七草泉美の苦労日誌   作:オオアリクイ

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 達也サイドの話をどうするか迷った結果普通に入れてみました。原作でこの頃から双子が空気になっていったからここだと逆に達也が空気になりそう。


閑話

★☆★☆★☆★☆ 

 

 

 10月6日の午後6時、達也は奈良の九島邸を訪れていた。もちろん(?)傍らには深雪と、水波も伴っている。

 

 非公式とはいえ四葉家の人間として他家を訪問するのは達也も深雪も初めてだ。当然、迎えられ方も初めてのものになる。

 

 藤林の案内で応接室に迎えられた三人を出迎えたのは、九島家の現当主である九島真言、前当主の九島烈、そして達也たちと同年代と思われる人間離れした美貌の少年だった。

 

「よく来てくれたな、司波達也くん。私は九島家の当主、九島真言だ」

 

 少年の美貌に目を奪われそうになる(実際、深雪と水波の視線はそちらに固定されていた)が、そこで当主である真言から声をかけられる。

 

「司波達也です。本日はお時間をとって頂きありがとうございます」

 

「うむ。それでは早速本題に入らせてもらおう」

 

 真言は控えている烈と少年について紹介しなかった。形式ばった挨拶を済ませると直ぐに話を進める。横柄ともとれる態度だが、どうにも余裕が無さそうにも見える。

 

 本調子ではなさそうだな、と達也は思った。

 

 烈と真言は随分疲労しているように見える。捜索が難航しているのだろうか、それとも他に何かあったのか。

 

 そして真言の態度。四葉の名に緊張しているが、相手は高校生という軽視もある。それらが疲労と重なってこの対応になっているのだろう。まあ敬意という点では達也も人の事は言えないし、話が早いのでこちらの方がありがたい。

 

「四葉家が捜索している周公瑾だが、伝統派に匿われているのはほぼ間違いない。それ故に四葉家から当家へと協力の要請があった」

 

 真夜と真言の間で実際にどのようなやり取りがあったのか、達也は知らない。黙って耳を傾ける。

 

「詳しい協力の内容については省くが、真夜殿の要望を鑑みた結果、君たちが捜索するに当たって一人案内をつける。光宣」

 

 真言が呼ぶと、それまで黙って(目立たずに、とは言えないが)控えていた少年が進み出た。

 

「はじめまして。九島光宣です」

 

「光宣はまだ若いが腕の方は保証する。足手まといにはならないだろう。此方で新たな情報が入った場合も光宣に連絡するのでそのつもりでいたまえ」

 

「お気遣い感謝します。光宣も、よろしく頼む」

 

「はい、おまかせください」

 

「光宣も、ここからは仕事だ。油断しないように。それで、君たちは好きに捜索するという話なので、私からの話はこれで終わりだ。退出して構わない、藤林が食事に誘う気のようだしな」

 

「そうですか。それではこれで失礼いたします」

 

 面会の時間は10分もなかった。最後まで横柄な態度を崩さない真言に、達也もそっけない態度を隠そうともせずに退出する。元々上の方で話はついていたのだ。この来訪の目的は確認と顔合わせに過ぎない。

 

 

★☆★☆★☆★☆

 

 

「では改めて。今回皆さんの案内、サポートをさせていただきます九島光宣です。第二高校の一年なので司波達也さんや司波深雪さんの一つ下になります」

 

「ああ、改めて宜しく頼む。」

 

「司波深雪です。兄共々宜しくお願いしますね」

 

「桜井水波です。宜しくお願いします」

 

 会合の後、達也たちは藤林に食事に誘われた。光宣と予定を確認する場も必要ということでありがたく申し出を受け、小さめの食堂に案内される。九島邸には食堂が幾つかあって、ここは主に子息が交流する為の場所だ。

 

 明日の打ち合わせについては料理の後ということで、料理が届くまでの時間で五人は軽い雑談をしていた。

 

