あ、新作です。浮気しまくりの俺を許して。
英雄教室の脇役暗躍者 Prologue
──誰の記憶だろうか…。
夢を見ているとわかる不思議な感覚…夢の中で水の中を揺蕩うクラゲのような流れに従うのみの不思議な感覚を全身で受ける。
──気持ち良いな…。
まるでぬるま湯に浸かっているようで全身から力が抜けていくような気分で思わず意識を手放しそうになる。
─パシっ。
思わず失いそうになった意識を何者かが引き戻すのを鮮明に感じた彼は思わず問いかけた。
──誰だ…?
絶えず流れる誰かの記憶を受けつつ、俺は真っ白のゆらゆらとした全てが曖昧に感じる部屋の中を見まわした。
全て見回すと一つだけおかしな部分を見つけた。そこへ視線を向けるとそこだけはこの部屋(?)特有の揺れはなく、地面のような場所には影らしきものが写っている。
──見えない…?
見えない…いや、見えていないのに分かると言った方がいいだろうか。視覚情報としては入手できないがそこにあるもの…人が何を伝えようとしているのかわかった。まるで新しい感覚機関ができた気分だ。
──何を伝えたいんだ…?
彼はその人をよく感じようとする。簡単なことならわかったが今その人が伝えようとしていることは難しい事柄なのかとても伝わりにくい。
──ゲー…ム?
誰かの記憶が濁流のように流れてくる。その影だった人も段々と形作られていくように鮮明になっていく。
──…助けてくれ。
──何を?
──頼む。
そう言って彼は消えていった。口数が少な過ぎて何を伝えようとしていたのかわからない。ああ…、でも。
──記憶で見た人と似ていたな…。
それを最後に彼は記憶の濁流に飲まれ、その後目覚めることはなかった。
✴︎ ✴︎ ✴︎
瞼が重いことを認知しつつも状況を確認するために瞼を開く。
「…知らない天井だ」
一種の常套句となってしまったセリフを吐きながら彼は周りを見回す。どうやらここは病院の中のようだ。全身が気怠く特に頭はズキズキと針をぶっされたかと思うくらいに痛みが広がっている。意識はまだ少し混濁気味で、周囲の情報を取り込むことさえ拒んでいるような気がする。
「(……ていうか、この世界ってゲームの中だったのか)」
…これは決して彼の頭が壊れてしまったわけではない。彼は正常である。彼は正常である(2度目)。
「(まあ…どうでも良いか。…頭イタ………。やっぱ寝よ…」
彼は自身の置かれている状況を考えようとしたものの、頭痛がひど過ぎて意識が掠れてきたのでもう寝ることにした。
次の日。
「(…よく寝た)」
次の日、目を覚ますと昨日の頭痛が嘘のように引いており、目覚めは非常に良かった。
どうやら夢の中で見た記憶の整理が寝た事によって完了したようだ。便秘した後に快便した時くらいスッキリである。
「(…ふむ。この記憶のゲームってやつの世界ってやっぱりこの世界なのか?)」
今更かも知れないが説明しておこう。彼は正常である(3度目)。そして彼の名前が浅野翔也…特徴を敷いてあげるとすればそんじょそこらの大人より落ち着きがあるというとこくらいの中学生である。
翔也は夢で見た記憶の中のゲームの世界観と今住んでいる世界の状態を重ね合わせた事によってその考えを導き出した。例えば彼が受験しようとしている星天学園や、他にも色々あるがひとまずは置いておこう。
「(…これってやっぱり転生ってやつなのか?いや憑依って言った方がこの場合正しいか?)」
翔也は今の状態を色々な仮説を立てた。
1、元々転生者説。これは転生過程で記憶を無くし、そのまま浅野翔也として生きたのちに今記憶が蘇ったという仮説である。
2、憑依説。転生者としての魂が自身に入った結果記憶を持ったというものだ。翔也は1番可能性として高いと思っている。
3、実験説。俺に全く未知の記憶を流し込み、その状態を観察しているという説。これに関しては誰が何のためにという事柄が欠けているのでそうだったとしても知り得る事がほぼ不可能だろう。
