「瞳子よ、貴女が雷門を選んだ事は間違いではないが、雷門はまだまだのチームであることを自覚していなかった」
担架に引っ張られていく円堂を見ながら星二郎は茶を啜る。
この雷門中との最終決戦で確実に勝つことが出来るのだと確信をしたからか雷門中の弱点について改めて語る。
「確かにフットボールフロンティアを優勝した雷門中は良いチームです。ですが、まだまだ発展途上のチームであった……それもその筈、影山の手によって日本の中学サッカー界は暗黒期を迎えていたのですから」
40年間無敗神話を誇っていた帝国学園。
その無敗神話を築き上げた方法は純粋にサッカーが強かったからではなく、影山の様々な裏工作によって築き上げられた無敗神話だった。世代交代が親の代レベルで起きても尚、帝国学園は無敗神話を貫いていた。そのせいで日本の中学サッカー界は暗黒期を迎え続けていた。
「暗黒期を作った影山を撃ち破り黄金の時を今から築き上げる。そのタイミングと偶然にもハイソルジャー化計画が被った……瞳子、貴女がエイリア学園を打倒すべく雷門中を選んだが、雷門中は世宇子との激闘があった。絶対的な支柱である円堂守が故障してしまった。しかしそれでも戦わなければならず、ここまで来た。一番の欠点、一番の弱点、円堂守に依存しすぎていると言う所を改善せずに」
「っ……」
円堂は負傷退場を拒んだ。直ぐに戻ってくるからと10人でプレイしてくれと言って、フィールドから離れた。
11人と10人では単純な数の上で勝っている。当然プレイに影響を及ぼす……だが、その度合いがおかしかった。
「真アイスグランド!」
円堂が抜けた穴を埋める為に豪炎寺と吹雪の2枚看板から豪炎寺1人にして吹雪をディフェンスにつけた。
数の上で劣勢であるが選手としてはお互いに互角……それを表すかの様に吹雪はアイスグランドでボールを奪った。
「っ!」
ボールを奪った吹雪は固まった。
周りへのパスは勿論のこと、ドリブルで突破しやすいコースが無い。着実に囲まれている
「……円堂くんが抜けただけなのに……」
「ハッハッハ……その認識が甘いですね」
フィールドに10人になったからといってサッカーが出来ないというわけではない。
既に2点を取っていて優勢だった雷門中のプレイの質が何段階も下がっている。それは単純に円堂守と言うプレイヤーが抜けたからという数の問題の話ではない。夏未は円堂が抜けただけで何段階も雷門のチームの質を下がっていることについて呟けば星二郎は笑った。
「雷門夏未、君は呂布奉先とシモ・ヘイヘと言う男を知っているか?」
「……確か、三国志で一番強いって言われている英雄よね?シモ・ヘイヘは知らないわ」
「シモ・ヘイヘはフィンランド最強と言われているスナイパー……この2人は一騎当千の猛者。1人で千人分の兵隊と同じカウントが出来る。雷門中も今やサッカーという競技において一騎当千の猛者しか居ないでしょう」
「じゃあ……」
「ですが、もう1つの一騎当千の猛者があるのです」
一騎当千の猛者と言われる選手しか居ないのならばこんな極端なまでのパワーダウンはおかしい。
夏未はその事を指摘しようとするが星二郎はもう1つの意味合いを持つ一騎当千の猛者があることを教える。
「ただ単純に強い、と言う話ではない。その者が居るだけで千の兵を滾らせ、万の兵を萎縮させる……日本人に馴染み深い英雄で言えば織田信長がコレに該当します」
「……」
戦国時代といえば織田信長が題材として取り上げられるのは基本的には当たり前だ。
しかし実際に天下を取ったのは豊臣秀吉だ。なんやかんやで政権を作り上げた江戸時代を築き上げたのは徳川家だ。歴史学者基準で実際に強いと言われているのは武田信玄辺りだ。
しかしそれでも織田信長が大抵の人間はヤバいというし題材としてよく扱われる。
