カプリッツォ-神々の宴-   作:笠間葉月

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お久しぶりでございます。何とか前回よりは間を空けずに出せました(汗)
そろそろ物語自体も本格的に動かしていきたいのですが…何せオリジナル。設定が多すぎて本編中になかなか放り出せないという…


mirage.-感情-

 

mirage.-感情-

 

翌朝。俺を起こしたのはいつもの目覚ましではなく、五、六回連続で鳴らされたインターホンだった。

 

「客人か。ずいぶん早くに来るのだな。」

「……明らかにイレギュラーだろ。」

 

どうせ昨日の関係か何かだろうとは思いつつドアを開け……

 

「おはよ。ちょっといい?」

 

その関係にも程がある相手を見た。

 

「黒葉?」

「一泊できる準備して付いて来て。説明は道中するから。」

 

いつものどことなくほのぼのとした雰囲気とはかけ離れた真剣な様子に若干圧されつつ、何がどういうことなのかを自分なりに予想する。

まず、彼女と俺はそういう仲ではない。よって、爆ぜろと言われるようなものでないことは明白。

朝のランニングならまだ可能性はあるけど、彼女はトレーニングを1人でやる派だと断言している。俺を呼ぶことはそうないだろう。

でもって……いやいや。んなこと考えなくても間違いなく昨日の関連だろうが。

 

「どっか行くのか?」

「そうだけど……場所に関しては特秘事項なんだ。そこまでは車で行くけど、その場所とか経路とかは見えないようになってるから。」

 

……かなりやばい雰囲気だな……当然か。

 

《早く準備に移ったらどうだ?それ以上聞いてもどうしようもないだろう?》

《それもそうか。》

 

燐の言葉で、流れに身を任せるのが得策だ、と改めて判断する。知らないことだらけだし、何より燐は黒葉が昨日のあれに関係していることを知っていた。その彼女が警戒していないなら大丈夫だろう。

 

「あー……んじゃあ十分くらい待っててくれるか?」

「うん。」

 

真剣な様子……それに加えて、どことなく暗い表情。彼女のこういう表情を見たのはいつ以来だろうか。

 

   *

 

黒葉に案内されたのは極々普通の八人乗りの乗用車だった。……後部座席が前と完全に切り離されており、かつ後部の窓が全て黒塗りであることを除けば、だが。

 

「こりゃまた……」

「ごめん……気分悪いよね。」

 

申し訳なさそうな様子で後部ドアに俺を誘導した彼女。発車してからもそれは変わらず、時折俺を見ては口を開きかけ、結局何も言わずに俯くの繰り返しだ。

こっちから何か言葉をかけてやるのがいいと思いながらも、実際気分がいいとは言えないし、何より何がどうなっているのかはっきりしない状況で言うべき言葉が何なのか、なんて知っているはずもない。

 

《頭でも撫でてやれば良い。》

《そういう歳でもないんだが……》

 

車のドアが開いている間に滑り込み、俺達の後ろ……三列目の座席を占領した燐。おそらくはこれから起こることの大半を知っているはずの彼女だが、それを訪ねても答えることはなかった。

 

『それはお前がお前自身で知るべきことだ。そしてお前自身で判断するべきでもある。』

 

荷造りの最中に聞いた時、そう返された。何のことやら、としか今は考えられないのが何とも言えない。

 

「……」

 

結局ろくに話すこともなく三十分弱。停車してすぐ外から開けられたドアの先にあったのは、どこかの地下駐車場らしき光景と、俺や黒葉とあまり歳の変わらなさそうな少女。それに数台の乗用車のみだった。

 

「お疲れー。飲む?」

 

先に降りた黒葉へ持っていた飲み物を手渡した少女。その目は微妙にこちらへ向けられていた。

 

「ありがと。」

「……彼が騒ぎの原因?」

 

騒ぎ、という単語に違和感を覚えつつ、ちょっとばかり少女を観察してみる。

やっぱり歳はそこまで変わらないだろうけど、若干大人びた雰囲気を感じるし……一つか二つ上かもしれない。まあ黒葉の様子からして、歳が違っていてもそこまで離れてはいないはずだ。

顔立ちは日本人らしいものの、鼻の高さや少しだけ灰色の目など、西洋の血が混ざっていることを思わせる。本人から聞いていない以上正確なところはわからないけど……

体型はごくごく普通……痩せているわけでもないし、太ってもいない。というより筋肉質な方だろう。ホットパンツにTシャツとかなり軽装なだけに、各所に入った浅い筋が際だっている。