「──ところで光宣くんは第二高校なのよね?九校戦は出なかったの?」

 

「……いえまあ、僕は身体が弱くて……大事をとって辞退したんです」

 

 九校戦に出場していたら話題にならない筈がない。深雪の何気ない疑問に、光宣が悲しげに答えた。

 

 九校戦の当日に病気になって迷惑をかけるくらいならと、(あらかじ)め辞退していたとの事だ。

 

 深雪と水波が気まずげに目を泳がせるが、それに気付いた光宣が慌てて言葉を続けた

 

「あっ、でも、改善出来そうなんですよ。丁度今日そういう話があって」

 

「っそうなの!?初めて聞いたけど……というか今日も朝は具合が悪いって聞いてたんだけど今平気そうよね?」

 

 光宣の言葉に藤林が驚愕の声をあげる。光宣の身体をどうにか出来ないかと烈を始めとした九島家の人間がどれだけ苦心していたのか、藤林は知っている。それでもどうにもならなかった筈なのだ。

 

「はい、この通り。実は今日七草香澄さんと泉美さんがいらっしゃって。今元気なのも泉美さんが応急処置をしてくれたからですね」

 

「……そうなのか?」

 

 香澄と泉美が京都に行くという事自体は生徒会室でそういう話があったので達也たちは知っていた。論文コンペの下見だと。警備に選ばれた生徒としてはおかしな事ではない。警備チーム全体として下見はする予定だと聞いていたが、個人的に行くという話も違和感はなかった。

 

 しかし奈良にある九島邸に訪れるという話は聞いていなかった。

 

「はい。元々は現地集合の予定だったんですけど、僕が体調を崩したのでお見舞いに来てくれまして。あ、そうだ、その関係で僕も近々一高に行くかもしれません」

 

「一高に?というと転校、という意味?魔法科高校でそういうのは聞いた事がないけれど?」

 

 続く爆弾発言に深雪が疑問の声をあげる。この辺りの話は生徒会長である深雪の方が多少詳しい。

 

「僕の治療?というか修行のために泉美さんに指導してもらうつもりなんですよね。その都合で暫く関東に行くので……転校出来るかはまだ分かりませんけど、この間留学生も来たらしいですし、何とかならないかなと」

 

 また意外な話だった。古式魔法師が九島家の人間に指導する、というのだから。

 

(いや、そういえば九校戦でも同級生に色々教えていたようだし、あまり術を秘匿する気がないのか?)

 

 この価値観も古式としては珍しい。例えば友人である幹比古は達也に術の事も色々と教えてくれるが、それは彼が達也に恩を感じてくれているからだ。他の人間に神祇魔法を教えるとは思えない。

 

 教わる内容についてもう少し聞いておきたかったが、そのタイミングで料理が届いたため、一旦話は中断された。

 

 

 

 一通り料理に舌つづみを打ったあと、顔を引き締めた光宣が話を切り出した。

 

「──さて、それでは明日の事を話しましょう。皆さんは賊の捕縛のため、伝統派を調べるとの事ですが」

 

「そうだ。ターゲットが伝統派に匿われているのはほぼ確実。()()()を引くまで虱潰しにするしかない」

 

 達也の言葉に光宣は当然のように頷く。そこで深雪と水波の当惑の表情を見た藤林が二人の疑問に答えた。

 

「伝統派というのはあくまで総称なのよ。幾つかの古式の流派が寄せ集まってそう名乗っているだけで、拠点も流派ごとに違うし、周公瑾の居場所も殆どの人間は知らないでしょうね」

 

「なので芋づる式に……とはいかないと思いますが、とりあえず明日は奈良を案内します。伝統派の拠点は奈良と京都が殆どなので」

 

 そこから伝統派の成り立ちや内情について九島家の視点での話が続くが、そこでふと光宣の口が止まった。

 

