ムゲンの果てに、辿り着いた教室で   作:イフリ

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初投稿です。


始まりと中間テスト
始まりのプロローグ


ここは東京都高度育成高等学校。その敷地内のとある道。

月光のない暗い夜道の中、1人の女子生徒がやや速足で歩いている。

 

高校生というより中学生という方がしっくりくる少女だ。左に大きく流した茶髪のボブカットに、光のない琥珀色の瞳で形作られる童顔は、必死で気丈な表情を浮かべているように見える。

 

少女は時折視線を左右に向けながら歩き続けていたが、街灯がなく、監視カメラの範囲外にもなっている場所に辿り着くとゆっくりと立ち止まった。

 

やがて、懐から赤と白のボール状の物体──モンスターボールを取り出すと空に放った。

 

「──────!!」

 

この世のものとは思えない鳴き声とともに現れたのは赤と紺色の竜。

──キョダイポケモン、ムゲンダイナである。

 

だが、本来光沢に満ちているはずのその体は輝きを失ってくすんでおり、大きさも普段のそれより2回り以上小さいように見える。

明らかに憔悴しているその様子を見れば、先ほどの威厳に満ちた鳴き声でさえ、自身の疲弊をごまかすためのものに思えた。

 

そんなムゲンダイナの様子を見た少女は、砂上の楼閣が目の前で崩れ去るのを見せつけられたかのように「ああ……」と暗い声を漏らしたかと思うと、膝から崩れ落ち、俯いて顔を両手で覆った。

 

数秒ほど経つと、少女は膝を地につけ顔を手で覆ったままの状態で、不気味なほどに淡々とムゲンダイナに問いかけた。

 

 

「ねえムゲンダイナ。わたしをこの世界に連れてきたの、あなただよね?」

「…………」

 

ムゲンダイナは黙して語らなかったが、少女はムゲンダイナの意思など一切気にしていない様子で言葉を続ける。

 

「その様子じゃエネルギー、全部使い果たしちゃったんだよね?」

「…………」

 

またもムゲンダイナは沈黙している。

 

すると、少女は突如立ち上がると俯いていた顔を上げ、顔を覆っていた手をゆっくりと取り払った。

 

──能面のような表情を浮かべた少女がそこにはいた。

 

「ねえ、なんで黙ってるの。何とか言ってよ」

「………」

 

黙り続けるムゲンダイナだったが、およそ生物らしくないその表情には悲しみのようなものが浮かんでいるように見えた。

 

暫くの間無表情を保っていた少女だったが、突如その眉間に峡谷のごときしわが刻まれ、顔色も真っ赤に染まるやいなやムゲンダイナのもとに詰め寄った。

 

「なんで、こんなことしたの? なんで、こんなことしたの!? わたしがあの世界で何をしでかしたのか、わかってるよね!?」

 

全身を怒気で染め上げた少女は周りが一切見えていない様子で捲し立てる。そんな少女をムゲンダイナはただただ悲しげに見つめ続ける。

 

「ホップが、マリィが、エースバーンたちが、ムゲン団の団員達が、みーんな不幸になったのは全部わたしのせい! わたしが何とかしなきゃいけないのに、わたしが助けなきゃいけないのに──やだやだ、あんな世界に戻りたくない苦しい苦しいよずっとこっちで高校生を──そんなの許されるわけないわたしは死んでもみんなを助けないと──やだやだ絶対帰りたくない独りは嫌独りは嫌──独りでもやるしかない! 孤独でもやるしかない!! でもムゲンダイナのエネルギーがない以上あっちの世界には帰れないどうすればどうすればどうすればどうすればいいのぉ……!」

 

怒り、自責し、退行し、再び自責し、退行し、頭を抱え、最終的には滂沱のごとき涙を流す。そんな主人(同胞)に空っぽの竜は何もすることができない。

 

「ムゲンダイナ……どうしてわたしをこの世界に……どうして……どうして…………ムゲンダイナああぁぁぁ……!!」

 

心を揺らされるような悲しげな慟哭が辺りの物音を搔き消していった。

 

──時は半月ほど前にまで遡る。

 

 

 

 

 

 

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