「本来ならじっくりと修行をしたいのだがな……。
大会まで時間がないし、ネルソンお前も大会に備えての仕事があるだろう。だから短期間の超スパルタ修行となる。覚悟はいいな?」
グローリア城にある屋外の訓練場、そこで俺は輝人様に大会に向けての稽古をつけてもらっていた。
「はい!もちろんです輝人様!それで俺は一体何をすればいいのですか?」
「そうだな……まず確認だがネルソン、お前は戦闘に必要なマジックアイテム類を持ってきてるよな?」
「ええ!修行をすると聞いて最高級のものを持ってきました!」
俺がそう答えると輝人様は刀を抜き、勢いよく地面に突き刺した。
「展開!魔法結界!そして爆炎魔法『緋林(ひばやし)』!」
「!?」
そういうと輝人様は訓練場を覆うバリアを張り、輝人様を中心に炎の魔法を放ち、バリアの中を炎で燃やし尽くした。
俺は急いで指輪を回してシールド魔法の杖を取り出して、俺の体を覆うシールドを張り身を守った。
「ネルソン!俺はこれから適度に手を抜いてお前を攻撃する!
それに対してお前は30分間耐えて見みせろ!もちろん反撃してもかまわんぞ!」
「ちょ、輝人様!?警告なしに攻撃を始めるのは狡くないですか!?」
「はっはっはっ!瞬時の判断力を身につけるためだ!」
「てかこの炎いつになったら消えるんですか!?ずっと結界の中燃えてるんですけど!?酸素が……酸素が!」
「この『緋林』は燃やして倒すだけでなく、酸素を奪って倒すことも目的にした魔法だからな!さぁ酸素を生み出さないと窒息して死ぬぞ!
ちなみにこの燃焼魔法『緋林』はその気になれば、俺は半年以上ずっと展開させ続けられるぞ!」
輝人様は太陽のように笑いながら言った。マジで!?結界張り続けないといけないし、熱いし、酸素も自分で作らなきゃいけないから死ぬほど辛いんですけど!?
「くっ!ならば結界を破壊して逃げさせてもらいます!」
俺は衝撃魔法の杖を取り出して、全力で俺を閉じ込めている輝人様が展開したバリアを破壊しようと試みる。しかし輝人様のバリアはびくともしない……。
「無駄だ無駄だ!バリアに関しては手を抜かずに展開してるからな!ヴァイスやシャヒーラでも手こずるレベル、今のお前ではまだ壊せまい!
さぁ、更なる攻撃を喰らうがいい!『飛光斬』!」
そういうと輝人様は地面に刺さった刀を抜き去り、剣を振い漫画やアニメでよく見る飛ぶ斬撃を放った。
しかも『緋林』の炎を展開したまま……。
そして輝人様の『飛光斬』なる攻撃が俺のシールドに直撃して、シールドにヒビが入った。
「え!?最高級のシールドなのに一発で壊れそう!?」
「ふははは!『飛光斬』『飛光斬』『飛光斬』『飛光斬』『飛光斬』『飛光斬』『飛光斬』『飛光斬』『飛光斬』『飛光斬』『飛光斬』『飛光斬』!」
「う、うわぁぁぁぁぁ!」
俺はその後、ずっと輝人様に焼かれ続けながら、輝人様の猛攻を喰らい続けた……。
これで手を抜いてるって本当ですか?
「という感じで地獄の特訓を受けてきたんだよ……。」
「なるほど……回避能力の向上を図りつつ魔法の同時展開を強制することでマルチタスクスキルを身につけさせる。
生存能力を向上させるにはなかなか良い手じゃな。」
グローリア城にある、ネルソンの手で最近建てられた大図書館、プログレス大図書館にてネルソンは輝人、ヴァイス、シャヒーラの3人と話していた。
「はっはっは!お前もそう思うだろうヴァイス、おかげでネルソンの生存能力は飛躍的に増大した!これで大会でどんな格上が相手でも粘ることはできるはずだ!
「むー……。でも輝人はやりすぎだと思う。ネルソンに『緋林』を30分も使うのは酷いよ。」
「あ、『緋林』はその後2時間喰らったよ……。」
ネルソンはその時のことを思い出し、げっそりとした表情で言った。
「え?30分の攻撃を耐えるのが修行じゃなかったの?」
「それが輝人様、30分って言ったのに全然止めてくれないんだよ!」
「何それ酷い……輝人の意地悪」
そういうとシャヒーラはジト目で輝人を見た。
「シャ、シャヒーラ。違うぞ!これは修行の一環なのだ!
