アマテラス急行殺人未遂事件【完結】   作:peko34

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第3話

「……」

「……ッ!」

 

 あぁ!エイフェックスさんが急に不機嫌に……! そうか、またボクが急な話の切り出し方をしてしまったから……!

 

「せ、説明させて下さい……!」

「──いいだろう。説明してみたまえ。私が許可する」

「……」

 

 ジルチさんわざとですか!? 

 まずい、エイフェックスさんの怒りのボルテージが上がっていく……! で、でも勢いで説明すると言ってもどこから? 今日はボクにとっておかしな事が起こりすぎて整理しきれていない……!

 

「あの、よろしいでしょうか? 今の不可解な状況で、怪しいとされているアマテラス社が用意した飲み物を疑うのは、確かに良いアプローチではないでしょうか? 幸いプッチーは仕込まれる事の多い、主要な薬品の物は一通り揃えていますので」

 

「……はァ? なんでそんなもんまで持ってきてんだよ? そこまで行くと警察の仕事だろォが、個人で調べるようなもんじゃねェだろ」

 

「事実上鎖国されているカナイ区に超探偵として仕事をしに行くのですから、準備を整えるのは自然な事だとプッチーは考えますが」

 

「……ケッ、あーあー、わァッたよ、別に問い詰めてる訳じゃねェんだ。ただ、『準備不足で探偵特殊能力が使えません』って舐めた奴らが続いたもんでビビっただけだァ」

 

「あら? 私としては鎖国されたカナイ区に行くからこそ余分な荷物は持ちたくないわ。

 向こうに着たい服が無かったらどうするの? 外から取り寄せなんて出来ないのよ? 捜査道具なんて持っていけるわけないわ」

 

「……役割分担は捜査において重要な事だ。圧倒的に少数である我々が、全ての事をこなしていては非効率だろう? 迅速な事件の解決を目指すのに、超探偵がそこまでの物を持ち込む意味などないのだよ」

「……」

 

 な、なんか険悪になってきた……

 なんとかしたいけど最初にエイフェックスさんを怒らせたのはボクだし、部外者ぶって仲裁に入ったら火に油だ……

 

 でも……今の状況なら険悪なのも悪くないのかも……

 どうせニセモノ騒動が片付かない限り疑いは残っちゃうんだから、いっそ更に疑いあっちゃえば、ニセモノがいたとしても迂闊な行動が取れなくなるかも。

 疑心暗鬼が致命的になるデスゲーム中、という訳でもないんだから。

 

『そうそう! 探偵は疑うのが仕事!』

 

 また幻聴……! ボクはホントにどうしちゃったんだ……!

 

 気のせいという事にしておこう……

 そうだ。今はは頭の中が整理できていなかったものを考えるんだ。今日ボクの身には不可解な事が起こりすぎている。一つずつ思い出していけ。

 

 先ずはボクの記憶が無くなっていることだ。記憶喪失がそんな簡単に起きない事は、数少ないボクの記憶にも残っている。

 

 次に幻聴、気にしたら止まらなくなるからやめよう……ボクの心の奥底の叫びとかそんなところだろう。多分、きっと……

 

 5人しか揃わない筈の超探偵が6人集まっている事。

 

 ボクを含めて6人それぞれ怪しく思える部分がある事。これは確証のないボクの勝手な考えだけど、お互いが疑いあう事を目指すならこれも整理しておこう。

 

 様々な探偵特殊能力という不思議な力の事。そしてその探偵特殊能力を使った人の感覚が、何故かボクには分かる事。

 

 今日の為に用意された豪華列車なのに、5号車に行く為のドアが故障しているらしい事。

 加えて、管制室に繋がる筈のインターホンの故障。及び携帯の繋がらない圏外による、外への連絡手段の喪失。

 

 1人も乗っていない乗務員、はめ殺しの窓と鍵の掛かったメインコントロール室によって脱出が出来ない事。──それと……そう、救護室には鍵が掛かっていた。外から鍵が掛かっているってことは、この列車を用意したアマテラス社が掛けたって事だよな?

 何の為に……? 非常事態への対処方がまるでないぞ……

 

 ボクは意識を取り戻してから、数時間も経っていないんだぞ!? 短時間の内に、こんなに不自然な事が重なるのは絶対に何かある……例え、この中の何個かは偶然だったり、全く関係の無い別の要因に寄るものが混ざっていたとしても。

 ここまで揃っていればごり押しで説得出来そうだ。

 

 

「とにかくプッチーさんが飲み物を調べられるものを持っていて良かったです! 早速検査をお願い出来ませんか!?」

 

「はい。しかし、例え異常が見つけられなかったとしても、飲み物に何かを仕込まれている可能性が無くなるという訳ではありません。あくまでプッチーが持っている薬品のみの検査になりますが宜しいですか?」

 

「はい! それで大丈夫です! よろしくお願いします!」

「……いや待ちたまえユーマ君。やはり話が強引に進み過ぎている。カナイ区に到着するまで、あと数時間程しかないのだぞ? その間、この列車からは誰も出入り出来ない。超探偵が少なくとも5人も揃っている今が、ニセモノを追い詰める絶好の機会なのだ。

