新入部員勧誘週間がやってきた。部活の対外的な成績はそのまま活動費に直結するので、どの部も優秀な新人を獲得するのに必死になる。
ちなみに魔法科高校は国立の、国家機密も多い学校の筈だが個人情報の管理はがばがばらしく入試での成績が出回っている。このデータを
……裏を返せば他国のスパイや犯罪組織もこのデータを基にターゲットを決めたりできるわけだが。
「はい。こちら生徒会です。機材トラブル……場所は……野外演習場ですね。少々お待ち下さい……えー予備のものを使用する場合は申請書を提出してもらうことになっていまして……申し訳ありません、しかし規則として……………はい。ではそれで。光井さん。申し訳ないですけど申請書と解錠コード持って野外演習場に行って貰えますか?」
「わかりました、会長。泉美は残って書類の処理続けてて。」
「わかりました」
今日は勧誘週間2日目、聞いていた通り山のように起きる問題への対応に生徒会は追われていた。揉め事への実行部隊には達也と深雪が応援にいっているので、残りの人員は生徒会に寄せられる苦情や要望に対応している。
確かに大変な仕事だが、外では上級生達が暴動一歩手前の馬鹿騒ぎを起こしている。あちらに比べればこちらは天国と言っていいだろう。ましてや泉美は入試成績一位、生徒会に入っていなければどんな目にあっていたか、想像もしたくない。
しかしあんな振る舞いで新入部員など確保出来るのだろうか。それとも確保出来そうにないクラブが無茶な行動に出ているのか。
そんな事を考えながら、香澄はあれらの仲裁をきちんと出来るのだろうか、と泉美は思った。ああ見えて、意外と、思ったよりはしっかりしている姉だが、荒事が得意という訳ではないのだ。しかも達也への対抗心で謎にやる気だけはある。空回りしていないと良いのだが……。
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十師族とは日本の魔法界のリーダー的存在だ。旧国立魔法技能士開発研究所の成果である二十八の家から、4年に一度、力のある十の家系を選定し、それが十師族と呼ばれるのだ。この体制は国家の横暴から魔法師の権利を守ることを理念とし、日本においては魔法協会よりも強い影響力を持つ。
さて、二十八家だが、家名に開発された研究所の数字が付くのが基本で、例えば十文字家なら第十研の
この法則でいくと七草家は第七研になるわけだが、実は七草家は元々は第三研の所属だったのだ。漢字も三枝だったのだが、今の十師族制度が始まる前に第七研に移り、名前も七草になった。
こんな事情なので、七草家は
特に七宝家はその感情が強く、七草と七宝の確執はそれなりに知られたものとなっている。
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「……ていう調子で、すっごく感じわるかったんだよ」
その日の夜、姉妹での食事を済ませた後(弘一は来客があるそうでいなかった)、香澄が部屋にやってきて七宝家の長男、七宝琢磨のことを愚痴ってきた。
香澄が言うには、風紀委員として揉め事を止めに行ったが、既に部活連として琢磨がいて、かなり
あくまで香澄の主観なのでどこまで信じていいのかという点はあるが、一先ず手を出しはしなかったようで一安心だ。昼間の心配は
「はぁ……それはまた、よく我慢しましたね、香澄」
「うん、まあ、色々後始末のことを考えると手を出さなくて良かったんだろうけど。でもボクの本音としては、ぶっ飛ばしてやりたかったよ」
香澄は絨毯に座り込んでクッションを抱え込んでいたが、言ってるうちに腹が立ってきたのかクッションを絨毯に叩きつけ始めた。物に当たるのはやめて欲しい。しかもそのクッションは泉美のものだ。
「それにしても……七宝君はそんなに非友好的な態度でしたか」
「非友好的なんて可愛いものじゃない。あれは喧嘩腰って言うんだよ」
「はいはい。まあその喧嘩腰な態度は流石に、部活連として風紀委員へ対抗意識を見せた、では説明が付かないですね」
「そうだよ。だから言ったじゃん。アイツは、七宝として七草に喧嘩を売ってきたんだって」
その主張は、確かに泉美も懸念していたことではある。ただ、話を聞く限り思っていた感じとは少し違う。部活連の先輩もその場にいたのに喧嘩を売ってきた?
「
「七宝家としてじゃなく、あいつの個人的な
泉美の言葉が予想外だったのか、香澄がキョトンとした顔で聞いてきた。
「怨恨って……まあ一つ言えるのは、七宝君の行動は流石に考え無しが過ぎるということです。二十八家の人間の行動とは思えません」
そう、泉美が懸念していたのは冷戦的なもので、直接喧嘩を売ってくるとは思って無かったのだ。そんなことをしても周りの理解は得られないどころか師族間の和を乱したとして白い目で見られかねない。子供のする事とはいえ少なくとも七宝の当主はそんな間抜けな指示は出すまい。
「んー……姉さんの意見も聞きに行きましょうか」
とはいえ泉美は七宝家の当主について何も知らない。ここは素直に社交的な姉の知識を頼るべきだろう。
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「堅実で周到で、本心では何を考えているのか分からない。幾重にも策を巡らせ手を打って、リスクを最小限に抑え成果を欲張りすぎず確実に元を取る、そんなタイプね」
真由美の部屋に行き、七宝家の当主の人柄を尋ねると、そんな答えが帰ってきた。
「でもさ、それって……」
「ええ。七宝君の態度は間違いなく、七宝家当主の意向ではありませんね」
「じゃあ、七宝家として何か企んでるわけじゃないってこと?」
「そうですね。とはいえ流石に個人で七草家に喧嘩を売るとも思えないので、他に当てがあるのでしょう」
「七宝家以外の、他の後ろ楯があるってこと?」
「後ろ楯、
「……考え過ぎじゃないの?」
真由美はあまり信じていないようだった。
流石に飛躍し過ぎだと思ったのだろう。
この姉は頭は悪くないが、人の悪意というものを軽視しがちというか、人間の善性を信じ過ぎというか、ようは箱入り娘なのだ。泉美は肩をすくめた。
「……何時の時代も馬鹿という生き物は他人に利用されるものですよ。価値があるなら尚更です」
話を聞く限り七宝琢磨はあまり頭がよろしくないようだ。そしてこの世にはそういう
何か企む人間は大抵、