転生したけど原作の千年前   作:フィークス2号

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5話 報連相はしっかりしよう。

 

 

 

 「おかしい!もう1週間だ!」

 

 苛立ちながら、偉大なる魔法使い、『輝人(てるひと)』は吐き捨てて言った。

 

 「そうじゃのう、流石に…‥これは動かんといかんのう」

 

 老練の魔術師、『アントニオ・ヴァイス』も苛立ちを隠さず、自らの杖の手入れをしながら言った。

 

 「輝人さん、アントニオさん。シャヒーラは……シャヒーラは無事なんでしょうか!」

 

 二人に対して、褐色肌をした眼鏡の男性が尋ねる。

 

 「わからん、それが答えじゃウマル。妻が帰ってこなくなって不安なのはわかる。だがここはわしらに任せておいてほしい。

 ウマルよ、お前は優秀な魔法使いじゃ、だからこそワシや輝人の家族を守ってほしいのじゃ。

 こうなった以上、ネルソンの狙いがわからんのであれば、隙を晒すわけにはいかないからのう。」

 

 アントニオがシャヒーラの夫であるウマルに言う。

 

 「す、隙を晒すって。もしかしてネルソンが我々に襲撃を仕掛けてくると言うのですか!」

 

 「うむ、そうだウマル!ネルソン・Xのやつは過去に、たった二人で山賊どもを壊滅させたと言う。

 それ以外にも『バーデン街道の野党殲滅』『グルタリア盗賊団事件』など、さまざまな賊との戦いで名を挙げている。

 強さに関しては俺達ほどでないにしても折り紙つきだ。」

 

 輝人はウマルに向けていった。

 

 「そもそもネルソンのやつ、Xなどという名字を名乗ってるそうだが、そんな名字聞いたこともない。明らかに胡散臭い名字じゃ。

 何か後ろめたいことがあるんじゃと、この時点で気づくべきだったわい!」

 

 アントニオは仲間が帰ってこないという不安から、苛立ちを顔も知らぬネルソン・Xにむけた。

 

 「ああ、金持ちという人種は信頼に値しないようだ。俺も若い頃に菊田屋の奴らに嵌められたからな……。Xとかいうのもそれと同類だったのだろう!」

 

 輝人もヴァイスに続いて悪様にいい、どんどん二人はヒートアップしていく。

 

 「ヴァイスさん、輝人さんも落ち着いて……。ヴァイスさんも言ってたじゃない、シャヒーラが本を借りるのに夢中なだけかもしれないって、あの人そういうところあるから。」

 

 そして熱くなりすぎる二人を見て、逆に冷静になったウマルが止めに入った。

 

 「お前の妻だろウマル!」

 

 「お前さんはどうして冷静なんじゃ!」

 

 「ご、ごめんなさい!」

 

 しかし熱くなった二人の大魔導師を、ウマルは止めることができなかった。

 

 「こうしていてもらちがあかん。直接屋敷に乗り込んで、シャヒーラを奪還するぞ!」

 

 「おうそうじゃな。だが輝人よ、顔を晒すのはいかんぞ。しっかりと仮面をつけてお礼参りをせんとな……。」

 

 ネルソンに大切な仲間を奪われたと勘違いした二人は、屋敷に乗り込むことを決めたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 「ここがあの男のハウスか……」

 

 赤日輝人は、屋敷であるネルソン邸の前でポツリとつぶやいた。

 

 「よいか、まずは客として来訪して探りを入れるんじゃ。何も言わずにシャヒーラを返すなら手荒なことはしない。

 暴力は最後の手段じゃ、お前は熱くなりすぎるからのう」

 

 ヴァイスは輝人にいう。

 

 「ああ、わかった。」

 

 そう言うと輝人は屋敷の門を開けて、入り口の扉をどんどんどんどんとノックした。

 

 「ネルソーン!いるか!用事があってきた!」

 

 少し待って、もう一度どんどんとやり、さらにどんどんと扉をノックした。

 

 「はいはーい!そんなに叩かないで!扉壊れちゃう!」

 

 そう声が聞こえた後、扉が開かれた。

 

 そしてそこにはこの家の小間使いだろうか?水色の髪に水色の瞳、青のローブを着た全身ブルーな13、4歳ほどの少年がいた。

 