 ──疑う根拠の無い、飲み物の検査なんかに時間を使っている暇はない筈だ」

 

「……ま、それに関しちゃ同意見だな。テメェはさっきから突拍子もない事ばっか口にしてるわ、1人で青くなったり記憶がねェわで、じいさん以上に怪しいとこしかねェ。俺らを誘導してるようにも見える。

 つーか、そんなに疑うなら飲まなきゃいいだけの話しだろォが」

 

「……そうねぇ。でも、本当に飲み物から何か出たのなら推理は飛躍的に進むわよ? 1つの薬の検査につき数分程度よね? 仕込まれているとしたら何か、と絞りながらならそうは時間は掛からないんじゃないかしら?

 ……そりゃ、私が用意した飲み物を急に疑い出した時には少し傷付いたけど。坊や、何か飲み物を疑う根拠があるの?」

 

「い、いやメラミさんを疑った訳ではないんです! ごめんなさい! ──根拠、そうですね……」

 

 結局大分時間は掛かってしまったが、さっき僕が整理したものを全部ぶちまけた。

 『みんなが疑いあう環境を作ろう』という考えからではなく、ボクが考えなしに話を切り出し続けていたせいで、みんなを誘導してるなんてとんでもないところまでボクは疑われているようだったから、焦った勢いで全部いった。

 

 当然、エイフェックスさんには殴られた。よかった、殴られるだけで……ザンゲさんにとんでもない推理をしてた事も勢いでぶちまけてしまったのに……

 

 

 

「……でもまァ、分からなくもねェな。記憶の事は嘘くせェから置いておくとして。管制室へのインターホンを軽く考えていたのは確かだ。あんなもん必要になった事すらねェからなァ。

 救護室の鍵が掛かってるってのも初耳だ。どちらも確認は必要だが、確かにこんだけ重なりゃ不自然だわな。

 

 ──何より……メガネェ! クソ女! ジャリンコが言ってる、テメェらへの疑いは俺も持ってたぜェ? さっきの話も動物の1匹でも連れて毒味させりゃあ1発で解決だったんだ。疑わしいィよなァ? 超探偵のくせに? 無能過ぎて?」

 

「ちょ、ちょっと! 坊やも死者の服を持ち歩いていないから疑わしいとか言うつもり!? いくら役に立ちそうとはいっても持ち歩く訳ないでしょ!? 罰当たりとかそれ以前の問題よ!」

 

「……私も、公共の乗り物に動物を連れて行くなんて恥知らずな真似は出来そうにないな。超探偵としての誇りもない君と一緒と考えないでくれたまえ」

 

「あァ!? 探偵のくせに倫理観なんて持ってるからオメェらは役に立たねェんだろうが! 知り合いの超探偵は親交のあるやつにも容赦なく麻酔針を打ち込むような犯罪者だが、あのナンバー1にも負けてねェほど悪人を捕まえてるぜ?」

 

「話にならんな。それに君は探偵特殊能力を披露したから関係無い顔をしているが、私から見ればそれこそ疑わしい。この大仕事に派遣された5人の超探偵……被らないだろう? 普通。能力が」

「そりゃそれだけ汎用性のある能力だから───」

 

 うーん、またボクが争いの火種を作ってしまった。

 凄いなボク。記憶喪失なのに……いや、それよりプッチーさんだ! 飲み物から何か検出出来たとしても、それでニセモノが分かるわけじゃないんだ。出来れば早目に検査に取り掛かりたい……ん、だけど……

 

 プッチーさんもの凄い顔汗流してる……ッ!!

 

 なんで? 突然の熱中症!? ……いや、ボクが疑ったから? でも別にプッチーさんだけが疑わしい訳じゃないのに。確証だってない、ただの推論なのに……

 

 ……そういえば、さっき自己紹介した時に、プッチーさん自分を客観的に見るのを苦手そうにしていた。

 もしかして……アマテラス社のような後ろ暗い噂のある会社から見たら、自分の能力がどれだけ邪魔な存在か気付けなくて、能力を明かしてしまう危険性に、今気付いた、とか?

 

 何でもいいけど、列車内での水分補給は避けた方がいい状況で流していい汗の量じゃない……! 落ち着いてプッチーさん! まだニセモノが本当にいるかどうかも、アマテラス社の者かも分からないんだから……!




 話が全く進まなかった……逆転裁判1の時代でも、すぐ睡眠薬の痕跡を見つけてたし、本編内でもスパンクさんがあっさり睡眠薬の事を言及してたから、検出なんて簡単なのかと思って調べてみたら難しいものなんですね……
 おかげであっさり済まそうと思ってた部分がここまで延びてしまいました。
 スパンクさんも一応部下に毒味をさせた上で言及してきたんでしたね……
 でもワインを毒見した方が倒れたのは、ただお酒に弱かっただけかもしれないじゃないか!
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