「「「織斑君、クラス代表就任おめでとう~~!」」」
「いや、はは…ありが…とう……」
最初の心配もどこへやら。
俺はクラスの一員として受け入れられ、今もまた皆は代表就任を祝ってくれている。
しかし…
「ちょっと、いつまでそこに突っ立ってますの。せっかくの主役なんですから真ん中で堂々としてなさい」
そんな風に言われているが、実は俺、あの試合に勝っていない。
あの時、雪片の刃がセシリアのブルー・ティアーズに当たった瞬間、何故か白式のエネルギーが切れたのだ。
しかし必至だった俺はそんなこと気付くこともなく、そのまま袈裟斬り。
吹き飛ばされたセシリアは地面に激突し、エネルギーが切れた。
そんな、傍から見れば俺の勝利に見えなくもないのは理解できるが、それで何故クラス代表までが自分に決まったのか理解できてなかった。
ちゃんとアナウンスでも『勝者、セシリア・オルコット』と言っていたのに。
まぁ代表を告げられたすぐ後に、セシリアの口から説明されたが…
「わたくしは、あんな試合結果で勝利を名乗れるほど恥知らずではありません。
よってクラス代表の座はあなたにお譲りしたのです」
「いや、お譲りされても…」
そもそも俺は、クラス代表の為に勝負したわけではなかった。
「あら、確かにわたくしは勝利を認めませんでしたが敗北も認めておりません。ですのでACについては撤回しませんわよ」
と、セシリアはここで一息ついたあと
「ですが…、あなたとあなたの友人達については謝罪しますわ」
少し驚いた。
「試合中言ってらしたでしょう、『あいつ等にかけて負けられない』と。
わたくしはあなたやACはともかく、あなたの友人達まで侮辱する気はありませんでしたわ。
それを意図せず行ってしまったのであればそれはわたくしの非。素直に謝罪いたします。
貴方に関しては、まぁ、正直かなりむかつきましたが、認める部分もあったということです」
そう言って
「次はわたくしが勝ちますわよ!」
ビシッと指を突き付けられた。
以上回想終わり。
俺としてはもうセシリアをどうこうなんて思ってない。一応謝罪もしてくれたし、ACについては俺も短絡的だった。残念には思うが、俺が無理やりどうこう言うのは今となっては違うと思う。
だから問題は、そこで話を終わらせてしまったことによりそのままクラス代表の話が流れてしまったことだろう。
皆、わいわいがやがやと楽しんでいる。用意されていたお菓子類が少なくなった頃、聞きなれない声に話しかけられた。
「君が織斑君だね。私は新聞部の黛 薫子。今話題の男性IS操縦者、織斑一夏君にインタビューに来ました」
「はぁ……」
「では早速質問です。晴れてクラス代表への就任おめでとうございます。今後代表を務めるにあたっての意気込みとかあればどうぞ」
とマイクが向けられる。なんかグイグイ来るなこの人。
「え~と、精一杯頑張ります」
「なるほど、つまらん。『このクラスを足ががりに、ゆくゆくは学園ハーレム化を目指していきたいです』とかだったら面白いのに」
「えぇ!?」
「じゃあ次は織斑君個人のことに迫っちゃいましょう。ズバリ好みの異性のタイプは?」
なんかとんでもない捏造されたと思ったら、間を空けずまたもグイグイこられた。
その後も同じ調子で質問され、そのたびに顔とマイク距離が縮まっていく。
「じゃぁそんな織斑君はISについてどう思っているのかな。何でも元々はAC学園に行くつもりだったとか」
もはや鼻とマイクが頻繁にカスリ始めたころ、そんな質問が飛んでくる。
「ISは自分で空を飛んでるって感覚で楽しいですね。それに乗ってると妙に安心するといいますか…。
AC学園については、正直今でも未練はあります。でも俺のやりたいことはIS学園でも出来ると思ってるんで、この学園が嫌だなんてことはありませんよ」
「ほほぅ、そのやりたいこととは一体?」
更に詰め寄ってくる。遂にブタ鼻になった。
