教祖様になっちまったぜ   作:アルピ交通事務局

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サッカーやりたいぜ

 

 冬花が再び舞い戻って来てから1年が経過した。

 要するに小学4年生になった。小学4年生になっても冬花と風丸とは一緒のクラスで相変わらず仲良くやれている。

 

「おじさん、受け取りに来たよ」

 

 稲妻町のちょっと外れにある解体屋に向かった。

 なにをしに来たかと言えば……タイヤを貰いに来たのである。今の今まで円堂守の十八番とも言うべきタイヤ特訓を避けていた。理由は基礎がまだまだ出来ておらず一歩間違えれば大怪我に繋がるからだ。

 

 4年生になって最初の体育で体力テストをした。

 握力は41kg、上体起こし28回、長座体前屈44cm、反復横跳び55回、シャトルラン103回、50m走8,4秒、立ち幅跳び196cm、ソフトボール投げ43mとかなりの好成績だ。足の速さは風丸に負けたけども殆ど満点に近い点数を叩き出した。

 こう、今まで地道に積み重ねてきた努力が目に見えて分かる成果になってくれるのはとても嬉しくて30分の持久走とかが体が馴れてきたのでそろそろタイヤ特訓を開始しても良いかなと判断した。

 

 円堂守はもうちょっと早くにタイヤ特訓をしてたかもしれないけれども、俺は今からがスタートだ。

 そして調べた。廃タイヤをどうやったら入手する事が出来るのかを。なんかこう町工場の車系の解体屋なら廃材にタイヤがあるみたいで稲妻町の解体屋が何処かにないのか調べてみたら見つかったので頼みに行くとあっさりと貰えた。

 

「坊主、好きなのを好きなだけ持っていきな」

 

「ありがとうございます」

 

 因みにだが普通にタイヤを購入するというのは無い。普通にタイヤを購入するのは小学生の財布事情でも中学生の財布事情でも無理なんだ。

 解体屋のおじさんに店の裏側に案内してもらうとコレでもかとボロボロになったタイヤがいっぱいあった。

 

「え〜っと……背中に乗せるのを1つ、足に紐で括り付けるのに4つ、ぶら下げるのに1つ、選手のタックルを想定しての普通より大きめなのを1つ…………ふん!あ、結構重い!」

 

 背中に乗せるのにちょうどいいタイヤを担いでみると思った以上に重かった。

 コレを背負って基礎訓練を行えばパワーアップは間違い無しだな。

 

「5個以上も持ってくのか!?」

 

「大丈夫です、荷車持ってきてるんで」

 

「なら荷車に運ぶのを」

 

「コレも練習だって思って持ち運びます」

 

 1個か2個ぐらいだと思っていた解体屋のおじさん。

 残念ながらまだまだ必要だ。今は1人分だけでいいけども何れは雷門イレブンを率いた際にまたタイヤを貰いに行く可能性が高い。

 

 巨漢な外国人選手のタックルを想定しての大きめのタイヤがかなり重かったけども、無事に荷車に乗せる事に成功した。

 向かうべきは鉄塔広場、円堂守が必死になって特訓している例の場所だ。

 

「ふん!!……おぉ、コレも結構効く」

 

 鉄塔広場は高いところにあるので必然的に坂道も多くなる。

 何十kg,下手したら100kg越えてるかもしれないけれどもこの重さが俺を強くしてくれると信じている。まだ春なのに汗はだくだくで鍛えていた筈の筋肉も荷車に乗せたタイヤを鉄塔広場に持っていくってだけで悲鳴を上げている。

 

「はぁはぁ……やっと着いた……」

 

 稲妻町からそんなに距離は無いんだけども、物が物だけに1時間以上も費やしてしまった。

 鉄塔広場に辿り着くことが出来たので近くのベンチに座ってスポーツドリンクをグイッと飲んで5分ほど休憩をした後に手頃な木はないのかと探して中々の巨木を見つけたので木の上に吊るした。

 

「グローブよしっと……ホイッと」

 

 普通の軍手ではなくGK用のグローブを装備し、タイヤを軽く引っ張って突き押すとタイヤは前進していき途中でピタリと止まったかと思えばタイヤが帰ってきたので両手を構えてこっちに向かってくるタイヤをキャッチする。

 

「こりゃ基礎訓練に時間を費やしてて正解だったな」

 

