英雄教室の脇役暗躍者   作:たかたけ

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たらら↑ららら→たらら↑ららら→ららら↑ららら↓らららら→


入学試験編 Episode4

 

 「翔也さん!」

 

 少し離れた場所まで避難していたアウレリアが翔也の名前を呼びながら駆けてくる。“作戦通り”だとしても流石に心配だったらしく他のことに脇目振らずという感じでかなり無防備だ。…揺れてる。

 

「アウレリア、ありが─」

 

 ─ありがとう。そう自分を信じてくれたことへのお礼を言おうとしたところで翔也は真正面からアウレリアが突っ込んできた。

 

「!?!?」

 

 突然美少女が真正面に来た衝撃で翔也は頭がパンクしてしまった。人は本当にびっくりした時に声が出ないと言うのは本当らしい。

 

「ど、どうしたん「凄いです!!!!」…は?」

「凄いです!作戦を伝えられた時、実は本当に出来るのか半信半疑で…でも!本当に翔也さんの作戦通りに男の人が動いて…本当にすごいです!!」

 

 さっきから話遮られてばっかりだな…と思う翔也とは対照的に、アウレリアは感激ここに極まれりと言った様子で今自身が異性に抱きついていると言う自覚すらないようだ。何がとは言わないがアウレリアのそれが変形しているので翔也はそこへ視線を向けることができない。後々のアウレリアの為にもそろそろ伝えたほうがいいのだろう。

 

「…なあ、そろそろ離れてくれないか?ちょっと近すぎる」

「え?………っ!?」

「おい、まて。不可抗力だ」

「わかっています…!わかっていますぅ…!!」

 

 ようやく翔也と密着していると言う事実に気付いたのか、アウレリアは胸を庇いながら翔也を恨めがましい目線を目尻に涙を溜めた藍色の瞳をで向けてきた。側から見れば自身が美少女にセクハラしたという完全に明日の朝刊で目の部分を黒い線で覆われて大々的に張り出されそうな状況に慌てて誤解を解こうとする。

 アウレリアは頭では分かっているものの心が追いついていない様で涙目で翔也の胸板をぽかぽかと叩いてくる。なんだこの可愛い生物(2回目)。

 

「……。でも、無事で良かったです…」

「…ここで怪我しても現実で傷が出来る訳じゃないだろ?」

 

 翔也はアウレリアが心配した理由がわからずに首を傾げた。それを聞いたアウレリアは首をブンブン横に振る。

 

「それは違います。例え、現実で怪我が無かったとしても…私は“友人”が危険な目に合った時、心配せずに達観できる人間ではありません」

「…そうか」

「それに、心配して…安心するだけならタダですから…怪我が無かったことよりも値段が高くつくものは無いんですよ?」

 

 舌を少し出してふわりと笑うアウレリア。彼女は教会の聖女だ…命の尊さ、怪我の重大さを誰よりも理解し、命を重んじる心優しき少女なのだ。

 

 彼女は人の心に寄り添うことができる一人の少女であり、浅野翔也のたった1人の友達だ。だからこそ…──。

 

 

 そこで会話が途切れ、翔也とアウレリアの間に静寂が訪れる。別に喋ろうと思えば喋れたが今はこの雰囲気に身を任せたい気分だった。アウレリアのそうだったらしく瞼を閉じてフワリと笑顔を浮かべている。

 

 すると突然、アウレリアと翔也の体が青白い粒子になっていく。どうやら現実世界に戻るらしい。暫く自身の体を見ていた2人だがその視線が突然合致した。

 

「…アウレリアがパートナーで良かった」

「…私も、翔也さんがパートナーで良かったです」

「それじゃあ…」

「はい…」

 

 2人は頷きあう。一緒となった時間は短いが、それでもたった1人の友人となった彼女たちの意思は同じだった。

 

「「次は、一緒の学校で」」

 

 その言葉を最後に2人の視界は青白い粒子に満たされた。

 

 ………。

 

 

 

 

─時は少し流れ…試験日当日の夜。

 

 

 星天学園の校舎は最低限の電灯が照らしているのみのとなっていた。その電灯で照らされた道を金髪をパーマロングにし、サファイヤの様な輝きを放つ碧眼を持った少女…アウレリアが歩いていた。

 

