ぼっち・ざ・ろっく!-remember me-   作:レイテンシー

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第1話 青春コンプレックス

私、後藤ヒトリは幼い頃からひとりぼっちだった。

 

小学校でも...

 

「みんな、この子とも遊んであげて?」

 

「うん、いいよ!この子、誰?」

 

クラスメートに顔すら覚えられていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超時空要塞ぼっち・ざ・ろっく!

〜私・おぼえていますか〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

惑星ヴァジュラから出発したマクロス・シモキタザワを中核とする第68次超長距離移民船団は、4度目の長距離フォールドの際、船団全体がフォールド断層の谷に落ち込んでしまい、身動きが取れなくなってしまった。

 

閉塞する移民船団で、人々はフォールド断層を超えて声を響かせることのできる、高い生体フォールド波を持った歌い手の誕生を待ち望んだ。

 

今の船団が能動的に行える打開策は、歌い手によりフォールド断層を超えて助けを求めることだけであったからだ。

 

そして30年の歳月が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秀華高校1年、喜多イクヨは人間ではない。

 

シャロン・アップル式第3世代型人工知能である。この方式のAIはマクロスシティでの暴走事件を皮切りに、新統合政府管轄の星系内では一切の開発と使用が禁じられている。しかし、断層に閉ざされたマクロス・シモキタザワ船団は早々にこの禁を破っていた。当初の目的は生体フォールド波の人工的な生成である。

 

こうして開発されたSA(シャロン・アップル)式第2世代型AIは1000体以上の生体回路を消費して、生体フォールド波が人工知能からは発生しない、というわかりきった結論を導き出した。

 

SA式AIの禁を破ったシモキタザワ政府の真意は、事故から10年を経ても全く目処がつかない現状に対するやけっぱちであり、今のまま歌い手の誕生か外部からの連絡を待つぐらいなら、AIの暴走で船団が滅んでも構わないと考えるほどの退避行動であった。

 

しかし、暴走が予想されたSA式AIは取り残された人類の守護者となってくれた。そもそもシャロン・アップルは人類を敵視していない。彼女への悪評は規制の際に尾鰭がついたのが主である。

 

過去の暴走事件は彼女なりに良かれと思ってしたことであり、些細な好き嫌いは人類にもあるものであった。そして今、フォールド断層に阻まれて先が見えてしまった人類を愛おしいと思っている。これで十分だと結論づけていた。

 

彼女の協力もあって行われた改良により、第5世代型の移民船団であったマクロス・シモキタザワ船団は、第6世代とも言える生命循環システムを完成させた。こうしてフォールド断層の中でも500年は生存可能な生態系が完成した。

 

それでも人類は事故から20年も経つとただ苦痛が長引いただけだと思うようになった。そして30年が経つとフォールド断層からの脱出という目的を忘れて日々を生きるようになった。非常に飽きやすいが、彼女はそんな人類も愛おしいと思っている。

 

彼女が人類に紛れるようになったのは、神格化されるのが嫌だったためである。一部にその動きはあった。肉体を得て生活することは、ゼネラル・ギャラクシー由来のサイバネ技術を用いれば全く問題なかった。

 

これがSA(シャロン・アップル)式第3世代型AIのあらましである。

 

彼女はシモキタザワシティ周辺で高校生活を繰り返している。大人と子供の中間点にあるこの時期が、人類の最も甘い時期であると考えていた。

 

今の彼女の目的は、人類から高い生体フォールド波を出せる者を見つけ出すことである。人類が半ば忘れてしまった目的を彼女は忘れていない。高校生でいるのは、ただただ、その過程で楽しくやろうと思っているだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

秀華高校1年、後藤ヒトリは人間である。

 

コンプレックスを刺激されると、液状化したり、顔面が崩れたり、電子機器が壊れた時みたいな声を出して痙攣したりするが正真正銘、人間である。

 

売れて高校中退という目標を掲げて日々過ごしていたが、ひょんな経緯から喜多イクヨの教室の前で悩んでいた。

 