 円堂守はタイヤを背負ってタイヤをキャッチするという訓練を行っていた。

 しかし今の俺はタイヤを背負わずにタイヤをキャッチするだけでも割と一苦労だ。体が出来上がっていないと、恐らくは簡単に吹き飛ばされただろう……円堂守はコレを基礎にしてしっかりとGKの能力を身に着けたんだろうけども、立向居は最初はMFで円堂守に憧れて円堂守が何年も基礎を積み上げて更には友情パワーや時空の共鳴現象を発揮して会得したゴッドハンドを直ぐに会得するってマジでなんなんだよ。この世界、インフレ激しいわ。

 

「取り敢えずは100回……GKの基礎も良いけども他も鍛えておかねえと」

 

 ブランコの様にロープに括られたタイヤを引いては離し、ブランコの原理で帰ってくるタイヤをキャッチする。

 今まで腹筋とか背筋とかを効率良く鍛えたりやってきたけどもコレは今までの鍛え方とは大分違う。一気にレベルアップ出来るけれども、その分体に掛かる負荷は尋常じゃない。

 

 100回タイヤをキャッチするという目標を掲げてはそれは終わったが体のあちこちが悲鳴を上げている。

 体力テストで満点に近い成績を取った俺だがまだまだ鍛え方が足りない……超次元サッカーをするにはもっともっと鍛えなければならない。超次元サッカーの入門の道は滅茶苦茶険しい。

 

「うぉおおおお!!」

 

 でもまぁ、頑張るしかない。

 タイヤキャッチを100回終えると今度は足にタイヤが括られたロープを巻き付けて河川敷を走る。サッカーは足腰が物を言うスポーツだからな、強靭な足腰を手に入れるにはコレで30分間の持久走が出来るように、最終的には2時間ぶっ通しで走り続ける事が出来るようにならないといけねえ。

 

「滅茶苦茶だな、その特訓」

 

「風丸」

 

 タイヤを使った特訓をして1か月ぐらいが経過した。

 まだまだ鍛え方が足りないので筋肉が悲鳴を上げているが、徐々に徐々に強くなっている自分が居るのが実感する事が出来ている……が、上には上がいる。サッカーインフレバトルに追いつくには並大抵の努力じゃダメなんだ。

 

「爺ちゃんのスゴ技特訓ノートに書かれてる事を真似してんだよ」

 

「…………なんて書いてあるんだ?」

 

 河川敷での30分の持久走を終えた頃に風丸が現れる。

 風丸目線では中々に滅茶苦茶な特訓らしいが、少なくともこの特訓で成長する事が出来ている自分が居ると実感出来ており、爺ちゃんはやっぱりスゲえサッカー指導者なのがよく分かる。

 

 風丸にスゴ技特訓ノートを見せてみるけれども相変わらずというか物凄い悪筆なのでなに書いてあるか分からない。

 俺もホントになに書いてあるか分からないんだけども何故かなんとなくで読める。冬花もなんとなくで読める……なんとなくって恐ろしい。

 

「サッカーに必要なのは強靭な足腰だ、だからこうして足を鍛えてるんだ……今度のマラソン大会、1位になってやる」

 

「宣戦布告か?言っておくが、俺も負けるつもりは一切無いぞ」

 

「日頃の鍛錬の練度の違いってのを教えてやる……風丸、河川敷一周で勝負だ!!」

 

「お前、さっきまで走ってたのに大丈夫なのか?」

 

「サッカーは1時間ぐらいやるものなんだから30分の持久走でヘバッてたら話にならねえ!」

 

「言ったな……手加減は一切しないからな」

 

「むしろ手加減される方がショックだ」

 

 そんなこんなで風丸と河川敷一周でどちらが早く走る事が出来るのかの勝負が始まる。

 

「位置について……よ〜い、ドン!!」

 

「先行くぜ、円堂!」

 

 スタートダッシュだと走り出し先を行く風丸。

 100m走なら最初から最後まで全力全開でいいけれども2kmぐらいある河川敷を一周するのは最初から最後まで全力全開では無理だ。ある程度はペース配分を決めておかないと最後まで走りきらない。

 

 純粋な足の速さならば風丸が上だが、この辺のガッツや持久力は俺の方が上だ。

 風丸は50mぐらいは素早く走れたけれども途中で限界が来たのか減速したので俺は少しだけ足に力を入れて風丸との距離を縮めた。

 