想定外の事態に対処する能力を培うために、あえて宣言以上の時間攻撃したのだ。」
「本当かのう輝人?ワシが思うに戦ってる時にネルソンが強いから、興が乗ってそのまま戦い続けたんじゃないのか?」
「そ、それはある。それはあるが本当に最初から1時間攻撃し続ける予定だった。」
「結局伸びてる……。」
「輝人様?」
「…………すまなかった。少しやりすぎた」
輝人は静かに頭を下げた。
「まぁ輝人のやりすぎについては置いておいて、ネルソン強化計画を始めるとするかのう。」
ヴァイスおじいちゃんはそう言うと、一本の王杖を取り出した。
「ヴァイスおじいちゃん、この杖は?なんのエンチャントもされてないようだけど……。」
「そうじゃネルソン。ワシは考えた。
お前の戦い方は基本的に魔法が既に付与された杖を使って戦っておる。そこでじゃ、単純にその杖を強化しまくればお主の戦闘力向上につながるのではないか?とのう。
そこでワシがこの王杖を作ったのじゃ!
搭載可能魔法は220種類!
総保管魔法力はレイゴルス遺跡製技術の超圧縮魔法石の力で、従来の杖の2000倍!
15種類の魔法を同時に展開可能!
そして魔法出力は500倍、輝人のバリアすらヒビの入る代物じゃあぁぁぉ!」
「しゅ、しゅごいいいいいいいい!」
「まぁ、流石に常人なら3種類くらいしか同時展開は不可能じゃが……。
ネルソン、お主ならスペック通りに15種類同時に展開することがでるじゃろう!」
俺はあまりの凄さに感動した。搭載できる魔法の数も、総保管魔法力も、展開可能な魔法の数も、そして出力も、何もかもが従来の杖と桁違いだ。まるで神の作り上げた神器だ。
俺は恐る恐る王杖を手に取る。これは……物凄い発明品だ。値段をつけることもできないだろう。
だがそれでも値段をつけようとするならば、俺だったらこの都市、グローリアを買った時の値段の10倍は出すだろう。……そこでふとある考えがよぎる。
「ヴァイスおじいちゃん、こういうのが作れるのならさ。
俺がいなくてもお金に困らなかったんじゃないの?こういうマジックアイテムを売り捌いてさ、それをお金に都市を買うとか出来たんじゃない?」
「お主に会うまではそうしてたんじゃがのう……。
ワシは凝り性で、ついつい儲けよりも出来栄え重視でマジックアイテムを作ってしまうのじゃ。
そのせいで制作期間や材料費やらがかかって儲けは殆ど得られない。そんな感じでのう、ワシは商売には向いてないんじゃ。」
「なるほどー。確かにこの王杖、めちゃくちゃお金かかってそうだもんね。
いつから作ってたの?」
「そうじゃな、お主に会ったとき早とちりして攻撃してしまったじゃろ?そのお詫びの品として作ろうと思ってて、気がついたら今の今まで渡さず手を加え続けてしまったという訳じゃ。
本当ならもうちょっと手を加えたかったんじゃが、『大会のこともあるし、ここら辺で切り上げてプレゼントしろ』とエデュラスから言われてのう。」
「まだ凝る気だったのかヴァイス!?こんな国宝級の杖を作って、まだ満足しないとは……流石の向上心だな!」
輝人様はヴァイスおじいちゃんの職人魂に驚き、はっはっはと笑った。
「ヴァイスのマジックアイテムはやっぱりすごい。ヴァイス、私にも何かちょうだい。」
「うむうむ、わかったわかった。ネルソンの修行が終わったらのう。」
「それでヴァイスおじいちゃん。この王杖……どうするの?」
「もちろんネルソン、お前が使うんじゃ。ワシからのプレゼントじゃよ。」
ヴァイスおじいちゃんはにっこり笑い言った。
「ヴァイスおじいちゃん……本当にありがとう!この思い、言葉じゃ伝えられないよ!」
「おっとネルソン、これで終わりじゃないぞ。ここからこの杖に魔法を込めるからのう。
ワシの奥義たる『ダークストリーム』『ドレインソウル』『アークライトニング』、あらゆる魔法をエンチャントしてやるからのう!」
「マジで!?あの闇魔法とか全部俺が使えるようになるの!?す、凄すぎるぅぅぅぅぅ!」
俺はあまりの凄さにに興奮した。ヴァイスおじいちゃんは太っ腹すぎる!こんなにすごいプレゼントなんて貰ったことがない!
「ヴァイスが魔法を込めるなら、俺もついでに魔法を込めるとするか。
俺の持つ108剣技魔法のうちいくつを入れるか…‥悩みどころだな。」
「あ、ずるい!だったら私もエンチャントするー!」
輝人様とシャヒーラ様もノリノリでいう。あれ!?これとんでもない国宝が出来上がるのでは!?
