カプリッツォ-神々の宴-   作:笠間葉月

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二月…ですね。先月、何やかんやあってこっちの作業が出来ず…申し訳ありません。
オリジナル作品は自由度が高い分、まとめるのがけっこう大変ですね(^^;)ぼちぼち頑張っていくことにします。


rounder.-花弁-

 

rounder.-花弁-

 

「はい。ここの制服。遠征するときはこれを着るの。それからこっちは戦闘服。ここから出撃するときは結構使うかな。両方三着ずつね。」

 

……なるほど。こうして部屋は埋まっていくわけだ。

 

「……聞いてる?」

「……埋まってる……」

 

だだっ広い収納スペースがあるから何かと思えば……何のことはない。支給品やら備品やらがとんでもなく多いのか。

ある程度しっかりとした荷物を持って再度訪れたこのファングという組織の施設。入り口で迎えてくれた黒葉の後ろには、モーター付きの巨大な台車があった。

そこに積まれていたのはさまざまな日用家電。そして家具類を筆頭とした、デザイアやファングからの支給品の類だった。

……それに絶賛埋没中である。

 

「多くないか?さすがにポット二つもあっても……」

「だって瑞希に放り込まれたんだもん。余ってたし。」

 

放り込まれたとかそういう問題ではないはず……彼女に言っても無駄だろうが。

 

《あ、そういや……》

《何だ?私は手伝わないが?》

《いや。それじゃなくってさ。》

 

この施設に来る道の途中で、町を一望できる場所がある。そこに差し掛かったときに思い出したことがあった。

 

《お前ってこの町の名前の由来とかっていう伝承に関わってたりするのか?》

《伝承?》

 

山で罠にかかっていた狐を助けた男が、そのしばらく後に起こった飢饉の際に祠を建てたところ、たちどころに飢饉が収まった。なんでもその男は祠に奉ったのは御狐様だと語ったそうだ。

以来、この町は狐護杜(こごもり)と名付けられ、今まで継がれてきたという話だ。

 

《……古くからここに住んではいるが……どうだろうな?》

《俺に聞かれても……》

 

親父が調べたところによれば、数百年間に渡ってこの地域に住んでいる一族はそれなりに多いらしく、この伝承もそれらの間で語り継がれてきたものなのだとか。一応うちもその一つらしい。軽い決まり事なんかもあるそうで、一族以外には両親などから許しがない限りは口外してはいけない、とか、この町の名前を守っていく、とかがそれに当たると聞いたことはある。その辺りを調べたくて親父は考古学者を目指したのだそうだ。

……まあ、あの考古学教授殿からはそんな風格は微塵も見られないわけだが。

 

「あれ?携帯鳴ってない?」

「……ん?ああ、俺のだ。ちょっと出てくる。」

「うん。じゃあ家具とかは適当に並べておくね。」

「頼んだ。」

 

携帯を取り出しながら部屋の外へ出つつ、電話の相手を確認する。……ある程度予測の付いていた相手だった。

 

「もしもし。」

「……話、聞いたよ。大丈夫?」

 

困惑し、その中で心配している様子の母さん。……久しぶりにこんな声を聞いた気がする。

一年を通じてほとんど家にいない親父と、その手伝いをしている母さんとは、そこまで話す機会があるわけじゃない。母さんはまだ家にいることも多いけど親父はほとんど……たぶん、呼び方の差はそのあたりから来ているんだろう。

別に仲が悪いわけではないし大丈夫……なはずだ。

 

「突然すぎて目回してるよ。まあでも、何とか。」

「よかった……」

「今どこ?ママ友会とか言ってたけど。」

「お父さんと空港にいるの。」

「空港?」

 

……何かあった……というか、何かすごいものでも発見されたとかだろうか?にしたってこんな時に放っとくんじゃないって言いたいんだけど……

 

「またしばらく帰れないかもしれないけど……帰ったらちゃんと話すから。ごめんね。」

「いいって。慣れてる。」

 

あまりこういう場合の答えとしては適当じゃない気もするが、だ。実際母さんは真面目な話をするときはたとえ半年かかるとしても顔を合わせてから会話する。まあそうなると、俺が覚えていないことが多いわけだが。

親父もその辺は全く同じだ。……二人して家を空けまくるのによくやると何度も思ったけど、さすがにそれが何年も続くと慣れる。

 

