七草泉美の苦労日誌   作:オオアリクイ

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 初投稿です。
 二年生編まで行く作品が少な過ぎるので二年生編から書くことにしました。双子がモブ過ぎるのを解消したい……


プロローグ

2092年8月11日、大亜細亜連合が沖縄に侵攻、名護市に上陸したというニュースが日本中に駆け巡った。

 

当日中に上陸部隊を壊滅し、防衛に成功したものの、多数の内通者を出し、敵国の上陸を許した防衛上の責任の所在や、大亜連合の艦隊を撃沈した方法に関する憶測はしばらくメディアを賑わせることとなる。

 

 

 

――そしてこの日、七草泉美は前世の記憶を思い出した。

 

 

★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 魔法の存在が証明され、魔法師と呼ばれる者達が技能としての魔法を使うようになった時代。

 

 現代魔法の出発点である異能が発見されてから100年も経ってはいない。しかし魔法の素質は遺伝する、という事実はこの短期間の間に「魔法師の名家」を生み出した。

 

 その代表格こそが、日本の十師族であり、関東を拠点とする七草家は十師族の一角、つまり間違いなく名家である。

 

「久しぶりの我が家ですね」

 

 2096年1月、豪邸、といっても差しつかえのない家の前に立ちながら、泉美は呟いた。武者修行に出てから3年近く帰ってなかったのでなかなか感慨深い。使用人に迎えてもらい家に入ると直ぐに、記憶からだいぶ成長していて、しかし毎朝鏡でみている顔の少女が駆け寄ってきた。

 

「泉美ー!お帰りー!」

 

「ただいま戻りました。香澄」

 

 出会い頭に抱きついてきたのは泉美の双子の姉である香澄だ。一卵性のため顔は瓜二つだが、性格は大分違う。それは見た目や雰囲気に表れていて、髪を肩まで伸ばし落ち着いた様子の泉美に対し、香澄の髪はかなり短く活発な印象を受ける。顔がそっくりでも昔から間違われることはあまりなかった。

 

「話は後にして、先にお父様の所にいってきますね」

 

「あー……そうだね。あのタヌキも割と心配してたみたいだし」

 

 久しぶりに会う双子の半身ともう少し話していたい思いはあるが、流石に父に帰還の挨拶をしないといけない。香澄との会話もそこそこに泉美は足早に書斎に向かった。

 

「お帰り泉美。元気でやっていたかい?」

 

「ただいま戻りましたお父様。実りの多い旅でしたよ。」

 

 七草家当主、七草弘一は人当たりのいい笑顔で末娘を出迎えた。隠謀好きで、四葉家に対抗しようとして問題行動も多い弘一だが、末娘の泉美に対しては割と甘い。旅に出ると言ったときは猛反対されて大喧嘩になり、家を飛び出して3年間顔を合わせてなかったが、なんだかんだで心配だったのだろう。

 

「兄さん達がいないのは良いとして、姉さんは外出中ですか?」

 

 ある程度必要なことを話した後、泉美は真由美の所在を訊ねた。さらりと二人の兄に酷い扱いをしている。

 とは言え兄の方からも泉美達を避けている節がある。既に亡くなった先妻の子である兄達と、後妻の子である妹達の間に距離が出来てしまうのはある程度仕方がないだろう、と思い弘一は特に指摘せず泉美の質問に答えた。

 

「真由美も今年受験だからな。今は忙しいだろう」

 

 弘一はそう言ったが、実際は真由美は去年の暮れから起きている吸血鬼の問題で動いている。

 

 どう考えても受験生にやらせることではなく兄にやらせるべき内容だが、この件は同じ十師族の十文字家と連携で当たっている。高校3年生にして十文字家の当主代理を務める十文字克人と真由美は同級生のため、真由美が動く羽目になっているのだ。

 

 

 ちなみに泉美は恐らくこの件に関して七草家の中で一番有用な能力を持っている。しかし前世の事や自分の特性については誰にも話していないため弘一はその事を知らず、また帰ってきたばかりの泉美は吸血鬼事件のことを知らなかったため、姉の力になるという選択が浮かばなかった。

 

「そうですか。それなら邪魔はできませんし、私も自分の勉強に集中させていただきます。それでは失礼いたします。」

 

 そう言って泉美は部屋を後にした。自室に戻ると何故か香澄がベッドに腰掛けて待っていた。

 

「お疲れ~。それで武者修行なんて今時流行らないことやった結果はどうだったさ」 

 

「楽しかったですよ。学ぶことも多かったですし、香澄も一緒に来ればよかったのに」

 

 そう、泉美は旅に出る際、事前に香澄も誘っていたのだ。尤も本気と思われずに一蹴されたのだが。

 

「学校行かずにそんなことできるはずないじゃん。そんなんで勉強大丈夫なの?一高落ちても知らないよ?」

 

「ちゃんと勉強はしてましたよ。正直遊んでばかりの香澄よりも成績いいと思いますよ」

 

 というより旅に出たのは前世の知識がある以上中学に通うのは無駄が多いと考えたから、というのも大きい。歴史や社会の問題はともかく数学だの英語だのは対して変わりはしないし、中学では魔法の授業もない。正直通信で十分だった。

 

「言うじゃん。で肝心の魔法の方はどうなの?」

 

「まあそれは今度練習場で見せますよ。とりあえずお土産買ってきたので食べましょう」

 

 

そう言って泉美が鞄から取り出したのはどう見てもただのポテトチップスだった。いや、富士の煉獄味、という名前からしてやたら辛いやつだろう。

 

「……全国回ってなんでお土産がポテチなのさ」

 

「これは地方限定のポテチでちょー美味いですよ!食べてみてください!」

 

……香澄はこの日、双子でも味覚は全然違うのだと思い知った。

 

 

 

 

 

 

 

 




修行回はありません。いずれ追憶編でやるかも
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