黒幕になって絶望したけど性癖を歪めてことなきを得た話 作:匿名希望
目覚め
淡々と蝶の足や羽をむしり嬲り殺している際に、自身がカミキヒカルであることを自覚した。
すでに絶命しピクピクと動く蝶だった物体を無感情に眺めながら、心に巣食う満たされない衝動と恐ろしい思いつきに絶望していた。
突然だがカミキヒカルは先天的なサイコパスではない。素質は確かに持っていたが、ある経験がなければその素質が開花することはなかった。しかし、姫川愛梨による逆レイプという自身の存在意義を揺るがす出来事によってシリアルキラーの階段を昇り始めていた。
きっかけは劇団ララライ主催のある舞台、当時のカミキ少年は初めての舞台への緊張と興奮を募らせるごく普通の子供だった。
初舞台でメインキャストではなかったが、非凡な才能を覗かせていた彼にはセリフが与えられた。これはセリフ合わせが行われることを意味する。そこで外部から招かれた姫川愛梨と会合した。
当時の姫川愛梨はいまいち跳ねきれない若手女優、そんな折に一際才能を覗かせる美少年と出会った。自身が伸び悩み、キャリアへの不安を抱える中、これからスターへの階段を昇っていくだろう子供を見るのがただひたすらに面白くなかった。セリフ合わせをするたびにその非凡な才能を否が応でも見せつられ、遂には魔がさした。これが逆レイプの顛末だ。
さらに、姫川愛梨はこれに味を占めた。未知の快楽に戸惑い、怯えながらもその行為への興味を覗かせるカミキ少年と何度も何度も行為に及んだ。巨大な才能を持つ少年を汚すことに快楽を覚えていた。少年を犯すたびに自尊心が埋まっていき、これが演技にも表れた。舞台稽古は順調に進み、メインキャストとして臨んだ舞台も成功を収めた。
そしてこれがきっかけとなり、姫川愛梨は役者として殻を破った。この舞台からトントン拍子で朝ドラ女優に選ばれスターダムを駆け上がり、遂には上原清十郎との結婚も決まった。まさに順風満帆。
一方カミキ少年は一連の騒動によって歪み始めていた。初めは大人の女性による一方的な蹂躙、自身の体を貪る女の獣のような目に怯えながら、体は未知の快楽に戸惑いつつ喜んでいた。回数を重ねるごとに順応していき、次第にその快楽に身を委ね始めた。自身が彼女にとって都合の良い性処理道具として利用されているのを気づきながらも、その関係に夢中だった。しかしそんな淡い思いは打ち砕かれる。単に舞台の共演者でしかなかっため、舞台が終わる否やその関係にも終止符が打たれた。自身から離れた彼女はスターダムを登っていき、遂には上原清十郎と結婚した。
これはカミキヒカルの根幹を揺るがすには十分な出来事だった。逆レイプという形であれ、彼にとって彼女は初めての相手であり、少なからず特別に思っていた。その相手が自身から離れると飛躍し、当時売れっ子の俳優とくっついた。自分の存在意義とは何か、激しく頭を揺さぶられ、延々と自問自答をし続けた。その末に命の価値、重さといったことに執着を見せ、冒頭の異常行動に繋がる。
最初はモノに当たったり、蟻を踏み潰すことで解消していた衝動は次第にエスカレートしていき、遂には蝶を嬲り殺すことでも満たされなかった彼は、人々に愛される存在を殺すことを思いつく。
それは地域猫を嬲り殺すことだった。人々が大事にしている物を壊すことで自分の命の重さを実感出来る。理屈などなく直感でその行為に手を染めようとした際に、俺は目を覚ました。そして絶望した。
「推しの子世界でしかも黒幕の闇堕ち一歩手前かよ!!」
留まることを知らずに湧き続ける破壊衝動に負けないよう俺は叫んだ。