 風丸は俺と距離を詰められてヤバいと感じたのか速度を上げようとしたが開幕ぶっぱのスタートダッシュなんかしたもんだから速度を上手く上げれない。風丸に追い付くことが出来たので俺は無理に先に行かずに自分のペース配分を守りつつも河川敷の一周勝負を制した。

 

「はぁはぁ…………クソっ!!……あ、悪い」

 

「いや、いいよ。マジでやって負けたら誰だって悔しいんだからさ」

 

 風丸は俺に負けた事を心底悔しがる。

 俺の目の前で堂々と声を出したので言ってはいけない事を言ってしまったんじゃないかと直ぐに謝ってくるけれども、謝る必要性は何処にもない。風丸はマジで俺と戦って負けたんだ。誰だって悔しい思いの1つや2つする筈だ。

 

「円堂が全快だったら俺の完敗だったよ」

 

「いやぁ、どうだろう……でも今回は俺の勝ちだ」

 

「ああ、俺の負けだ…………俺もそのタイヤの特訓をやってみてもいいか?」

 

「おう、いいぞ」

 

 綺麗な汗を流しても俺達はまだまだ止まる事を知らない。

 風丸が俺のタイヤ特訓に興味を持ち始めたので俺の使っているタイヤが付いた紐を足に括り付けて風丸は走ろうとする

 

「ぉ、おぉ…………お前、こんな特訓をやってたのか」

 

「まだやりはじめて1か月だけどな」

 

 タイヤ特訓が思った以上に体に来るのか驚く風丸。

 コレでもまだ基礎の中の基礎特訓に過ぎない。1か月やったけどもまだまだやり続けないと、基礎訓練は一生終わるものじゃないからな。

 

「俺も今度からこのタイヤの特訓をしていいか?」

 

「ああ、いいぜ!っと、また解体屋のおじさんからタイヤ貰いに行かないとな」

 

 タイヤ特訓でなにを感じたかは分からないけれどもタイヤの特訓をしたいと申し出る風丸。

 今までは1人だったけれども、風丸が仲間に加わった。1人でゴールが見えない努力をしている苦しさが心の何処かであったんだけども、仲間が居てくれれば心強い。1人よりも2人だ。

 

「いくぞ、円堂!」

 

「ああ、頼んだぞ風丸!」

 

 風丸と特訓をするようになって2週間ぐらい経過する。

 マラソン大会は無事に俺の勝利で終わった。風丸は3位で、俺が1位を取った。ご褒美として一週間宿題無しというありがたいご褒美が待ち受けていた。母ちゃんにもご褒美になにが欲しいか聞かれたのでスポドリの粉を箱単位で買ってもらった。

 

 GKの特訓だけじゃダメなので、普通の特訓もする。

 日本人というのは体格に恵まれていない。恵まれている人も居るには居るけれども平均的な目で見てみればする体格は低い方だ……だから日本人は体で追いつかないならば心と技に逃げる……日本人の悪い癖と捉えるのか、無いものから知識を振り絞っていると捉えるのか、それは人次第だ。

 

 GKでなくフィールドプレイヤーとして立った際に体格の大きな外国人選手に当たり負けしない様にボールをドリブルしながら転がってくる大きめのタイヤにぶつかりバランスを崩さない特訓をしている。ボールをドリブルする人とタイヤを転がしてくれる人の2人が居てはじめて成立する特訓だ。

 

「うわぁ!?」

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫だ……まだまだボディバランスが悪いな」

 

 純粋なパワーとかは順調に付き始めている。

 だから大きめのタイヤが転がってきても問題無い筈なのに、重心のバランスとかがまだまだダメなのかバランスを崩す。普通のサイズのタイヤだったら体制を維持する事が出来るんだけどな……。

 

「風丸、もう1回だ」

 

「ああ……後で俺にもやらせてくれよ」

 

 倒れているタイヤを引き起こす。

 コレだけでも十二分なトレーニングになるな……火ノ丸相撲でトラックだかトラクターだか忘れたがそれぐらいのサイズのタイヤを起こすだけで特訓になる。火ノ丸相撲の小関が転がってきたタイヤを受け止めて体幹が鍛えられている描写があるのでこの泥臭い特訓は間違ってない筈だ。何度かバランスを崩してはコケるを繰り返したけれども、次第にデカいタイヤがぶつかって来ても問題無い様になってくる。

 