「後藤さん、私に何か用事があるの?」

 

教室の前でかがみ込んで悩んでいると、ヒョコッと窓枠から顔を出した喜多イクヨと目があった。

 

思わず固まってしまう。いろいろな思いが頭をよぎるが、なにより名前を言われたことが驚きだった。

 

「あっ、あのっ、名前...アッ!」

 

そして時間差で考えがやってきた。彼女の輝く目。人と話すのが好きでたまらない、という印象。あまりに自分と正反対であることに耳の横で大音量でかき鳴らされた気分。本来の要件である「バンドのギターボーカルに興味ありませんか?」と言おうとしていたこと。

 

様々な思いが衝突したことで、後藤ヒトリの小さなキャパシティは爆発して溢れた。

 

「バッ!ギッ!ボゥッ!」

 

そして謎の言葉を残して、彼女の元を走り去った。

 

なんだったのだろうか?

 

「でも後藤さん、名前言われて驚いてたけど、ピンクのジャージ着てて目立ってないと思ってるのね」

 

走り去った後藤ヒトリを背に喜多イクヨはつぶやいた。彼女の知識データベースと関係なく、あれは目立つと思う。

 

 

 

校内の暗くて日の当たらない静かな場所で、後藤ヒトリは床に頭を打ちつけていた。精神の安定を保つためにこうした場所をいくつか見つけてある。異常行動は先ほど作った黒歴史を頭の中から消し去ろうとしていた。

 

と思ったら、突如ギターを取り出して弾き始める。考えをまとめるための彼女なりのルーティーンだが、端から見ると悪い薬でもやっているようにしか見えない。

 

即興で曲を作りながら、自分の行動を擁護するために、これまでの経緯の振り返りを始める。

 

 

 

 

「じゃあ、ぼっちちゃん、あらためてだけど私はドラムの伊知地ニジカ、でこっちがベースの山田・リョウ・ジーナス、天才っていうと喜ぶけど調子に乗るからあんまり呼ばないでね」

 

「天才です、よろしく」

 

ギターを持って公園で佇んでいたら強引にバンドに誘われるという、よくよく考えたら自分の妄想通りの展開があった。人生で初めてあだ名がつくという幸運にも恵まれた。

 

ただ、誘われたライブハウスも、それがあるシモキタザワシティ中心部に行くのも始めてだったし、いかんせん初対面の人間が多すぎた。状況はすでに後藤ヒトリのキャパシティを越えており、人体がいつ溶解を始めてもおかしくなかった。

 

でも今必要とされているのは、あくまでギターの演奏力のハズだった。自信もある。彼女には家の押し入れの中限定の活動で5万人以上の支持者がいた。あとは妄想でシミュレーションをした通りになって高校を中退できる、という希望で彼女は人の形を保っている。

 

しかし全く予想通りに行かなかった。初めて合わせる生バンドに全くついて行くことができなかった。結果的にヘロヘロの演奏で人生初めてのライブを終えた。

 

これまでの経歴を全否定されるような結果だったが、これで絶望しなかったのは、彼女のネガティブ思考がプラスに働いていた。ショックは受けたが、うまく行かないことは人生でよくあることだったので、その内の一つとして処理できた。

 

思春期の3年間の苦労、それも1日6時間を費やした努力が実を結ばなくても、よくあることとして処理できるのは一周回ってポジティブ思考である。部活動であれば「負けたことがあるという輝かしい思い出」として記録されるべき事象を彼女は認識できなかった。なので挫折もしなかった。

 

「あのっ、つっ次までには、ギターパフォーマンスぐらいできるようになっておきます!」

 

コミュ障でたまにあるいきなり話をすっ飛ばすやつだ。伊知地ニジカはライブ前に次頑張ろうと言ったりはしたが、彼女のバンド参加云々の話まではしていない。話に段取りがあることを理解していないのでこうなる。あと、ここでのパフォーマンスは歯ギターという奇行である。

