小説版めだかボックスの二次創作    作:ロサ

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 後日談。一年一組の選挙期間突入前のお話。


後日談

「はい。ホームルームを始めます。皆さん席についてくださいー。それと不知火さんは飲食をやめてくださいねー」

『はーい』

「えー」

 クラスメイトの(不知火を除いた)みんなは少し伸ばしつつもしっかりと席に着くのに対し、不知火半袖は少し残念そうに今食べかけているドーナッツを見て教師の顔を見てまたドーナッツを見た。

「だめですかー?」

「だめですよー。ホームルームの後は食べてもいいので」

「はーい」

 残念そうに紙袋に戻してかばんに突っ込む。隣で人吉善吉はあきれたように不知火を見る。

「なんでいやそうなんだよ」

「食べかけだよ!? 喰いかけなんだよ!? しっかり食べないと喰いが残るでしょ!?」

「なんでそんなに必死なんだよ!?」

「そこの二人ー。静かにしなさい」

「はい」

「……すんません」

 百瀬はのんびりと二人から目線をはずし、クラスメイト全員を見る。

 自分が担当している教え子なのだと百瀬は再確認し、今日の職員会議で言われたことを反芻するかのように口から発した。

「今日から選挙期間です。箱庭学園第98代生徒会長を決める選挙を行います。立候補者は黒神めだか。今年入学の十三組生ですね」

 十三組という言葉にみなが動揺を隠せない。特待生中の特待生の名を聞くことはほとんどない上に、黒神めだかという名はさらに一人の男子生徒を驚かせた。

 誰とも言わずもがな。幼馴染の人吉善吉である。

「え、先生。黒神めだかが出るんですか?」

「はい。立候補者として名前が挙がっています。どうかされましたか?」

「い、いえいえ! 特に思うところも考えるところもないですよ!?」

「どうしてそんなにあせってるのかわかりませんが……よしとしましょう。後はー」

 淡々と名前を挙げるが、先ほど相対した百瀬にも幼馴染の善吉にもクラスメイトの誰にも、黒神めだかの名前ほどのインパクトは得られなかった。

 十三組。どのクラスにその名を上げ、クラス番号を言うと同じような反応が返ってくることだろう。それほどまでに異常なクラスを、みなが意識しないわけがなかった。

「ーーーーーです。この中から投票をする人を一人だけ選んでもらいます。そうそう、立候補者は演説に選挙活動を行います。それも参考にしてください」

「せんせー」

「はい、不知火さん」

「投票しない、それはありですか?」

「そうですね。十三組は投票をしないと思いますのでありでしょう。百パーセントになるのはどの時代でもありえなかったそうなので」

「でもー、先生が裏で暗躍すれば百パーセントになりそうですね」

「ありえませんよ、私では。そうですね、インパクトのある人物がいいでしょうか」

「たとえばー?」

「おい不知火、その辺でやめとけって」

「そうですね。たとえば……」

 みなが息を呑んだ。教師の言葉に期待を込め、さらには自分たちもインパクトがある事態を想像して、思考しているためである。

 そして、教師が「うん」と納得したかのように言うと、みなが顔を上げ先生を見た。

 それに応えるように、教師は口を開く。

 

 

「たとえば、教師の誰かが十三組生に喧嘩を売るとか、ですかね」

 

 

 その言葉に、さすがの不知火も黙るしかなかった。

「もしくは」

「え、まだあるのですか?」

「ええ。ありますよー。私の引き出しは結構幅広いですから」

「じゃ、じゃあ先生は他に何があるんだ?」

 善吉はぽかんとした顔で先生を見つめる。顔の端に少し汗をかきながら、話を早く変えようとでもするかのようにまくし立てた。

「そうですね。たとえば、二年生の有名な選挙管理会委員長が二足歩行するとか」

 その言葉に、黙り込んでいたクラスメイトは声を上げて笑った。

『先生、それはありえないよー!』

『ほんと、見れるものなら見てみたいってー!』

『先生も冗談きついよー、あはは!』

「本当に、そうですねー」

 百瀬も笑う。みなと同じようにあははと笑った。

 不知火だけ、不知火だけが冷や汗をかいている。笑顔を貼り付けてはいるが、背中は汗でぐっしょりだった。

「あ、あひゃひゃ! 先生本当に面白いですねー☆ あの眠り姫が二足歩行したらさすがの十三組生も見に来ますよねー!」

「ええー。ありえないことでしょうが」

 不知火は話を流し、この話題をそらすことにした。流す以外に方法がなかった。

 そうしなければ、百瀬が本当にしてしまいそうだったから。

「それでは、本日の連絡事項は以上です。皆さん一日お疲れ様でしたー」

 その言葉に委員長が「起立、礼」の基本挨拶を済ませ、クラスはガヤガヤと話し始めた。

 百瀬は、そのみんなの姿をうれしそうに眺め、教壇に広げているプリントや手帳を閉じてまとめる。

 善吉が教壇へ近づき、百瀬に声をかけた。

「せんせー」

「はい。なんでしょう」

「喧嘩売らないでくださいね」

「……たとえばですよ、たとえば。本当に売るわけないじゃないですか」

「冗談に聞こえなかったよー♪」

「不知火さんまで……。わかりました、本当に売りません」

「約束破ったらー?」

「焼肉に付き合ってあげましょう。メニューの端から端まで食べていいですよ」

「ほんとに!?」

「ええ。約束です」

「人吉! 先生を信じちゃだめだ!」

「ええええええええ!?」

「善吉君もおごりますよ」

「喧嘩売ったら呼んでくださいね!!」

「はいはい」

 うれしそうに二人の頭をなでると、教室を去る。そして、百瀬はのんびりと廊下の窓から外の青空を見た。

「……私も、教師ですからね。黒神さんにも、クラスのみんなにも迷惑はかけられません」

 そうつぶやくと、職員室へと足を進めた。

 うれしそうに、満足そうに桜の花びらが散る窓の外を背景に、満開の笑顔を浮かべて華やかに歩く。

 

 こうして、彼の鎖国宣言は敵対するべき十三組生と担当するクラスの人間に、阻止されたのだった。

 

  




 後日談でしたー。
 次はネタが決まり次第投稿しますー。
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