クズと悪女の逆襲劇(ヴェンデッタ)!〜追放された勇者の孫は勃起の力で戦キチ悪役令嬢と魔王軍に寝返って異種族娼館を建てたいようです〜   作:犬吠崎独歩

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第八話 ミズガルズ帝国酒飲み音頭

 

 トロールというトラブルはあったものの、依頼を無事に終えたレオン達はオーベルの街に戻り報酬を受け取った。

 ゴブリンの巣穴潰しの依頼が4件、ゴブリン50匹討伐、さらにトロール討伐の褒賞金を含めしめて48万ライヒの収入を得た。娼館に換算すれば24回分である。

 

 そんなわけで、彼らは酒場で祝杯をあげていたのだった。

 

「あーーはっはっはっ!」

 

「だーっはっはっはっ!」

 

「「かんぱ〜〜い!!!」」

 

 ジョッキとジョッキがぶつかり合う小気味よい音が響く。レオンとヴィオラは喉を鳴らしてエールを飲み干し、空になったそれをテーブルに勢いよく置いて同時に叫んだ。

 

「「ワン・モア!(おかわり)」」

 

 トロールとの戦闘という死線を越えてから、二人の信頼関係はそれなりに進展していた。なのでこうして酒を酌み交わすくらいには仲良くなっていた。

 

「たった一日で約50万ライヒ!貴族的にはちょっと物足りないけど大儲けねぇ!」

 

「全くだぜ!パーティー追放された時はどうなることかと思ったけどよ!お前について来て正解だったわ!!」

 

「え、なぁに?レオンあんた追放されてたの??あっ道理であんなとこに一人でいたんだぁ!ヒッ、やっばウケる〜〜〜〜!」 

 

「うっせぇ!ヘヘッ、いやぁな?娼館行きたいけどちょっと金がない時にな?パーティーの金をちょ〜〜っとだけ拝借しようとしたらな?それがバレちゃって……そのまま追放されちった!!」

 

「あはは!バッカねぇ〜〜〜!ま、私も追放された側だから人のこと言えないんだけど!!」

 

「そういうお前さんはどうして追放を??ほら、おにいさんに話してみんさい!」

 

「私ィ〜?私はねぇ、皇子の婚約者だったんだけどぉ、なんか私が士官学校行ってる間に他の女作っててぇ!ムカついたから皇子の前で恥かかせたりィ、悪い噂とか流しまくってたらぁ、婚約破棄されてぇ!そのまま帝国追放されちゃったってワケ!!これ私悪くなくない??」

 

「ギャハ!清々しい程クズじゃんか!100お前が悪りぃよ!!」

 

「そうかも〜〜!!」

 

「ギャハハハハ!」

 

「あはははははは!」

 

 すっかり出来上がっていた二人だった。

 

 

 宴は終わり、宿の隣の部屋にへべれけなヴィオラを放り込んでレオンは自分の取った部屋に帰ってきていた。

 金に余裕ができたにも関わらず彼が娼館へ行かなかったのは

 

「ぜったい娼館なんかいくんじゃないわよ!」

 

というヴィオラの念押しがあったからである。

 金に余裕があるのにどうしてダメなのか一応聞いてみたが、

 

「なーんーかーいーやーなーのー!」

 

の一点張りだった。解せない。

 

 それはそれとして、他に用があるのは確かなのでレオンは大人しく帰って来たのであった。

 

「……聞かせてもらうぜ。お前が何なのか。」

 

 ベッドに座り込み、その正面の壁に立てかけた自らの剣に話しかける。

 

『やあやあ、所有者(マスター)。僕も話したくてウズウズしていた所だ。喜んで話させてもらうよ。』

 

 剣はあの時のように、芝居がかったような口調で応えた。

 

『さて、何から話そうか──いやこのまま剣の姿というのも些か風情に欠ける、君から貰った淫力もまだ残っていることだしね。』

 

 そう言うと剣から淫力の光が漏れ出し、それは人の形になっていった。

 そして現れたのは見るからに胡散臭そうな笑みを浮かべた、クセのかかった長髪に山羊の如き角を生やした男だった。男はこれまた芝居がかった大袈裟な所作で恭しいお辞儀をして名乗り始めた。

 

『改めて初めまして、だ。僕はかつて魔王軍十傑集が一人、“悦楽のアスモデウス”と呼ばれた男、その残滓と言ったところかな。』

 

「魔王軍て……お前魔族だったのか……。」

 

『いかにも。人の国を捨て、魔王の軍勢に与しようとする君には似合いの武器だと思わないかね?僕は運命というものを感じざるを得ない。』

 

「何でその剣に?」

 

『いやはや、何とも恥ずかしい話でね。魔王軍十傑集として僕は居城にて勇者を待ち構えていたんだが──こっそり忍び寄って襲いかかってきた彼とそのパーティーに訳のわからぬうちに暗殺されてしまってねぇ。』

 

 あぁ……おじいちゃんの被害者だったのか……。可哀想に……とレオンは生前の彼の末路を哀れんだ。

 

