教祖様になっちまったぜ   作:アルピ交通事務局

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スゴ技の割には技は無い

 

「どうだ守、ここが稲妻町の鉄塔広場だ」

 

「おー!」

 

 円堂守になり2日が経過した。円堂守の父である円堂広志に連れられて稲妻町の鉄塔広場にやってきた。

 ここがあのイナズマイレブンの聖地というか現地である稲妻町の鉄塔広場……感激だ。

 

「スゴいな父ちゃん」

 

「そうだろう。だけど、ここだけじゃないんだぞ」

 

 鉄塔広場で笑みを浮かび上げる父ちゃん。

 こっちだぞと俺の手を引いて連れて行ってくれたのは鉄塔の上だった。

 

「どうだ守。稲妻町が一望出来るんだ」

 

「…………スゲえ…………」

 

 原作でも円堂守のお気に入りの場所であった鉄塔の上から眺める景色は最高だった。

 荒んでいる俺の心には最高と言えるぐらいには最高であり……円堂守になった罪悪感が襲ってくるが、それよりも前向きに生きようという気力が湧いてくる。俺はこの世界に根ざして生きる……覚悟はもう出来たし流すべき涙も流したんだから前向きにいかないと。

 

「ほ〜ら、守、いくぞ」

 

「うん!」

 

 そんなこんなで親子のコミュニケーションを取る。

 キャッチボールではない。サッカーボールを互いに蹴り合ってパスするだけの至ってシンプルな事だ。シンプルだけど、楽しい。体育会系じゃない俺だがやっぱりたまには体を動かしておかないといけないのがよく分かる。

 

「とう!」

 

「あっ」

 

「あ、ごめん。父ちゃん」

 

 軽いボールのパスのコミュニケーションだが、此処まで来たのならばと今の自分がどれだけ出来るのかを知りたかった。

 思いっきりボールを蹴れば父ちゃんが反応する事が出来ない速度で別の方向に飛んでいってしまった。

 

「ハッハッハ、守。中々いいシュートを撃つな」

 

 父ちゃんは俺が変なところにボールを飛ばした事については責めない。

 やっぱり聖人だな……イナズマイレブンって屑か聖人か男前かの人種なところがあるからな。

 

「よっと……今度は父さんの番だぞっ……あれ?」

 

「父ちゃん、思いっきり空振ってるよ」

 

「ごめんごめん」

 

 ボールを拾った父ちゃんはカッコいいところを見せようとシュートをするが空振りに終わる。

 カッコいいところを見せなくても立派な父親なのは分かりきっている事なので見下す事などはしない。それよりも今はこの時間を楽しむんだ。

 

「よっと、ホッ、ふっ……」

 

「お、上手いぞ守」

 

 伊達に超次元サッカーな世界観じゃない。

 小学生にすらなっていないこの肉体ですら簡単にリフティングが出来る。前世では全くと言っていい程リフティングなんて出来なかったって言うのに……まぁ、この世界の住人、最低でもキャプテン翼レベルのサッカーテクニックを所有してるからなぁ……

 

「父ちゃんも!」

 

「父ちゃんに出来るかな……よっ、ありゃ……」

 

 父ちゃんにやってもらってみようとするけれども父ちゃんは失敗する。

 円堂大介の血は継いでいない父型の方であり見た目や職業からして極々普通の人なのがよく分かる。けどまぁ、本来はコレが普通なんだ。リフティングって地味に高度な技術なんだ……それをさも当たり前の如くやっているサッカー漫画のキャラ達がおかしいんだ。

 

「ハハハ、お祖父ちゃんみたいに上手く出来ないか」

 

「祖父ちゃんって、サッカー上手かったの?」

 

「ああ、なんでも日本代表に選ばれたとか……あ、母ちゃんにはこの話内緒な」

 

「なんで?」

 

「母ちゃん、サッカーがあんまり好きじゃないんだ」

 

「そっか……サッカー、楽しいのにな」

 

 円堂大介がサッカーが原因で殺されたみたいなものなので、母ちゃんはサッカーが好きじゃない。

 実際のところは生きているけれどもサッカーが原因で様々な不幸が巻き起こっているのだからサッカーが好きじゃないと言われても当然だ。でも……なんだかんだで主人公である円堂守がサッカーをやる事に対して文句を言っていない。現に今日、サッカーボールを持って鉄塔広場に父ちゃんと一緒に行く事についてなんも言わなかった。

 