「うぅ…道に迷ってしまいました。ここは一体どこなんでしょう…」

 

 試験が終わった後、この学園の学園長である“世界序列一位”であるセラからお茶のお誘いを受けていたアウレリアは学園長室で“聖女”としてセラとの対話を行なっていた。幾ら世界に勢力を伸ばしつつある“教会”とはいえ、一国家の統括であり世界序列一位の彼女の誘いを断ることなどできないのである。

 

「しかも、さっきからどんどん暗くなっていっている様な…」

 

 アウレリアは今起こっている違和感に少しずつ気づき始めていた。そしてすぐにその違和感は鮮明に現れ出した。いや、近寄ってきた。

 

─ザッ

 

─ザッ

 

 そんな人の足跡が1人2人と増えていき、最終的には5人となった。その足音はアウレリアが声をかける間もなく彼女を囲い、5人の男は下卑た笑いを浮かべながらそれぞれ武器をゆっくり取り出していく。

 アウレリアはその男たちに混乱しながらも聖女として気丈に対応する。

 

「貴方たちは何者ですか?ここには現在関係者以外立ち入れない筈です」

 

 その問いに1人の男が答えた。

 

「キハハハ!そんなもの簡単だよ!だって聖女サマも居るじゃないですか〜!!!」

「!……。受験生に紛れ込んだのですか…」

「セーイカーイ!!なんと!!正解した聖女サマには特別なサープラーイズをご用意してるゼェ?」

「サプライズ…?」

 

 アウレリアは訝しげにその男を見る。そしてその男は一本のナイフを取り出して歯の部分をべろりと舐める。側から見たらよくいそうな三流の盗賊がやっている様な仕草だが。聖女であるアウレリアはその短剣に異常な力が宿っていることに気がついた。

 

「!?な、なんですか!それは!!!」

 

 アウレリアはそのナイフを見て思わず体を震わせた。なぜならそのナイフには本来宿ってはいけないものが宿っていたのだから。それは固有星型の【祝福】によって可視化されアウレリアには鮮明に視認することができた。

 

「怨念……?しかも一つじゃなくて何十…いや何百もの……?!」

「キハハハ!やっぱり聖女サマは“眼”が良いんだなぁ!!!やっぱりあの方の言う通りにしないといけない様だなぁ…」

「ひっ……や、やめて下さい!」

 

 男はナイフを手の中で遊ばせながらゆっくりとアウレリアに近づく。アウレリアは怯えた声を出すがその悲鳴は男を楽しませるためのBGMにしかならなかった。彼女は後ろに下がろうとしても敵が背後にも居るのでどうにもできない状況だった。

 もはや万事休す……アウレリアはただそのナイフが自信を切り刻むのを恐怖の中で待つことしか出来ない状況だった。

 

「ヒヒひっ、切った時はもっと良い声で泣いてくれよ?そっちの方が興奮するからなぁ。それじゃあプレゼントだ!“消えない傷”のプレゼントだぜぇ!!!」

「いや…!たすけてっ翔也くん…!」

「ははは!ここには誰も居ねえよ!!!大人しく切られな!!!」

 

 瞼を伏せ、目尻を涙で濡らしながら膝をついて体を丸めたアウレリア(少女)。その姿は聖女としての姿ではなく、ただの友人に助けを求める15歳の少女だった。

 

「すまないが。その少年の代わりに俺がこいつを相手にしよう」

 

 突然聞こえてきた声。その声は何か機械を通した後のように少し違和感を感じるものだ。だがその声が聞こえた途端、ナイフを持っていた男に異変が生じた。

 

─ぶしゅり

 

 突然、ナイフを持った男の肩から先の腕が血を吹き出しながら地面に落ちていく。そしてその男の後ろにはいつの間にか黒いコートを羽織っている狐の仮面をつけた男が立っていた。

 その仮面の男は質問をするために口を開いた。仮面から覗く仄暗い瞳は人への感情を一切捨てた冷徹な瞳をしていた。助けてくれたとしてもその瞳と目が合ってしまったアウレリアは思わず体を震わした。

 

「1つ聞こう。お前たちは“災禍の彷徨い(アポカリプス)”で間違いないか?」

「………は?あ?はあああああああああ!!?!!?なんで!おれの、腕ぇ!!?」

「うるさいな……こっちは質問しているのだが?」

「おい!お前ら!!!早くこいつを殺せ!!!」

「はあ…」

 