「ふが、いや…えっと、宇宙に…行ってみたいんです。今一番可能性があるのはISかACですから。…子供っぽいですかね」
「いやいや、今回の回答はいいよ~。記事にしがいがある」
そう言って黛さんの取材と代表就任パーティーは終わった。
翌日、教室内はある噂で盛り上がっていた。
「ねぇねぇ聞いた? 今度のクラス対抗戦の優勝賞品のこと」
「うん、なんでもデザート半年分のフリーパスだってね。
私、このクラスが優勝したらお腹いっぱいになるまでデザート食べるんだ…」
「これはもう是非とも織斑君には優勝してもらわないとね」 チラッ
朝からこんな調子で、俺へのプレッシャーがハンパない。
やめろ、IS初心者はストレスに弱いんだ。
「何を不安がっていますの。あなたはわたくしを制して代表になったのです。もっと自信を持ちなさい。無様な真似をさらすことは許しませんわよ」
「セシリアの言う通りだ一夏、なんでも一年生のクラス代表で専用機持ちはお前だけらしい。お前が優勝できる可能性は充分にある」
セシリアと箒が励ましてくれる。セシリアとは、あの試合後から話すようになっていた。
態度はまるで悟空に対するベジータのようだが、仲は良くなったと判断してもよいだろう。多分。
二人にお礼を言おうと口を開きかけた瞬間、教室の扉が勢いよく開く。
「その情報、古いよ」
そして現れたのは、背と胸が小さく、髪をツインテールにまとめ、肩がむき出しの制服を着た少年のような少女、もとい幼なじみの鈴だった。
「鈴? 鈴なのか。久しぶりだな、お前もこの学園に来てたのか。
ならもっと早く言ってくれれば良かったのに、水くさいぞ」
「久しぶり一夏。違うわよ、私は編入して来たの。隣の二組へね」
そうだったのか…、でもなんでこんな中途半端な時期に?
「……先ほどの私の情報が古いとはどういうことだ」
仕入れた情報を即座に否定されイラッときたのか、箒が突っかかり気味に言う。
気持ちはわからんでもないがやめてやれ。
「それは勿論、二組の代表が私になったということよ。この中国代表候補生、ファ…」
チャイムが鳴った。
「くっ、続きは昼食でね。一夏、ちゃんと待ってなさいよ」
来てすぐに帰っていった鈴。途中で千冬姉に注意されているのが聞こえる。
もしかして、扉の外で登場する機会をうかがっていて時間が押したのだろうか。どちらにせよ格好つけたがる性格は相変わらずだ。
で、昼休み。
少し待ったものの鈴は来なかったので、皆で食堂に向かう。
「遅いわよ一夏! ラーメン伸びちゃうじゃない」
少し理不尽だと感じるのは気のせいだろうか。
「知ってるか? ラーメンって中国の料理じゃないんだぜ」
「え? そうなの…、って違うから! 別にキャラ付けの為に選んだ訳じゃないからね!」
ちょっとした意趣返しをしたあと昼食を受け取って席に着き、改めて鈴と再会の言葉を交わした。
「一年振りだな鈴。まさか鈴が代表候補生になってるなんて思いもしなかったよ」
「それはこっちのセリフよ、一年前まで弾達とACAC言ってたのに。ニュースでISを動かした男性って一夏が出てきたとき、ビックリしてナルト吹いちゃたわ」
「ははっ、俺もあの時はすごいビックリしたよ。試験会場で弾達とはぐれてさ、かなり焦った末のあれだったからな。もう混乱して…」
あの時はIS動かしたことより、AC学園の試験を受けられるかどうかで頭がいっぱいだった。結局試験を受けられずにその日が終わってしまい、かなりの絶望感が襲った。あれはそう何度も味わいたいものではない。
「ところで一夏よ、昔話も良いがこうして同じ席に着いているのだ。彼女を私達に紹介してくれないか」
っとそうだ。懐かしくてつい二人で話し込んでしまった。
「悪い悪い、今紹介するよ。こいつの名前は鳳鈴音、箒が転校していったあと入れ違いで転入して来たんだ。それから小中と一緒だったんだけど、一年前に中国に行っちまってな。それで今日久し振りに再会したって訳だ」