「……ごめんね。そろそろポートに行かないと。」

「分かった。じゃあ切るよ。」

「うん。またね。」

 

終始沈んだ雰囲気だった話し声が途切れた。……心配かけてるよな……

 

「あ、終わった?」

 

ドアの縁から頭だけ出すようにして黒葉がこちらを見ていた。家具を並べ終わったのだろう。

 

「一応。母さんだった。」

「……そっか。」

 

必要以上の詮索をしてこないっていうのは、やっぱり彼女の美点の一つだと思う。何かと彼女が相談役になっているのもそのせいのはずだ。本人はあまり乗り気ではないようだが。

……その愚痴を聞くのは俺の役目だったりもするのだが……まあ、仕方ない。

 

「んと、軽い家具はだいたい並べておいたから、位置とか確認してもらえる?」

「分かった。ありがとな。」

 

それにしても、あれだけ家具とかが充実しているとなると……あんまり家に帰る必要もなさそうなんだよな……

 

《どうすっかな……》

《何がだ?》

《母さんもしばらく帰ってきそうにないし、こっちに家具とか全部揃ってるしさ。》

《しばらくここに住めばいいだろう。私は構わん。》

《ならそうするか。》

 

部屋の中はすでにそのまま住めそうなほど整頓されていた。当然ながら衣類だの何だのはそれぞれをしまうべき物の前に積まれているが、基本的に自宅にある俺の部屋もたいして変わらない状況なので気にならない。

……て言うか……衣装箪笥って軽い家具だったか?

 

「大丈夫?何か動かす?」

「いや。これで大丈夫だと思う。」

「そっか。」

 

少し汗ばんでいる黒葉。かなり頑張ってくれたらしい。

 

「それじゃあ……うん。瑞希が後で訓練場に来てほしいって言ってたんだけど、もう行く?」

「訓練場って……最初に来たあの部屋でいいのか?」

「そこのこと。案内した方がいいかな?」

「ここの構造とかさっさと覚えたいからな……地図もあるし一人で行ってみるよ。」

 

……正直、彼女がこうして頑張っているときは、見ている方からすると少し痛ましい。無理をしているようには見えないのだが、同じように彼女自身が好んでやっているようにも感じられないのだ。義務感に追われているような……とでも表現すればいいのだろうか?

 

「ん。じゃあ、また後でね。」

「ああ。ありがとな。」

 

もう少し自分のことを考えろよ、と……そんなことを言える身分ではないながらも、そう考えずにはいられなかった。

 

   *

 

訓練場で待っていたのは、なにやら妙に楽しそうな様子で細い鉄の棒を持っている奏と、苦笑いをしながら立っている月咲、その後ろに山積みにされた大量の鉄の塊だった。

どうやら二人は、訓練場の約三分の一を仕切っていそうなガラスか何かの向こう側にいるらしい。鉄の塊も同様だ。

 

「……あのー……奏さん?」

「はい何でしょう?」

 

スピーカーから声が流された。となると、あのガラスはかなり分厚いのだろう。

 

「いったい俺はこの後何をされるんですかね?」

「……それはですね……」

 

突然周囲の空気が変わり、鉄の塊が一つ何もないところから吹っ飛んできた。

 

「なっ!?」

 

とっさに能力を発動できたのか、若干無理のある体勢でその固まりを避けた直後、初めと同じようにパッと消え失せ……同時に二つばかりの拍手が聞こえ……

 

「じゃ、次行くよー。」

 

……察した。月咲がドSなのは知ってたけど、奏もドSだ。

 

《なるほど。速度をのせたままの転移か。最高級だな。》

《何で速度までついてんだよ!のわっ!》

《さっき吸収したお前の速度のいくらかを百目鬼が放出しているのだろうさ。触れずとも使えるとは……あの年で恐れ入る。》

《感心してる場合かっての!》

 

燐と話している間にも五十センチ大から二メータークラスのものまで幅広い大きさの固まりが飛んで来ている。しかも向こうは飛ばした物を回収し、再度射出……弾切れがないわけだ。

 

「あ、奏滝さん。ここはもうフィールドの中ですから、怪我しても大丈夫ですよ。」

「いつの間にっ……ってか危ねえって!」

「一発目を撃った時点で、奏さんがあなたを警戒しましたから。フィールドの形成条件は揃ってるんですよ。」

 

形成条件……

 