 あ〜クソっ、割り切ったって言うのに罪悪感が半端じゃない。

 ホントにさ〜なんで教祖様なの?円堂教にすらならないであろう自分が居るって言うのに、なんでよりによってこの手の属性のキャラなの?いや、藤丸立香や三雲修みたいな覚悟ガンギマリのメンタルおばけの方がもっと嫌だけども。

 

「さぁ、来い守。父ちゃんを抜けるかな?」

 

「抜いてやるぜ!」

 

 取り敢えずは今を楽しもう。父ちゃんが壁になるので俺はドリブルの練習が出来る。

 父ちゃんの方が今はまだ身体能力も体格もなにもかもが上だから抜くに抜けない……けど、時間があれば抜く事が出来ると感じている自分が居る。オリオンの刻印では才能があるとかどうとか言われていたが、円堂守は才能よりも努力でカバーしているタイプだ。

 

 史上最強の弟子ケンイチで100の努力は1の才能に劣るかもしれないけれども1000の努力は1の才能を凌駕する的な事を言っていた。

 サッカーの詳しい歴史は知らないが蹴鞠というものが日本には存在していた。サッカーに似たような競技のスポーツが過去には多く実在をしていた。1つの才では100年以上の研鑽には及ばない……努力すれば必ずしも報われるとは限らないけれども、報われた奴は決まって努力している。ていうか冷静になって考えてみればまともに努力せずに成果を上げた人間を見たことねえぞ。

 

 俺は俺を疑う、俺は円堂守になる事が出来ないのを自覚しているから。

 よく漫画とかで人を信じる心とか思いやりとか言うけれども俺はそれと同じぐらいに人を疑う心とかも大事だと思っている。人を疑う心と信じる心はどちらも心だ、表裏一体、表と裏に過ぎず1枚のカードになっている。だから表だけを見ていても意味は無い。裏も見ておかないと。

 

「……よっ、ほっ……」

 

 だからマメにやっておく。

 今の時点で普通にリフティングをする事が出来るぐらいだから円堂守のスペックは割と馬鹿には出来ない……大手の電力会社に就職しようかなと大学の進学を視野に入れていた何処にでも居る工業高校生がサッカー少年になっちまったのか……第二種電気工事士とか乙四とか工事担任者とかDD3種とか原付の免許とか色々と資格を手に入れていたのに全てがリセットされた。割とショックである。

 

「っと、そろそろ帰るか。母ちゃんがご飯を作って待ってくれてるぞ」

 

「うん!」

 

 そんなこんなで昼になったので家に帰る。鉄塔広場までの道のりは覚えたので、小学生ぐらいになったら通い続けておこうと思う。

 父ちゃんの手に引かれて家に帰ると母ちゃんがお昼ごはんを用意してくれていた。お昼ごはんは美味しかった。

 

「さて……どうすっかな」

 

 遊んだので勉強をしておくとだけ言って部屋に引きこもる。

 小学生レベルの勉強は……大丈夫な筈だ。工業高校で電子工学ばっか習ってて、一般教養が怪しいところもあるが分数の割り算とか出来るので問題無い。中学レベルは……中3辺りは怪しいけどなんとかするしかない。電気工学だったら余裕なんだけどな。

 

「コレを読まなきゃ話にならない……汚えな、マジで」

 

 机に向かい合って一冊のノートを開く。

 爺ちゃんこと円堂大介のスゴ技特訓ノート、円堂守の知識が確かならばつい最近サッカーボールとともに見つけた物である。恐ろしいぐらいの悪筆で文字が書かれている……が、なんとなくだが読むことが出来る。なんでかはよく分からないがなんとなくで読むことが出来るんだ。きっと俺が円堂守になったからだろう。

 

「え〜っと…………GK系が多いな」

 

 爺ちゃんは雷門中等の監督を務めている。選手としても一流だけど監督としても一流な人だ。

 200年後の未来でぼくの考えた最強サッカーチームなる覇者の聖典とか言う一歩間違えれば黒歴史になってしまう様なノートが残っているぐらいだ。スゴ技特訓ノートにはサッカー選手に必要な特訓方法が載っているのだが、爺ちゃんの本職がGKな為かGK系の技が沢山載っている。

 

 つーか、基礎的な特訓方法以外はなにも載ってない。

 唯一の救いがイナズマイレブンの顔とも言うべき必殺技の1つであるゴッドハンドと熱血パンチのやり方が書かれているぐらいだ。スゴ技特訓ノートとか書いてるくせに載っている必殺技がGK技しかないってどうなんだそれは?

