クズと悪女の逆襲劇(ヴェンデッタ)!〜追放された勇者の孫は勃起の力で戦キチ悪役令嬢と魔王軍に寝返って異種族娼館を建てたいようです〜   作:犬吠崎独歩

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第二十話 目が逢う瞬間(とき)

 

(どういう状況なんじゃ……これは……)

 

 レオンは困惑していた。気がつくと眼の前には土下座する巨女、その傍らにはゾーネンシュリームがやれやれといった顔で腕を組み、ヴィオラが気まずそうに頭を掻いている。

 

「ごべっ、ごべんなざいぃ〜〜ゆるじでぐだざいぃぃ……」

 

「えっ、なになに、なんなの、閣下ァ!これどういうコトぉ!?」

 

「んん……まぁ説明してやる。まずこいつは私の姪っ子でレヴィアと言うのだが──」

 

 

 時は二時間程前に遡る。

 

 

 

 

「いきなり訓練中止ってどういうことだよヴィオラ!俺の溢れんばかりのやる気はどこ行きゃいいんだ!!」

 

「知らないわよ!ゾーネンシュリーム様がそう言うんだからしょーがないでしょ!?あと人前では中尉って呼びなさいな!!」

 

 ざわざわと兵士たちが移動してゆく。いきなりの訓練の中止が命じられ新兵たちは訳のわからぬまま上官の指示に従っていたが、古参の兵士たちは事情を知っているのかああまたかと慣れた様子であった。

 

 その時、レオンの足が止まった。

 

「あ!ヤベ!!」

 

「どうしたケヒャ?」

 

「訓練日誌置いて来ちゃった!!今日俺当番なのに!」

 

「ああ、大丈夫ケヒャよ。明日朝イチで行ってパパっと書いちまえばいいケヒャ!今日は書くことあんまないだろうし!」

 

「それもそうだな!」

 

「「あははははは!」」

 

 するとその時、レオンの肩にものすごい圧力がかけられた。

 

「へっ?」

 

「聞いたわよぉ〜?レオン??訓練日誌忘れてきたんですってぇ??」

 

「げぇっ!!ヴィオラ……中尉殿!?」

 

「毎日の日誌記入は下っ端兵士の義務でしょーーが!!ちゃんと書かないと許さないわよ!!さっさと取って来なさい!駆け足!!」

 

「りょ、了解いたしましたーー!」

 

 敬礼ののち踵を返して走り出すレオンだったが、曲がり角に差し掛かった辺りで何かにぶつかり、跳ね飛ばされてしまった。

 

「うおっ!?」

 

「きゃあっ」

 

 ぶつかったモノは人だったらしい。レオンと衝突事故を起こしたその者も、尻もちをついて可愛らしい小さな悲鳴をあげる。

 

「いてて……すんません、大丈夫すか?」

 

 跳ね飛ばされながらもレオンは衝突したモノが感触から女だと判断していた。女好きな彼は直ぐ様起き上がると件の彼女を気遣う姿勢を見せ、尻もちをついた彼女へと手を差し出した。

 

「あっ、ご、ごめんなさい!あ、ありがとう……ございますぅ……」

 

 レオンは少し驚いた。彼の手を取り、立ち上がる彼女はとにかく大きかったからだ。身長2m弱はあるのではないだろうか。そして次にレオンの目を引いたのはその身体だった。ちちしりふともも、全てデカく太かったのだ。

 

(これはっ!!……是非お近づきになりてぇな……!)

 

 レオンの性癖にベストマッチ。

 

 容姿の方も美男美女の多い魔人のことだ、さぞ美人だろう。腰まで届く長い艶のある黒髪も素敵だ。前髪で顔を隠しているのが勿体ないとレオンは思った。

 

「あっ、眼鏡……!眼鏡がない!アレがないと……またおば様に叱られちゃうぅ……!」

 

 ぶつかった時に落としたのだろう。彼女は四つん這いになり床を探し始めた。巨大な乳と尻がよく揺れる。

 

(おお……これは……っといかんいかん)  

 

「僕も探しますよ、お嬢さん(フロイライン)。きっとさっき落ちたんでしょう。すぐ見つかりますよ」

 

 下心を隠した紳士的な男を装い、レオンは彼女に優しく語りかけた。

 