 

「そ。沙羅がご執心でさ……」

「なーる。通りでゆずが出たわけだ。」

 

……この二人性格似てるな。

 

「あ、紹介するね。彼が件の奏滝聯君。私のクラスメートで幼なじみね。で、こっちが私の親友の瑞希(みずき)。」

 

先ほどよりも少し明るくなった顔で双方の自己紹介の流れへ持って行ってくれた黒葉。……にしても親友か。んじゃあやっぱ同い年……

 

「……短いなあ……もうちょっと説明してくれたっていいのに。……えっと、奏瑞希(かなで みずき)。ゆずのクラスメートだと……私が一つ上かな。よろしくね。」

 

……じゃなかった。

 

「ああ、はい。さっき言われた通り、こいつとはかなり腐れ縁の奏滝聯です。よろしくお願いします。」

「ちょっ!腐れ縁!?」

 

何か言いたげな黒葉を宥めつつ、奏さんは苦笑しながらこう言った。

 

「敬語なんていいって。どうせ一つしか変わんないし、何より私が窮屈だし。」

「そうですか?……じゃないか。それじゃあ……改めて、よろしく。」

「ん。よろしく。」

 

……やっぱりこの二人……似てるんだな。

 

《両手に花……色男じゃないか。》

《よせっての……》

 

冷やかすように言った燐の声が、その後から急に真面目な声色へと変わる。……ちょうど、俺に選択を迫ったときと同じような声だ。

 

《どこまでよろしくするつもりだ?》

《……と言うと?》

《詳しく言う気は毛頭ないが……お前も薄々は感づいているだろう?彼女もお前やその黒葉と同じ、何らかの能力を持つものだ。昨日今日で分かるとおり、その能力者が組織立っている……お前はそれに対してどうするつもりだ?》

《……》

 

直球で来た質問への回答に窮し、ひとまずは歩き出した二人について行く。

たぶん俺は……彼女が言いたいことの何割かすら、完全には理解していないんだろう。その証拠に、と言っては何だけど、どこまでが日常でいられる境目なのか全く分からない。

 

《……どうするかなど決まらない、か。仕方ないのかも知れないな。》

《正直何も分からないんだよ。どうするかの前に何をしたらダメだ、とかもさ。》

《そうか……なら、お前はお前が持て。今はそれだけで良い。》

 

はっきり言って車の屋根の上からわけの分からないこと言われても困るんだけど……まあいいか。

 

「で、だ。君を呼んだ理由なんだけど……心当たりはある?」

 

奏さんがこちらを振り向きつつ口を開いた。ここに呼ばれた理由……たぶん昨日のことだよな。

 

「昨日のあれで間違いない?」

「正解。ただ、そのあれっていうのは何を指して言ってるのか、ってのも聞きたいんだ。」

「黒葉といたあの空間とか、そこで吹っ飛ばした化け物とか……」

「その通り。でももう一つ。」

 

笑顔なのは変わらないものの、微妙に真面目な表情が混ざってきた感じがする。あの空間と化け物と、それにもう一つ……

 

「……ものすごく速く動いたこと、とか?」

「全問正解。自覚はあったんだね。それで……えと……」

 

ポケットから四つ折りの紙とペンとを取り出し、何かを記入しつつ次の質問を飛ばしてきた。いくつか聞くことがあるらしい。

 

「その能力を使ったのって何回目?」

「初めてだった。そもそもこんなものがあること自体昨日知ったことだから……」

「初めて!?」

 

驚きしかない黒葉の叫び声が、今歩いている廊下に木霊した。……どうやらかなり長い廊下のようだ。

 

「初めてであんなに速く動いたの!?何で!?」

「いや何でって言われても……」

 

助けを求めて奏を見るも、その奏まで驚きに満ちた表情を浮かべている。

 

「……それ本当?」

 

……って言うか怪しんでる?