織田信長自身が破天荒なところは実際にある。マスターDが静と動を使い分けるゲームメイカーとかして選ぶだけの事はある。
織田信長自身の戦闘能力の凄まじさもあるが、偉業や異名が強い。
第六天魔王と言う異名、それに相応しい比叡山の焼き討ちと色々ととんでもない英雄である……きっと織田信長が生きていた時代で、例え遠距離に領地を持っている領主であろうとも、織田信長の名前を聞いてなんのリアクションも無い人間は居ない。
現代において織田信長を題材に色々と取り上げられるだけの事はある……単純な戦闘能力とはまた異なる一騎当千の猛者だ。
「円堂守、彼もまた千の兵を滾らせ、万の兵を萎縮させる才覚があった。それと同時に1人で他を圧倒する力があった。更にはなにもないところから日本一になろうと這い上がる雑草魂もあった……貴女はその恩恵にあやかっているのでそれをよくご存知でしょう?」
「っ!……」
円堂がキャプテンとしてとてもとても大きな存在であった。
単純に試合を動かすだけならば鬼道や一之瀬に任せればなんとかなる。だが、キャプテンとしては円堂はあまりにも優秀すぎた。
サッカーという競技で他を寄せ付けない強さを持っていた。
なにもないところから日本一に成り上がる雑草魂を持っていた。
地味だが目に見えない細かなフォローを所々入れたりしていた。
「特定の選手が居るだけでチームとしてのランクが何段階も向上する。チームスポーツでは割とよくある話です……私の読み通り、雷門は円堂守が居なくなった瞬間にチームとして何段階もランクが落ちている……瞳子よ、何故それを気付けなかった?」
「それは……」
「1人の人間にかける負荷が大きい……皮肉にも円堂守はそれを可能としてしまった。おそらくは、もう1人の監督、趙金雲は雷門が円堂守と言う大黒柱に依存しているレベルになっている事を見抜いていた。円堂守が怪我で故障をしている期間が長かったから?いや、そんなわけはない。円堂守はフィールドに立てなくとも支えていた」
「……」
「貴女は私を止めたいという思いがあって動いていた……だから選手達を見なかった。円堂守はずっとチームメイト達を気にかけていて、逃げるという選択肢を与えていた……私達ジェネシスと雷門の違いはそこです」
監督として娘として星二郎を止めたいという思いがあり周りに目が向いていない。場合によっては選手を使い捨てにするつもりだった。それほどの事件だから仕方ないと言えば仕方ないだろうが、だからこその気付けなかった大穴が開いたままだった。
フットボールフロンティアを優勝した時の雷門中ならば、円堂守と言うGKが非常に優秀な選手範囲で納まったが今の地上最強イレブンではそうはいかなかった。
「ジェネシスは、我が子と私は心で繋がっています。円堂守を排除すれば確実にこの試合を勝てると確信し、潰すように言いました……ウルビダは円堂守を愛していたが、私を選んでくれた。私の為に円堂守を破壊することを選んでくれた……我が子との絆の力、如何でしょうか?」
「なにが、なにが絆よ!そんなの歪んでいるわ!」
「ですが……現実はどうでしょうか?」
ジェネシスと言う最強のチームを我が子と呼び、愛していると星二郎は主張するが歪んでいると否定する夏未。
星二郎は現実としてどうでしょうか?とスコアボードを見た。
「ムゲン・ザ・ハンドG3……っぐ、うわぁ!?」
「ゴォオオオオオオル!ジェネシス、怒涛の3点目!遂に雷門に対して逆転を果たした!」
円堂守が抜けた事で、選手のポテンシャルが段違いに落ちていった。
グランとウルビダの銀河一閃によって立向居のムゲン・ザ・ハンドが破られている。10人になったから弱体化したと言える範囲でなくなっている。
「瞳子監督、俺と立向居を変えてくれ!今の立向居よりも俺の方がまだ動ける!」
「……選手交代!立向居くんと源田くんを!」
「源田さん……」