そもそも翔也が憑依説を可能性高く見ているかというとそれにも少し理由がある。まず1の過程はほぼほぼ破綻しているから。自身はこの世界の浅野翔也という意識があるし、転生者というなら人格まで塗り潰されていそうだ。そもそも俺という記憶さえ転生者の記憶に潰されていそうだ。
なので必然的に2と3となるが3も違うということがわかる。それは文明が違うからだ確かにゲームはこの世界に酷似しているものの、前世の彼が住んでいたのは明らかにこの世界より遅れている。それを植え付けたとして一体誰のためになるというんだろうか。
ならば残りの2が正解だろう。……まあそれを知ったところで何だって話だが。この世界が前世のゲームをベースに作られた世界だったとしても自身が16年生きてきた世界の見方が変わることはない。どっちかというとゲームの攻略本を見たような気分だ。
…憑依と言ってもその魂には心がなかったのだろうか?一つ気になるとすれば翔也が見た記憶の人間の人柄は自身によく似ていたというくらいだろう。それとも、翔也の元に着く前に摩耗してしまったのか?前世で見ていた小説に憑依で意識と意識がぶつかり合う…みたいなものを見たんだがそれは今のところない。
「(……ダメだな。これ以上考えても埒が開かない)」
翔也はこれ以上は埒が開かないと判断したので今度はそのゲームとこの世界の情報のすり合わせをしようと思った。
翔也は情報端末を起動する。するとブオンという音と共に画面が立体として現れる。これは『星気』を利用して扱う情報端末で前世のスマホというものと比べてもあり得ない性能だ。二次元のSFものの機器と考えた方が良い。
翔也はサクサクと調べていく。聖女の名前、ギルドの名前、富豪の名前、学校の名前、行事の名称、過去の事件、歴史。軽く2時間くらい見て回ったが今のところゲームの知識との差異はなく、全てゲームの知識と一致していた。これでこの世界がゲームの世界とほぼ同一だということがわかった。なので次はゲームのことを全て思い出すことにした。
星天学園の英雄生徒。…近未来の現代をベースとした現代ファンタジーゲーム。ある日突然生まれた渦から続々と出てきた異形…【
しかし、その危機を救ったのは突然降り注いできた光、後に『星の加護』…『
国はその対抗手段を増やすべく、「星護者多重婚許可制度」を法律で定め、星気を持ったものを増やす政策を行った。それと同時に、ルキナを授かった子供を優秀な星護者と育て上げるために『星天がくえん』を建設した。
舞台はそれから300年後、世界人口の全てが星炉を持ち、人類は事実上の進化を遂げた。
その300年での星気への研究の結果、星気は科学技術では到底証明できない性質、性能を持っていることがわかった。それにより人々の暮らしはさらに発展し、星気を使った様々な発明が生み出された。その中でも一際目立っているのは『物質多距離転送式転移術』であろう。【エラ】を生み出した渦の研究、星気の研究の集大成とも言えるこの技術は世界のさらなる発展を約束した。
星天学園は物質多距離転送式転移術を最大限利用しており、世界中から入学希望者が募り、その倍率は約5000倍にも上り毎年1500000人の中からたった300人しか入学できない超エリート校である。
寮生の学校で一部屋2人制で暮らす事になる。クラスはA〜Fまである。そしてこの学校には他の学校と違う施設が設置されている。それはCombat training ground using virtual space(CVS)という星天学園にしか導入していない仮想空間を利用した体に怪我を負わない技術を取り入れたもので、『決闘』という方式をとり、生徒同士の争いによってより高め合うという相乗効果を期待している。(決闘ができるようになるのは授業で出来るようになってから。その決闘によって「Rリング」に入学初期に入っているポイントをかけることができ、それが変動することによって序列が変動する)
他にも『渦』の攻略や学校から出されているミッションをクリアすることによってポイントは取得することができる。
学園は幾つのも渦の所有権を持っており、生徒の要望を最大限答えられるような体制をとっている。
