七草泉美の苦労日誌   作:オオアリクイ

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ダブルセブン編
顔合わせと妖魔


――2096年4月6日。

 この日、泉美は魔法大学付属第一高校を訪れていた。

 入学式は2日後なので今は在校生しかいないが、入試で主席であった泉美は新入生総代として入学式で答辞があるため、その打ち合わせにきたのだ。

 

(前に来たときは他に生徒は居ませんでしたが今日はもう新学期が始まってるんですね)

 

 第一高校を訪れるのは受験、春休み中の打ち合わせに続いて3回目だが、その時は私服で、周りには生徒会長や教員しかいなかった。こうして第一高校の制服を着て在校生に混じって歩いているとこれから三年間ここに通うんだという実感が湧いてくる。

 

 他の新入生より一足先に入学気分を味わいながら、泉美は満開の桜を見上げながら職員室へと歩を進めた。

 

――その先に待つ()()も知らず

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 放課後の生徒会室。泉美が部屋に入ると既に生徒会の面々が揃っていた。

 

「紹介します。今年度の新入生総代を務めてくれる七草泉美さんです」

 

「ご紹介に預かりました七草泉美です。双子の姉も今年入学するので私のことは泉美と呼んでください」

 

 あずさからの紹介に合わせて名乗り、礼儀正しく一礼する。社交の場に出ることは少ない泉美だが、七草家の一員として当然礼儀作法については叩きこまれているので挨拶くらいはお手のものだ。

 

 しかし表面上冷静に挨拶した泉美だったが、内心はこの上無く動揺していた。

 

「会計の五十里啓(いそりけい)です。宜しくね、泉美さん」

 

「よろしくお願いします、五十里先輩」

 

「副会長の司波達也です。よろしく泉美さん」

 

「司波先輩、よろしくお願いします」

 

「同じく副会長の司波深雪です。よろしくね、泉美さん」

 

「よろしくお願いします。えっと……深雪先輩と呼んでもいいですか?」

 

「ええ、構いませんよ」

 

 なんとか無難に先輩方とのやり取りをするも、印象や人となりが頭に入ってこない。

 というのも、それよりも意識せざるをえない()()があったからだ。

「書記の光井ほのかです。よろしくね」

 

 泉美の思考は最後に挨拶してきた光井ほのかと、そして視界の端にある()()()()()()()()()()のことで埋め尽くされていた。

 

(どどどどどゆことっ!?何で学校の生徒会室に()()がいるんですか!?)

 

 

 ――妖魔。

 

 それは古来よりあらゆる生命の敵。様々な種類がいるが、メイドロボットの中にいる()()は、実体を持たずに生物に寄生(というか融合)するタイプだ。

 

 直接的な戦闘力はそれ程でもないのだが(泉美基準)、一度寄生されてしまうと肉体が変質してしまい、二度と戻らなくなる。

 

 宿主を解放する手段はなく、寄生されたらもうお仕舞い、というかなり厄介なものだ。まかり間違っても高校生がペットとして飼うモノではないし、高校に放置して良い存在ではない。

 

 しかし現実には魔法を扱う高校の、生徒会室という重要な場所に()()は普通に置かれている。危険、という次元ではない。

 

 しかもその妖魔は目の前の光井ほのかと既に霊的にパスができている。現状、ほのかは妖魔の浸食を受けてはいないが向こうがその気なら何時浸食されてもおかしくない状態だ。

 

(休眠状態だから気付いていないのですか?いや、この機体にはサイオンが活性化した跡がある。この体で何か行動したはずですが……)

 

 しかしそれなら、生徒会は()()がおかしい存在だと知って置いていることになる。理解しがたい光景に、泉美は困惑していた。

 

 

 

★☆★☆★☆★☆

 

 

 

「ところで泉美はなにか入学式に不安なことでもあったりする?」

 