『その時僕は思った。あぁ嫌だ、まだこの世の悦楽を味わい足りぬうちに消えてなるものか──と。そう思ったら、何と肉体以外の総てがこの剣──あぁ大淫魔(アスモデウス・)の剣(シュヴァンツァ)と呼んでくれたまえ──に宿ってしまったという訳だ。』

 

「あぁ……えっと、うちのおじいちゃんが、何か、ごめんな。」

 

『……?おじいちゃん、というと?』

 

「うん……俺、お前を殺した勇者の孫なんだ。」

 

 それを聞くと、アスモデウスは堰を切ったように笑い始めた。

 

『ふ……あはははははははははははは!!そうか、そうか!あの勇者の……!あはははははは!これも運命か!運命、運命!あははははははははは!』

 

「大丈夫……?怒ってない?」

 

『はははは……。いや、寧ろ楽しくて仕方がない。あの時剣に取り憑いてでも生きていてよかったよ。』

 

 ひとしきり笑い終えたアスモデウスは満足そうに微笑んだ。

 

『勇者に剣を売り飛ばされて幾星霜、何人もの手を渡ってきたが……こんなにも愉快なのは久しぶりだ。感謝するよ、流転の運命に。』

 

 ここでレオンは、ふと疑問に思った事があった。

 

「そういえばよ、淫力が高いやつはお前と話せるんだよな?どうしておじいちゃんはお前を使わなかったんだ?おじいちゃんも相当な助平だぜ?」

 

『ああそれは……確かに彼もかなりの淫力を持ってはいたが……それ以上に戦いの欲が強くてね。正直なところ彼に話しかけたら今度こそ消滅してしまうと思ったので黙っていた。』

 

「それは……そうかもな。」

 

 彼の祖父、先代勇者は目に映った獲物は世界の果てまで追い回して必ず殺す、殺意という概念が人の形をとったような人だった。恐らく話しかけていたら剣ごと消されていただろう。

 

『まぁ、それで君という所有者に巡り会えたのだ。彼に感謝しなければならないな、僕は。──彼は息災かね?』

 

「あぁ、元気だよ。……もう80過ぎだってのにピンピンしてらあ。」

 

『そうか……それは良かった。また楽しみが増えた。嬉しいね、ふふふ……。』

 

 昔を懐かしむようにアスモデウスは笑った。

 

『あぁ、そうだ。楽しみといえばだね、君の勃起魔法、初めてとしては上々だがまだ未完成だよ。』

 

「え、マジで!?あんな魔法、上級土魔術師でも難しいと思うんだが。」

 

『まだまだ、あんなものではないよ。──魔法とはね、元はと言えば世界の理に干渉するための業なのだ。君の淫力ならば、世界の理そのものを操れると僕は見ている。』

 

「そうなのか……?」

 

『そうとも。その境地に至ったならば、君はそれこそどんな望みでも叶えられるだろう。──君に夢はあるかい?』

 

「夢、か。」

 

 レオンはううむと唸って考え始める。

 

『件の彼女と一緒に世界の支配者になるもよし、または大富豪として面白可笑しくのんびりと生きるもよし──文字通り何でも、だ。……良ければ聞かせておくれ、君の夢を。』

 

 少しの静寂の後、レオンは口を開いた。

 

「……考えたんだ。ヴィオラは、俺のこと夫にしてくれるって言うけど、俺は本当にそれで満足なのかって。」

 

『うん。それで?』

 

「それで……それで思ったんだ。……やっぱりさぁ!一人だけじゃ嫌だ!!俺は…もっといっぱいエッチしたい!!色んな女と!色んな種族の女と!いっぱい!死ぬほどエッチしたいって!!!」

 

 アスモデウスがその言葉を聞いて吹き出すも、レオンは言葉を続けた。

 

「そして俺は決めた!もし何でも望みが叶うってんなら、俺は色んな種族の色んな女を集めた娼館を作る!そんで一生そこに通って暮らすんだ!!もちろんヴィオラともいっぱいエッチする!!!」

 

『あははははははははは!はっ、ははっ、君、君というやつは本当に、あははははははははは!』

 

「それが俺の夢だ!どうだ!いいだろ!」

 

『はははは……いや、素晴らしい、本当に素晴らしい夢だ。それが君の夢ならば、君の剣たる僕は全力でそれを応援しよう。いつかその夢が叶うまで、そばで見させていておくれ。』

 

「おうよ!よろしく頼むぜ、アスモっちゃん!」

 

『あ、アスモっちゃん?』

 

「いや、なんとなくその方が呼びやすいと思ってよ。嫌か?」

 

『滅相もない。僕は君の剣なのだから、好きに呼ぶといい。……おっと、そろそろ淫力が少なくなってきたようだ、ここらでお開きにするとしよう。──いい夢を聞かせてくれてありがとう、レオン。……僕もこう呼んでもいいかね?』

 

「いいぜ!いちいちマスターってのもなんかこそばゆいしな!!」

 

『ありがとう。……それではお休み、いい夢を。』

 

 そう言うとアスモデウスは霧散するように消えていった。後に残った大淫魔の剣だけが、妖しい光を放っている。

 

 レオンは、アスモデウスに語った夢を思い返しながら、床に就いて目を閉じた。

 

 ──ほんとに俺にできんのかな。 

 

 できるさ、とアスモデウスが言った気がした。




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