敷地は異常なまでに広く、第一第二第三第四第五運動場、第一〜第四体育館、第一〜第三武闘館、第一〜第三決闘場、大舞踏館、教室などがある校舎本館も4棟連なって立っている。図書館、保健室も3つずつある。
優秀な人材を育て上げる…という名目で【エラ】へ退行するための英雄を生み出すための学校であり、そのためには生徒同士の高めあいや最高峰の教育などを行う。
星気…星炉から生み出されるエネルギー。魔力と言われていたりもする。そのエネルギーは電気の120倍にも上るエネルギー量を誇っており、人類の発明を何段ものし上げた。
Rリング…入学初日に渡される腕輪のような情報端末。立体映像を投射できるようになっており、それでメールなども確認することができる。その性能は防水防火防寒対衝撃の機能もついている腕時計型のスマホを想像して貰ったら良い。
序列…入学から約2ヶ月程で実施される制度。入学からの2ヶ月をポイントとして評価し、初期序列を定める。
これが主人公が入学する学校であり、物語の舞台となり学校だ。主なストーリーはこの学校の中で起こる。ついでに言えば倍率5000倍のイカれポンチ学校だ。主人公は入学してから様々な困難に出会い仲間と成長していくというものだ。もちろん恋愛もある。
……、なぜこんな大雑把なことしか思い出せないかというとそれら全てが断片的な記憶だからだ。ところところが抜け落ちており、ストーリーの全容がわからない。大雑把な流れくらいなら思い出すことができる…という程度だ。どうやら神様はカンニングペーパーはよこしてくれなかったらしい。
しかしそれぞれのキャラの詳細については思い出すことができ、どんな人柄かとかどんな性格か、というのは明瞭だ。
……。ゲームの内容を思い出してただ一つ思ったことがある。
──あれ…?この世界の難易度高すぎ…!?
星天学園の英雄生徒は難易度が異常に高く、キャラ育成をミスると簡単にゲームオーバーになるし、選択を間違えるとメインキャラですら簡単に死ぬという鬼畜ゲームだ。この難易度から攻略ガイドが異例の速さで発売されたほどだ。マジやばい。
そしてこのゲームで特に危惧しなければいけないものがある。それは、人類対【
そして主人公達が敗北した場合…世界は滅ぶ(??????????)………ま、まあこれは言い過ぎかも知れないが言い過ぎでもない(?)。なぜならラスボスは主人公達しか倒せないという設定だからだ。1人死ねば全てが噛み合わなくなり確実に敗北をきっするというわけだ。何だこのクソゲー。
主人公達の生存は絶対条件の中俺はどうするべきか…どうあるべきか………。いや、もう答えは決まっている。
それは『強くなる事』。才能もない自身がこう思うのも何だが…と、翔也は心の中で自虐するが翔也の頭の中では答えはこれしかなかった。メインキャラの死亡√を知り、そして阻止できる可能性を持った人物が俺だけだからだ。
ゲームのようにやり直しが効かない世界で、主人公達がラスボスを倒せるように自分はとりあえず強くならないといけない。何かの不祥事でヒロインなどが死亡√にいった場合自分が助けるハメになるかも知れないのだ(嫌だが)。
まあ要するに翔也が安全に生きるには強くなって原作に関わるしかしか方法はないという事だ(マジクソゲー)。
翔也は現実から目を背けるように目を瞑って眠りに落ちた。キャパオーバーである。
……。神様ぁ…、大役すぎませんかねぇ…コレ…。
2時間ほど爆睡した後、翔也はまたベットの上で思考しだした。眠って頭スッキリ状態である。
「(ふむ、強くなると決めたものの、どうやったら良いか全く見当もつかないな?)」
強くなると決めたものの、何も思いつかずに右往左往する翔也だったが一つの思考に至る。
「(そういえば転生者とか憑依者ってステータスボードとか持ってるよな?それって今の俺にも使えないのか?)」
思い立ったが吉日。翔也は早速試してみることにした。
「ステータス」「ウィンドウ」「ステータス【オープン】」
──ブオン
「出てきた…」