「……そういえば響子さん。伝統派が出来る前に古式の術者と政府の間に揉め事とかあったんですか?」

 

「?いえ……私はそこまではちょっと分からないけど……どうして?」

 

「今日泉美さんがそんな事を話してたんですよ。一度負けてるから政府に楯突く気概が残ってなかったって」

 

 達也にとって予想外の内容だった。といっても一度負けた云々は彼にはどうでもいい。問題はそこではなく。

 

「光宣。泉美と伝統派について話したのか?」

 

「あ、はい。事情をある程度知ってるみたいですね。襲われる可能性もある、という事で香澄さんに説明してました」

 

 七草家として知っていたのか仙女として知っていたのか分からないが、泉美は状況を知った上でこちらに来たという事だ。そしてその事を生徒会では話していない。言わなくても達也たちは知っていると分かっていただけかもしれないが。

 

 どうにかして巻き込めないか、と一瞬考えたが、もれなく七草家の護衛が付いてくるだろうし、要らない腹を探られるリスクの方が高い。これなら八雲を頼った方がマシだ。

 

「……まあいいか。変に首を突っ込まれるのも困る。」

 

「そうですね。それで、最後に話さないといけないことがあります……達也さんは今年の九校戦で九島家が行おうとしたパラサイドールの実験についてはご存知ですよね?」

 

「ちょっ光宣くん!?」

 

「ああ」

 

 端的に答えたが、達也はその話を光宣の方からしてくるとは思わなかったし、藤林に至っては驚愕の表情で光宣を見た。そもそも彼女は実験の事は光宣は知らないと思っていたのだ。

 

 しかし光宣は藤林の反応には目もくれず申し訳なさそうに本題を告げる。

 

「その際、父は周公瑾から亡命方術士の紹介を受け、一時彼らを受け入れてパラサイドールの開発に参加させました。そして父はどうやら四葉家にも黙っているようですが……パラサイドールのノウハウを方術士に盗まれたようです」

 

 もちろん真言も外部の人間である方術士にパラサイドールの術式の全てを見せるつもりはなく、必要な知識だけ吸い上げるつもりだったのだが、結果として隠していた部分まで盗まれていた事が後になって分かったのだ。

 

 そしてその後のパラサイドールの襲撃事件。この二つを結び付ければ嫌な想像が出来てしまう。

 

「つまり……敵がパラサイドールを使ってくる可能性がある、ということか」

 

「はい。再現出来る設備を伝統派が持っているのかは不明ですが、最悪大量のパラサイドールと戦う事になります」

 

 それを聞いた藤林が青ざめる。実際に戦っている所を見たことのない達也と違い、彼女はパラサイドールの脅威を正確に把握していた。状況次第では十師族であっても負けかねない戦力、と。

 

「──とはいえこれは最悪の想定です。実際には敵がパラサイドールを使っているのは確認出来ていません。それは四葉でも同じですよね?」

 

「ああ。少なくとも現状は遭遇したという報告は聞いていない」

 

 楽観的に考えるなら何らかの理由で再現出来なかった。悲観的に考えるなら数を揃えている最中というところか。

 

「……急いだ方がいいな。時間をかける程リスクが高くなる」

 

 予想される難易度が跳ね上がった事に顔を(しか)めるが、深雪が不安そうな顔で自分を見つめている事に気付いて苦笑してみせる。正直、深雪と水波は連れて来ない方がよかったかもしれない。

 

 再現しようと試行錯誤しているのなら成功する前に、数を揃えている段階なら準備が終わる前に。どちらであっても直ぐに叩かなければならない。

 




 ちなみに原作との違いとして大まかに

①四葉の人間として捜索

②黒羽の姉弟が家に来ていない→一高周りに伝統派が出没していない。

の二点ですね。

 一高周りに出没する伝統派については幹比古たちを関わらせる以上の意味もないんでカットで。お前らは素直に黒羽のいる四高の生徒でもストーカーしてて。
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