─バタバタバタ、バタ

 

 腕を切られた男が錯乱し、仲間に助けを呼んだが次の瞬間にはバタバタとその男の仲間たちは力尽きていく。

 

 

「…私はそこまで寛容ではない。もう一度質問する。お前たちは“災禍の彷徨い(アポカリプス)”で間違いないか?これで最後だ。これに答えなかった場合…お前には解答の意思なしと判断しお仲間と同じ末路を辿ってもらう」

 

 仮面の男は倒れた男たちに視線すら向けずに続けた。いや、これは彼がやったことなのだろう…その事に彼はもはや興味すらなく、脅す為の道具としてしか考えていない。

 

「…ひっ!そ、そうだ!俺たちは“災禍の彷徨い(アポカリプス)”だ!」

「では次の質問だ。お前らの目的は?」

「あ、ああ…そ、それは…¥/「&/」/」」

 

 質問に答える腕を失った男は“目的”を聞かれると突然絶望した顔になり、胸を押さえながら苦しみ始めた。

 

「“種子”か」

 

 仮面をつけた男は納得したかのような声を出し、何処からともなく純黒の双剣を取り出した。そして、その男の首を切り飛ばそうと─

 

「駄目ですっ!!!」

「!」

 

 ─したところで、金髪の少女…アウレリアが仮面の男へ体当たりする。仮面から覗く瞳がアウレリアを鋭く睨む。対するアウレリアも強い意志を含んだ瞳を仮面の男へと向ける。

 2人は睨み合う。

 

「何故…邪魔をする?」

「どうして…殺そうとするんですか?」

「もうその男は助からないからだ」

「どうしてそう言い切れるんですか?まだ助けられるかもしれないじゃないですか!」

 

 そうアウレリアは言うと苦しんでいる男に向かって回復魔法をかける。しかし、その苦しんでいる男は一向に良くなる気配を見せない。

 

「っ!どうしてっ…!」

「時間の無駄だ。早く退けろ」

 

 仮面の男の喋っていることさえ耳に入っていないアウレリアは回復の他に解毒、解呪、体力回復…などのアーツを試すが男はさらに苦しむばかりだ。

 

「!貴方は…!貴方はこれの治し方を知りませんか!?」

「……」

 

 アウレリアはこの症状を知っていそうな仮面の男に藁にすがる思いで質問した。しかし、仮面から帰ってきた答えは彼女を絶望させるには十分なものだった。

 

「ない」

「…………え?」

「だから無いと言っている。そいつらは魔人と契約を交わし、“種子”を植え付けられた人間だ。その種子は体の中で根を生やし、脳や心臓、果てには魂にもへばりつく…その種子を取り出せてもその体はすぐ死ぬだろう」

「……そんな」

 

 アウレリアは絶望したように地面に膝を下ろす。だが仮面から出てくる言葉はさらにアウレリアに重くのしかかる。

 

「そいつらはお前を殺すために用意された捨て駒だ。コイツらは今殺さないと体の中で種子が孵化し、【エラ】となって人を襲うだろう。だから俺はコイツらをここで殺さなければならない」

「………」

 

 アウレリアは履いている制服のスカートをギュッと握った。

 

「…俺には理解できないな」

「……。何がですか…?」

 

 アウレリアは静かに涙を流す瞳を仮面の男に向ける。

 

「お前がコイツらの死を悲しむ理由がだ。殺されかけた自覚が無いのか?あの短剣で斬られていたらお前は取り返しがつかない事になっていただろう」

 

 そう聞かれたアウレリアは涙を流しつつもその奥には強い芯の通った瞳を仮面の男へ向ける。

 

「…“理由”が必要なんですか?人の命が無くなってしまう時…悲しんでは駄目なんですか!!?…確かに、私はこの人達に殺されかけたかもしれません…でもそれが私が悲しんではいけない理由にはならないはずです!!…命に、価値はつけられないんです……」

「………やはり、理解出来ないな。そんな事を言っていると…いつか、本当に大事なものを失うぞ。少なくとも、俺はそうだった」

「…………」

 

 アウレリアは何も言わずに仮面の男を見つめる。その男は苦しむ男を殺すために歩き出す。すると、後ろから声をかけられた。

 

