シャルル・デュノアは女である。
本名、シャルロット・デュノアである彼女は、IS学園に行くようにと伝えられていた。
単純に勉学の為、なら良かったのだがそうではない。
彼女の父親が経営するIS企業、デュノア社は営業不振の状態に陥っていた。
IS登場時に真っ先に手を伸ばし、他より一歩進んでいたのも今は昔。
第三世代ISの開発にうまくいかず、他社にも先を行かれ、もう後が無かった。
そんな時、ISを使える少年、織斑一夏が発見されたのはチャンスと思ったらしい。
男性でもISを使えるメカニズムを解明し、それを売り出せば再びトップに踊り出ることも可能だろう。
そんな考えの元、IS学園に隔離されてしまった織斑少年のデータ収集の為選ばれたのが自分というわけだ。
しかも近づきやすいようにと男装付きで。
ひょっとしてそれはギャグで言っているの?
いいじゃないか女でも! データってどうせISの稼働データとか髪の毛の細胞とかなんだよね、出来る出来る。
とは言えなかった。
なんてったって今のシャルロットの立場は弱いのだ。
母が死んで、身寄りを引き取ってくれた初めて会う父。
どうやら自分の母親はデュノア社社長の愛人だったようだ。
新しい家族は表面上よくしてくれている(ほとんど会えてない)が、なんだか居候みたいな引け目がある。
だから男装云々の話が出るまでは、大いにやる気が満ちていたのだが…
思わず指令を伝えに来た社長秘書に、先ほどの言葉を浴びせる所だった。
いけないいけない、会社の状況は自分もよくわかっている。きっとそれだけ追いつめられているんだろう。
で、覚悟を決め、指示された先に向かって、着いた場所は "何故か" AC学園だった。
気づいたのが受付で名前を言う前だったら、駅を間違えたと思い急いで引き返しただろう。
受付で名前を"確認"され、奥へと進み入学式の席に着いた時、初めて気が付いた。
なんか男多くね?
と。
「───よろしくお願いします」
自己紹介を終え席に着く。
よし落ち着け、状況確認だ。
ここは何処? AC学園だ。
さっき隣の男子に聞いたら爽やかな笑顔で答えてくれた。もしかしたら頭の具合を憐れまれたのかもしれない。
いつの間にかクラスメイトの自己紹介は終わっていて、今はいつの間にか現れた担任が自己紹介している。
女性にしては背が高く、目はキリッとしており、全体的な雰囲気から厳しそうな印象を受けた。
数分前の自分、諦めるな! 人は見た目じゃない。
「───と、言う訳でお前らの担任を受け持つことになる。精々問題は起こしてくれるな、地獄を見せるはめになる」
優しい人は地獄を見せるなんて言わない………ちくしょう……チクショウ…
そもその自分がここにいるのは間違いじゃないのか。
なんで普通に名簿に名前がのってるの?
これじゃあIS学園に行くこと自体が間違いで、最初からAC学園に通うことが決まってたみたいじゃないか。
じゃ、じゃああの秘書さんが言い間違えちゃったってこと?
そうだよ! そうに違いな……ってそんなわけない! そもそもが織斑一夏へのスパイが目的だしその為にISの勉強も………
あ…、ぼく…、ACのべんきょう…、ぜんぜんわからないや……
昼休み、僕はクラスメイト数人と一緒に昼食をとっていた。
「そんなに気落ちするなよシャルル、あんまり勉強できなくてもこれから頑張っていけばいいじゃねぇか。その為にAC学園に来たんだろ」
「うん、ありがとう弾」
この人は五反田弾。赤髪の長髪で、その長い髪をバンダナのような物を頭に巻いて邪魔にならないようにしている。
授業中に(心の中で)うんうん唸ってたら横から何度か助け舟を出してくれた親切な人だ。
「それに筆記が悪かったなら実技の方で合格したってことだろ。シャルルは試験の時何割ぐらい行けたんだ?」
えっ、僕試験受けてない。どうしよう、多分デュノア社のコネ的で裏口的なだと思うけどそれ言ったら怒るよね。
「えぇっと、は、8割くらい?」
その瞬間、同席していた皆がざわついた。
「すげぇな、俺、3割ぐらいだったってのに」
「俺は2割、あれって4割いけばいいほうだったんじゃないのか。弾は?」
「あ~俺は6割」
「すごい…けどシャルルの後に聞くと微妙だな」
「中途半端っぽい印象だ」
「うるせぇよ!」
あわわわ、弾の話から良くないとおかしいと思って言ったら飛んでもないことに(そして皆の言ってる割合が未だになんなのかわからない)。
「なるほどな、実技推薦みたいなもんか。もしかして入学前からACに乗ってたりしたのか」
「あっ、そういえばニュースでデュノア社がISからACに鞍替えするってやってたな」
え?
「ってことは会社の為にAC学園に勉強しに来たってことだな。やっぱシャルルは次期社長を目指してたりすんのか」
「シャルル社長!デュノア社にコネで入社させてください、オネシャス!」
えぇ~~あれぇ~~~
放課後
寮へ向かう途中で端末から情報を集める。
デュノア社…デュノア社……あった。
"デュノア社、ISからACへの転向を発表"
長年ISでのシェアを集めていたデュノア社だったが、近年は営業不振に陥りイグニッションプランの見通しも立たない状況だったという。
そこでデュノア社長により、AC事業への着手を決断。デュノア社長は「これまでISで培ってきた技術を生かし、新しいACパーツの開発に着手する」と宣言しており、既に2個のACコアを確保しており………
………………………
………………
………
うん! 何も問題はないね! 会社もAC、僕もAC。織斑なんて人しーらない。
あーすごい気が楽になった。これから3年間頑張ろう。
っとココが僕の部屋だ。こうなってくると寮の間取りすら楽しみになってくる。
お邪魔しまーす、なんてね~。ガチャッ
へやのまんなかにぱんついちまいのへんたいがいた。
「ん? お、なんだシャルルか。もしかしておまえが同室か」
違う、へんたいじゃない、弾だ。そうか、寮は2人部屋だったっけ。
「そ、そうだけと弾、なんで裸…、早く服着てよ」
「いや部屋にシャワーが有ったんで汗かいたからついな…ってなに照れてんだよ、ちゃんと下履いてるだろ」
「そういう問題じゃないよ、もう」
「そうか? まぁ男同士なんだし大目に見てくれ。次から気を付ける」
お国柄かなぁ…なんて呟いてるけどそれも違うよ。そもそも男同士じゃなくて……男同士? …そうだ! まだ問題が残っていた。
今自分は絶賛男装中、でももうスパイなんてしないんだから性別を偽る必要はないんじゃないかな。
先生に女だと伝えて……
(先生、実は僕、女なんです)
(ふむ、ではなんで男装なんてしているんだ)
(それは織斑一夏をスパイするためで…)
駄目だ、明日の新聞の見出しが決まる。このデュノア社の大事な時にそんなことになったら最悪潰れるかもしれない。
例えバカ正直に話さなくても不審な目を向けられることは間違いない。
ここは、もう男で押し通すしか…
「おい、どうしたシャルル。もう服は着たぞ」
「え? あ、ごめん。弾が同室なんだね、これからよろしく」
「おう、よろしくな」
これがシャルロット・デュノアのAC学園1日目だった。