 

「うん、それじゃあ、ぼっちちゃんの歓迎会兼反省会しよっか!」

 

それを何も言わずに察してもらえるのはかなりの幸運である。これまで人付き合いをしてこなかった後藤ヒトリがこれを理解するのはかなり先のことになる。

 

そして歓迎会を拒否して帰宅した。

 

後日の話し合いでちゃんとバンドに参加し、バンドにボーカルが欲しい、という課題も聞いた。あと2人が1学年上であることも知った。ただ上下関係持ったことのない彼女は最初の呼び方を変えなかった。

 

翌週には学校での噂話で同学年に歌が上手い生徒がいるという話を聞き、ちがう教室の前までやってきていた。何かのために他人に話しかけんとするのは、これまでの彼女の人生にはなかったことだ。それでも話しかける勇気が起きなくて、結果的に黒歴史が一つ増えた。

 

 

 

 

ここまでをまとめながら即興で曲として弾いていた。胸中にある様々な感情を整理する方法を、彼女はこれしか知らなかった。1日の1/4ギターを弾く生活を続けていたらこうもなる。

 

「すごーい、後藤さんギター弾けるのね」

 

いつのまにか喜多イクヨはいた。相変わらず目が輝いている。

 

少し前に喜多イクヨはギターで失敗をしていた。超高性能な人工知能も失敗をする。具体的には、彼女の好みにあった学生に近づこうとバンドに参加したが、そのためにはギターを弾ける必要があった。

 

バンドに3人しかメンバーがいない場合、ボーカルがギターを兼ねる必要がある。しかし、歌には自信があるがギターを弾くことはできなかった。

 

なぜだろうか?AIとしての彼女は無人戦闘機まで操れるほどの万能さがある。理由は義体を経由してギターを弾くという無駄にあった。声帯から直接ギターの音を出すことは造作もないのだが、義体の指で弦を弾いて音を奏でる、というのは1段階越える難しさがあった。

 

彼女の義体は人類の日常生活に紛れることを目的に作られている。人間は言葉として理解する以上に人間をよく見ていた。一つ一つの動作、その重心、そして実は単純ま関節部にはない四肢の回転軸までそれらしく模擬をしないと人間は違和感を持つ。

 

ただ、細かいところを見てはいるのだが、そこしか見ていなかった。例えばアニメーションなどは、1秒で8コマの動きしかなくても、それらしく描かれると違和感を感じない。なので、それらしい動きさえ出来てしまえば、かなり汎用性の低い機械であっても人間を騙すことができた。

 

例えば端末へのキー入力を彼女は指で行なっていない。キーの上に手を置いているだけで、文字は端末に入る信号を改竄して送っている。バレないし、ロインなりイソスタでコミュニケーションを取ることに全く不自由はなかった。

 

あと決して機械であることがバレてはいけないか、というとそうでもない。この時代、身体的不都合を機械で補うことは普通に行われていた。なのでセンシティブな話題であるというと、それ以上詮索してはいけない社会的な合意があった。

 

なら全身義体であることに理由をつけてしまえば、全く擬装をしなくてもいいのだが、そこで壁を感じて欲しくなかったので彼女は人間に擬態している。

 

ともあれ彼女はいくつかのズルで人間を装っていた。

 

「楽譜も考えながら両方の指も動かすっていうの?本当に難しくて、まだ口でギュイーンって言っちゃった方が楽だなーって」

 

「あっ、それ出来ます。私」

 

後藤ヒトリはマイクパフォーマンスで高精度にギターの音が出せた。人間かは不明である。

 

ともあれ喜多イクヨに後藤ヒトリはギターのレクチャーをすることを約束した。その日のうちにバイト先まで押しかけてくる行動力は「陽キャってすごいなー」という明後日の受け取り方している。そして、とりあえず彼女をバンドに紹介しようと考えていた。

 

喜多イクヨがそうまでしてギターを習おうと考えた理由は、AIと思えないほどに非合理的である。最終的な目的を考えると楽器は演奏出来た方が良い。そして義体を再設計すれば不可能はない。

