転生したけど原作の千年前   作:フィークス2号

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3話 交易と盗賊騒ぎ

 

 エルメスさんを商会に雇って、魔法道具の訓練をさせてから一ヶ月が経った。

 エルメスさんはある程度魔法道具を使いこなして、無事に商品の運送などの交易を任せることができるようになった。

 そして今日は初めての交易からエルメスが帰ってくる日……。

 

 「ネルソン会長!ただいま戻りました!」

 

 「エルメスさんおかえり!怪我はない?嫌なことはなかった?大丈夫?」

 

 「あははは!大丈夫ですよネルソン会長!心配しすぎですって。」

 

 エルメスさんは元気そうに笑顔で言う。最近エルメスは出会った時と比べて明るくなった。

 フローリアン家ではろくな扱いを受けていなかったのかだろう、俺はエルメスさんに明るく接したり、うまいものを食べさせたりしてできるだけいい環境で過ごせるようにした。

 そのおかげかエルメスさんはストレスフリーな環境で働けているようで、生き生きとしている。

 

 「ネルソン会長!今回の交易の収支報告書です、ご確認ください!」

 

 「ありがとう!……うん!問題ないね、すごいよエルメスさん!この調子でお願いするね。」

 

 「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エルメスさんの初交易から数ヶ月後、俺たちのネルソン商会は順調に売り上げを伸ばしたので、他のミスペルの人たちを雇うことにした。

 エルメスさんもある程度成長したので、エルメスさんの手も借りて他のミスペルの従業員を教えつつ、育てて店を切り盛りする。

 

 そしてそのミスペルの従業員たちが育ったら、彼らに交易をして貰ったり、魔法道具を作って貰ったり、さらに新しい新人を教育してもらう……。そんなことをして過ごしていくうちのネルソン商会は瞬く間に大きくなっていった。

 

 魔法道具は魔法族の名家が暇つぶしに作るものというのが一般的であり、流通する絶対量が少ない。市場としては競争相手がいないブルーオーシャンと呼ばれる部類だ。しかもその魔法道具を利用して交易すると言う手法は、他のどこもやっていない。

 その為うちの商会は魔法道具の売買と一般商品の交易で利益を上げまくり、たった一年と少しでグローリアで1番の商会へと成長した。

 

 「いや早いな!?夢叶えるの早いな!?老人になる頃にグローリア一番の商会になると思ってたよ!」

 

 「いやいやご謙遜をネルソン会長!ここまで来れたのも全部ネルソン会長の実力の賜物ですよ!」

 

 グローリアにあるネルソン商会の保有する商館、その商館の執務室にて困惑する俺に対して、エルメスが俺を褒め称える。

 

 「いやー、俺の実力だけじゃここまで来れないよ。運が良かったんだよ運が、特に人材面での運がやばかった。

 エルメスさんや他のみんなに会えた、そのおかげでここまで来れたんだよ。」

 

 「〜〜〜〜!ありがとうございます!ネルソン会長!」

 

 唐突にエルメスさんが感謝の声を俺に向ける。急にどうした!?

 

 

 

 

 そんなふうに困惑していると、執務室の扉を開けて従業員の一人が駆け込んできた。

 

 「会長大変です!うちの航空隊商(キャラバン)が……襲撃されました!」

 

 「なんだと!?どのキャラバンが襲撃されたんだ!?」

 

 「第八交易航空キャラバンです!ディモス-メルトラ間での交易路にて、地上に降りて野宿をしている最中にアルバ山賊団に襲撃されたようです!

 彼らは積荷を奪った後、従業員3名を人質にして身代金を要求しています!」

 

 報告してきた従業員は顔を青くして言う。報告を聞いたエルメスも顔を青くなっている。俺は元々髪もマントも水色だから、部屋にいるみんなが青っぽくなっていることになるな……。現実逃避にこんなジョークを思いついたが、こんなこと考えてる暇はない。早急に対策しなければ。

 

 「エルメスさん、俺はこれから人質になった第八キャラバンを救出する為に出撃して、山賊たちと戦うつもりだ。」

 

 「ネルソン会長!私も討伐にお供します!」

 

 「エルメスさん……ありがとう!君がいてくれるなら心強い!でもその前にまずは俺が不在の間に店を任せる従業員の選定を行う、それから傭兵を雇わなくちゃな。

 傭兵の雇用の方は君に任せて大丈夫か?」

 

 エルメスさんは胸を叩いて言う。

 

 「もちろんです!今すぐ取り掛かります!」

 

 そう言うとエルメスさんは傭兵を雇う為に商館を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数時間後、エルメスさんは30人ほどの傭兵たちを連れてきた。

 

 「最近話題のネルソン商会からお声がかかるとはなぁ。」

 

 「それで、どいつが俺たちの雇い主様なんだ?そこのデブのあんたか?まぁよろしくな!」

 

