盗賊騒ぎからの一件から、ある程度時間が経った。
俺はそろそろ原作での創設者がこのグローリアにて魔法学園を創設するんじゃないかと思い、伝説の創設者達とコネクションを作る為にある行動を開始した。
それはズバリ高名なマジックアイテムや貴重な蔵書の
名門魔法学園を建てようとするのであれば、貴重な書物などは喉から手が出るほど欲しいはずだ。特に原作に名前が出てきた南洋出身の創設者であるシャヒーラ・カーミル様は、三度の飯よりも夫と読書が好きと言う話である。
本を集めまくっていればあのシャヒーラ様とコネクションができ、『彼女経由で魔法学園創設に関われるのでは?』という打算があったのだ。
そして俺は交易をやる合間に、中央東洋西洋北洋南洋、世界のあらゆる蔵書を集めまわって買い漁る日々を過ごしていたのだが……。そんなある日、俺は狙った通りの人物に出会った。
「コンコン、失礼します。」
ある日俺は俺の屋敷の扉をノックする音を聞き、扉を開けるととある少女に出会った。
彼女は小学生か中学生くらいの若さで、褐色肌をしており黒いロングの長髪、体はどこか古代エジプトを連想させる華やかな肌の露出の多い服装をしていた。そんな少女だった。
そして少女はとんでもないことを言い始めた。
「初めまして、私はシャヒーラ、シャヒーラ・カーミル。ここに住むネルソン・Xに会いにきたの。」
シャヒーラ来た!!?原作登場人物来た!?いや原作だと名前しか出てないんだけど!それでも……キタァァァァァァ!
俺は心の中で大興奮しながら、平静を装った。
「これはこれは初めまして、俺がそのネルソン・Xです。
高明な魔術師であるシャヒーラ様に会えて光栄です。もしかして、うちの蔵書に興味を持っていらっしゃったのですか?よろしければお見せいたしますよ?」
俺は目の前にいる未来の伝説の創設者、シャヒーラ様に尋ねる。
「! ねぇネルソン、見ていいの?本読んでいいの?」
シャヒーラ様は目を輝かして尋ね返す。
「もちろんですとも!本は読まれるためにあるのですからね!おっと、なるべく汚さないようにお願いしますよ。
写本は作成済みとはいえ、原本は貴重で価値がある物ですから。」
「むー!しない!本を汚すなんて絶対しない!」
シャヒーラ様は本を汚すというワードに頬を膨らませて怒った。
「これは失礼、ではどうぞ!うちの屋敷にある書斎へ!」
俺はウッキウキでシャヒーラ様を、うちの書斎へ案内したのであった。
「ふおおおぉぉぉぉ!こ、これがネルソン商会の書斎!」
「いえ、これは商会のものじゃなくて俺個人の書斎ですね。
商会の管理にしておくと、自由に他人に貸出できなくなってしまうので……。
ご自由に見ていって構いませんよ。」
「ブラトニクの絶版となった『肉食の書』!
あの名高い 『オルスタリア興亡史』!
それに『ヨグニム原本』!
エミルスターク著の『魔法術単年概論』!
ベットナハルの『時期無論仮説』!
他にも伝説級の本が沢山!
しゅ、しゅごい……。しゅごすぎる……。」
シャヒーラ様は目を輝かして、涎を垂らしいやらしい手つきで書斎に向けて手を伸ばしながらそう言った。
さすがシャヒーラ様!この本の価値がわかるようだ。
「他にもまだまだありますよ、
『レムスター総集編』
『マルチム手記』
『ゼツリア写本』
『長谷村録』
『コルフード外伝』」
俺はうちの書斎の中でも、目ぼしい書物を列挙した。
「ふおおおおおおお!」
俺の書物コレクションに感銘を受けたのか、シャヒーラ様は大興奮しながらぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「とにかく読ませて!今すぐ!」
「もちろんです!どうぞご自由に!」
俺が許可を出すと、シャヒーラ様は大喜びで本を読み始めた。
しかしあのシャヒーラ様……原作のグローリア学園創設者の中でも最も聡明で賢いとされた彼女が、俺の屋敷を訪ねてくれるとは本当に光栄だ。
このまま上手くいけば原作のグローリア学園創設にも関わられるかもしれない。俺はそんなことを思っていた時、まさかあんなことになるとは思わなかったのだ……。
「シャヒーラが帰ってこない。」
赤い髪に赤い武士の鎧をした東洋出身の長身の男性が、そうポツリと漏らした。彼は細いながらも、しっかりと絞り込まれた筋肉をしており、腰に刺した刀を強くにぎしめていた。
「確かにのう。シャヒーラが交渉に行ってからはや3日。流石に遅いのう。」
そんな呟きに返したのは、緑のローブを身に纏い、白く長い髪と髭を生やした老魔術師だった。
「やはりお前もそう思うか、アントニオ・ヴァイス。これは何かあったのではないだろうか。」
ヴァイスと呼ばれた老人は、ヒゲを撫でながら言う。
「そうじゃな
だが流石に三日も何の連絡もよこさないでいるのは抜けてるの範疇を超えておるのう。」
輝人と呼ばれた赤い武士はうむうむと首を縦に振った。
彼ら二人はシャヒーラの仲間であり同志であった。彼らの目的は一つ、世界中の魔法族を集めた魔法学園を作ることである。
魔法族は現在、一部の戦闘に特化した魔法使いの名家は国や王により重用されて貴族の如き地位を得ている。だがそのような待遇にある魔法族はごく一部であり、大多数の魔法使いが迫害を受けているのだ。
そんな状況を変えるためにどうすればいいのか?
その問いに対する答えが、魔法族皆が団結することであった。そのために全ての魔法族が一つのところに集まり、共通の繋がりや考え方を持つ。そうする事で団結して非魔法族の迫害に対抗する。そのために必要な装置が魔法学園なのである。
そしてゆくゆくは魔法族による魔法族のための国家建国…‥それを視野に入れた大望を持つ者達、それが彼らアントニオ・ヴァイス、赤日輝人、シャヒーラ・カーミルの3人であった。
そして彼らは魔法学園設立のために、どうしても金銭が必要であるという結論に達しており、その資金を融通してもらうためにある魔法族の商人、ネルソン・Xなる人物に金を借りることにしたのだ。
「交渉には私が行く。」
そう言い出したのはシャヒーラであった。
「アントニオは交渉は上手いけどみんなを守る役目に専念して欲しい、輝人は突っ走りすぎるところがある、私の夫は交渉はできるかもしれないけど、使者として格が落ちる。
だから私が適任。」
シャヒーラはそう言って、交渉役を名乗り出たのだ。
アントニオはともかく、突っ走りすぎると評されたことに不満だった輝人は
「シャヒーラも天然すぎて交渉にならぬだろ」
と抗議したのだが、それでも話し合いの末に最終的にシャヒーラが行くことになった。
そしてそのシャヒーラが帰ってこなくなりはや三日が経ち、現状に至るのである。
「このまま待っていて、いいのだろうか?シャヒーラが夫を放置するとは思えんのだが。」
輝人は腕を組みながら考えていった。
「ネルソンなる金持ちは世界の伝説の魔道具だけでなく、名著なども集めておると聞く。もしかしてその本を読み耽っておるのかのう?」
「流石にそれはないだろう……ないよな?」
「自分で言い出しておいて不安なってきたのう。とりあえずまだ判断を下すのはまだ保留にしておくか。」
そう言って二人はもう少し、同志にして大切な仲間であるシャヒーラを待つことにしたのであった。