実際に試していたものの本当に出てくるとは思わなかったので思わずぼやいてしまった。しかしすでに近未来な世界に住んでいる翔也からするとそこまで珍しいものとも感じなかったのですぐに正気に戻りステータスを読み始めた。
ステータス
NAME:浅野翔也
OLD:16
Affiliation:無所属
LV:1
HP:30/30
星気:25
筋力:10
速度:10
体力:10
感覚:10
知能:10
SP:8
Skill:弓術LV2 双剣術LV - 体術LV3 星気操作LV4 観察眼LV -
固有星型:【一体化】[+魂][+自然]【ステータス】[+分配][+スキルコレクト]
「…オールマイティーってところか?」
正直自分のステータスに感想すら湧かなかった翔也は当たり障りない言葉を紡いだ。ゲームでは主人公がステータスを持っており、自分でSP(ステータスポイント)振り分けることができた。しかし主人公のステータスは少なくとも今自身が見ているものとは違っていた。まあ、ゲームと現実は違うのだろうと結論づける。
そして、気になる場所が数箇所あったので少し考えてみる。
1、固有星型の新しく増えている【ステータス】と【一体化】の[+魂]というもの。
2、スキルの双剣術と観察眼について。
3、SP(ステータスポイント)がなぜ8なのか。
1についてだがまず【一体化】の[+魂]は憑依(仮定)の影響だろう。特に気になるところは【ステータス】という新しく出てきた固有星型についてだ。
まず前提として言いたいのだが固有星型は1人につき一個だ。もうこの時点で今翔也が置かれている今の状況は可笑しいと言うことが分かる。
しかし、コレについては何となく一つの仮定を真実とすると説明が付く。それは『憑依説』。今の翔也は魂が2個ある状態だ…それならば固有星型が魂に付随すると考えれば説明が付く。長年の研究からも固有星型は人の魂によってその力が分かれると言われているのだ。
これは3の疑問にも答えることができる。そもそも何故これが疑問なのかという点だが、ゲームではSPが5以上与えられることがない。
SPは才能によって変動し、1LV上がることに最高が5最低が1だという裏設定を攻略本で見たことがあり、8以上SPがあるのは魂が二つあるので2人分のSPを4ずつもらっていると考えるのが普通だ。
………まあ、それに関してはありがたく貰っておこう。あって困るものじゃないし。
翔也はその中で1番気になっていたのは【ステータス】にある[+スキルコレクト]だった。[+分配]はなんとなくわかる。基礎ステータスにポイントを割り振れるのだろう。現実でもそこは変わらないらしい。
翔也は[+スキルコレクト]という表示に指で触れてみる。
──ブオン
そうすると、一つの細長いウィンドウがステータスボードの横に出現する。それを見た翔也は思わず驚愕する。
双剣術LV -▼0/1
弓術LV2 ▼ 1/4
体術LV3 ▼ 3/8
星気操作LV4 ▼ 2/16
観察眼LV -▼ 0/1
「…(なんだコレ)」
何が何だかわからず翔也はとりあえず1番気になっていた観察眼をタップしてみる。するとまた一つウィンドウが出てきた。
─ポイントを分配してください。 0/1
現在のポイントは8です。
翔也は1ポイントならと観察眼にポイントを1分配した。
─本当に分配しますか?※分配したポイントは戻せません。
yes/no
翔也はyesをタップする。すると、ティロンという小気味良い音が頭の中に流れる。改めてどうなったのかを確認するためにステータスを確認すると観察眼のLVが1になっていた。
……LVが上がったところで使い道が分からなければ水の泡だ。翔也はせめて、観察眼がなんなのかが分かったらな…と思考する。
──ブオン
すると翔也の願いを叶えるようにまた新たにボードが現れた。
【観察眼】
スキルや相手の概要を知ることができるスキル。LVが上がることでより詳細なことを知ることができる。
どうやらなかなか強力なスキルだったらしい。翔也は好機とばかりに双剣術を『観察』する。
【双剣術】
双剣を扱うための技能。双剣を扱う技能と速度に高補正。
LV0なので取得できるスキルはありません。
