって来ないと思うよ?」

 

 「いや……暗黒大陸出身でも来てくれる人はいる。ミスペルだ。」

 

 ネルソンは重々しくつぶやいた。

 

 「この暗黒大陸に来てわかったことがある。それはこの先進的な暗黒大陸でも、魔法族のコミュニティではミスペルが厄介者扱いされてるってことだ。

 俺たちが作ろうとしてる魔法学園はさまざまな目的が会議で決まったけど、その一つにミスペルの居場所を提供するってのもあるよね?俺の提案した目的だけど。

 俺はマグナス大陸にいるミスペルだけじゃなく、この暗黒大陸のミスペルにも居場所を作りたいんだ。

 だから書籍類の蒐集のついででいいから、俺みたいなミスペルに声をかけて貰えないかな?」

 

 ネルソンの言葉に対して、シャヒーラとウマルは真摯に受け止めて、はっきりと答えた。

 

 「わかった。ネルソンの言う通りに名門の魔法族の家を訪れる際は、ミスペルの子供を生徒に誘ってみる。それでいいよね、ウマル?」

 

 「ああ、勿論さ!しかしネルソン君は立派だね。自分のことだけじゃなくて他の子の事も考えれるなんて。」

 

 「そ、そんな事ないよウマルさん。」

 

 「そんなことある!ネルソンは立派!私も保証する。」

 

 「シャヒーラ様まで……二人とも、ありがとうございます。」

 

 ネルソンは照れながら礼をした。

 

 

 

 そしてその後3人は話し合いの通りに暗黒大陸での活動を教師の勧誘から、魔道書の蒐集、およびミスペルの生徒の勧誘に切り替えた。

 また、『ミスペルの子供だけでなく、ミスペルの大人もネルソンの商会に勧誘してみないか?』

 というウマルの提案がなされ、それに対してネルソンが賛同したことで、成人の魔法族のミスペルをネルソン商会の従業員として勧誘することも行われた。

 これらの活動は無事に成功し、ネルソン、シャヒーラ、ウマルの3人は多くの魔法について書かれた書籍類、グローリア魔法学園の生徒、そして新しいネルソン商会の従業員を確保することに成功したのであった。

 

 

 

 

 

 暗黒大陸を旅して、大陸の中央側まで到達した3人。彼らは別の宿で休憩をしていた。しかし彼らはこの大陸に来た頃と比べて何倍も明るい表情をしていた。

 

 「いやー、一時期はどうなることかと思ったけど魔法に関する知識やマジックアイテムがたくさん集まったね!」

 

 「そうだね、しかしネルソン君の財力はすごいねぇ。

 交渉のたびに渋られるけど、ネルソン君の提示する代金のおかげで毎回スムーズにことが運ぶ……。お金の力ってすごいね。」

 

 ネルソンは嬉しそうに語り、お金の魔力を実感したウマルは染み染みと呟いた。

 

 「『ザールー戦記』『アニャンゴ想定録』『ニージェ魔法集』『クワシ全図鑑』……こんなに名著が手に入るなんて……ここに来た価値があった!」

 

 そしてシャヒーラは頬を緩ませて、満面の笑みで今回の旅で手に入れた本を読んでいた。

 

 「それはそうとウマルさん、シャヒーラさん。ちょっと噂話を聞いたんだけどさ。

 ここの近くにあるレイゴルス遺跡について知ってる?」

 

 ネルソンは二人に対して自分が聞いた街の噂を話した。

 

 「レイゴルス?確か暗黒大陸にかつて栄えたという文明の名前だったような……。その遺跡がここにあるのかい?」

 

 「そうなんだよ!何でも古代の魔法工学に優れてたレイゴルスの遺跡がここらへんにあるらしくて、聞いた話じゃロボットとかが現役で稼働してるみたいなんだ!」

 

 ネルソンは興奮しながら言った。

 

 「ロボット?」

 

 「ロボットってゴーレムのこと?北洋の訛り?」

 

 「ああ、そうそうゴーレム。ごめん間違えた。そのゴーレムがレイゴルス遺跡にあるって話すごい興味深くない?」

 

 「うーん、確かに古代の技術は見てみたいかも。ウマル、私は見に行きたい。貴方はどう?」

 

 尋ねられたウマルはにこやかに返した。

 

 「二人が行くなら僕も行くことにするよ。でも許可とか貰えるかなぁ。」

 

 「許可……か。」

 

 ネルソンは腕を組んで考えたあと、ニヤリと笑みを浮かべたのだった。

 




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