「あ、ありがとうございますぅ……!」

 

 一緒になって眼鏡を探し始めたレオンにヴィオラが憤る。

 

「あーもー何やってんのよ……!レオン!さっさと──」

 

「ダメです、中尉殿。すぐ後ろを向いて、あの方と目を合わせないようにして下さい。……アイツはもうダメかも知れません」

 

 レオンの所へ行こうとするヴィオラを、古参の兵士が肩を掴んで止める。

 

「はぁ?どういうことよ?」

 

「あの方こそがゾーネンシュリーム様が席を外した理由です。いいから、とにかく目を合わせないで下さい。……新兵どももだ。後ろを向いて、目を合わせないようにすぐこの場を離れるぞ……」

 

 ヴィオラたちがそんな会話をしてその場を離れたその時、レオンは床に転がっている大きな丸眼鏡を見つけた。

 

「あ、これじゃないですか?眼鏡」

 

 四つん這いの彼女に見つけた眼鏡を差し出すと、喜びのためか勢いよく立ち上がり、レオンの片手を掴んだ。

 

「あっ、そ、それですぅ!!よ、よかったぁ〜……これでおば様に怒られないで済みますぅ……!」

 

 その巨体から想像できないほどに可愛らしい反応をする彼女に、レオンは正直見惚れていた。

 

(すげぇかわいいなこの人……長身とのギャップが……これは……マジになりそうだ……)

 

 それはほんの一瞬だった。喜んでピョンピョン跳ねる彼女の顔を隠していた前髪から、彼女の瞳が覗いたのだ。

 

(あ……目……きれいだな……緑で……あれ……からだうごかな……)

 

 まさに刹那と呼べる一瞬、その一瞬にレオンの目は釘付けにされ、思考を奪われた──否、石化してしまったのだ。

 

 

 

 

「ねぇ、どういうことなのよ?」

 

 つかつかと歩きながらヴィオラは先程彼女を制止した古参兵に問う。

 

「あの方はレヴィア・ナイトシュランゲン様。ゾーネンシュリーム様の親戚にあたるラミア族の名家、ナイトシュランゲン家の御令嬢です。」

 

「閣下の姪子さん……?どうヤバいの?」

 

「レヴィア様はラミア族にしては特殊で……目を合わせた者を石化する魔眼をお持ちです。故にあの方がこちらにお越しになる際には厳戒態勢が敷かれます。我々は運が悪かったとしか……。石化の治療は難しくはないですが、そうならないに越したことはないでしょう」

 

「石化!?じゃあレオンがヤバいじゃない!!」

 

「ヤバいです。なので先ずはゾーネンシュリーム様にいち早く報告なさるのが懸命かと……」

 

「そうね!ありがと!」

 

 古参兵に礼を言うと、ヴィオラはゾーネンシュリームを探しに一人駆け出した。

 

 

 

 

 その後、ヴィオラの報告を受けたゾーネンシュリームはヴィオラと共にレオンの元へと駆けつけた。

 

「くっ……レオン!大丈夫か!?」

 

 そこには時すでに遅くまるで彫刻のようにそのままの姿で石化したレオンと、わんわん泣きわめくレヴィアがいた。

 

「うわああんおば様ぁ〜〜!またやっちゃいましたぁ〜〜!」

 

「どわッこっちを見るな!お前まず眼鏡をかけろ眼鏡を!!」

 

「ひぃ〜〜ん!」

 

「あの……閣下?目を見たら石化するって聞いたんですけれども、大丈夫ですの?」

 

「眼鏡をかければ大丈夫だ……魔眼の効果を打ち消す特別製だからな……」

 

 眼鏡をかけたことを確認すると、ゾーネンシュリームはレヴィアを叱りつける。

 

「レヴィア!城に来る前は連絡しろと何度も言っているだろうが!!事前にわかっていればこちらもそれなりの準備をしてこんな不幸な事故を起こさずにすんだのだぞ!!わかっているのか!?」

 

「えぐっ、で、でもおば様ぁ……これには訳がぁ……」

 

「ええい言い訳をするな!!大体貴様という奴はだな!」

 

「あー、閣下?今回の件はウチのがホイホイ近づいたのも悪かったですし、とりあえず場所を移してお話されてはいかがですか?お二人とも落ち着いてからの方がよろしいかと……」