「落ち込むな……まさかこんな弱点があったとはな」
円堂不在の中で逆転を許した。
頼りになるキャプテンが居なくなったので全員のポテンシャルが落ちている。円堂の代わりにGKを任されている立向居がそれが顕著に出ていた。源田は今の立向居よりも自分の方がGKとしてまだ動けると瞳子に主張し、選手交代をした。
「ここか!」
前半戦が残り僅かと言うところで一方その頃だ。
今回の事件を追っている鬼瓦刑事はエイリア学園の力の源である巨大なエイリア石が置かれている部屋にやってきた。
エイリア学園の異常なまでの強さの正体は、エイリア石によるドーピングと星二郎は認めた。
ならば力の源であるエイリア学園のエイリア石を破壊すればいい。無論、コレは所謂裏工作ではあるものの、そうしなければならないのが現状だ。
「コイツを破壊すれば」
「爆弾、設置完了しました!」
「やれ!」
エイリア石の波動を送る装置を爆破で破壊する鬼瓦刑事達。
ピーピーと音が鳴ってボンッと爆発をした。エイリア石から放たれている波動が消え去り、エイリア学園の生徒達にエイリア石の力が送れなくなった。
「フフフ、ハハハ……ハーッハッハハ!甘いですね!」
当然、それは星二郎も気付いた。
星二郎は甘いなと大笑いをして鬼瓦刑事達の前に立体映像で現れる
「なにがおかしい!」
「確かにエイリア学園の力の源であるエイリア石の力を送れないのは痛いです……ですがそれはファーストランクまでの話……ジェミニストームやイプシロンはエイリア石によるドーピングですが、プロミネンス、ダイヤモンドダスト、ガイア、いえ、ジェネシスはエイリア石による強化を行っていないのです!」
「な、なんだと!?」
「雷門中も様々な手を使って強くなった様にマスターランクのチームはエイリア石で強くなった選手を相手に鍛えに鍛え上げたハイソルジャーなのです……エイリア学園の力の源であるエイリア石を破壊すればなんて抜け穴を私が見逃すわけないでしょう」
「っぐ……まずい……円堂守は円堂大介に似すぎていたのが、ここになって仇になったか」
円堂大介が抜けた事で初代イナズマイレブンは散り散りになった。今の地上最強イレブンもヒデナカタを除けば不安定だ。
円堂守が円堂大介の再来なだけあってかあまりにも支柱的すぎる。円堂大介が居なくなった瞬間に崩壊した嘗ての雷門を鬼瓦は知っており、今はまさにそれと似た状況になっていると見抜く。
「っく……彼が居ないと危険なのは分かっていたが、ここまでとは」
円堂が居るか居ないかだけでチームのランクが段違いに変わることをナカタは知っていた。
だからこそとある人物に頼まれて、地上最強イレブンに入った。事前に聞いていたし、自分も似たタイプのプレイヤーなので分かっていた。
円堂が抜けた穴をなんとかナカタはカバーをする。
ナカタの個人技で突破をしていくのだが、それは見抜いている。ナカタに絶対にボールが行かない、ボールを持っている相手と対峙させない様にさせていた。
「コレで終わらせる!」
ボールがウルビダに渡った。
ウルビダ、グラン、ウィーズの3人がおりウルビダが指笛を鳴らせば地面からペンギンが生えてきた。
「「「スペースペンギン!」」」
「……ビーストファング!!」
「なっ!?源田、それは」
「っがぁああああ!?」
ウルビダ達によるスペースペンギンを見てハイビーストファングでは止めることが出来ないと源田は察した。
1点でも点を入れられれば終わりだ。確実にゴールを守る為に、ハイビーストファングの本来の原型、ビーストファングを使った。
皇帝ペンギン1号と同様に肉体にかかる負荷がビーストファングは大きすぎる。
鬼道はそれを知っているので源田を心配すれば源田は悲鳴を上げながらもボールを掴んだ
「俺に構うな!……2点だ!同点になって追い越すんだ!」
「っく……」