【ステータス】
自身のステータスを表示する。基礎ステータスにSPを[分配]したり[スキルコレクト]からLVに相応する派生スキルを取得することができる。
表示時─“オープン” 消去時─“クローズ”
【弓術】
弓を扱うための技能。弓を扱う技能と命中率に補正。LVの高さにより効果上昇。
LV1…“集中”─集中する。LVによって効果上昇。
LV2…“鷹の目”─視力に補正。LVによって効果上昇。
【体術】
体を扱うための技能。体を動かす技能とステータスに微補正。LVの高さにより効果上昇。
LV1…“疾走”─素早さに1分間補正。LVによって効果上昇。使用後は30分使用不可。
LV2…“身体操作”─動作時、理想の動きに補正。LVによって効果上昇。
LV3…“受け身”─体を衝撃から守るための行動に補正。LVによって効果上昇。
【星気操作】
星気を操るための技能。星気操作時、操作性に補正。LVの高さにより効果上昇。
LV1…“推進力”─星気に推進力を付与できる。LVによって効果上昇。
LV2…“身体強化”─星気を使って体を強化する。LVによって効果上昇。
LV3…“星弾”─星気の弾を飛ばす。LVによって効果上昇。
LV4…“瞑想”─瞑想することによって星気回復に微補正。LVによって効果上昇。
……便利だな。いや、これ本当にすごいぞ?と翔也は内心驚愕する。本来、こんなスキルを取得するには指定のスキルが一定以上のLVかつ、渦をクリアすることという条件があたりして少し手順を踏まなければいけなかったがこれはSPを使うことでその問題を解決できるようになった訳だ。しかも翔也は1LV上がることに8SP…これは他人よりも圧倒的なまでのアドバンテージを得ている。
その喜びに浸りつつ翔也は気になっていたことへ思考を回しだした。
【双剣術】
双剣を扱うための技能。双剣を扱う技能と速度に高補正。
LV0なので取得できるスキルはありません。
気になっているのはこの【双剣術】についてだ。一見普通に見えるが実は…主人公はこの武器…『双剣』という武器を選べないのである。
それの何が問題かわからない人もいるだろう。…………。いや、あったにはあったのだ………それは主人公としてではなく、
──敵側の武器であるのだが……。
もしかして誘導されてるのか?双剣を使えと、
………ええー。いや、敵側の戦力ダウンに繋がるなら…まあ、いいのか?その武器の場所ってどこにあるか知ってるし。
……でもね…もう、なんか怖えわ…。
翔也は全てがうまくつながりすぎていることに驚き、そして少し怯えた。
✴︎ ✴︎ ✴︎
次の日の昼頃、翔也は入院の手続きを終えてとある場所まで来ていた。
タクシーに揺られてついたそこは一目見ればわかるほどの大きな森でどこかおどろおどろしい雰囲気を放っている。
そこは最初ただの森だった。ただ元々碌に管理すらされていなかったという説明を省くのだが……。
そしてその野生動物の棲家となってしまった森に『渦』が生まれ、その渦発生時の魔気で当たりの動物が凶暴化してしまい立ち入り禁止区域となってしまったと言う訳だ。
「(やっぱり警備いるな…)」
まあこちらも警備がいることなんて履修済みで対策をして来なかったわけじゃない。
「(【一体化】[+自然])」
そう心の中で唱えると自分の存在感が消えていくことを翔也はなんとなく理解した。いや、自然と『一体化』した…と言うべきか。
称して「固有星型でゴリ押ししちゃおう大作戦!!」だ。完璧な計画だと翔也は自画自賛する。尚、ネーミングセンスは噛み合っていない模様。
ホルスターに入ったナイフを確認しつつゆっくりと網へ近づく。一見その網は頼りないように見えるものの星気の技術を持って作られたものなので凶暴化した獣程度では歪ませることも不可能だろう。
翔也はその網に飛び乗る。態々行く時間帯を昼にしたのは安全マージンをしっかり取るためでもある。
昼であれば非常事態に遭遇した時に『救難信号弾』を撃つことで助けを呼ぶことができる。お叱りは免れないだろうがそれを承知で来ているのだ、なんの問題もない。