「…あの!」

「…なんだ?言っとくが、殺すなと言う願いh「─違います」…じゃあなんだ」

「…。あの人達…痛く無いようにしてあげて下さい…」

「……了解」

 

 仮面の男は再び苦しむ男たちに歩みを進めた。その後ろでは膝を突いて胸の前で手を握り、祈りを捧げている。おそらく、彼女は納得しきれていないのだろう、しかし、無駄な事を続けるほど馬鹿でもない…それ故に自身の無力さに打ちひしがれている。

 

 馬鹿ならどんなに良かっただろう…しかし彼女は利口だった。ただ悲しむことで許されたらここまで彼女の心は追い詰められなかった。それでも彼女は馬鹿にはなれない。1人でも多くの命を救うために。

 

「吸え…」

 

 仮面の男が持っていた純黒の双剣が赤黒い光を帯びる。凄まじい力が宿っていくことがアウレリアの目から見ても理解出来た。

 

 グググ…と胸の前で握った手に力が入る。目を開き、苦しむ彼らの死を見ようとする。自身への戒めとして…。

 

 仮面の男が構える。右手には順手で握った剣、左手には逆手に握った剣…その腕をクロスするようにし、腰を下げながら利き足に力をグッと貯める。

 

─シッ

 

 双剣術─“韋駄天”

 

 気づいた時には倒れていた男たちの首と体は亡き別れとなっていた。その姿を見届けた彼女は大粒の涙を瞳に溜め、今一度…祈りを捧げた。

 

 仮面の男は去り際にアウレリアを一瞥し、口を開く。

 

「やはり…俺はお前の事が好かない」

「…ふふ。私は貴方のことが少し苦手ですね」

「…せいぜい、生き残れよ」

「……」

 

 ─ありがとうございます。そんな言葉が聞こえた気がするが、仮面の男は背を向けたまま、その場を去っていった。

 

……………。

………。

…。

 

「……おい、出てこい」

 

 仮面の男は虚空に向かって声を掛ける。

 

「いるのは分かってる。時間の無駄だ」

「……バレないと思った」

 

 鈴を転がすような声が闇が支配する夜に響いた。その声が聞こえた方向には艶やかでほのかに星気を含んだ銀色の髪を靡かせた少女が立っていた。

 

「…なんで分かったの?」

「目が特別なんだ」

 

 ふーん…。と言いながら仮面の男の周囲をふわふわと回る少女。夕焼けと星空をグラデーションにした水面の様なその瞳は仮面の男を見透かすように見つめている。

 

 いつの間にか仄暗かった周囲は、彼女の瞳のように夕焼けのようなほのかな暖かさと明るさが支配していた。おそらくはその少女の今も溢れ出している星気の粒子の影響だろう。この場では彼女より下の星気は支配されてしまう。要するに打つ手がないと言うことだ。

 

「で?聖女はどうしたんだ?」

「…教会の人に任せてる」

「それで私を追ってきたのか?」

 

 仮面の男は呆れたと言うように肩をすくめる。教会の聖女をこんなふうに扱える人間は世界にも限られているだろう。

 

「それで?私に何を求めるんだ?」

「…貴方の正体」

「…それだけか?」

「うん」

 

 その少女のゆったりとした喋り方に仮面の男はペースを崩されそうになる。

 

「教えてもいいが…条件がある」

「…条件?」

「ああ…これから、お前には“俺”の協力者になってもらう……

 

 

 …世界序列一位“星界の魔女”セラ」

 

 そう仮面を取り外した男…浅野翔也は言った。

 

 

 

─────────

 

 ステータス

NAME:浅野翔也

OLD:16

Affiliation:無所属

LV:24→29

HP:270/270→320/320

星気:145→170

筋力: 32→40

速度: 40→50

体力: 32→40

感覚: 30→40

知能:20→30

SP:41→81→14

Skill: 弓術LV2 ─集中LV2 鷹の目LV2

双剣術LV4─縮地LV2 気配察知LV3危険察知LV2

体術LV3 ─受け身LV1 疾走LV2

星気操作LV4 ─身体強化 LV3推進力LV2

観察眼LV 3─並列思考LV 3看破LV4[NEW]

【刹那】 

以下略…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




トマトケチャップ

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