そうでない方、いつも御覧頂きありがとうございます。
オリジナル小説と銘打ってはおりますが、様々な小説やアニメ、漫画の影響を受けた箇所が見受けられることもあるかと思います。その場合は、笑って見過ごして頂けると幸いです。
それでは、「オラカルト-神々の宴-」第一話、始めます。
prelude.-始点-
「礼!」
学級委員の号令と共に、いつも通りの終わりを告げた学校での一日。地理やら歴史やら古典やらでドヤ顔しつつ、数学や理科では頭をポリポリ掻きながら「わかんねっす。」と答えて出席簿の制裁を喰らうところまでいつも通りだ。
ガキの頃から理数系には興味を示さず、こと公式を用いた計算ってものに関しては嫌悪感すら抱いていた。そのくせ地質年代やら歴史的事象があった年なんかはいくらでも覚えてると来たら……ま、教師からすりゃ「数学嫌いでさぼってる奴。」のレッテルを貼りたくもなるんだろう。あながち間違いでもないが。
「なあ、カラオケ寄ってかね?今日暇なんだよ。」
「えー……わりっ。今日俺部活。」
高校生ってもんに昇格して早一年と数ヶ月……夏はまだ遠いけど、徐々に暑くなってくるこの季節……この時期になると決まって思い出すことが三つある。
一つは俺の目標。有り体に言えば考古学者だ。
親父がそう、ってのもあるんだろうけど、どっちかって言うと地歴と古典が好きになった辺りからそれを目指すようになっていた。その分考古学に通じる分野の勉強は捗り、それ以外はちょっとばかり時間が……いや要するに放置しているのは否めないのか?
そして、小三の時に掘り当てたリング。公園に埋まってただの畑掘ってたら見つけただのというものではなく、かなり古い地層(親父談)を当てもなく探って見つけたものだ。これが家の側の崖だってんだから面白い。
親父が分析した結果、それこそ猿が人になった頃のものであることは分かった。何でも炭素の同位体の数がどうとか言ってたんだが……それを話し出したときにはスラングが混ざり始めてたせいで、結局話の半分をやっと理解できた程度だった。
が、それにしてはきれいに削ってある上、全体的な組成がダイヤに近い云々。そんなものを猿が作れるか、と言えば……答えは俺でも分かる。NOだ。そんな技術があったら今頃ホモ・サピエンスなんて存在しているはずもない。
とまあそういう珍しいもんだってことで、俺はそいつにチェーンを付けてネックレス状態にしているわけだ。……決してシルバーアクセの類ではない。
「聯(れん)、お前は?剣道部今日休みだろ?」
そんなぼんやりとした思考を巡らせているところへ、ついさっき別のやつをカラオケに誘っていた俺の親友が声をかけてきた。進藤章(しんどう あきら)。幼なじみだ。
「……また何時間も歌い続ける訳じゃないなら。」
「さすがに学校帰りに長居はしねえって。いて二時間だな。」
「んなら……どうすっかな……」
北陸のド田舎ではありつつも、一応それなりには数えられる大学のメインキャンパスがあるためか学者家族が多いこの地区。章の家もその一つだ。……確か地質学の方だったはず……彼自身は専ら体育会系だが。
俺らが通うここ「巫(かんなぎ)高校」もその大学には近く、生徒の中にはそこを目指すものも多い。
「気が向いたらでいい……ってかお前掃除じゃん。」
「そうだっけか?」
「じゃねーの?ほら。」
章が指さしたのは俺の右後方。……を確認する間もなく、脳天に軽い衝撃が走る。
「さて奏滝(かなだき)君。君はまさか掃除をさぼって遊びに行こうとかそんな不届きなことを考えてるわけじゃあないよね?」
いわゆる、掃除をしない男子を箒の柄で叩きつつ叱咤するうるさい系女子一歩手前の少女の声がする。
振り返ればそこには見慣れた顔があるわけだ。
どっちかって言うと小顔で、少し大きめの二重の目があって、若干鼻は低いけどむしろその方が微笑んだときの口に合っている、そんな顔。短めのポニーテールだから、髪がそれらを隠すこともない。
この年の女子としては背が高く、クラスの男子の三分の一はぱっと見で彼女よりも小さいと分かるほど。全体的に細身であることも要因の一つだろう。
……胸が小さいのが玉に傷……か?
