アマテラス急行殺人未遂事件【完結】   作:peko34

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第2話

「おかえりなさい。降りる事は出来そう──ってその様子じゃダメだったみたいね」

 

「あ、いや違うんです。なんか電源が入っていないような感じで管制室に繋がりもしなかったんです。もしかしたら故障しているかもしれません」

 

「──ほぅ」

 

 ボクの言葉に興味深い様子で声を上げたのは、ザンゲ=イレイザーさんというお年寄りの男性だ。

 

「故障だァ? 機械なんてもんは何発か叩きゃ動くようになってんだよ。直してきてやろうかァ?」

 

「ふむ──それも由々しき事態ではあるが、先ずはユーマ君の事だ。先程も言ったが向こうでは私が面倒を見ようではないか。迷える子羊を導くのも我々超探偵の使命だからな」

 

「あ、ありがとうございます! でもひとまずボクの事は気にしないでください。先程から皆さんの推理の邪魔をしてしまっているので……」

 

「ニセモノの件ですね。先程は動機から考えて、アマテラス社が疑わしいという事でしたが、ニセモノと断定するには根拠が薄いという話まででした」

 

 と、話すこの女性はプッチー=ラヴミンさん。

 冷静に話を戻してくれて助かる。

 

 ボクも推理に戻ろう。

 えーと、動機から考えてみる、なんてのは世間の事を何も覚えていないボクには無理な話しだ。

 ボクはボクで今知っているみんなの事から考えてみよう。さっきはジルチさんとメラミさんに不自然なところがある。と考えていたんだったな。

 

 他に付け足す事があるとすれば、ジルチさんの率先してリーダーっぽく振る舞うところ……あれは統率力を示そうとしているのではなく、ボク達を操ろうとしている? 気付いたら、すべてが彼の思い通りになっているのかも……

 

 次にメラミさん。真っ先にアマテラス社のスパイ説を唱えていた……あれが意図的な誘導だった……とは考えられないかな? だとすると、実際に今起こっている事は、まったく別の意図がある犯行かもしれない。

 

 そして真っ先に能力を使って、部外者がいない事を示したエイフェックスさん……同じような能力を持つプッチーさんが、メンバーの中にいる事を事前に知っていたとすれば、あえて、最初に能力を使って、自分が正しい事を証明させた。──なんて事も考えられる。

 

 そのエイフェックスさんと同じような能力のプッチーさん……この中でもっとも落ち着いている。あの落ち着きぶりは、こうなる事が予測できていたからでは?

 

 それにプッチーさんの探偵特殊能力は……他の人と比べて強力過ぎる気がする……もしカナイ区の黒い噂が一部でも事実だったとしたら、会社からすれば絶対に街には入れてはいけない人物だろう。

 

 効果範囲の広さはもちろん、心音を聞き取れるだけでも効果的に使えば、今のニセモノ騒動もすぐ終わらせる事が出来ても不思議じゃない。

 今のこの状況で、何の躊躇いもなくそこまで強力な能力を明かせたのは自分が6人目の招かれざる客だから……?

 

 逆に探偵特殊能力が、他の人と比べて凄さを感じなかったザンゲさん。

 もちろん事件を解決するのに役立つ能力である事は想像出来るけど、右目に付いている機械にカメラを取り付けるだけで、能力を持っていると振る舞えてしまえるんじゃないか?

 それとも本当の能力は隠してる可能性も……?

 

 それにまだニセモノが混ざっているかもしれないというだけで『燃え盛る炎のような謎を灯してくれる』と格好良すぎる発言をするのはリスクが高すぎるのではないか……?

 もしこれで大した事ない謎だったりしたら、ボクだったらこの先悶え苦しんで安眠出来る気がしない。そんな発言を出来たのは自分がニセモノであり、謎に自信があるから……とか?

 

 いや……この人に関して怪しくない所は、探偵証を持っていた事くらいなんだ。制服も、年齢も、笑顔の邪悪さも疑いだしたらキリがない!

 

 でも……いくら考えたところで、何ひとつ確証がないんだよな……ボクが本当に超探偵なら、こういう時に役立つ能力を使えるかもしれないのに。なんとか思い出せないかな……ボクの探偵特殊能力。

 

『思い出したところで、どうせ役に立たないよ〜』

 

 うぅ……また、あの幻聴……! あー、もうっ! ホントにボクはどうしちゃったんだ!?

 

 

 

「つーか、オメェ……どうしたんだ? 顔が真っ青だぜ?」

「暖かいものでも飲んで少し休んだ方がいいんじゃない? コーヒーくらいしかないけど」

 

 ……コーヒー? これもさっきの話に出てきたアマテラス社が用意してくれたんだよね。

 よく見ると、もの凄い種類のお酒の数々……超探偵のみんなは慣れてるからか平気そうだけど、ボクからすると恐縮してしまう。

 今日の招待の為だけに、こんなに豪華な列車ごと用意してもらっても平然と出来る凄い人達なんだもんな、みんな。

 

「ブラックでいける? それとも、ミルクが必要かしら?」

「ジャリンコにはミルクだろ。つーか……オメェって何歳なんだ? よくわかんねェナリしてるよなァ」

「いいから、とりあえず飲んでおきなさい。あったまるわよ」

「ありがとうございま……」

 

 待てよ……今日の為にアマテラス社に用意してもらった豪華列車……? それにしては不自然な事があまりに多くないか……?

 管制室へ繋がらない事もそうだ。そういえば5号車への扉が故障してるのか開かない事。それに……6人目の乗客。一つ一つは大した事ではないけれど……

 

 何年も鎖国されたカナイ区に探偵を向かわせるなんて、世界探偵機構やアマテラス社にとって大きな事であるはずなのに、予定外の事が重なり過ぎている。

 まだ鎖国されているカナイ区に入ってもいないのに、今時携帯の電波も通っていない豪華列車というのも不自然だ。

 

 この不自然な点を合わせてみると……ボクらは今、一度動き出したら出入り不可能な箱に、外への連絡手段も取り上げられて、正体のわからない6人目と一緒に閉じ込められている状況に、いつの間にか追い詰められている……!?

 

 こんな状況が作られたのがもし偶然ではないとしたら……どんな突拍子もない事でも考えていかないとダメだ!

 ……例えば、アマテラス社が用意してくれたこの飲み物にも……何か仕込まれているかもしれない。とか?

 そうだ! ここにいるのは世界に千人しかいない超探偵達なんだ! もしかしたら捜査に必要な道具を持っている人がいるかも!

 

「あ、あの! すみません、ここに用意されている飲み物って調べる事は出来ませんか!?」

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