 

《当然だ。あの速度を出せるようになるまで、普通なら数百回使用する必要がある。》

《……え?どゆこと?》

《私がお前にコピーした能力はそれ自体特殊でな。そもそも能力は願いなどでその力を高める類のものではない。持ち主の鍛錬によってのみ成長するものだ。》

 

つまりはその鍛錬をすっ飛ばしている、というわけなのだろうか。だとすれば二人の様子も頷ける。

 

「……ゆず。とりあえずテストから済ませてもらわない?使用回数チェックも出来たよね?」

「むう……」

 

いつもの快活さから考えると今の黒葉はかなり静かに感じられる。雰囲気が、だが。

 

「よっし。じゃあ聯君……だったよね。君の能力に関してテストしたいんだけど、良いよね?」

 

明らかに拒否権を与えてくれなさそうな奏の様子に気圧され、少々萎縮しつつ頷いた。断ったとしても……半ば強引に連れて行かれるのが関の山だろう。

 

《厄日だな。》

《誰のせいだと……》

《それが望んだ者の定め。負うべき責務だ。》

 

元々馴れ合いを好みはしなさそうな燐。でも今は、どこか突き放すかのようだ。

 

「それじゃあ……」

「?」

 

流れるように俺と黒葉の手を取った奏。何が何だか分からずにいると……

 

「あ、目閉じた方がいいよ?」

「へ?」

 

黒葉からの忠告を聞いた直後、俺はすさまじい目眩に襲われた。

 

   *

 

「おかえりなさい、柚子香。……彼が?」

 

目眩から解放された直後、黒葉や奏とは別の誰かの声が後ろの方から聞こえた。かなり落ち着いた声だけど、いったい誰だろうか?

 

「うん。奏滝聯。沙羅ご所望の一品だよ。」

「一品って……別に物扱いする気はないんだけど?」

 

楽しげな話し声の中振り向いた。

黒葉と奏。それにさっきまではいなかった二人と、さっきいた場所とは間違いなく別の場所の風景。……えっと……?

 

《転移だな。三人同時に行えるか……よい能力だ。》

《転移?》

《そこの奏が今やったことだ。彼女が能力者であることくらいは分かっていたはずだろう?》

 

なるほど分からん。そういうのが能力なのかもしれないけど。

そうこうしていると、今現れたばかりの二人の内一人がこちらへ近付いてきた。ここに来てから初めて出会う男子だ。

 

「初めまして奏滝さん。百目鬼月咲(どうめき つかさ)と言います。」

「奏滝聯。その様子じゃ知ってそうだけど、黒葉の幼なじみだよ。よろしくな。」

 

少しあどけなさの残る中性的な顔立ち。12か13歳といったところだろうか。

顔やほっそりとした体型だけを見れば女の子のようだけど、その声は男性的だ。……正直、少し高くすればそのまま女声に変わりそうなのは気にしない。

 

「えっと……沙羅さん。まだここへの所属は承諾してもらってないんですよね?」

「ええ。」

「そうですか。それじゃあ、まだ機密は機密ですね。」

「言わなくて良いことは言わないように。これからテストだから。」

 

物静かな性格……いや、穏やかで物腰が柔らかい、の方が正しいだろう。

 

「なるほど……それじゃあ奏滝さん。無茶して四散しないように気を付けて下さいね?」

 

……前言撤回。

 

「ごめんごめん。彼、毒舌家で天然入っててついでに超弩級のサディストだから。気にしないであげてよ。」

「えぇぇ……奏さんひどいですよ……」

 

不満げな百目鬼。言われても仕方ないレベルのヤバさだったのは言わない方がいい類なのかもしれない。

その様子を眺めていると、もう一人の人もこちらへ近付いてきた。さっき黒葉から沙羅と呼ばれていた女の子だ。

 

「沙羅よ。他は省かせてもらうから。」

「え?あ、えっと……」

 

車椅子に乗った彼女はそれだけ告げ、また元のモニターの前へと戻っていく。嫌われているのだろうか?初対面なのに?

 

「沙羅って初めて会う人にはいつもあれで済ませるの。まともに話せるまで一週間かな。それも事務的。」

「……マジ?」

「うん……ちょっといろいろあってさ。」

 

暗い表情で語る黒葉。……その顔に、見覚えがあった。

 

「……分かった。」

 

これ以上は聞いてはいけない。沙羅がどうしてそういう形を採っているのかは分からないけど、それだけは理解できる。

 

「柚子香。司令から返信はあったから。テストを受けさせて。」

「ん。じゃあ奏滝君、付いてきて。」

 

部屋の外へ俺を誘導する黒葉に従い、三人が残る部屋を後にした。

……そういえば燐のやつ……どうしてるんだ?




二人も新キャラが出てきて戸惑う方もいるかもしれませんが、どちらもこれから深く書き進めていく予定です。
…かなり後になるとは思いますが…今回出てきたテストなるものが意外と尺を取りそうですし…
とりあえず本日はここで終わりとなります。また次回お会いしましょう。
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