 

 とはいえ、なにも無いよりはマシ……だよな?

 インターネットでなんでも調べる事が出来る時代になっている。効率の良い筋トレとかをググれば出てくるこのご時世……忘却バッテリーだったっけ?今の時代ネットとかで特訓方法とかは調べ放題だから監督とかは特に不要だけど、監督はここぞという時の決断する事を代わりにしてくれるとか言ってたな。

 

「俺は…………パーフェクトなオールラウンダーを目指さないとな」

 

 円堂守はサッカーものには珍しいGKな主人公だ。

 GKな主人公なだけあってシュートはキャッチしてくれるけれども、円堂守は前線に出るGKだ。ゴールを守るのが仕事、エンドを守るから円堂守なのにそれを放棄して普通にシュートを撃ち込む。なんだったら普通に必殺シュートを持っている色々と異色なGKだ。

 

 第二期である脅威の侵略者でGKでありながら多彩なシュート技を持っているからとリベロに転向させられた。

 円堂守が撃つシュートはどれもこれも強力なもので、GKを任せても問題は無さそうな奴が居たから出来た事でその判断は間違いじゃない。そして3期の世界への挑戦でもリベロになっている。GKでありながらガンガンと前に出ている。

 

 つまりはなにが言いたいかといえば俺は本職はGKだけども全部のポジションを熟せるパーフェクトなオールラウンダー、完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)を目指さなければならない。サッカーもので全部のポジションが出来る主人公なんて割と前代未聞の事だが……まぁ、努力すればなんとかなるだろう。というか努力しないといけない、俺の肩には日本の命運が掛かっているからな。

 

「……無理だよなぁ……」

 

 ふと原作で起きた悲劇を思い出す。

 悲劇に巻き込まれるキャラを救うとかいう二次創作でありそうなことを一瞬だけ考えてはみるが、俺になにが出来るって言うんだ?未来人や石油王を相手に一般人が打ち勝つ方法がサッカーしか存在してない。サッカーに勝てば平穏を取り戻す事が出来る。サッカー万能説だよ。

 

 未来の知識があるせいか苦しむ。

 もっと頑張れば救うことが出来たかもしれない存在を俺は見捨てる……コレはきっと俺のエゴだろうな……あ〜くそっ、罪悪感が半端じゃない。

 

「…………ダメだ、ダメだ、ダメだ。こんなんじゃ円堂守とは程遠い」

 

 俺は円堂守にはなれないけれども、円堂守の様な人間にはなりたいなとは少しだけ思っている。

 主人公だからのノブレス・オブリージュの精神はよくない、むしろこの現状をどうやって楽しむかを考える。円堂守は勝つためにサッカーをやっているんじゃない、楽しむためにサッカーをやっているんだ。俺もその精神を見習わないといけない。

 

「悲劇のヒロインは無視……南無阿弥陀仏……」

 

 俺のエゴだとしても一応は合掌だけしておく。

 そういえばこの世界って神様とか悪魔とか幽霊とか普通に居る世界なんだよな……。

 

「先ずは体作りからだな」

 

 小学生の勉強時間を省く事が出来るのはなにかと便利だがこれから色々と覚えておかないといけない。

 今の俺にはサッカーの技術云々よりもサッカーをするのに必要な筋肉が足りない。史上最強の弟子ケンイチみたいに全身ピンク色の筋肉にする事が出来ればいいけども、あれは哲学する柔術家が10年以上の歳月を掛けて辿り着いた秘伝の境地だから先ず無理だろう。

 

 サッカー選手に必要なのは強靭な足腰……もあるけれどもぶつかり合っても問題無い上半身の筋肉も鍛えないといけない。

 重心を据える意味でボディバランスも鍛えないといけない。というか全身を鍛えないといけない。ここだけを鍛えておけばいいというスポーツは早々に無い。俺は全部のポジションが出来る本職がGKを目指すんだ。

 

 何処をどう鍛えればいいのか全く分からないけれども基礎的な筋肉は必要だから取り敢えずはと腕立て伏せ100回、腹筋100回、スクワット100回を行った……筋肉が未発達な子供にはキツい。サイタマ式のトレーニングで音を上げるとか俺ってどんだけ貧弱なんだ。




ついつい書いちまう……なるべくオレTueeeeをしたい。

投稿速度

  • 出来たら即座に出せ
  • 10話ぐらい溜め込んで毎日1話ずつ出す
  • 一気に纏めてから一気に出せ
  • 週一ぐらい
  • 自分のペースでいいぞ
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