カプリッツォ-神々の宴-   作:笠間葉月

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お久しぶりです…というより、お待たせしました。
リアル多忙その他諸々で、なかなか書くことが出来ず…(言い訳)
そんなこんなで、本日は二話まとめて投稿いたします。


open.-初陣-

 

open.-初陣-

 

翌日。

日曜日、という貴重な休みを鉄の塊に占領され、結局休めずに迎えた月曜。……眠い。

 

「よっ。眠そうな顔してんなあ。」

「実際ねみいよ……」

 

かなりの確率で通学路の途中で章とはち合わせる。……理由は一つ。だいたいこの時間が、のんびり歩いても朝礼に間に合う程度の遅さであることだ。

にしても相変わらず元気なやつ……

 

《友人か?》

《幼なじみだよ。黒葉と同じだ。》

 

学校まで付いて来るつもりらしき燐。彼女が言うには、俺の近くの方が霊力が集めやすいとのこと。よく分からないのは確かだけど、最低でも邪魔になることはないし、外してくれと言えばすぐに離れてくれるとも言っている。問題はないだろう。

 

「そういや例の通り魔、捕まったんだってな。ニュースでやってた。」

「へえ……早かったな。」

「どうせ暇なんだろ。この辺の警察はさ。」

「……有り得る……か?」

「知らね。」

 

自分で言っておいてそれはないだろ、と彼に説いても無駄……というより聞く耳を持ってもらえた試しがない。これまで何度繰り返したことか……

それにしても、最後まであれは通り魔として処理しているんだと考えると少し複雑だ。物事を裏から見る、というのはこういうことなのだろうか?

 

「ってかさ、歴史の課題どうせもう終わってるよな?」

「また手伝ってくれって?」

「その通り。」

 

先週出された課題だ。内容は、信仰ってものについて調べて来るという至って簡単なもの。信仰という概念について調べるもよし、一つに絞って詳しくまとめてもよしと、自由度の高いレポートである。

……問題は、そのテーマを教師に提出し、それに乗っ取って行わなければならない点だろう。ちなみに俺は神道について。章は……

 

「……だからカニバリズムなんてやめとけっつったのに……」

「いやあれには深いわけが……」

「周りにのせられただけだろ。……何人それでやるんだったっけ?」

「八人。」

「……バカだな……」

 

カニバリズムとは食人文化のこと……要するに、際物だ。起源の一つとして神への生け贄として人を捧げていたことが挙げられているし、確かに今回の課題のテーマとしてはまあ……適当だとは言えないが、一応間違ってもいない。

 

《ほう。懐かしいな。》

《は!?》

《人と関わるようになった頃は私のところにも来たさ。その場でやめさせたが。》

《……おう……》

 

カニバリズムの目的には諸説ある。黒魔術の一環だったとか、神を目指していたとか。面白いことに、相手が人でないことを示すためだ、という説まである。

 

《次に来たときには立派な雄鹿の頭部だったな。全く……人でなければ良いわけではないのだが……》

《ありがち……だったのか?》

《知らん。……正直なところ、何もいらなかったよ。別に私は機嫌が悪い程度で災害は起こさないからな。》

 

たとえば、ある部族Aが部族Bの人間を喰らったとする。Aは、Bは人ではないから食べて良い、と主張。Bは、Aは人ではないから人を食べたと主張する。……一種の政治取引にも近いと言えるだろう。

 

《彼らは私を信じてくれていた。それだけで十分だったのだが……》

《……まさか捧げ物の処理なんざ面倒だ、とかそんな話じゃないよな?》

《家に放り込んでも良いようなものならともかく、獣の臓物など面倒で仕方がないとは思わんか?》

《それはそうだけど……》

 

そんなカニバリズムをオカルト好きが書こうと思いつき、かつそれを周りに伝染させ……

 

「頼む!親友の頼みだと思って!いや親友じゃなくてもいいから幼なじみの頼みで!」

 

……こんなのが出てくるわけだ。

 

「……よし。昼飯二日間で手を打とう。」

「ありがとうございます!」

 

章の場合はたいていこうやって切り抜けるのだが……残りの七人がどうなるかが見物というか、結果が見えてるというか。

ちなみに理系科目はまた別のやつに頼んでいる模様。……しぶとい。

 

   *

 

「よーし奏滝。f(x)を微分すると何だ?」

 

f(x)=x^2-7x+7√3

……何のこっちゃ?