《一つ、アイヴォリーや能力によって作成されたものがどちらかの警戒圏内に自身を合わせ複数存在すること。奏が警戒した時点で、あの二人とお前。満たしている。二つ、その内のいずれかの個体が戦闘態勢を整えること。攻撃している向こうはもちろん、避ける体制を整えているおまえも同様だ。こちらも満たしている。三つ、フィールドにいないこと。元はただの訓練場だったわけだからな。三つとも満たしているではないか。何を驚いている?》

《ぐっ……》

 

確かに満たしてはいるけど……せめて始める前に説明ってものを……

 

「えっと、それでは、フィールド内における戦闘について説明しますね。」

「そういうのは落ち着いているときに……いやせめて飛ばすな!」

「やーだよー。ガンバ!」

「……というわけで説明していきますね。」

 

鉄の塊に時折視線を向けつつにこやかに話し出した月咲。……あのガラス破ってあの二人殴れねえかな?

 

「まず、フィールド内での怪我や物質に対する破壊などは実世界に戻った時点で無効化されます。ですが、疲労や痛みに関してはある程度引き継がれます。ではフィールド内ではどこまでいけばこちらの勝利、または敗北となるのか。これは、実世界ならば死亡するレベルのダメージを受けたり、ただ単に気絶する、というようなところで決定されます。要するに意識を失えば、ってわけですね。また、フィールドの消失にはさらにいくつか追加され、双方が戦闘の意志を失うこと、双方が双方の警戒圏から出ること、そしてフィールド外部からの干渉も含まれます。まあ、最後のは一度も確認されていませんけど。」

 

話の間も絶え間なく飛ばされてくる塊に潰されそうになりつつも何とか彼の言葉を理解し、とりあえず今のままだと解決できないことは分かった。せめてあのガラスがなければ良かったんだろうけど……

 

《……ふむ。強化ガラスというやつか。お前には破れんだろうな。》

《だと思ったよ……》

 

暇そうに欠伸をしながらガラスや壁を調べ始めた燐。それにしてもこの能力……限界値がどの辺りなのかは分からないけど、今のところは時速百キロとかそんなものだろうか。これ以上はなかなか上げられそうにないけど……

 

「まあそんなわけですから、腕でも足でも頭でもいくらでもペチャンコにされちゃってください。マッシュでも良いですよ?」

「誰がなるか!っていうかこれの目的聞いてないぞ!」

「終わるまで教えちゃいけないんです。頑張ってくださいよ。」

 

……この約一時間後、集中力が切れて速く速くとだけは考えなくなった辺りで鉄の塊をもろにくらい、壁まで吹っ飛ばされて終了した。マッシュにならなかっただけまだましだろう。

 

   *

 

「沙羅ー。れんれんの限界測定終わったよー。」

 

……いつの間にかあだ名付け終わってる……ああいうのって楽しいのかな?

 

「うん。今教える。つっくー、データ貸して。」

「あ、はい。」

 

内線で記録を伝えていく奏さん。……そういえば沙羅さんにだけはあだ名付けてないんだっけ。断られたんだろうなあ……

 

「そうそう。……え?つっくー?今扇風機になってるよ。れんれんの。」

「せめて風送ってるくらいにしてくださいって……全くもう……」

 

この能力も便利なのか面倒なのか……風を受けてそれを吸収して複製して放出する……自分でやっていて何だけど、とても変な能力だな。

 

「うんそう……限界時間はたぶんないかな。彼の集中力によってそうな感じだったよ。最後の方はよそ見しかけてたし。……最高速度?今回は時速97,25km。でも朝は300越えてるんだよねー……加速の問題かな?」

 

そんな差が出るような加速が本当にあるんですか?そう問いたい気持ちはあるけど……まあ、いいや。たぶん沙羅さんならすぐに気付くだろうし。

 

「ん。了解。じゃあれんれんが起きたらそう伝えるね。」

「終わりました?」

「うん。つっくーはもう戻っていいよ。」

「そうですか。……それじゃあ、お疲れさまでした。」

「お疲れー。」

 

……姉さんに相談してみようかな。




本題に入るのも大変です…(汗)なかなか思うようには進められないんですよね…
まあでも、まだまだ書きたいことはたくさんありますし…暇を見つけて頑張ろうと思います。
…そして世間はバレンタイン。渡す側でももらう側でもない私。駅前では小さな箱を抱えた女の子やそれを受け取る男の子。
…辛い季節ですなあ…
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