 

「む……それもそうか。……命拾いしたな?レヴィア。続きは私の部屋でだ。あぁヴィオラ、レオンも私の部屋に運んでやってくれ、この馬鹿姪に土下座でもさせんと私の気が済まないのでな。」

 

「はっ、承知いたしましたわ……石だからしょうがないけどクッソ重いわね……後で覚えときなさいよ……」

 

「ま……そういうことだ、レヴィア。大人しくついてくるんだな?嫌だと言っても引きずっていくが……。」

 

「あ!痛い!痛いですおば様!!歩きますぅ!自分で歩きますから引きずらないでくださぁい!!」

 

 

 

 

「……と、言うわけだ」

 

「はぁ……なるほどぉ……」 

 

 どうやら自分はこの眼の前で土下座しているレヴィアという女の力で石化したらしい──ということを理解した。

 

「ごめんなさいぃ〜〜〜!」

 

「も、もういいって。悪気があったワケじゃないんだろ?顔上げてほら」

 

 尚も土下座で謝り続けるレヴィアが流石に気の毒になってきたレオンは彼女に土下座をやめるように促す。

 

「ゆ、許してくれるんですかぁ……?」

 

「いいっていいって、もう治ったなら何も無かったようなモンだし。だからもう泣くのやめなよ、せっかくのカワイイ顔が涙で台無しだぜ?」

 

「そ、そんなぁ……可愛くなんてないですよぅ……わたし目付き悪いし……そばかすいっぱいだし……」

 

「何言ってんだ……目だって改めて見ても綺麗だしとってもチャーミングじゃねえか……俺は好きだぜ!」

 

「えっ、えぇ〜〜?そ、そうですかぁ?えへっ、えへへぇ……」

 

 いつになく押せ押せモードでレヴィアを口説くレオン。彼女の身体がレオンにとってドストライクだったのもあったが、彼をここまで積極的にしたのはある一つの確信であった。

 

(この子は事故とはいえ俺を石化させている……俺に対して罪悪感とかそういうモノがあるはず……!つまり俺に弱みを握られたも同じ!!そこを上手く使って……強く押せば!イケる!!)

 

 久々にレオンのクズの部分がフル稼働していた。

 

「だから……今後ともよろしくして欲しいなぁ〜って……俺はレオンハルト。レオンって呼んでくれ。君は?」

 

「れ、レヴィアですぅ。……えへへぇ、よろしくお願いしますぅ」

 

「何だかアレだなヴィオラ。ダメ男に騙されるダメ女の現場を見てる気分だな」

 

「同感です閣下……というかそのものですよね?アレ」

 

「そうだな……オッホン!それで?私に会いに来た理由をそろそろ聞かせてもらおうか?レヴィア」

 

 イチャつく二人に、痺れを切らしたゾーネンシュリームが割って入った。

 

「あっ……は、はい!で、でもぉ、それはもう解決しちゃたというか……なんというかぁ……」

 

「何が言いたい……?」

 

「わ、わたしそのぉ、お母様にそろそろ良い歳なんだから結婚しなさいって言われてぇ、でもお見合いとか絶対嫌でぇ、そこから喧嘩になっちゃってぇ……家飛び出して来ちゃってぇ……とりあえずおば様に相談しようと思って会いに来たんですぅ……」

 

「んん……なるほどな。まぁお前もそういう歳だ……無い話では……それで、解決したとはどういうことだ?」

 

「あ、はいぃ!結婚相手、見つかりましたぁ!」

 

 満面の笑みで答えるレヴィア。それを見たゾーネンシュリームは背中に嫌な汗が滲むのを感じた。

 

「……何か猛烈に嫌な予感がするのだが」

 

「私もです閣下……」

 

「一応聞いてもいいか?それは誰だ?」

 

「えへへぇ……それはですねぇ……」

 

 レヴィアは傍らにいるレオンにひしっと抱きついた。

 

「へ?」

 

 突然のハグに呆けた顔をするレオン。さらに彼女の豊満な全身を押し付けられた事により思考が停止する。

 

「レオンさんでぇす!」

 

 深くため息をつきゾーネンシュリームは天を仰いだ。

 

 ヴィオラはその後ろでわなわなと震えている。

 

「わたし、レオンさんと結婚しますぅ!!」

 

 

 




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