てかこの杖が強すぎて、そこら辺のミスペル、いや普通の非魔法族の人が持つだけで中級級魔導士を圧倒できるぞこれ……。
そして輝人様とシャヒーラ様、そしてヴァイスおじいちゃんと俺はこの王杖に魔法を刻み、ついでに魔法力を注ぎ込む作業に移った。
そして5時間後……。
「ふう……ようやく終わったか。」
「はぁ……はぁ……もう無理。疲れた……」
「なんじゃシャヒーラ、だらしないのう。ワシなんてまだ余裕だぞ?」
そう言うとヴァイスおじいちゃんはぴょんぴょんと飛び跳ねて見せた。本当にすごい。
輝人様は汗をかいて、少し疲れているように見える。
シャヒーラ様は椅子に座ってぐったりだ。
俺?俺は疲労のあまり喋ることもできない。床に落ちてる。
「流石ヴァイス、俺たちの中では経験と魔法力が段違いだな。」
「ヴァイス元気すぎ……。本当におじいちゃんなの?」
「老けさせてるのは見た目だけで、肉体の方はまだまだ若さを魔法で保っとるからのう。」
ヴァイスおじいちゃんはまだまだ余裕そうだ。
「さてとネルソン、訓練場に行ってみるか。早速試射してみよう!」
「輝人様……ちょっと待って、休ませて。」
「む?おっとすまん。しっかり休んでからにするか。そうだ、ちょっと飲み物をとって来るがネルソン、お前は何がいい?」
「み、水…‥飲めるならなんでも」
「ワシはワイン」
「私は紅茶ー」
「うむ!それではとってくるぞ!」
グローリア城の訓練場に出たとき、既に夜も更けて夜中であった。
しかも曇り空で星一つ見えない、どんよりとした天候であった。
「せっかくの試射なのに悪天候だな。やはり明日にした方が良かったか?」
「いや、今がいい!早速この超すごい杖を使いたいんだよ!」
俺はワクワクしながら言った。ヴァイスおじいちゃんが作り、俺たち4人の魔法が込められた王杖一刻も早く使ってみたい。
「ネルソンやる気満々。それで……何を標的にする?」
「そうだね……ここは最大出力で空に向けて撃ってみようかな?
うまくいけばあの曇り空を晴らせるかも……。なんちゃって。」
「それはいい考えだな!俺もネルソンの年頃にはそうやって曇り空を割って修行してたなぁ……。天候を変えるのは楽しいよな!」
「輝人もやってたの?私も風魔法で雨降らしてみんなに褒められた。」
「ほっほっほ。考えることは皆同じのようじゃな。ワシは雲に雷魔法を撃って、敵対してる国に雷を降らしおったわい。」
他の創設者3人が笑いながら言う。え?俺冗談で曇り空晴らすとか言ったんだけど、みんな天候を変えた経験あるの!?やばいここで俺だけできなかったらめっちゃ恥ずかしいやつじゃん!
俺は深呼吸をした。そして杖を起動させて、魔法を込める。
展開するのはみんながエンチャントしてくれた最大級の魔法を合成した新しい魔法だ。
杖に力が集まるのを感じる……。俺はカッと目を見開き、杖を曇り空に向ける。
15種類の魔法を全て合成し、今まで見たことのないような魔法を創り上げる。そして標準を合わせて……魔法を放った。
「『ドゥームスレイ』!」
カッコつけて必殺技の如く、今作り上げた魔法の名前を叫ぶ。別にこんなことしても意味はないけど、詠唱魔法への憧れから俺は魔法の名前を叫んだ。
そして杖から黄色い極太の光線が放たれる。
光線は空を穿ち、曇り空を晴らし、空に大きな穴を開けた。
「すごい……で、出来た。」
俺は感動のあまり、涙を流した。
「やったなネルソン!空に穴を開けたぞ!」
「ネルソンすごい!これで一流の魔術師!みんなも認める!私も嬉しい!」
「ほっほっほ、見るが良いネルソン。この曇り空に開けられた穴を!そしてその穴から照らす満天の星空を!これは全てお主のやったことじゃ。誇るが良い……。」
「みんな……ありがとう。俺がここまでのことをできたのはみんなのおかげだよ。本当にありがとう……。」
みんなが曇り空に穴を開けて、星空を穿った俺を褒め称える。
「ネルソン、お前にはこれだけの実力があるのだ……。大会でもその調子で頑張るが良い!」
輝人様は俺に激励を飛ばした。俺は改めて仲間達に感謝した。
そしてその後、俺はヴァイスおじいちゃんが作り、みんなが魔法力を注いでくれた大切な大切な杖に名前をつけることにした。
その名前は『スタークリアー』。星空を晴らす杖だ。
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