 「ネルソンさんよ、俺たちの腕は確かだから安心してくれよ、ギャハハ!」

 

 傭兵たちはちょっと柄が悪い感じで、馴れ馴れしく接してくる。そして太めの従業員を雇い主である俺だと勘違いしているようだ。

 

 「ぼ、僕はネルソン会長じゃないんだな。」

 

 「なんだぁ?じゃあさっきの嬢ちゃんか?」

 

 傭兵たちが誰が雇い主か分からなくて困惑している。俺は名乗り出ることにした。

 

 「俺だ、俺が君たちを雇ったんだ。よろしく」

 

 「この水色のガキが?おいおい、ネルソンはどこだよ坊ちゃん。」

 

 「いやだから俺がネルソンだよ。ネルソン・X本人さ。」

 

 それを聞くと傭兵はヒュー、と口笛を吹いた。

 

 「こいつは驚いた、魔法使いは若作りが得意と聞いていたが、ここまで得意とは思わなかったぜ。」

 

 どうやら傭兵たちは誤解しているようだ、一応俺は訂正しておくことにした。

 

 「いや、魔法使いが若作りが得意なのは事実だけど、俺は若作りはしてないよ。俺は見ての通りまだ子供なんだ。」

 

 「は?マジかよやべえなおい。まだ13くらいだろ?」

 

 「魔法族ってのは、やっぱ普通の人とは違うもんなのか」

 

 ガヤガヤと俺を観て話す傭兵たちに向けて咳払いを行いは俺は話し出す。

 

 「そろそろ本題に入ろうか。

 傭兵の諸君!本日我々のネルソン商会に属するキャラバンの一つが、アルバ山賊団なるやからに襲撃された!

 卑劣にも彼らは不意打ちを行い、我が隊商を襲ったのだ!

 諸君らには我が3名のキャラバンの従業員を救ってもらいたい。前金として、俺がエンチャントした魔法武器を渡そう!それも一人につき剣、盾、防具一式だ!成功したらありったけの金貨をくれてやる!」

 

 そう言うと傭兵たちは大盛り上がりになった。

 

 「魔法武器!?マジかよ!」

 

 「前払いの報酬にしては豪華すぎるぜ!?」

 

 「うおー!太っ腹すぎるぜ!

 

 俺の提示した条件に傭兵たちは大喜びだ。士気も十分上がったようだ。

 

 「よーし、俺について来い!」

 

 「「「「うおおおおおお!」」」」

 

 傭兵たちに俺は付与魔法をエンチャントした装備を渡した後、俺は傭兵を引き連れて、商館の裏にある馬車に向かった。

 

 

 

 

 「おいおい、この馬車一台しかねえぜ?全員乗れねぇぞ」

 

 「しかも馬がいねぇ。」

 

 「新品で見た目は良いけどよぉ、これじゃ移動できねぇぜ。」

 

 傭兵たちは当然の指摘をする。ふっふっふ、しかしこれで問題ないのだよ!

 

 「大丈夫安心して、この馬車に乗ってみてくれよ。」

 

 そう言って俺は傭兵たちに馬車に乗るよう促す。そして中に入った傭兵たちは驚きの声をあげた。

 

 「うおおおおぉぉぉぉ!お前らも乗ってみろよ!すげぇ広いぞ!どうなってんだ!」

 

 「外見通り中もすごい快適じゃねぇか」

 

 「さすが魔術師様様だぜ!」

 

 俺の用意した輸送用の馬車は傭兵たちも気に入ったようだ。

 

 この馬車には内部空間拡張魔法、安定性魔法、軽量化魔法、飛行魔法などの術式を付与している。馬なんかなくても魔力だけでこの馬車は空を飛べるのだ。最近の交易はこの付与魔法をマシマシ馬車で行っており、箒で運んでいたのはもはや過去のものとなったのだ!

 

 見よ!このふかふかな絨毯を!魔法をエンチャントされて強化された馬車の外側を!馬車の中には食べ物もドリンクも完備済みだ!乗り心地だってテストして問題なしだぜ!

 

 俺は傭兵たちが馬車に全員乗ったのを確認して、馬車を目的地に飛ばした。

 

 「乗り心地はどうだい?傭兵の諸君!」

 

 「バッチリだぜネルソンの旦那!」

 

 「よーし、スピード上げるから問題あったら言ってくれよ!」

 

 そう言って俺は馬車のスピードを上げる。そうこうしているうちに馬車はついに目的地についたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗い夜更けの森の中、一台の馬車が降り立った。その馬車は空から音もなく、ゆっくりと降下してきた。そしてその中から、その馬車の大きさに見合わない量の大量の傭兵たちが降りてきた。その数、およそ30である。

 

 「まさかたった1日で到着してしまうとはね。思っても見なかったですよ旦那。」

 

 「それで?このまま夜襲をかける算段で問題ねぇですか?」

 

 傭兵たちが雇い主のネルソン・Xに尋ねる。

 