前半はもう少しで終わり、なんとかして同点になって安定させたい。
ビーストファングで体が悲鳴を上げている源田は自らの肉体を気にせずにボールを鬼道に投げて鬼道は突き進む
「諦めるな!……まだ試合は終わってない!」
「……そうだ!まだ終わってないんだ!」
円堂が居ない中での痩せ我慢か、それとも円堂が居ないからこそ出さなきゃならない力を出しているのか。
どちらなのかは不明だが鬼道は声を張り上げる。豪炎寺がそれに反応する
「ほぉ……ここでも彼が力になりますか」
円堂がいないことの痩せ我慢でなく、円堂が居ないからこそと力を出していると星二郎は見抜く。
やはり円堂を先に潰していて正解だったなと感じ取っていれば鬼道と豪炎寺は攻め上がり
「「プライムレジェンドG2!」」
「時空の壁……っがぁ!?」
プライムレジェンドを進化させ、シュートを放った。
時空の壁でゴールを守ろうとしたネロだったが、進化したプライムレジェンドG2により時空の壁を打ち破った。
「ゴォオオオオオオル!これで3−3!同点に持ち込んだ。そして前半戦終了のホイッスル!円堂不在の中でここまで堪えたが果たしてどうなるのか!」
「っぐ……」
「源田、やはり……」
「立向居よりも俺だ」
前半戦終了のホイッスルが鳴り響き、ベンチに選手達が戻る。
源田が苦しそうにしている。鬼道はビーストファングの後遺症が出てきているのだと心配をしていれば、立向居でなく自分が出ていた方がいい事を主張する。
「いいや、源田よりも雷門のゴールを守るに相応しい選手がここにいるだろ?」
「なっ!?」
そんな中だった……冬花と一緒にバンダナを巻いていない円堂が戻ってきた。
確実に潰した筈の円堂が戻ってきたことに星二郎は動揺を隠せないでいる。
「きゃ、キャプテン!大丈夫すか!?」
「ああ……瞳子監督、源田がもう1回ビーストファングを使ったら倒れます。俺に代えてください。その為にGK用のユニフォームに着替えたんですから」
壁山が大丈夫かどうかを聞けば軽く流す円堂。
瞳子にビーストファングを使えば源田が倒れるからとGKを自分に代えろと言う。円堂はGK用のユニフォームに着替えていた。
「大袈裟に言ってたけど、円堂だから…………」
なんだかんだで円堂は復帰してきた。
円堂と言う支柱が崩れたものの、再び円堂を起点に雷門は復活する。風丸の心が前向きになろうとしていた。風丸だけじゃない、他の面々も円堂を見ていた。
円堂はバンダナを巻いていない。GK用のグローブを冬花につけてもらっている。
スパイクの紐結びも調整も冬花が代わりにやっている
「……まさか……」
「いいか……この試合だけは落とせない、なんて聞き飽きただろうが、この試合は落とせないんだ」
GKとして円堂は戻ってきたが、GKとしてやる当たり前の事を冬花に任せている。
風丸達は円堂の腕が折れているというのは分かっていた。それで負傷退場になるところを円堂が拒んだ。
「ウルビダ、どう思う?」
「銀河一閃からのガニメデプロトンで折れている筈だ」
あまりにも予想外の出来事、円堂守の復帰。しかもGKとしてだ。
円堂守を潰すという事を受け入れたウルビダは円堂守を確かに潰したと思っている。ウィーズに聞かれるが、アレで折れていないわけがないと思っている。
まだ真夏とはいえ富士山の上で外は涼しい。
それなのにも関わらず円堂は汗を沢山流している。だが苦しそうな顔を一切していない。
雷門の面々が確信したようにジェネシスも確信した。
円堂守は立っているのがやっとだと。
どっちにしよう
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アフロディ(イナズマジャパン)
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アフロディ(ファイヤードラゴン)