前世なら持つこと自体そうそう出来ないものを持って来ているが、この世界では常備する事は普通となっている物品だけしか持ってきていないので特に問題はない。改めて前世の世界は平和だったなと、翔也は思った。
網を飛び降りた後に、翔也はゆっくりと森に入って行った。
木の上の枝から狼型の獣を確認する。どうやらその狼型の獣はまだこちらに気づいていないようだ。お自慢の鼻も翔也の固有星型の前では形を成さない。
─“身体強化”
星気がほんの少し削れるような感覚と体に溢れる全能感。今ならどんな事でも出来そうだと思ってしまう。
木の枝から狼に向けて大きく飛び降り、“例の技”を発動する。
─ 【双剣術】“急所突き”
【双剣術】“急所突き”…急所を突くことによってダメージが2倍になると言うもので、双剣術がLV1になった時に解放された【
翔也は狼型の獣の首に向かってナイフを突き刺す。
─パスッ
脊髄の間を狙って突き刺さったナイフは一瞬にして狼型の獣の命を奪い、狼型の獣は断末魔さえあげる事なく絶命した。
翔也はふぅ…と息を吐いてナイフに付いた血を軽く拭った。
─ピロンッ
「ん?」
─LV up
「お、幸先いいな。【オープン】」
ステータス
NAME:浅野翔也
OLD:16
Affiliation:無所属
LV:2
HP:30/40
星気:30
筋力:10
速度:10
体力:10
感覚:10
知能:10
SP:4[+8]
Skill:弓術LV2 ─集中LV1
双剣術LV 2
体術LV3
星気操作LV4 ─身体強化LV2
観察眼LV 1
固有星型:【一体化】[+魂][+自然]【ステータス】[+分配][+スキルコレクト]
どうやらHPが10と星気が5上がったらしい。この2つはポイントを振り分ける事で成長させることもできるが自然と上がっていくので優先順位は低めだ。
そして新しく増えている身体強化と集中に関しては汎用性が高いスキルだったので優先的に取得した。SPを4残していたのはもし予想外の事態が起きても柔軟に対応できるようにしておくためだ。備えあれば憂いなしである。
そうして途中に熊に遭遇したりと色々あったものの、凶暴化した獣を出来るだけ狩りながら進んでいくと少し不自然な空間を見つけた。他の場所では木々が並んでいるものにそこだけ円形に植物が生えていない。木はおろか、花や草まで生えていないのは不自然すぎる。
翔也はゆっくりと警戒しながら円の中心に近づいていく。
「(俺の予測が正しければ…)」
円の中心に近寄り、ゆっくりと手を伸ばす。
「!」
手を伸ばすととある場所から手の先がなくなっていく…いや、別次元に入っていく。
「(やはり、透明の渦か…)」
本来渦は色を持っている。その色やエグみ、ドス黒さなどからその渦の危険度などが判別することができるがこの渦…ある系統の武器がある場所はこんな風に透明色の渦なのだ。
「【オープン】」
ステータス
NAME:浅野翔也
OLD:16
Affiliation:無所属
LV:4
HP:40/60
星気:40
筋力:10
速度:10
体力:10
感覚:10
知能:10
SP:12[+16]→15
Skill: 弓術LV2 ─集中LV1→2
双剣術LV 2→LV3
体術LV3 ─受け身LV1
星気操作LV4 ─身体強化LV2 →3
観察眼LV 1
固有星型:【一体化】[+魂][+自然]【ステータス】[+分配][+スキルコレクト]
この先に何が待っているかは未知数だ。出来るだけ万全を喫する必要があるのでスキルのレベルを上げて安全マージンを取る。
一度渦のある場所を見やって瞼を閉じる、そして大きく息を吸ってから大きく吐く。これを繰り返し、覚悟を決めた。
─瞼を開ける。
そして透明な渦の中に一歩を踏み出した。
─ざり…
砂利を踏み締めたような音が耳に入る。渦の中であろう場所を翔也は見回す。
そこは古びた神殿のような場所だった。翔也が入ってきたのは正面方向からで奥を見やると左右には大きな支柱が並列しており大層立派なものだがいかんせん古びたような内装であちこち欠けていたりと少し不気味だ。