「2人とも、おつかれさま。コレ、作ってみたの」

 

 タイヤ特訓が続き2ヶ月ぐらい経過した。

 もうすぐ夏休みが来る。今年の宿題もどうせ漢字ドリルと計算ドリルと自由課題なので、例によって読書感想文をネットで購入してる……え、真面目に読書感想文書けって?無茶言うなよ、好きでも何でもない本を読んで面白かったと書けるほど俺の心は清らかじゃねえんだよ。

 

「お〜レモンの蜂蜜漬けじゃん!」

 

 冬花が俺と風丸に差し入れだとレモンの蜂蜜漬けを持ってきてくれた。

 栄養補給とかに持って来いのスポーツものの定番アイテムであるレモンの蜂蜜漬け……イナズマイレブンの世界って何故かは知らないけれども全回復するアイテム、おでんなんだよな。おでんは好きだけども炎天下の中で食うもんじゃねえよ。

 

「あむ……なんかこう体に足りないピースが埋まってく感じだな」

 

「ああ、練習疲れには持ってこいだ………………なぁ、円堂」

 

「どうした?」

 

「俺達ってどれくらいスゴイんだろうな?」

 

「……それ聞くか?」

 

 休みは挟んでるので毎日とは言わないが、サッカーが当たり前に日常の一部に溶け込んでいる。

 基礎作りだと必死になって頑張ってる。風丸と一緒に頑張ってるからか風丸は4年生どころか学校で1番足が早い生徒になった。スタミナとかも徐々に徐々につきだしてる……けどまぁ、一日の長があると言うか俺の方がスタミナとかは上だ……足の速さは風丸が1番だけども。

 

 鬼ごっことかやれば風丸は進んで鬼になるけど他の連中は嫌そうにする。

 風丸はスタミナが付いてきて元から早かった足が更に早くなったから向かうところは敵無し。ただ純粋に真っ直ぐに走っている風丸に追いつくことは出来ない。右に曲がったり左に曲がったりしたりする際のブレーキとかチェンジペースで俺はなんとか捕まえる事が出来る。

 

 体力テストは俺の方が上だったけども純粋な足の速さは風丸の方が完全に上で、風丸も一部の体力テストは10点満点だった。

 だから思う……俺も何度か思ったことがある。

 

 

 俺達ってどれくらい強いの?

 

 

 という素朴な疑問である。殴り合い的な意味で強さじゃなくてサッカー的な意味での強さの指標が分からない。

 少なくとも体力テストで満点に近い点数を叩き出すんだからかなり鍛え上げている……けど、イナズマイレブンってインフレサッカーバトルものだから慢心は絶対に出来ない。

 

「だって気になるだろ。学校じゃ俺達よりスゴい奴は居ない。俺より足が早い奴が居ないんだぜ?」

 

「う〜ん……まぁ、そうだよな…………でもさぁ……………」

 

「無いよね、サッカークラブ」

 

「うん、そこなんだよな」

 

 冬花の一言に俺は頷く。

 俺達の住んでいる地域には少年野球のクラブがある、ミニバスケのクラブがある、バレーのクラブがある、水泳のクラブがある、相撲のクラブもある、硬式のテニスのクラブもある……けど、何故かは分からないけれどもサッカーのクラブだけが無い。

 宇都宮虎丸が所属しているサッカークラブ入れないかなと考えてた事もあったけども住んでる地域的な問題で所属する事が出来ない。

 

 稲妻KFCというサッカーチームが原作で出てきたからあってもおかしくはないはずなんだけども今のところは影も形も無い。

 

 1人で頑張る事が出来る特訓を転生してから積んで風丸や冬花と仲良くなってからは2人で出来る特訓をやっている。

 サッカーは11人でやるものだ。俺はGK志望だけども、前線に出たりするGKになり全部のポジションが出来ないといけないから色々と基礎を鍛えている。本音を言えばカッコいいシュートとかサッカーらしいサッカーをしたい。けど、2人しか居ないからサッカーが出来ない。

 

「風丸、油断すんじゃねえぞ。日本一足の早い小学生はお前よりも1秒足が早いんだ。この1秒はマジで大事だ」

 

「けど、そいつ6年生なんだろ?俺も後2年で6年生になる。そうなったら体もデカくなってそいつよりも足が早くなる」

 

「…………」

 

