異世界で宇宙戦艦をゲットした時に起きる事 -サプライズ宇宙戦艦理論-   作:デュアン

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謎の隕石は大抵伏線

「ふう、振り切ったか」

 

 ある程度進んだ後、ふと立ち寄った部屋で腰を落ち着ける。扉をしっかりと閉め、シールドを張る。

 バイクを収納しその場に座る。そしてそこにやや気まずい空気が漂った。

 

「……ごめん。熱くなっちゃった」

「いや、どのみち会敵してただろうしそれが早まっただけだよ」

「……申し訳ございません。許可無く発砲してしまいました」

「あの場面ではそれが最善だった。結局は生きてたし」

 

 暗い表情を浮かべる達也とミズリそれぞれをフォローする。邪魔な如月は処理出来たし、何故かは知らないが撃たれたエリスフィーズは生きていたのでまあ結果良ければ全て良しという訳である。

───因みにだが、魔剣ベーレンディアの副次効果として"肉体の保存"という物がある。これは離れていた精神が肉体に帰ってきた時、肉体の形を精神の形に合わせるという物だ。だからこそ撃たれたのにも関わらず復活したのである。これは機密中の機密であった為に知らなかったのだ。

 それにしてもあのミズリがここまで表情を変えるとは驚きだった。スキルによって生み出されたサポートAI、それが彼女だ。自分のスキルだというのに未だに知らない事だらけなのだな、俺は改めて感じさせられる。

 隣ではおろおろとしているイリィ。自分はこの場で何をすればいいのか、どの立場に立てばいいのか分からない様子だった。まあ仕方あるまい。

 

「さ、さっきのはなんなのです? とってもはやかったのです!」

「あれはバイクだよ。しかも浮いて走るから障害物を無視出来るんだ」

 

 ああ、彼女の懸命なフォローが有難い。備品の蘊蓄を語って少し空気を和ませる事が出来る。

 

「さ、本来の目的を果たしにいこう」

 

 パン、と手を叩きそう言う。

 そう、ここに来た本来の目的は地球に帰る為の手掛かり───達也が見たという世界観に似合わぬ物とやらを見つける為なのだ。こんな所に居ても何にもならない。

 

「ミズリ、ドアの外に誰か居るか?」

「……居りません」

「よし、ミズリはドアを開けてくれ。俺達は念の為に武器を構えておこう」

「了解しました」

 

 そうして部屋を出て再び進み始める。道中の衛兵を気絶させながら物色していくが、あるのは高そうな壺やらの装飾品ばかり。

 さっきエリスフィーズに聞いておけばよかったな、俺はそう後悔しつつ角を曲がる。

 

「……資料保管室、か」

「あっ」

 

 その部屋の扉を見た瞬間、達也が何か気付いた様な声を出す。

 ここだ、彼は呟いた。ミズリに内部の反応を確かめさせ、慎重に扉を開ける。

 中は薄暗い空間であった。無数の棚が並ぶそこには様々な物が安置されている。禁書庫に置く程ではない古文書や古代の遺物、そして。

 

「───ん? 何だこれ」

 

 その中で、俺はある物を見つけた。

 一見すると単なる赤黒い塊にしか見えないそれは、よく見ると何か大きな物から剥がれ落ちた様な物に見える。平べったい歪な直方体で、平べったい面は小さな粒が高速でぶつかった様な凸凹に、それ以外の面は少し棒が飛び出ている。

 

「あ、これだよ! 機械の部品みたいに見えない?」

「ああ……多分これ、装甲板だな」

「へ?」

 

 昔博物館に展示されていた引き揚げられた戦艦の装甲板の残骸、これはそれに酷似していた。

 

「発見場所は……ピラクテ海岸、か」

 

 残骸に貼り付けてある紙にはそう書かれている。

 ピラクテ海岸、レファテイン王国のあるゲリュバテス大陸南部にある海岸であり、コントリール海に面している場所である。

 

「帝歴713年に空から降ってきた……何処かで聞いた様な話だな」

 

 コントリール海、帝歴713年、空から降ってくる。その三要素が揃った物を俺は何処かで知っている。

 額をトントンと指で叩き記憶を探る。探って、探って、俺はそれを見つける事が出来た。

 

「───そうだ、隕石」

「何か思い当たる事でもあるの?」

「ああ、マシュロレーンでそんな記述を見たんだよ。帝歴713年にコントリール海に隕石が落ちたって!」

 

 あの時読んでいて、共に描かれていた隕石が妙───到底岩石だとは思えない直方体に描かれていたのを思い出す。あの時は単に表現の問題だと思っていたが、違ったのだ。

 

「達也、コントリール海に向かうぞ」

「分かった。そこに何があるの?」

「多分───宇宙船だ。俺達よりも先にこの星に宇宙人が訪問してたのさ!」

 

───────

 

「エリス様、大丈夫ですか!? ……エリス様?」

「ど、どうしたんスかその顔」

 

 夜空達が去った後、一部の者は追ったものの大半はその場に留まっていた。

 その理由は。自分達を召喚した聖女───エリスフィーズがへたり込んで動かなかったからだ。彼女は如月に並ぶ事実上のリーダーの様な役割もこなしており、その彼女がこの様な状態では動けるものも動けない。

 そのエリスフィーズは今、へたり込んで自らの身体を自らの腕で抱き込んでいる。顔は蒼白で、まるで死者の様だった。

 

「……櫻井夜空」

「へ?」

「櫻井夜空に、手を出してはならない……」

 

 彼女はうわ言の様に呟く。

 

「世界を自由に造り替えられる者に、敵う訳が、ない」

「な、何があったんスか!?」

「追いかけた人を今すぐ呼び返しなさい……!」

 

 その指示に、彼女を見ていた者達は驚愕する。何しろそれは今までの彼女からは到底出てこないであろう物だったから。

 そして、彼らは彼女が錯乱しているのだと判断した。だからこそ彼女の指示を遂行せず、彼女の看病を優先した。

 だが、彼女は錯乱などしていない───寧ろ、至って冷静であった。冷静になったからこそ、彼女は先程櫻井夜空の精神内であった事を整理し、理解してしまった。

 

「魔界の雲を取り払う……? フフ、フフフ」

 

 彼女のその呟きは、あまりの小ささに誰も聞く事は無い。

 魔界の状況は彼女も知っている。分厚い雲が空を覆い、陽の光が一切届かない死の大地。これまで幾度となく人類が侵攻したもののその環境の過酷さから大した成果も得られず撤退を余儀なくされた世界。だからこそ魔族は人間界に侵攻していた。それは知っている。

 だが、先日の突然の魔王軍撤退。大打撃を受けた訳でもないのであれば───考えられる理由はただ1つ。

 そして、解放された民の言っていたある言葉。

 

「"山が空から落ちてきた"……フフ、ハハハ……」

 

 全てが繋がってしまった。

 あの場で魔王が嘘をつく理由は無い。強いて言うならば魔王が懐柔されている場合だが、それならばそう言った方が効果的だ。

 つまり、櫻井夜空という男は大地に山を設置出来る程の力を持っており、どういう仕組みかは知らないが雲を取り払う事が出来る人間。魔王が味方をしていたのもその恩義を感じての事だろう。

 

 そして、そんな"力"に対して人間側が出来る事は───無い。

 

「私は、一体……」

 

 何を召喚してしまったのだろうか。その答えは、きっと永遠に理解する事は出来ない。




気になる人は『知の街マシュロレーン』を読み返してください(ステマ)

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