そしてその内装よりもよっぽど不気味なものが部屋の中央にあった。そこは紫色の魔法陣があり、何かの儀式をするためのものか祭壇なのかはわからないが、その中心には黒い剣が2本突き刺さっていると言うことだけ伺えた。
翔也はそれに向かってゆっくり歩を進めた。近づいていくごとに
全身から汗が吹き出し、眩暈や嘔吐感今すぐにぶっ倒れたい気分だが翔也はそれをグッと我慢する。翔也は今試されているのだ
全身や足は生まれたての子鹿のように震え、その捕食者は涎を垂らしながら自分をいつ食べようか愉しまれているような恐怖感、絶望感に襲われながらも翔也はその剣の前へと辿り着く。
改めて正面からその剣を見るとこの剣は圧倒的なまでの存在感を放っており、剣自体も黒の単一色で無駄を全て取り除いたような美しいフォルムだ。光の当たり具合によって紫色に怪しく光るその姿さえ綺麗に感じた。
「…」
翔也は無言でその剣の持ち手を握った。いつのまにか自身を支配していた恐怖などは全て消え去っており、今はただ目の前の剣に見惚れていた。
翔也はその双剣を思いっきり引っ張った。
─ザリン
刺さっていた部分が擦れる音と、抜くときの力によって刺さっていた場所が切れるような重たい音と共にその剣は全貌を表した。
双剣 -暴食グラ…30cmほどの刃渡りは真っ黒で、フォルムはロングナイフのようでもあり、小太刀のようでもある。この剣の真価は二つある。一つ目は成長…斬ったものの血肉を喰らう事で切れ味に磨きがかかると言うものともう一つは──
「おいおい、先客がいるのかぁ?」
「!?」
修也は思わず振り返る。この剣のことを考えすぎて完全に気が抜けていた。そして、今考えられる限り最悪の展開を迎えてしまったのだ。
「マジかよ!先客はいないってボスが言ってたんだがなあ?!」
「…」
この筋肉質で薄黒い肌を持った男はディエゴ…この武器の本来の持ち主であり、将来星護者を大量に虐殺し、主人公達を苦しめることになるであろう魔人だ。
「おいおい!お前!その武器置いていけば見逃してやるよ!!ガキはママのおっぱいでも飲んどきな!!」
「母親は居ない…」
「あっそ!って言うかそんなのどうでもいいから早く置いていけよ!!あーあボスがここにいい武器があるからって言うから来てやったのにめんどくせえなあ!」
ここまで聞いたら気づくものもいるかもしれない。ディエゴはかなりのお喋りだ気づいたら様々なことを喋ったりする。この双剣がある場所をしゃべった理由もただ主人公が日本人だったと言う理由だけだったのだ。
「あーもういいや!お前ぶっ殺して奪えばいいよな!?」
「…」
どうやら引き下がってくれるだなんて言うご都合主義な展開は無いらしい。翔也は衝撃に備える。
「行くぜえええ!!!!!!!」
「ッ!!!」
大振りの拳が翔也に襲いかかる。普通ならこんな拳簡単に避けることができるのだがコイツは…。
「グウウッ!」
─パワーとスピードが並外れている。
翔也は双剣をクロスにして完璧に受けたものの10mほど後ろまで吹き飛ばされる。拳を受け止めた腕がジンジンと痺れている。並外れた力だ。
「!?」
吹き飛ばされてからすぐに顔を上げてディエゴの居場所を確認しようとしたが突然左側から大きな衝撃を受けた。
翔也は地面をバウンドしながら吹き飛ばされる。あまりの衝撃に意識がどっかへ飛んでいきそうだった。
─受け身
なんとか受け身を発動したのでバウンドによるダメージは少ないがディエゴの拳をモロで受けたことによって肋が数本折れた。ディエゴの会話時点で身体強化を発動していなかったらちょうど今頃死んでいただろう。
「?なんだあ…お前今のでぶっ殺したと思ったんだがなぁ。加減しすぎたかあ?」
「…」
「ダンマリ決め込んでんじゃねえよ!!!」
「グッ」
今度はなんとか拳を受けることができたが折れたであろう肋が痛みを鮮明に伝えてくる。おかげで気を失う事はなさそうだ。
「あん!?やっぱりそうだよな!??!お前が硬えんだよ!!!」
「ハッ…お前の攻撃がへなちょこなんだろ」
「……あ”?」
「グエ」