 「……どちら様ですか?」

 

 「それを明かすことはできない、ネルソン・Xに用事があってきた。出せ。ネルソンを出せ。」

 

 赤日輝人は言った。

 

 「……あのー、なぜ仮面をつけておられるのですか?」

 

 目の前の水色が言う、だが赤日輝人は取り合わない。

 

 「それを小間使いであるお前に言う必要があるのか?ネルソンを出せ。」

 

 「……ネルソンは俺ですが」

 

 「は?」

 

 輝人は面食らった。

 

 (目の前の少年が?いや、思い直せ輝人、シャヒーラだって大人の魔法使いだが、めちゃくちゃ若い……というかほぼ子供の外見じゃないか。

 たった数年足らずでグローリア最大の商人になった魔法使いだ、シャヒーラのように若作りがとても上手い可能性も考慮すべきだった。)

 

 「そうか、お前がネルソン・Xか。用事がある、中に入れてもらおう。」

 

 輝人は目の前の少年に凄みながら言った。

 

 「は……はい。」

 

 そして少年は二人を屋敷の応接間へと案内した。

 

 

 

 

 「これ、粗茶ですがどうぞ。ミルクティーです。」

 

 「ワシはいらん。」

 

 「粗茶なら出すな、上等なものを出せ。」

 

 屋敷にあげてもらった二人、彼らは敵対心丸出しで応対した。

 

 「……あの、ご用件はなんでしょうか。」

 

 キリキリと痛む胃を抑えながら、ネルソンは大人の対応で尋ねる。

 それに対して輝人は率直に切り出した。

 

 「単刀直入に言おう、シャヒーラ・カーミルはどこだ?」

 

 その一言を聞いた時、場の空気が変わった。

 

 ネルソン・Xの態度もおどおどしたものから、キッと引き締まったものとなり、彼は指輪を回して杖を出現させて、臨戦体制となったのだ。

 それを見た輝人は、腰の刀に手を当てていつでも抜刀できる体制を整える。ヴァイスもネルソンも杖を構えてあいまみえた。

 

 

 「……………なぜそのようなご質問を?」

 

 ネルソンが切り出す。

 

 「言う必要があるのか?」

 

 「逆になぜ必要がないと思うのですか?顔すら晒さない相手に親切に語ると?」

 

 沈黙が場を支配した。

 

 「のう?商人、お前はこの屋敷に一人じゃろ?魔法使い二人を相手に戦って勝てる気があるのかの?お前さんはミスペルという噂じゃが?」

 

 アントニオ・ヴァイスは茶化すように、目の前のネルソンにいう。

 

 そして再び沈黙が支配した。

 

 そしてその沈黙を破ったのは、ネルソンが漏らした名前であった。

 

 「アントニオ・ヴァイスと赤日輝人?」

 

 その言葉を聞くや否や、輝人に衝撃が走る。

 

 (名前がバレている!?なぜ!?やつはどこまで知っている!?

 ネルソンとは何者なのだ?どうしてバレた?

 いや、そもそもこいつの目的はなんだ?

 常識的に考えろ俺!たった数年足らずで莫大な富を築く化け物だ!油断すべきではなかった!)

 

 そう思うが早いか、輝人は居合いを放ち、ネルソンに切り掛かった。

 

 「!?」

 

 斬りかかられたネルソンは杖にエンチャントされたシールド魔法を展開して防ぐ。

 しかし、輝人の圧倒的な魔法力の前に、杖は全ての魔力を消費しきりシールドは砕かれてしまう。

 

 「輝人!?」

 

 ヴァイスが狼狽えながらいう。

 

 「ヴァイス!こいつは何かやばい!このまま放置するわけにはいかない!ここで倒して、生捕りにするぞ!」

 

 それを聞いたヴァイスは杖を構えて、拘束呪文を放った。

 

 しかしネルソンはどこからともなくもう一本の杖を取り出して、ヴァイスの魔法を打ち消す。

 そしてネルソンは靴に付与した脚力強化の魔法で、ありえない跳躍力で跳び跳ねて扉を蹴破り、廊下へと逃げ出した。

 