「お前なあ……叩くんならもっと別んとこにしろよ。これで……」
「昼休みにやっていた校庭の三点測量のデータが頭から飛んだらどうするつもりだ。」
「その通り。……いや何で知ってんだよ!?」
俺の学校でのささやかな楽しみがなぜ知られているのか。……理由は非常に簡単だった。
「六限の数学の時間にノートに書いていたものは?」
「三点測量の結果。」
「君に教科書を見せてあげていたのは?」
「……あ、お前だ。」
「正解。」
どこか楽しそうに笑う眼前の少女、黒葉柚子香(くろは ゆずか)。思うに、前述系女子として男子から疎まれないわけはこういうところにあるんだろう。
成績は普通より少し上、こと体育にかけては右に出る者がおらず、ルックスもそこそこ。性格は明朗快活、学級委員兼副生徒会長という肩書きに加え、次期薙刀部部長。とまあかなりいい面を多く持ちながらそれをひけらかすこともなく、男女問わず多くの友人を持つ。その全てに最大限の気配りが出来ているとあれば、疎ましく思おうとも考えない。
「ところで。帰りに先生が言ってたことちゃんと聞いてた?最近この辺りで通り魔が多発してるから早く帰るようにって。カラオケとかゲームセンターとか見回るらしいよ?」
「マジ!?」
腕時計を見るなりダッシュで出て行った章。大方「っちきしょー!来る前に歌って帰ってやる!」とか考えているんだろうが……
「ほら。奏滝は掃除。早く済ませれば早く終われるんだから。」
「へーへー。」
……この時期に考えること、三つ目。それは、一年の区切りから少し経って、今をいつもと感じるようになってから思うことだ。
どんな形でもいいから、ここでの常識が何かしらで通用しない、こことは全く違う面を持ったどこかへ行ってみたい。
それは、ある時不意に生じた俺の夢だ。
*
掃除が終わり、黒葉は生徒会、俺はちょっとばかり図書室で読みたい本を探し、ついでに自習してから帰るというなんとも在り来たりな別れ方をした。
俺が通う環状高校から自宅までは自転車を少々ハイペースに漕いで十五分。が、今日の朝はあいにくの雨。この程度の距離にバスを使う気にもならないし、何よりバスなんかに使う金があったら測量機を買うための貯金に充てている。というわけで絶賛有酸素運動中だ。修理しておきたい折れかけの木刀を背負いながら。
「ん?」
ちょうど商店街のアーケードに入ろうか、というところで携帯の通知音がポケットから鳴り響いた。開いてみれば、珍しくお袋からのメールが届いている。
「……ふーん……」
今日は帰りが遅くなるから親父の分も含めて飯を作っておいてくれ、と。ちなみに当の本人は食って帰る(ママ友食事会)、と。
……材料を買ってないからそっから頼む?
「家出る前に言ってくれよ……」
二人分の食材を買っていけるほどの所持金はない。一旦家に帰るしかないが……正直面倒……いやいや。ちょっとばかり読書に時間を費やしたいっつーか……
何読むかって?ラノベだよ。
まあそれはいいや。ひとまず後で迷わないように何買うかだけでも決めるとしよう。
「あれ?奏滝?どしたの?」
真後ろからの声に振り返ると、ランニングウェア姿の黒葉が少し息を上げつつ首を傾げていた。俺よりも帰りは早かったらしい。
「晩飯のメニューの考え中。」
「なーる。あ、ちょっと急ぎだから。またね!」
忙しねえなあ……と口には出さずに呆れつつ彼女を見送る。何でも近々薙刀部の試合があるらしく、それに向けて走り込みを増やしているとか。
俺らの高校は運動部にかなり力を注いでいる。俺は剣道部。黒葉は前述の通り。章も弓道部だ。文化部はそもそもの数が少なかったはず……
「……あれ?」
突如として人が消えていた。……何かあってみんな帰った……?
