小説版めだかボックスの二次創作    作:ロサ

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 つづいてるー


第三話

 

 

 時間を巻き戻し、黒神めだかは久々原のその話し合いを聞き、難しそうに口を開いた。

「鎖国、ですか」

「そう言っていたよ。あいつ、改革派でもなければ現状維持派でもないし、反社会主義派でもない、鎖国宣言者だった」

「そうですね。しかし、それは成り立たないのです」

「……そこには同意するよ。鎖国なんて」

「鎖国は大いに結構です。しかし、それは一時の話なのです」

「大いに結構なのに、一時だけなのか?」

「ええ。鎖国は簡単に言えば独立宣言でしょう?」

「いや、その言い方には大いに問題があると」

「しかし、間違ってはいないはずです。そして、それは必ず周りの者を敵に回します」

「……入国を拒否された人間から、か?」

「ええ。現存する国の内部で違う国家を作り上げるようなものです。そんな発想は周りにつぶされます」

「それが狙いだったりしてな」

 久々原の言葉に、黒神は顔を上げた。

 どういうことかを聞きたいと、そういっている顔だった。

「周りの共通の敵になることで、纏め上げ平和に事を運ばせる、みたいな」

「な、なるほど……。それが鎖国の目的」

「俺の意見だし想像だから真に受けるなよ」

「いえ、それが正しいのです。ならば、百津郷先生の目的は……!!」

 黒神めだかはそこまで言うと、立ち上がる。

「久々原先生。百津郷先生の居場所は?」

「い、今なら多分職員室だと思うぞ。どうした?」

「百津郷先生を止めます。鎖国宣言をする前にそれを阻止しなければ」

「そ、そうか」

「久々原先生、本当にありがとうございます!」

 丁寧にお辞儀をすると、彼女は教室を走って出て行った。

「……悪い、百瀬。厄介ごとが台風つれて行っちゃった」

 一人取り残された教室で、同期の人間にそう謝ることしかできなかった。

 

 

 

「百津郷先生、いらっしゃいますか?」

「はい、私が百津郷ですが」

 腰あたりから顔近くまであるプリントの山を運ぶ眼鏡をかけ、伸びた髪を後ろでひとつにまとめている先生、百津郷百瀬が入り口近くに立っていた。

「ああ、こんな状態で申し訳ない。もう少し待っていただけますか?」

「手伝いましょう」

「いえ、自分の仕事ですし、ああ、十三組在籍の生徒でしたか?」

「はい。黒神めだかといいます」

 百津郷は黒神めだかの名前を聞くと、嬉しそうに顔をほころばせて彼女を見つめた。

「ああ、あなたが久々原先生の言っていた生徒ですか」

「そのとおりです」

「ええ、聞いておりますよ。ただもう少し待ってくださいね」

 百津郷はプリントをほかの教師の席に置くとふうと息を吐いて入り口の近くにいる黒神の元へと小走りに駆け寄った。

「ごめんなさい。きてくれたのに待たせてしまって」

「いえ」

 黒神は百津郷の対応に少しだけ戸惑いを覚えた。

 自己認識として彼女は教師たちの間ではあまりいい評価を得られていないと思っていたからだ。この箱庭学園を改革しようという思想は危険視されるに値すると考えていたし、それ以外でも自分の行動は目立つことをしているつもりだった。

 狙ってやってはいるのだが、彼の対応に緊張をほぐされたのは言うまでもない。

「それで、どんな用事で?」

「ええ。前にとある先生にされた質問をしてみようと思いまして」

「私をカウンセラーという役職の人間というつもりなのですか?」

「私はこの回答が自分の中では正しいのかわからないのです。できれば、答えていただけるとうれしいのですが」

「……いいでしょう」

 黒神は、口を開いた。

「宝籤で三億円当てた人間と、才能で三億円稼いだ人間の違いは、何だと思います?」

 黒神はこの問題を出されたとき、一秒二秒考えて「どちらも変わらない」と答えた。どちらも努力すれば当たるからだと。そう結論付けた。

 百津郷も同じように、数秒悩んだ後、答えが出たように顔を上げて口を開いた。

「どちらも変わらないですね」

「ほう、どうしてでしょうか?」

 百津郷はにこりと笑って、黒神に向かい普通であるかのように言い放った。

「宝籤で当てたというの強運の持ち主です。運も実力。それは才能といっても過言ではないでしょう?」

 黒神は、その答えに少しだけ反論しようとした。

 それは、努力をしていないという風に聞こえてしまうのがいやだったのだろうか。それとも、正しくないと思ったのだろうか。

 どちらにしても、彼の言葉に黒神は口を挟めなかった。

「私の答えに満足しましたか?」

「……はい。ありがとういございます」

「期待に沿えたのならば満足です。それでは、こちらからも質問をしてもいいでしょうか」

「……? ええ、かまいませんが」

「では、一つだけ。あなたはどうして改革をしようと思ったのでしょうか?」

 黒神はただの目的を聞かれただけなのに少しあせりを感じた。

 久々原も似たようなことを言っていたと思い出す。

 鎖国の言葉を言ったときに、恐怖を覚えた、と。

「今の箱庭学園は停滞しています。低迷と言い換えてもいいでしょう」

「なるほど、低迷ですか……。黒神さんはボキャブラリーが豊富なようで」

「教師のあなた方にはかないません」

「謙遜なさらずに。今の若い皆さんならば知らなくても大丈夫な言葉でしょう?」

 若者に対して偏見があるような言い方をする教師だった。

 




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