小説版めだかボックスの二次創作    作:ロサ

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つづいてるよヒョロヒョロリン


第四話

「まぁ、私もそこまで詳しいわけではありませんが。語彙力とネーミングセンスには乏しいので」

「そうなのですか?」

「そうなんです。すみません、脱線してしまい。それでは、続きを」

「ええ。箱庭学園は低迷しています。それから脱するには、改革しかないでしょう。それも、皆が注目し、興味を引くほどの」

「それはそうですね。マニュフェストでも、いい事を書いておけば大丈夫なのと同じですね」

「それは政治家に失礼では……?」

「達成できる人が増えれば謝ります」

 開き直る百瀬。そのしぐさは少し子供のようだった。

「百津郷先生は私の提案とマニュフェストを否定するのだと思いましたが」

「誰かの目標を否定する人間は残念ながら妬み嫉みが理由なのですよ」

「はぁ……」

「私は否定しません。肯定しますよ」

「そうですか」

 黒神の冷や汗は止まることを知らないかのごとく流れ続けた。肯定されたはずなのに、どこか心のそこでこの教師を信用できていない自分がいるのだと確信してしまう。

 認められたはずなのにこの嫌な感じは何なのだと心此処に在らずといった心境になり、百瀬と相対することが嫌になってくるのだった。

「私は傍観できればそれでいいのです」

 その言葉に、黒神ははっと顔を上げ、思考を教師の言葉に向ける。

「傍観、ですか?」

「ええ。私は鎖国的な人間です。改革派でもなく、改革に反対する維持派でもない、鎖国的な、ね」

「お、おっしゃる意味がわかりませんが?」

「すみません。私は回りくどいと言われがちで……」

 苦笑を浮かべ、その後に薄く笑って黒神を見る。

 その笑みに、黒神めだかという人間は初めて、教師に対し戦慄を覚えるのだった。

「簡単に言えば、私は誰の影響も受けません。治外法権を成立させる国家でありたい」

「……」

「傍観。傍から観察するだけの簡単なお仕事。私は、生徒の自主性と教師の固執性を観察したいのです」

「……それは、つまり、自分の意見を持たない、と?」

「いいえ。意見はあります。久々原先生みたく、寛大な人間ではないので」

 久々原が寛大というには少々難ありの面倒くさがりのはずなのだが、百津郷の意見に黒神は反論をしなかった。

 むしろ、黒神自身もそう認識しているかのように。

「私は平和が大好きです」

「平和、ですか」

「ええ。維持するのも平和でしょう。生徒による改革もこの小さな社会にしてみれば大きな出来事かもしれませんが、それでも、言い争いで済む平和な話し合いです。条約も締結しない、戦争など起こるわけが無い、コソコソと裏で暗殺など考えない、至極平和な、ね」

「そ、そこまでいくのは学園内だけではなく政治界もそうでしょう」

「裏金、密会、謀略。そういうのが無い」

「そ、それはそうでしょう!?」

「ええ。そういうのが当たり前なのが良いのです」

「あ、あなたは極論が多い気がします」

「あれ、そうですか?」

 クスクスと笑う百津郷。その姿に、黒神はどんどん毒気を抜かれていく。

「でも、黒神さんも極論が多いでしょう?」

「え?」

「久々原先生に聞きましたよ。『私は皆を幸せにするために生まれてきた』と」

「ええ。それが私の生き方なのです。それを、幼いころに教えてくれた幼馴染がいるので」

「そうですか。しかし、これも相当極論だと思いませんか?」

「……っ!」

「幸せにするために、いい言葉ですがそれもそれで極論です。人は幸も不幸もあわせて生きて行く霊長類です。恋をして失恋して病に伏せて病を完治し喜び泣いて今を生きて行く人間です。それを、幸せの一色に染めるのは極論でしょう?」

「で、ですが、幸せなのはいいことでしょう!?」

「ええ。いいことでしょう。しかし、人間はそれでは満足しません。幸せな世界は、不完全に崩れていきます」

 百津郷は真剣な顔をして黒神を諭すように話す。カウンセラーとしては極論の多い毒舌な者なのだろう。元心療外科医で黒神めだかが生徒会長に就任してから出会うモンスターペアレントならばなんと言ったのだろうか。

 黒神は目標を見失ったかのように百津郷を見つめる。

「では、私はどうすればいいと思いますか?」

 その言葉に、百瀬は今までの薄笑いを消し、真剣な目で黒神めだかを見つめる。

 飄々とした気配はなく、信念がすっと鉄心のように入った男の姿が、黒神の目に映った。その姿に、彼女は一人の男子生徒を連想させられて、少したじろぐ。眼鏡のレンズ越しに見つめる彼の瞳に、幼馴染と真面目な話をする気分へとスイッチを切り替えられた。

 そして、待ち遠しいとさえ感じた黒神の耳に、百瀬の言葉が入る。

 

 

「信頼できる人をずっと傍に置きなさい」

 




続いていくのです。
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