こんな感じで会議は着々と進み、ついに生徒をどこまで受け入れるかについてに移った。
「ところで生徒についてだが、みんなはどこまで受け入れるべきだと思う?
俺は魔法族、非魔法族関係なく受け入れるべきだと思う!
なぜなら俺の考えるグローリア魔法学園の最終形態は国家であり、魔法族と非魔法族の共存は不可欠だからだ!そのためには魔法族非魔法族共学の学校にすべきなのだ!」
赤日輝人様は熱く語る。
「ワシは魔法族、名門の魔法族に絞るべきじゃと思う。あんまり規模を大きくしすぎても管理できるかわからんし……優秀な魔法族に集中的に教育のリソースを注いだほうが効率が良いと思うのう。」
アントニオ・ヴァイス様はヒゲを撫でながら言った。
「私は名門じゃなくても非魔法族(コモンズ)出身でも魔法族なら幅広く受け入れるべきだと思う。」
シャヒーラ様は手を挙げて主張する。
「俺は出来る限り広く受け入れるべきだと思うけど、最低でもミスペルを受け入れる学校にしてほしいかな。
そうじゃないと俺通えないし。」
そう言うと呆れた声でエデュラスが言った。
「おいおい、お前は教える側なんだから通わないだろう。それともお前は見た目通り子供なのか?」
「うん、まだ俺14だよ」
「え?」
「え?」
「は?」
「ほえ?」
「ん?」
「ちょ!?」
俺の一言に会議室がざわめく。
輝人様が俺の目を見つめながら尋ねる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。お前の外見のそれは若作りじゃないのか?」
「うん、違うよ?そういえばシャヒーラ様って見た目通りの歳じゃないですよね?それだとウマルさん犯罪だし、どうやってるんですか?」
「待て待て待て待て待て、ネルソンお前……14歳なのか?」
エデュラスさんが慌てながら聞く。
「はい、そう言ってるじゃないですか。」
「ね、ネルソン会長!それは本当なんですか?」
エルメスまで驚いて聴き始めた。あれ?もしかして俺が子供なのみんな知らない?
「作戦ターイムー!タイム!タイムを要求する!」
輝人様が叫ぶ。
「認める」
そう言うと俺以外のみんなが会議室の端に集まってこしょこしょやり始めた。
「どうしよう……マジでどうしよう。」
エデュラス・ヴァイスは顔を青くして言った。
魔法学園設立、それは魔法族の未来のためというのもあるが、子供たちにより良い環境で育ってほしいと言うのも目的の一つである。
そんな学園を設立するにあたって、ネルソンがその守るべき存在である子供であることが発覚したのだ。
むしろ真っ先に気づくべきであったにも関わらず、今まで気づかなかったのは失態以外の何ものでもない。
そのせいで、今までの会議でさまざまな事柄をネルソンに任せることになっている。
都市であるグローリアの運営、魔法学園の生徒や教師を集めるための宣伝、城を学舎へと改装する手筈、etc……。
これらを大人に任せるのは普通ではあるが、子供に任せるのは異常だ。これから教師となり子供を導こうとする大人が子供に押し付けるようなことではない。
「どうすればいいか、諸君!何か提案はあるか!」
「いや……ワシどうすればいいかわからん。言っとくが現状、ネルソン抜きだと色々と無理じゃぞ。」
「私は頑張ればいけるかもしれないけど……。でも会議で決まったこと覆しちゃっていいの?」
「そもそもだ!エルメスお前はなんで気づかないんだ!」
「ご、ごめんなさい!あまりにもネルソン会長が立派なもので、若作りしてると思い込んでました!なんか背が伸びてるなーとは思ってたけど!」
作戦タイムにて、エルメスが頭を下げて言う。
「付き合いが長かったとはいえ、気づけてない時点で俺たちも同罪だろ!
責任をなすりつけ合うのではなく、これからどうするべきかを考えるべきだ!」
エデュラスの意見に皆は頷く。
「……とりあえず最初のうちはネルソン君に任せて、頃合いを見て後任を探して勉強に専念させるとかはどうかな。」
ウマル・カーミルが提案する。
「守るべき、慈しむべき子供に負担を強いろと言うのか!この俺たちに!」
「でも輝人、君は創設者の一人として力を貸すようにもう頼んじゃったんだろ?
それを今から反故にするのはそれはそれで問題だと思うんだ。」
「うぐっ」
そういうと輝人は押し黙る。
「ワシは……孫が生まれた時、息子や娘たちと違って、苦労せずに楽しく学べる環境を作りたいと思った。
ワシが作りたい学園は、どこかの子供に無理を強いて、自分の子供だけ楽させる学園ではない。」
アントニオ・ヴァイスはポツリポツリと呟く。
「私は……これからウマルとの間の子が楽しく学べればそれでいいと思ってた。
だからその学園が誰か別の子供の負担になるなんて想定してなかったから、どうすればいいのかわからない。」
シャヒーラは悩みながら言う。
「俺は……俺はどうすればいいのだ。」
なんとしてでも学園を創設したい輝人、彼は自分が冷酷な判断を下すべきか迷っていた。そんな中、エルメスが発言した。
「あのー、今更疑問なんですけど、そもそもネルソン会長について、私たち知らなさすぎじゃないですか?