 「ああ、そのつもりだ。一刻も早く人質になった従業員を救出しなくてはいけないからな。

 俺とエルメスが先頭に立つ、撃ち漏らした敵などが俺に迫ったらその時は傭兵のみんなに頼むよ。」

 

 「ガッテンだ!後ろの方で俺たちは準備させてもらいますぜ!」

 

 その言葉を聞いたネルソンは傭兵たちを率いて、盗賊のねぐらに向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 進む、進む、進む。俺たちは傭兵たちを率いて夜の山を進んでいた。そしてついに盗賊どもの根城の洞窟を見つけた。入り口で盗賊二人が焚き火を囲んで見張をしている。

 こちらは隠密用のマジックアイテムを作動させているので、30人を超える大所帯でもバレてはいないようだ。

 

 「エルメスさん、準備はいいか?凍結弾の杖だ。」

 

 「はい、凍結弾杖準備しました」

 

 俺たちは凍結弾の付与魔法をエンチャントされた杖を構えて、盗賊に向けた。

 

 エルメスさん曰く、『ミスペルは戦場では役に立たない』と言う理由で差別されてるところが大きいらしい。

 だがミスペルが戦場で役に立たないなんて、俺に言わせれば間違いだ。ミスペルは原作の時代、1000年後の時代では普通に魔法道具を使用して戦っていた。

 この時代でも俺が作った魔法道具があれば戦えるはずである。

 俺とエルメスさんはゆっくりと盗賊に近づいて、杖の標準を合わせた。

 

 「今だ!撃て!」「撃て!」

 

 俺が凍結弾を撃ったのに続いて、エルメスさんが麻痺弾を放つ。

 そして凍結弾は二つとも見事盗賊に命中して、撃破することに成功した。

 

 「お見事、さっすが魔法使い!」

 

 傭兵が声を潜めながら言う。

 

 「ありがとう。ここからが本番だ。

 さあ、魔法の地図よ!アルバ盗賊団のアジトの地図となれ!」

 

 そう言って俺がバックから魔法の地図を取り出して開くと、地図はアルバ盗賊団の洞窟の地図となった。

 地図には中にいる人間の名前も書かれていて、おおよそ60人の盗賊がいることが確認できた。

 

 「お!エルメスさん見てくれ!この洞窟出口が一つしかないぞ!」

 

 「本当ですね、では例の作戦が使えますね!」

 

 「ああ!早速やってみよう。」

 

 俺はそう言うと洞窟の入り口に近づき、魔法陣を描いた。これから行うのは召喚魔法、眠り毒ガスを使う精霊を召喚する魔法だ。

 精霊を魔法陣から召喚して、洞窟に睡眠ガスを 充満させて盗賊たちを一網打尽にする、うまくいけば一戦も交えずに目的を果たせる。

 俺は魔法陣を書き上げた後、魔力を込めて睡眠ガスを洞窟に送り込んだのだった。

 

 

 

 

 

 ガスを送り込んでから数分後、洞窟内から慌ただしい音が聞こえた。どうやら睡眠ガスに気づいたらしい。

 ドタバタと洞窟内部から走る音が聴こえて俺達は杖を構える。傭兵も剣や槍を構えて、臨戦体制を取る。

 

 盗賊達の姿が見える、俺とエルメスはさっきの杖よりも高威力の杖、ブリザードの杖を使って、盗賊たちを吹き飛ばした!

 

 ブオオォォォォォ!

 

 震えるような凍える嵐が起こり、盗賊達にダメージを与える。盗賊は皆ブリザードに巻き込まれ、吹き飛ばされた後倒れた。

 地図に載った名前を確認する限り、ここにいる盗賊は気絶したか睡眠ガスで眠ったか、元々寝てたようだ。要は全員倒した。

 

 「ありがとう、傭兵諸君!君たちの協力で盗賊団をあらかた一掃出来たようだ!」

 

 「お、おう。俺たち何もやってねぇけどな。」

 

 「いや、まだ仕事が残ってる。盗賊団の残りがいるかもしれないから、半分は入り口で待機しててくれ。

 残りのもう半分は眠った盗賊を縛り上げるのと、盗賊の略奪品を回収するの、そして何よりもうちの従業員を助け出してもらう仕事があるからね。最後まで気を抜かないでね。」

 

 そう言うと俺は傭兵のみんなにウィンクをした。

 

 この後俺たちは無事に従業員を救出、盗賊達も全員確保して、その地域の領主に突き出した。

 無論、盗賊から取り返した略奪品は可能な限り元の持ち主に返して、どうしても持ち主のわからない物だけは今回の報酬として俺たちネルソン商会が管理することになった。

 持ち主がやってきて返してくれと言う可能性があるから、売ったり使ったりすることはできなくて正直お荷物だ。

 

 こんな感じで盗賊騒ぎはひと段落したのであった。

 

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