いやいや。ほんの数秒空を見ながら考え事をしていただけのはずだ。有り得ない。
てことはあれだ。怪奇現象ってやつだ。
「……って……どーすりゃいいんだっての!?」
地底人と出会ったらとかUFOが舞い降りてきたらとかは考えたこともあるけど、怪奇現象云々はちょっと……
「おやおや。この程度で音を上げるとは情けないじゃないか。」
「へ?」
またも唐突な声。辺りを見回すと、八百屋の庇に腰掛ける少女が……待てよ。さっきこんなやついたか?
「さて。お前がここにいる理由は他でもない。私が呼んだからだ。むしろ引っ張り込んだと言う方が正しいかもしれないが。」
螺鈿のような輝きを持つ和服に身を包み、地に擦ってしまいそうなほどの黒髪を揺らしながら語る。小学校高学年とかそのくらいに見えるけど……大人びた印象も受けるんだよな……何歳だ?
「現状は飲み込めていないか。……致し方あるまい。」
庇から飛び降り、裾を払いつつ俺の前に立った少女。改めて見ればかなり可愛いことに気付く。
目が大きいながらも均整の取れた顔立ちと、すっきりとした体付き。元々日本人らしい見目形と和服を着ていることとが相まってか、日本人形のような印象すら抱かせる。
……控えめに見て、ロリコンが涎を垂らして発狂するレベルの美少女だ。
「……お前……誰なんだ?てか親は?」
「おらぬ。元からな。」
元から、という言い方に違和感を覚えつつ、次の言葉を待つことにする。正直あれやこれや聞いたとしても半分理解できるかどうか……
「まあよい。早速だが選んでもらうぞ。私にもあまり時間がない。」
「選ぶ?何を?」
聞けば腕組みをしながら顔だけを横へ……さっき黒葉が走っていった方へと向ける。
うすぼんやりとした黒葉の姿と、その後ろから近付くやはりぼんやりとした“何か”。鎌を持った人……と言うより、人の形をした鎌のような“何か”が、彼女を襲おうとするかのようにその手を振り上げていた。
「あれはお前を引き込んだ瞬間から五秒後に発生するであろう現実だ。」
「……は?」
「お前には二つ、選択肢がある。このまま何もせず見殺しにするか、彼女を救うために化け物になるか。」
頭の中は面白いようにグシャグシャになり、自分自身すらも曖昧になっていた。……見殺しは論外。化け物とかはよく分からない。つってもこいつを信じていいかも分からず、黒葉に起こっていることが事実かを確かめる術もない。
それでも、これだけは言える。
「あまり長くは待てない。どうするかさっさと決めることだ。」
……ここは、俺の常識が通用しない世界への入り口だ。
「助けるよ。何をすればいい?」
満足気に口角を上げた少女。
「ただ望め。彼女を助けられる最前の方法を実現できる、お前の望みを。」
俺が黒葉を助けるために必要なもの……力じゃ届かない。頭脳だって役には立たないだろう。……必要なのは……
「ーーー」
「……それが望みか?」
「このくらいしか思い付かないもんで。」
餓えた獣が久方ぶりに獲物を見つけたかのような笑みと共に、彼女は言い放った。
「お前の望み、聞き入れた。」
ご存知の方もいるかとは思うのですが、私が書いているもう一つの小説ではかなりまとめて投稿しております。
が、こちらに関しましては一話ごとの投稿、ないし上下話投稿にしていく予定です。それで亀更新というのは大変申し訳ないのですが、何分多忙な身の上のため、ご理解ご協力の程、よろしくお願いいたします。
評価や感想はどんどん送って頂けると幸いです。特に修正や要望などの感想は後々書き進めていくにも当たって非常に役立つものとなるため、何かお気付きの点などがございましたら遠慮なくお申し付けください。
また、ある程度話が進んだらサブストーリーのようなものも書いていく予定でして。その題材、登場キャラクター、舞台等々のリクエストも今から受け付けております。
それでは、長くなりましたが、また次回お会いできることを期待しております。