 冬花は風丸の方をジッと見ている……多分気付いているんだろうな、こう、人より優れた力を持っているから自惚れていることに。

 実際問題、風丸は足が早くなっている。スタミナとかもついているし、ボディバランスとかも着実に良くなっている。伊達にアレスでも普通でもイナズマジャパンに選ばれる選手じゃないってぐらいにはスゴい……けど、慢心している。自惚れている。

 

 慢心は考え方によっては自信になる。慢心を持った状態で勝利すればそれは慢心と言わない、自信と言う。

 何処ぞの英雄王は慢心せずしてなにが王だかなんだか言っている。あの王様は本気出したら洒落にならないから慢心するぐらいがちょうどいい。しかし俺達はまだまだの筈だ。体作りの基礎は出来てるかもしれないけどサッカーのテクニックはあんまり学べていない。

 

「俺がガツンと言えりゃいいんだけどなぁ……」

 

「大丈夫だよ、守くん……風丸くんは守くんの目標でライバルなんだから」

 

 上には上がいるんだと教え込む事が出来ればそれでなによりなんだけども、それが出来るほど俺と風丸の間に力の差があるわけじゃない。

 冬花は風丸が俺を競い合う相手だと認識している事を教えてくれるけれども、このままじゃダメだ。風丸には上の世界を知ってそれでも前に進める強靭なメンタルを持ってほしい。ダークエンペラーズとかいう黒歴史は作ってほしくない。

 

「グレネードショット!」

 

 日々の訓練の賜物のお陰でグレネードショットっぽいの撃てるようになった。

 本職GKなのでゴッドハンドを覚えたい。ゴッドハンドはGKの顔で円堂守の基礎である……初代イナイレでグレネードショット覚えたし、必殺技を撃つ感覚を覚えるのにはちょうどいいからコレはコレでいいんだけどな

 

「グレネードショット改……V2……どっちだっ──あっ!?」

 

 グレネードショットの練習をしているのだが、なんか変な方向に飛んでいってしまった。

 ニット帽を被った小太りなおじさんに向かってとんでいく。

 

「おじさん、危ない」

 

「とう」

 

「え……」

 

 まだ完璧じゃないとはいえグレネードショットをニット帽を被ったおじさんは胸でトラップした。

 練習中の技とはいえ普通のシュートよりも遥かに強いシュートなのにそれを軽々と胸で受け止めた。

 

「すみません」

 

 受け止められたショックを受けていると冬花が前に出て謝る。

 

「いやいや、いいんだよ。君、中々のシュートを撃つんだね」

 

「え……あ、はい……まだ未完成なんですけど、結構強めに蹴ったんだけどな……」

 

「いやぁ、中々に良いシュートだよ」

 

「おじさん、サッカーの事が分かるんですか?」

 

「なに、昔取った杵柄ぐらいだけどな」

 

 ニット帽を被ったおじさんは器用にリフティングを行う。

 俺達も結構リフティングをしているけれどもおじさんのリフティングの方が年季が違うのが分かる。

 

「君、FW志望かい?」

 

「GK志望!でもガンガン前に出ることが出来て点も上げる事が出来るGKになりたいんだ」

 

「ほぅ、GKか……どうだいわしのシュートをキャッチしてみないか?」

 

「おじさんの……うん!」

 

「ただ普通にやってもわしが勝ちそうだし、そうだね。君達2人がディフェンスについてくれ」

 

「俺達がですか?」

 

「分かりました」

 

 ニット帽のおじさんが風丸と冬花にディフェンスをやらせる。

 風丸はおじさん1人ぐらいならばと心に慢心が生まれており、冬花は素直にやる気を出している。

 

「じゃあ、いくぞ」

 

 ニット帽のおじさんはサッカーボールを蹴って進んでくる。

 風丸は直ぐにおじさんの元に向かっておじさんにくらいつこうとするがおじさんは笑みを浮かび上げる。

 

「早さは申し分無いけども、それだけだ……それじゃあダメだぞ」

 

「っ!?」

 

「風丸くんが……行かせない!」

 

 風丸を軽々と抜いてみせたおじさん。

 風丸は動揺して切り返しが出来ず、直ぐに冬花がおじさんからボールを奪いに行くけれどもおじさんは綺麗に冬花を抜いた……このおじさん、どっかで見たような、いや、今は色々と考えてる場合じゃない!

