アマテラス急行殺人未遂事件【完結】   作:peko34

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第6話

 動くとなれば先ずは、プッチーさんの協力が絶対に欲しい。ボクの能力を上手く見せる事が出来れば、多分、協力は出来ると思う。向こうは超聴覚を完全に使えて騙しようがないから。

 問題は、ボクが彼女を信用出来るかどうかだけど……うん、信用しよう。もう疑いなんて殆ど残っていなかったけど、それとは別にボクは既に1人を犠牲にしてしまっているんだ……自分だけ安全圏に隠れているわけにはいかない……!

 

 早速行動開始だ! 協力を結ぶなら周りにバレない方がいいよな。誰が敵か分からないんだし。プッチーさんはヘッドフォンをあんなに用意してるって事は、多分素の状態でも耳が良すぎるんだと、思う。丁度隣に座れていて良かった。後は口を左手で隠しながら──

 

「プッチーさん、聞こえますか? 聞こえていましたら机の下のボクの手に合図下さい。ボクの能力を思い出したんです」

「……ッ!」

 

 ……ダメか。でもこれ以上声は大きく出来ないし……もう少し近付いて──

 

「プッチーさん、聞こえますか? 聞こえていましたら机の下のボクの手に合図下さい。ボクの能力を思い出したんです」

「……ッッッ!!」

 

 ……来た! 良かった、この声量でも聞こえるならなんでも話せそうだぞ! でもなんで小指に小刻みタッチ?

 

「ありがとうございます。早速ですけどボクの能力は───…

『───────…』

 

 ……え? 能力共有って? 相手の同意と手を繋いでいる間、相手の能力が完全に使える? なんで幻覚の君がそこまで知ってるの!? というか何で急に……? 面白そうだからってどういう、いやそんな事気にしてる時間はない!

 

「……ボクの能力は能力共有と言って、相手の同意と手を繋ぐ事によって──ええ!? 何っ!?」

 

 何で急に立ち上がったの!? ん……? ちょっと待ってプッチーさん、睡眠薬入りのコーヒーを手に取ってどうする気──!?

 

「っ! いやそれ飲んじゃダメですよプッチーさん! 置いて! 一回置いて下さい!」

「──ッ!」

 

 良かった……何とか座ってくれたけど、首ごと向こうを向いてる……幻覚の紫さんはめっちゃ笑ってるけど、これが予想出来ていたのか?

 

「ど、どうしたんですかプッチーさん急に」

「いえ別に。少し落ち着こうかと思いまして」

「少し落ち着こうかと思って!?」

 

 ええぇ……落ち着く為に睡眠薬飲もうとしたの……? エキセントリック過ぎるよ考えが……そしてプッチーさんが見ている先には壁しかありませんよ……?

 

「君たち先程から何をコソコソしている?」

「っ!」

 

 しまった気付かれた……! よく考えたら気付かれて当然な程暴れていたけど、どうしよう。

 

「睡眠薬が私達に用意された飲み物に混入されていた以上、誰かの悪意は確実に存在しているんだ。そんな状況なのに怪しい行動をするという事は──

「怪しいのはテメェだろ?」

「──どういう意味かな?」

「そのまんまだよ。毎回毎回根拠もなく突っかかってきて、自分からは何一つ建設的な事を言わねェ。怪しむには充分だなァ?」

「疑う事が非建設的だとでも? 疑い抜いた先に、本当の真実があるとは思わないか?」

 

「ハッ、結果が一つも出せてねェ持論をよく未だに振り回せるなァ? まぁテメェがどんなスタイルだろうがどうでもいいんだ。

 ──だがこのガキンチョ共はしっかり結果を出してる。なんか企んでるのはバレバレだが好きにさせておけや。俺らは睡眠薬で眠らされてるところを救われてんだぞ?」

 

「そうね。もう少し2人を眺めていたかったけど……ワタシ達は、睡眠薬で眠らせようとした動機から考えていきましょう」

 

 

 

 ……エイフェックスさん、ありがとうございます……! ガラは悪いけど、いい人臭さが隠し切れていないんだよなあの人。というか素直にいい人やれば? って程漏れ出てる。ってそうだ、今の内に──

 

「……プッチーさん、突然驚かせるような事を言ってすみませんでした。でもさっき言った通り、プッチーさんと手を繋ぐ事でボクも超聴覚が使えるようになるんです。

 2人でみんなの心音を聞ければニセモノを追い詰める事が出来ると思うんです……! どうか協力して貰えないでしょうか?」

 

「……」

「……」

「……はい。ユーマさんの能力を聞いてから、プッチーもそう思っていました。

 ……フゥー。では、失礼します」

「ありがとうございますプッチーさっ!?」

 

 っ! ヤバい……赤面顔を至近距離で見てしまった……! そして手はちょっとしっとりしててって痛っ! 手を叩かれた!? ……あ、手汗を拭いてからね。

 って今はマズいよ、心臓バクバクいってる……え!? この音が聞かれちゃうの? ドキドキさせた張本人に!?

 

「では、いきます」

「あ、いやちょっと待って──!?」

「──」

「──っ!!」

 

 ……す、凄い……これがプッチーさんの聞こえている音……? いや感動してる場合じゃない! ボクの心音は、まあ物凄い音を発してるよね……プッチーさんの心音は……っ!?

 

「………」

「………」

 

 うぅ、は、恥ずかしい……なんでボクはこんな恥ずかしい思いをしてるんだっけ。そ、そうだ、ニセモノの心音を聞いて正体を暴かなきゃ……! えーと、周りの心音、周りの心音と。

 

 ……何か、ボク達以外にも少し大きい心音が聞こえる……どういう事だ……? 音の出所は──ザンゲさん!? ……そうですか、まだ立ち直れていないんですね……すみません、ボクは浮かれている場合ではなかったみたいです……

 他に手掛かりは──ジルチさんの心音が少し大きいみたいだけど不自然という程でもない。

 他の車両に不審な物音はないだろうか? 恐ろしい可能性だけど、睡眠薬がスカされた場合に備えて爆弾か何かを、ボク達が入る事の出来ない5号車に置いておくとか……ん?

 

「プッチーさん、少しいいですか?」

「は、はい!!」

「………」

「ウルセェぞガキンチョ!! 悪巧みなら静かにやれや!」

 

 プッチーさんのこの反応、ボクの心音絶対に聞かれてる……落ち着け落ち着け落ち着け……

 

「5号車の事なんですけど、全く音が聞こえないのですが超聴覚の範囲から外れてたりします?」

「……ッ! 試してみます。──そうですね。5号車は今現在走っていません。凄いですね。プッチーは気が付きませんでした」

 

 やっぱり……どういう事だ? これも何かの仕掛けなのか……?

 

「──仕掛けてみましょう。ユーマさんはそのまま心音に集中していて下さい。プッチーは少し集中を解きます。ユーマさんの能力も解けてしまうようでしたら言ってください」

「い、いえ大丈夫そうです!」

「では──」

 

「あの、よろしいですか? 5号車へと続く扉が閉まっている件なのですが」

「あ? 急になんだよ」

「故障じゃないの?」

「プッチーが超聴覚を使って調べてみたのですが──」

「ッ!!」

「……5号車は走っていませんでした」

「!!」

 

 ──凄いなプッチーさん……1発で決めてしまった……1人だけ、結果を聞く前に心音を派手に鳴らしてしまった人がいる。──さっきとは違う理由でドキドキしてる……カッコよかったな。

 

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