ディエゴの拳が鳩尾を貫く。胃液が全て撒き散らされ、口から血も流れ出す。どうやら折れた肋が内臓を傷つけたようだ。
「やっぱ決めたわ。お前、死ぬまで痛ぶってやるよ」
「ハハハ、出来るもんならやってみろ見せかけ筋肉」
「やっぱお前ムカつくなあ!!!」
─殴られる。
─蹴られる。
─投げ飛ばされる。
そこからはただ殴られ続けた。致命傷は全て避けたり受け身を取ったりしているが確実に翔也は追い詰められていった。
「…ゲホッ、ゴホッゴホ…」
視界が赤に染まる。頭を切ったのだろう血が流れて目に入ってきたのだ。全身は打撲後や内出血やらで完全にボロボロの雑巾のようだ。
「あーあ、お前が大口叩くからなんかあるのかと思ったけど!やっぱなんもねえのかよ!その能面みてえな顔面のせいで分かんなかったぜ!」
「……元々だ」
言い返す翔也のことを無視して拍子抜けだぜ!と悪態を吐くディエゴに翔也は内心で笑った。
「あーあもう飽きたし、お前殺してその剣奪って帰ろ」
─ああ、待ってた。
そう、待っていた、翔也は待っていたのだ。ディエゴが完全に自身から警戒を解くその瞬間を。たった一撃を入れることができるだけの隙を。
「(【オープン】)」
ステータス
NAME:浅野翔也
OLD:16
Affiliation:無所属
LV:4
HP:4/60
星気:40
筋力:10
速度:10
体力:10
感覚:10
知能:10
SP:15
Skill: 弓術LV2 ─集中LV2
双剣術LV3
体術LV3 ─受け身LV1
星気操作LV4 ─身体強化LV3
観察眼LV 1
固有星型:【一体化】[+魂][+自然]【ステータス】[+分配][+スキルコレクト]
↓分配後
ステータス
NAME:浅野翔也
OLD:16
Affiliation:無所属
LV:4
HP:4/60
星気:40
筋力:10
速度:14
体力:10
感覚:10
知能:10
SP:0
Skill: 弓術LV2 ─集中LV2
双剣術LV3 ─縮地LV2
体術LV3 ─受け身LV1 疾走LV2
星気操作LV4 ─身体強化 LV3推進力LV2
観察眼LV 1─並列思考LV 1
固有星型:【一体化】[+魂][+自然]【ステータス】[+分配][+スキルコレクト]
縮地…星気を消費して3秒間速度を5倍にする。LVが上がるごとに効果上昇。
ディエゴを一撃で沈めることが出来る攻撃力は最初から持っていた。あとは油断とそこに付け入る速さだけだった。誰にも追いつくことができない速さ…まだ一回も試したことがなかった、ただの仮説。それを
失敗したら?勿論死。
─ハハッ
「上等」
「ああ?なんだあ…まだやんのか?そんな体でかぁ!?笑わせんなよ」
翔也はずっと隠し持っていたポーションを一気に煽る。HPは20ほど回復しただろうか。今の所それを確認している暇はない。
「“血肉を喰らえ”【グラ】」
手に持っている双剣が赤黒く光出す。グラのもう一つの真価。これをみられたらディエゴは警戒心を持ってしまうだろう。だからその隙はやらない。
【一体化】[縮地]+[推進力]+[疾走]+[身体強化]+
[集中]+[並列思考]=
─失敗は許されない。
翔也は集中と並列思考を使って更に深くまで潜る。
世界が色褪せる。
脳が要らぬ情報を遮断し始めた。
嗅覚。聴覚。味覚。それら全ては二の次。
触覚へ全て集中する。
─ただ、その時を見逃さない。
双剣術“急所突き” + “
全てを置き去りにしたその斬撃はディエゴの首を切り飛ばす。
色褪せた世界で最後に見たのは体を無くした頭の間抜けズラだった。
元に戻った世界で翔也は地面に倒れる。掠れた意識の中一つ心の中で決めた。
──ああ、そうだ。俺はこのクソな世界で、今度は寿命まで生き残ってやる。
これはその一歩だ。と、そこで翔也の意識は完全に途絶えた。
【刹那】…1秒間速度30倍の補正。体感時間を10倍にする。使えば体をぶっ壊す諸刃の剣。使い方を間違ったら体ごと爆発する。使用後3日使用不可。
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