「よろしく、鈴でいいわ」
「で、こっちが幼なじみの篠ノ之箒。家も近所でよく遊んでたんだけど、さっき言ったように転校していってな。同じくこの学園で再会して色々助けてもらったりしてる」
「よろしく、こちらも箒で構わない」
「そして最後がセシリア・オルコット、イギリス人だ」
そういうと、何故かセシリアが怒り出した。
「ちょ、わたくしの説明それだけですの!? あんなことがあったのですからもっと色々あるでしょうに、相変わらずわたくしをバカにして…。
こほん、改めまして、わたくしはセシリア・オルコットと申します。イギリスの代表候補生であり、一夏さんとはいずれ決着をつける仲でありますわ。
よろしくございます、鈴さん」
「え、えぇよろしく、正直かなり気になるとこもあったけど後で聞くことにするわ。
それより一夏、あんた専用機貰ったんだってね。どれくらい動かせるの?」
「どれくらいって言ってもなぁ、まだ基礎……も出来てない状態かな。この前の授業でもクレーター作ったばかりだし…」
何故、初心者の俺にやらせたし千冬姉ぇ…
「そうなんだ…。それじゃあさ、もしよかったらあたしがISのこと教えてあげようか?」
「え、いいのか? それじゃあ…」
ありがたく頼むとし
「まて一夏よ、来週クラス対抗戦があるのを忘れたか」
「そうですわ、敵である二組の代表にわざわざ手の内をさらすおつもりで?」
っとそうだった。クラスメイトのあのプレッシャーの為にも、俺は勝利、もといフリーパスを手にしなくてはならない。
「すまない鈴、せっかくだが…」
「そ、そうゆうことなら仕方ないわね。クラス対抗戦までにせいぜい頑張りなさい。初心者が私に勝つなんて万に一つもあり得ないんだから」
せっかくの厚意を無下にされて怒ったのか、憎まれ口を叩かれる。俺のせいじゃないんだからあんま当たらないでくれ。
「……ぐぐぐ、おのれクラス対抗戦……」
なにやら唸ったあとラーメンを啜り始める鈴。
「……伸びてるし……」
またも睨まれるが、それもきっと俺のせいじゃない。
夜になり、いざ寝ようとベッドに横になったとき、唐突に隣の箒が話かけてきた。
「…今日会った鈴という娘のことだが、…本当にただの友人だったのか?」
「? そうだけど…いきなりどうしたんだ箒?」
「いやなに、ずいぶんと親しそうだったのでな。もしかして付き合ったりしてたんじゃないかと思っただけだ」
「付き合う? まぁ何度か買い物に付き合ったりはしたけど…」
基本鈴に振り回される感じで、大変だった記憶がある。
「はぁ…、相変わらずだな一夏。普通この場合、付き合うと言ったら彼氏彼女の関係のことだろう」
「え、そうなのか? ……いや、そうゆうふうに思ったことはないなぁ。向こう同じだと思うぞ。
鈴とはよく四人で一緒に遊んでてな、本人も男勝りの所があって、ほとんど男友達みたいな感じだったよ」
「なるほど、男の友情というやつか」
それはちょっと違う気がする。
「それ鈴にいうと『男扱いすんな!』って怒られそうだけどな」
「はは、そうか………なぁ、私は……」
「ん?」
「…いや、仲が良さそうで何よりだ。数年ぶりに再会した此方としては、少し嫉妬してしまうよ」
「嫉妬って…俺としては箒も同じ友達のつもりなんだが」
「なんだと、一夏おまえ、私まで男扱いしていたのか」
「え、あ、違う! 単純に友人って意味でだな…」
というか鈴のことも別に男として見ているわけじゃない。
「……つまり私のことは女として見ていると?」
「あぁ、箒のことは女として見ているぞ。 ……ん?」
「そ、そうか。おっともうこんな時間か、私もそろそろ眠るとしよう、ではおやすみ一夏」
「え? あぁ、おやすみ箒」
なんか誤解を受けそうな言い回しをした気がしたが気のせいか? まぁ箒も普通だし大丈夫か。
感想やアドバイス待ってます。