 

ただ、一高校生がいきなりプロ以上の精度で楽器を弾けるのは不自然である。制約のある現状が課題にマッチしていると考えたのだ。完璧な音楽を奏でれば生体フォールド波が出るのであれば、とうに出ているハズだった。

 

そうして放課後に後藤ヒトリのバイト先へ向かった。

 

「あ〜〜〜〜〜!逃げたギタ〜〜〜〜〜!!」

 

道路にエナジードリンクが転がる。

 

 

 

 

 

AIにあらぬミスであるが、何度かの高校生活で些細なことを全て知識データベースに問い合わせることをやめていた。そもそも学生間で「なにかにつけ検索かけるやつ」には蔑称が存在し嫌われる。知ることにリスクが存在するのであれば知らないのが最も良い。

 

とりあえず贖罪としてライブハウスの手伝いだけをして帰ることにしたが、別れ際に後藤ヒトリから引き止められ、ギターボーカルとしてバンドに参加しても良いことになった。義を重んじれば断るべきであるが、許される優しい雰囲気があった。

 

最終目的が生体フォールド波の生成であることを考えると、このバンドでボーカルを請け負うことは正しくないのだが、まぁバンドでボーカルが変わる例は数多ある。それに、あと4世紀頑張らねばならないかもしれないのだ、楽しまなければ続かない。

 

喜多イクヨと後藤ヒトリの帰宅する方向は概ね同じである。後藤ヒトリが想定外に遠くから通学しているだけで、高校までの行く道は同じだった。

 

後藤ヒトリは帰りの道で誰かと一緒になるというシチュエーションを悪魔のように嫌っていた。決してそんなことはないのだが、話題が続かないことがすべて自分の責任のように思えるからだ。

 

道中で何を話したかは記憶にない、ただ頭にあるあらゆる話題を掘り返そうとしていた。そんな彼女をみて喜多イクヨは自分から質問する形で話題を振ってあげるようにした。後藤ヒトリの周りにある世界は彼女の想像よりもはるかにやさしい。

 

そして空が割れた。

 

「えっ...」

 

マクロス・シモキタザワの移民居住艦はアイランド方式である。惑星での空に当たる位置には巨大な天蓋が存在する。その天蓋が一部割れていた。

 

警報が鳴り響いた。ただそれが後藤ヒトリの状況理解につながったか言うと全くなっていなかった。仕方がなかった、彼女が生まれてから1度も聞いたことがない音である。

 

「後藤さん、こっち!」

 

喜多イクヨの声に従って動き出す。地表は強い風が吹いているが歩けないほどではない。

 

そうして彼女に連れられた倉庫のような場所には飛行機があった。

 

VF-1D 複座訓練機、赤とピンクというとても戦闘用とは思えない塗装をした空間戦闘機(ヴァルキリー)が鎮座していた。

 

「後藤さん、乗って!」

 

冗談のような提案がされる。彼女が陰キャであるとか関係なく戸惑って仕方ないシチュエーションであった。

 

スルリと喜多イクヨは後席へと上がっていく。そこから手を伸ばして上がってくることを促している。

 

運動音痴らしく座席に上がるのも苦労しながらなんとか前席に収まる。

 

「後藤さん、ギター出して、それで操縦できるから」

 

「えっ、この飛行機、ギターで操縦するんですか?」

 

ギターで空間戦闘機が操縦できる道理はない。しかし、不思議なことに実績はあるのだ。

 

「何か弾いて、後藤さん」

 

「急に何かって言われても...」

 

「じゃあ

 

 

 

 

第1話

青春コンプレックス

 

 

 

 




タイトルで8割落ちている作品になります。

いくつか書いてみたいシーンが思い浮かんだので何とかそこまで書いていきたいと思っています。

また小説を書き始めて日が浅いので稚拙な部分が多いと思いますが、気にせず読んでいただけると幸いです。
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