 

「……えっと……?」

「んじゃあ前行くか。」

「2x-7です。」

「正解。」

 

何というか……もう完全に私立文系だな。

 

「お前……むっちゃ簡単だぞ今の。」

「うっせー。」

 

わざわざ後ろ向いてまでバカにすんなってのに……と、かれこれ一年以上いろいろなやつに言い聞かせているのだが、一度として聞き入れてもらえたことがない。

 

《……ふむ。つまるところ、お前は得意不得意がすさまじく分かれているわけか。》

《さり気なくバカにしてないか?》

《安心しろ。直接だ。》

 

……こいつもか。

 

「……?」

 

ポケットから小さな違和感を感じた。メールでも来たのだろうか?

……この時間に?誰から?

幸いにして俺の席は最後列。それも端に近い。メールを確かめるくらいならいけるはずだ。

 

《どうした?》

《メールっぽいんだけど……こんな時間に来るか?》

 

ネットでのアカウント登録はEメール、メルマガもそっちに飛ぶようにしてあるし……それどころか携帯会社からのメールすらも止めてあるのだ。

 

《……誰だ?これ?》

 

未登録のアドレスのようだ。迷惑メールに振り分けられてはいないみたいだし、危険性はなさそう……

……思い切って開くか。

 

〈巫高校南三キロ地点にドールの発生を確認。もう授業も終わるでしょう?二人で行ってきて。沙羅より〉

 

黒葉にも同時送信されていたメール。そういえば昨日の誓約書……メアドの記入もあったな。そんなことを思い出しつつ文面の場所を頭に思い浮かべる。

……ここから南……住宅地か。

 

《端的だな。分かりやすくて良い。》

《っていうか、ドールって多いんだな。》

《あれらは出現自体はどこでも可能だったはずだ。そこがフィールドでなければ活動は出来ないが。》

《というと?》

《フィールド外に出現した場合、そこがフィールドになるまで動かない。それだけだ。》

 

なら放っておいてもいいんじゃないか、と聞こうとしたのとほぼ同時に、それが出来ない理由を説明された。

 

《ただ……能力というものは、そこに存在するだけで周りに影響を及ぼすからな。……まあ、毎日すぐ近くにいる、というわけでなければさほど問題はないが……放置も出来ん。……面倒極まりないだろう?》

《影響……たとえば?》

《能力の発現を促してしまうこと、そもそも能力を持たないものを能力者としてしまうこと。大きなものはこの辺りか。》

 

毎日近くにいると、と言うことは、能力者の家族とかは能力を持ちやすいわけか。うちは大丈夫だろうけど……一応学校では気を付けた方がいいのかもしれない。

 

《んじゃあ特定の誰かと毎日会う、とかは控えないとまずいのか。》

《いや。お前が気にする必要はないさ。さっきのは能力がダダ漏れの場合だ。ドールならいざ知らず、私やお前は疲れ果てていない限りは問題ない。他の能力者もな。》

《そんなもんか……》

 

そうこうしている内に授業が終わり、黒葉が体を伸ばしつつ近付いてきた。

 

「メール見た?」

「ここの南に、ってやつだろ?見たよ。部活は休みだな。」

 

高二になると、この高校の部活はかなりゆるくなる。スポーツ選抜を狙っているのでなければ、週一回は部活に顔を出しつつ自主練習をしていれば良い、ってところも少なくない。

剣道部もそんな感じだ。特に大会で良い成績を収めていれば、一言休むと伝えるだけで良くなる。その分自主練を重くするわけだが。

 

「じゃあ出るときにブレスレットして。あれで通信とかもするんだ。」

「へえ……」

 

ポケットの中をまさぐりつつ……このサイズでよくやる、と半ば呆れ気味に感心する。それならいっそのことガントレットでいいんじゃないか、というか……

 