私は何も考えずに、ネルソン会長はすごい人だと思考を放棄して従ってきました。
そして会長が子供だと気づいた今、ネルソン会長についてほとんど知らないことに気づいたんです。
そもそもネルソン会長の親は何者なんでしょう、どうして交易商を始めたんでしょう。そういったことから確認すべきでは?」
「うむ、エルメスの言うことももっともだ。まずはネルソンに話を聞こう。」
輝人はそう言うと、ネルソンに対してさまざまな質問をした。
「俺の過去の話?別にいいけど会議は?」
「その会議のために必要なのだ!無理強いはしないが……どうしても聴きたいのだ!」
輝人さんは作戦タイムの後、俺の過去について尋ねてきた。なので俺は俺自身の過去について語る。
俺が北洋の魔法使いの家の名門、ノクスチョフ家に生まれたこと。
親は俺を甘やかし、様々な魔法の訓練をする環境を整えてくれたこと。
その訓練の過程で魔法薬や魔法道具の作成を学んだこと。
そして……ミスペルだとわかって家を追い出されたこと。
他にも色々語った。
ノクスチョフの姓を名乗れないから、新しくXという姓を名乗ったこと。
魔法道具を二束三文の値段で売って、街を渡り歩き、グローリアを目指したこと。
そのうち俺は現地の特産品を仕入れて、交易商を始めてより多くの金を稼いだこと。
グローリアにようやく到着した喜び。
雑貨屋を始めて大繁盛したこと。
エルメスと出会ったこと。
店を大きくしていったこと。
そして……創設者である3人に会ったこと。
俺は今までの新しい人生で起きた事を語った。
「そうか……ネルソン。君はミスペルという理由で、家を追い出されたのか。」
「も、もしかしてなんだけどさ。ミスペルだから魔法学園創設に関わっちゃダメ!ってのはないよね?」
「そんなことあるわけない!お爺様や他の奴らが何言ったって、俺が認めるものか!」
そう言うとエデュラスさんは立ち上がっていった。エデュラスさん、俺に対する好感度高くね?
「俺は全ての魔法族のために、できるなら非魔法族ですら通える学園を作ろうと考えている。
ミスペルだと言う些細な理由でキミを追い出す気はないよ。」
輝人様が温かい声をかけてくれる。なんだろう、どこかいつもと雰囲気が違う。
もしかして身の上話をしたのが功を奏したのか!
「ネルソン!ワシは、ワシはワシが恥ずかしい!ワシは教育について、より良い血をもつ、より良い魔法族が集まることで、エリートによるエリートのための学校を作る事を目的としていた。
ワシの眼中には、迫害されておるものなど目に入っておらなんだ。
『全ての魔法族を救いたい』それは所詮輝人の望みでありワシの望むところとは違うと、本気でその想いを理解しようとしておらなんだ!
そして今日、ネルソンおぬしと言う迫害されるミスペルというものを目の当たりにして目が覚めた。
ワシは魔法力を持つもの全てを受け入れる学校を作るべきじゃと考え直したのじゃ!
当然その学校には名門魔法族はいる!じゃが名門じゃない魔法族もいる!そして……魔法族の名門から追い出された子供たち、ミスペルの子供も当然いる!そんな学校を作るつもりじゃ!
ネルソンよ!ワシはおぬしがこのグローリア魔法学園で学べるよう、全力を尽くすつもりじゃ!」
「ヴァイス様!」
ヴァイス様は優しい目で、力強く俺を見ながらはっきりと答えたのであった。
「もうそんな様づけなんて不要じゃ、ネルソン。今まで親もおらず寂しかったじゃろうて。
ネルソンや、ワシをヴァイスおじいちゃんと呼んでもいいんじゃぞ?」
そう言うとヴァイス様、いやヴァイスおじいちゃんは両腕を広げて俺の前に立った。
「ヴァイスおじいちゃん!」
俺はそう言うと思いっきりヴァイスおじいちゃんに抱きついた。
俺が感じ取ったそれは、勘当されてから、一度も感じたことのなかった、人の温かさであった。
「めっちゃいい雰囲気になってるけど……会議どうしようか?」
俺とヴァイスおじいちゃんと抱き合ってから数分後、ポツリとウマルさんが漏らした。
そうだね、会議進めなきゃね。
そして会議の議題は、俺こと『ネルソン君若すぎない?』問題へと移ったのである。
「ネルソン君、実はとても恥ずかしいことなのだが俺たちは誤解をしていた。俺たちは君が成人の魔法使いだと思っていたのだ。」
「ワシらはそのことで悩んでいてのう、先程までの会議で色々とおぬしに負担を強いることになったじゃろ?都市の運営とかの。
その件についてどうするかを改めて話し合いたいんじゃ。」
「私達は子供たちのために学園を作ろうとしている。でもそのために他の子供に負担を強いることは望まない。
だけど私達は力不足、あなたの力が必要。だから貴方の意思を尊重することにした。
どの程度まで学園の運営に関わりたい?
貴方が望むなら、学園の煩わしい仕事は何もしなくていい。
貴方はもうすでにこの街を買うという十分すぎる仕事をしてくれた。
だから、仕事をしないで一生徒として学業に励んでもらって構わない。」
輝人様、ヴァイスおじいちゃん、シャヒーラ様が俺の目をまっすぐに見つめて言う。
「でも……それでも私たちを創設者の一人として助けてくれると言うのなら、私達はその助力に感謝する。子供に強いる負担じゃないってわかってるけど、貴方を創設者の一人として立場を尊重する。どうする?」
俺の答えは決まっている。
「当然、会議で決まった仕事はやります!都市の運営に、学園の雑務、教員のスカウトも!
俺に任せてください!まだ未成年ですけどそれくらいの仕事ができる程度には実力も経験もありますから!」
俺はビシッと言う。
「そうか……。ネルソン君ありがとう。俺達はこれからもきみを頼らせてもらう。同じ創設者の一人として!」
「はい!」
こうして、俺は改めて創設者の一人として学園の運営に協力することになったのだった。
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