 それを追いかけるヴァイスと輝人。廊下から防犯用の魔法が作動して、槍や矢、魔法弾が二人めがけて放たれる。

 しかしそれをものともせず、二人は剣や魔法で弾き、ネルソンを追撃した。

 

 そしてネルソンは大広間に逃げ込んだ後、二人に向き合って言った。

 

 「落ち着いてください二人とも。俺は悪い人じゃありません。

 なぜ二人が俺を襲うのか、俺には理解できないのです。話し合いましょう。」

 

 「なぜお前は俺たちのことを知っている!俺たちのことを知り得る機会などなかったはずだ!」

 

 そう答える輝人に対して、ネルソンは驚いたように言った。

 

 「マジかよ!マジで輝人様とヴァイス様かよ!」

 

 それを聞いた瞬間、輝人はやらかしたと思った。奴には俺たちの正体に関する確信はなかった、にも関わらず俺はその答えを伝えてしまった。

 後悔しつつも刀を構えて問い詰める輝人。

 

 「知ってる理由を答えろ!」

 

 「あー、俺は商人ですからね。独自の情報網があるんです……それでわかったんですよ。

 お二人はシャヒーラ様とはもうお仲間ですか?」

 

 慇懃な態度でネルソンはニヤニヤと笑いながらいう。輝人は余計に不気味に感じた。

 

 「シャヒーラはどこだ!」

 

 「シャヒーラ様なら地下の書斎で本をお読みになっておりますよ。」

 

 「ほーう、1週間もかの?小僧。ずいぶん長い読書じゃのう。」

 

 もはや顔を隠す意味がないと悟ったヴァイスが、仮面を外しながらいう。

 

 「うちはいい本がたくさんありますから……シャヒーラ様もひどくお気に召したそうで。

 ヴァイス様、うちには古代の素晴らしい魔法道具があります、ここは一旦落ち着いてそれらを見ながら平和的に話し合いませんか?」

 

 「そしてヴァイスもなぜか帰らなくなると?は!みえすいた手だな!そんなものには惑わされんぞ!

 ネルソン・X!覚悟しろ!」

 

 そう言うと赤日輝人は両手で刀を握りしめたネルソンに斬りかかった。

 

 すると大広間のシャンデリアから、幾つもの魔法レーザーが放たれて、輝人にぶち当たる。

 しかし輝人はそれをものともせず、ネルソンへと突撃した。ヴァイスもぼうっと待ってはいない。幾つもの魔法の矢を生成して、それらを放ち輝人を援護する。

 

 ネルソンはまたもやどこからか魔法の杖を2本出して、それらを二つの腕で振るいヴァイスの魔法を打ち消す。そして杖を捨てた後に、氷属性の魔法がエンチャントされた剣を出して輝人と斬り合った。

 しかし輝人の圧倒的な魔力を前に、ネルソンの剣は3合も斬り合うと、あっという間にボロボロになってしまった。しかしネルソンはボロボロになった剣を捨てて、すぐに新しい剣を出して輝人と斬り合いを続けたのだった。

 

 屋敷につけられた防犯機能は廊下やシャンデリアのもので終わりではない。屋敷に飾られた鎧が動き出し、ヴァイスを拘束せんと襲いかかる。

 部屋に飾られた額縁は、絵から鮮やかな光線を出して輝人と斬り合うネルソンを援護する。

 

 部屋の中から大きな音が響き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なかなかやるな」

 

 「ミスペルにしてはやるのう……ちと疲れてきたわい。」

 

 二人の魔法使い、輝人とアントニオは数刻経っても、ネルソンを倒しきれずにいた。

 

 「そうでしょう、そうでしょう!俺も疲れましたよ!部屋もボロボロだし、防犯対策の仕掛けは8割壊れちゃうし!

 だから停戦しましょうよヴァイス様!輝人様!ね!」

 

 そしてネルソンも息絶え絶えになり、ほぼ満身創痍の状態で答えた。

 

 そんなやりとりをしている間に、大広間の扉が開き、とある人物が入ってくる。

 

 「アントニオ?輝人?どうしてここにいるの?」

 

 その声の主はシャヒーラ、シャヒーラ・カーミルであった。

 

 

 

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