 達也がそう聞いたのは、表面上は礼儀正しく挨拶していた泉美の意識が自分達に向いていないことに気付いたからだ。達也だけならともかく、深雪に対しても同じような反応なのは珍しい。昼休みにあずさのやらかした話を聞いたばかりなので答辞のことで悩みでもあるのかと思っての発言だったのだが

 

 

「いえ、その……確認なのですけど……」

 

「はい、何ですか泉美さん?」

 

 おずおずと切り出した泉美にあずさが不思議そうに返す。

 

「其方の家事ロボットの中にいる存在については……ご存知なのですよね?」

 

 ――この質問は、完全に達也の想定外だった。

 

 

 

★☆★☆★☆★☆

 

 

 

「少し甘く見ていたな」

 

 夕食後のリビング、ソファーに座りコーヒーを飲みながら、達也はぽつりと言った。隣には深雪が座り、背後には水波が控えている。

 

 あの後どうにかピクシーには危険はないと説明し、引き下がってもらったが、達也としてはピクシーロボットにパラサイトが取り()いているなどと明かすつもりは全く無かったし、気付かれることもないと思っていたのだ。

 

「お兄様、泉美ちゃんのことですか?」

 

「ああ。もちろん新入生総代を務める七草家の末娘だ。過小評価する気は無かったが……」

 

 その上で達也は、パラサイトには気付かないだろうと思っていたのだ。達也のような()でも無い限り、休眠中のパラサイトの本体に現代魔法師である七草の人間では気付けないだろうと。

 

 

 しかし実際には泉美は生徒会室に入った直後には気付き、警戒していた。それだけではない。ほのかとパラサイトの繋がりまで指摘したのだ。これはもう、勘が鋭いだけではあり得ない。

 

「七草泉美に関しては知られていることが少ない。社交の場にほとんど姿を見せてこなかったと聞くが、その理由も不明だ」

 

 そう、双子の姉である七草香澄は著名人のパーティーなどにもよく参加しているのに対し、妹の泉美はここ3年全く姿を見せていないのは有名だった。引きこもりの四葉家ならともかく七草家の人間としては異例のことだが、弘一は理由を明らかにせず、また学校にも通っていなかったようで、重い病気なのか、事故にでもあったのかと憶測が飛び交っていたのだ。

 

 それがここにきて再び表舞台に現れた。どんな人物なのかと思っていたが想像以上に底が知れない相手らしい。

 

 あの真由美の妹とは思えない程立ち姿に隙がないことも驚いたが、通常の感覚では気付けないはずの休眠状態のパラサイトを察知する何かしらの感知能力。これには流石に達也も警戒せざるを得なくなる。

 

 とはいえ新入生総代は生徒会に勧誘するのが通例で、生徒会で一緒になるのはどうしようもない。

 

「今後のことを考えると泉美がパラサイトに気付いた理由についてはどうにか知っておきたい所だが……」

 

「それでは九重先生に相談しますか?」

 

「……そうだな。師匠に借りは作りたくないが、話を聞く位はするべきか」

 

 とりあえず情報を集めることにして、達也は今年も平穏な生活は送れそうにないという予感にため息をついた。




元老院「封印などいつか破られる。九島光宣は国外に追い出せ!」

八雲「九の名を持つ老人達は常識に縛られている。忠誠術式が誤作動を起こす可能性はゼロじゃない」

達也「七草弘一に伝えて下さい。パラサイトを利用しようとして、それが世間にばれて魔法師全体に不利益をもたらしたら、組織として責任をとってもらうと」

パラサイトinピクシー「封印?忠誠術式?何のことや?それより一高の監視システム掌握したで。これで改ざんし放題や。もちろんわいは司波達也様に絶対服従やからな。悪いことなんかせーへん。わいを信じてーな」

「「「分かった!お前を信じよう!!」」」

 原作ってこんなイメージなのですけど、自分が知らないだけで何か裏事情があったりします?エレメンツのほのかのコピーだから安全ってだけ?
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