 

「ごめん、守くん」

 

「大丈夫だ!ゴールは俺が守る!」

 

 抜かれた冬花はおじさんに勝てないことに気付く。おじさんは俺の元まで来たと思ったらシュートの構えに……

 

「ドラゴンクラッシュ!!」

 

 ドラゴンクラッシュを撃った。

 

「うぉおおおお!!」

 

 真正面から飛んでくるドラゴンクラッシュ。

 今の俺はゴッドハンドを出すことが出来ない。熱血じゃないので熱血パンチや爆裂パンチを使うことが出来ない。だから諸手突きに近い形の構えを取ってドラゴンクラッシュをキャッチする。

 

「グググ……」

 

 キャッチする事が出来たけども前に進もうとする力が半端じゃねえ。このままだと押し切られる

 

「ここで負けたら、俺の5年間が無駄になる……努力は才能を凌駕するんだぁ!!」

 

「なんとドラゴンクラッシュを止めただと!?」

 

「いや……おじさんの勝ちだよ」

 

 ドラゴンクラッシュをなんとか受け止めることは出来たけども、後方に大きく後退りしておりゴールラインを超えていた。

 コレが普通の試合ならばミニゲームならば1点が入ったことになる……

 

「クソっ……あ、ごめんおじさん」

 

「いやいや、キャッチする事が出来なかったのを本気で悔しんでるんだ。バカになんてしないよ」

 

 今まで頑張ったけど必殺技を受け止めることは出来ない。

 イナズマイレブンはサッカーインフレバトルなのは理解していたけども、ここまでとは……悔しいな。

 

「負けた…………」

 

 風丸も負けた事に放心している。

 結構な年配のおじさんに抜かれてしまったのならば誰だってショックを受ける……けどまぁ、鼻っ柱を叩き折るにはちょうどいいんだ。

 

「おじさん、何者なんですか?」

 

「昔サッカーが得意だったおじさんだよ……ここ最近河川敷でサッカーをやってるって噂を聞いて見に来たんだが、まだまだだな」

 

「まだまだ……風丸くんと守くんの何処悪いんですか?」

 

「足の早さや咄嗟の切り返し、体幹とか純粋なパワーの基礎的な運動能力は申し分無いけど……サッカースキルが大幅に欠けている」

 

「あ〜……この辺にはサッカークラブ無いんですよ。俺達殆ど自己流で鍛えてるんです」

 

 肉体を鍛える事は出来ているけれどもサッカー能力を鍛える事は出来ていない。

 風丸と1vs1とかやったり冬花混ざってもらって2vs1とかやったりしてみるものの、本格的なサッカーかと聞かれればNO、ミニゲームですらない。

 

「そっか……もしよかったらおじさんがサッカーを教えてあげようか?」

 

「マジすか!?」

 

「ああ……君を見ているとなんだか昔を思い出す事が出来てね。サッカーから離れるに離れれないというか……」

 

 何処か気まずそうにしているおじさん。

 サッカーに対して色々と思うところがあるんだろうな…………あ、思い出した。どっかで見た記憶があると思ったらあの人だわ。

 

「風丸、わかっただろ?俺達なんてまだまだなのを」

 

「……ああ……」

 

「悔しいって思うならそれをバネにして高く飛ぶ事が出来る筈だ!勝ちたいって思う心が何処かにあるんだ!逆に考えようぜ、まだまだ高いところが存在しているのをさ。おじさん、おじさんからサッカーを教えてもらえば今より強くなる事が出来るよね!」

 

「それは君達次第だ……サッカーは1人でするものじゃない11人でするものだ……どうする?」

 

「私はやってみたいです」

 

「冬花……」

 

「俺は……俺も強くなってみたいです!おじさんからサッカーを教えてもらえば今以上に風を感じる事が出来ますか?」

 

「それは君達次第だよ……でも、君達ならきっと出来るさ」

 

 慢心していた風丸の心の垢が落とされていった。

 間違った方向に向かって行っている風丸の心をガツンと矯正する事に成功した……でもまだまだ鬱イベント多いんだよな……。

 

「おじさん、名前なんて言うんですか?」

 

「わしか?わしは会田……ただのサッカー好きのおじさんだよ」

 

 冬花がおじさんの名前を聞いてハッキリと確信した。この人は元祖イナズマイレブンの1人の会田さんな事を。




円堂、アレだけのサッカー馬鹿なのに小学生の頃はサッカークラブに入ってる形跡0なのでこうしました。

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