「歩きながらいろいろ説明するから、ちゃんと覚えてね。」

「おう。」

 

担任が入ってくるのに合わせて席へ戻った黒葉。戦うってのにのんびりしてるなあ……

 

《まあ、たとえ怪我をしたとしてもフィールドの外に出れば良いわけだからな。》

《それはそうだけどさ……》

 

……どことなく自分を追い込んでいそうな気がする。大丈夫だろうか……

 

   *

 

「要するに、このブレスレットが疑似的なフィールドを作るわけ。フィールドの中にあるものってこっちからは認識できないから、フィールドじゃないけどフィールド、って感じのを発生させておかないと発見すら出来ないの。」

「ふむ。」

「たまにフィールドの外でも動き回れるドールが出たりするけど……ほとんどがフィールドの中に閉じ込められてる。」

「ふむふむ。」

「それを見つけて形を保てなくするか、捕獲するのが私たちの役目ってわけ。分かった?」

「なるほど……だいたい分かった。」

 

……教えてもらっている身でこんなことを言うのも何だけど……黒葉は少しばかり説明が苦手だ。本人も自覚はしているようで……

 

「良かった。さっすが文系の理解力。」

「……貶してないか?」

「どうかなー?」

 

まあ、いつもこんな感じだ。

 

「お前なあ……」

「うそうそ。褒めてるって。」

 

フィールドの中に入った瞬間、外からは知覚されなくなる。黒葉曰く“見えているけど分からない”状態になるのだという。

だからこそ神隠し的な騒ぎにならないそうだけど……それはそれでどうなんだろう……

それを知覚するためには、そいつもフィールドに入ることが必要。そのためにブレスレットを着ける、と言うわけだ。

あくまで疑似的なものであるため、“フィールドの中にあるものが、そこにあることを知覚する為のものであって、それ以上のことは出来ない”ものだそうで……疑似フィールドは実際にフィールドへ足を踏み入れた瞬間にかき消される程度なのだそうだ。

 

【そろそろポイントだよー。準備してねー。】

「あ、うん。了解。薙刀と刀出せるようにしてくれる?」

 

ブレスレットから流れた奏の声。……一昨日黒葉が叫んだのってこのことか。

 

【刀って……あ、れんれんか……オッケー。竹刀と同じくらいのでいいんだよね?】

「それで頼む。……っていうか、何で分かってんだ?」

【んー?ふふふ。私の情報力はなめちゃいけないのだ。】

 

こっちから剣道部だっていうのを伝えた覚えはないし、ファング側で調べていたのかもしれない。……知られたからどう、って話でもないか。

 

《腕前も知られているだろうな。》

《……あれ、自分で言うのも何だけど半分運だったんだぞ?》

 

個人、団体、どちらも全国大会ベスト8進出。……うちの剣道部の売りにされている成績であり、個人で進出したのは俺だ。

 

《運も実力の内だ。だいたい、その成績を残したということ自体誇るべきことだと思うが?》

《だと嬉しい。》

 

……正直なところ、あそこまで進んだ直後は全く実感がなかった。部のメンバーやら顧問やら両親やら……黒葉と章も自分のことのように喜んでいる中、一人何だか冷めた気持ちでぼんやりしていたように思う。

実感が得られたのはその翌日。黒葉と章が俺をファミレスに連れ出し、小規模ながらも打ち上げをやってくれたとき……試合中よりも気持ちが高ぶったのを覚えている。

 

「いたよ。」

 

……今は、それ以上に。緊張と使命感。まるで試合前のような、体が地面に押し付けられているような感覚。そこに、半分以上ただの殺し合いでしかないことへの恐怖が少々。

 

【フィールドの展開を確認、っと。来るよ!】

「薙刀お願い!」

 

人間のような胴体に、ガトリングのような腕。足はなく、頭もない。不完全な人の体に無理矢理銃を取り付けた。そんな感じの生き物が、その腕をこちらへ向けている。

 

「刀も頼む!」

 

……非現実の幕開け、か。




このまま次話へ続きます。…次はかなり短めだったかな?
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