キングダム 回帰する者 作:李牧
成恢。韓国の大将軍であり、後に中華随一の毒のスペシャリストに成長する武将である。
まあ、武将とは言っても今迄仲間に加えてきた未来の大将軍と比べると武力も軍略も特質して優れたものはなく、研究者と言った方が正しいかもしれない。しかし、成恢は李牧が諸国を回るに当たり、最も仲間に引き入れたいと思っている相手だった。
理由は幾つかある。
例えば龐煖を始末するために強力で解毒薬のない毒が欲しいかったり、単純に毒使いを敵に回すと厄介だったり、毒のスペシャリストと言うことは解毒のスペシャリストでもあり、暗殺対策にもなれるからだ。
だから、今回の勧誘だけは失敗するわけにはいかない。そう意気込んで韓国に入ったものの、成恢の勧誘は驚くほどすんなり進んだ。
成恢に会ってから僅か半日で、と言うか未来の毒の知識を少し明かしただけで、あっさりと仲間になってしまった。
この見切りの速さには李牧もビックリで、一瞬唖然としたが、気の変わらないうちに韓国を出てしまおうと直ぐ様思い直し、そのまま李牧達一行は楚国入りをすることになる。
楚国。言わずと知れた中華随一の大国である。
「へぇ、此処が楚国か」
「思ったより普通だね」
「そうだな。長閑っていうか牧歌的って言うか。もっと厳つい風景をイメージしてたぜ」
「中華最強の大国だしね」
「此処は都から遠い田舎ですからね。戦略的な要地でもありませんし、戦争に巻き込まれることは殆どないんでしょう」
李牧達一行はだらだら歩きながら宿を探して行進を続ける。総勢50人を越える大所帯の一行だ。馬車は全部で10個あり、脇には凱孟のように一見しただけで猛者だと分かる武人も多く控えている。行商人が野盗に追剥に襲われるのはよくあることだが、流石に此処まで大所帯だと襲う方も勇気がいるらしく、殆ど襲われることなく旅ができていた。中には勇猛果敢な人間や、自己の実力を過大評価した男や、人数が多い野盗一家などが襲ってくることもあったが、彼等は皆例外なく、刀や槍の鉄の錆に変わった。
「宿屋はあるけど小さいな」
「田舎だからね」
「あー、今日も野宿かー」
「もう少し探して無ければ、テントを張って、寝泊まりの準備に取り掛かりましょう」
「了解です!」
李牧の言葉に李牧信者が一斎に敬礼する。
「ああ、布団が恋しい」一方、霊凰は嘆いた。
「俺は酒と女があれば何処でもいいがな!」
凱孟は豪快に笑った。それらを聞いていたわけではないが、紫詠と紫季歌はお互いを見つめ合い
「俺はお前がいれば他には何もいらないよ」
「まあ!私も紫詠がいれば何もいりませんわ!」
「あー、そこの二人、目の前でイチャイチャするのやめてくれませんかね」
何時もの平和な光景がそこには広がっていた。