アマテラス急行殺人未遂事件【完結】   作:peko34

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第7話

 ボク達に睡眠薬を飲ませて何かを企んでいるのはアマテラス社。これはもう間違いないとみていいだろう。……そして普通は気付く事の出来ない5号車の仕掛けについて、心当たりがありながら黙っていたあの人はアマテラス社のスパイ、もしくは主犯といった協力者以上の存在とみていいのかもしれない。

 

「……いやそれはおかしい。君達も乗車する前に見ただろう?この列車が間違いなく5両編成だったのを」

 

「……正直そんなモン覚えてねェけど。つかアマテラス社が絡んでる以上、乗車前に見たかどうかなんて何の問題でもねェだろ」

 

「では問題はプッチーをどこまで信用出来るかどうか、でしょうか?」

「──その通りだ。悪いがプッチー君の話は荒唐無稽で到底信じられそうにない。何か証明出来る物でもあるのかな?」

 

「プッチーちゃんの能力の証明なんて時間を掛ければ簡単に出来るんだし、そんな嘘なんか付かないわよ。それよりせっかく5号車が走っていないなんて突拍子がない話が出てきたのよ? 5号車があるように見せかけた理由から考えていって、話がキレイにまとまるようならプッチーちゃんの話は本当って事でいいんじゃないかしら?」

 

 ……プッチーさんへ疑いを向けてきた……? そうか、ニセモノからしたらプッチーさんを何とかしない事には勝ち目はないもんな。

 ……勝ち目? ニセモノにまだあるのか? プッチーさんの信用を落として仕掛けの事をうやむやに出来たとしても、少なくともボク達が睡眠薬を口にする事はないと思う。それでもまだ諦めた様子がないのは、他の狙いがある……?

 

 ボク達は今の時点で犯人を追い詰めようとしていた……ボクの能力は、ここにいる超探偵達の能力を借りれば簡単に証明が可能だから。でもダメだ、今の状況で能力共有の事を明かしてしまったら、能力元のプッチーさんは更に狙われてしまう……

 

 2人で追い詰めようと言ったのばかりなのに、ごめんなさいプッチーさん。もう少しだけ考えさせて下さい! 小声で伝えられるか……? ダメだみんなの意識がこっちに向いてる……なら繋いだ手を強く握る! 伝わって下さい……!

 

「──ッ!?」

 

 心音が大きくなった……! しまった、変に受け止められてる気がする! 違います、見捨てる訳じゃないんです、落ち着いてください!

 

「──いや駄目だな。先程から現実離れした状況が続いている上に、こんな突拍子もない話まで出てきたのだ。証明は簡単なのだから、いくら時間が掛かろうとも今までの推理をここで固めておくべきだ。

 まずはプッチー君に車両を移動してもらって、私達の出す音を当ててもらって証明してもらおう。確実な事件の解決の為にはやるべきだろう?」

 

「ホントめんどくせェなァテメェは! どうせ次はこのちびっ子の話自体が信用出来るのか、とか続くんだろ?」

「当然だろう? プッチー君の話の証明も簡単なのだからな。そのコーヒーを飲むだけでいい」

「……は? アナタ何バカな事を言ってるのよ? 今はそんなリスクを負う必要なんてないでしょう?」

 

「リスクなどないだろう。入っているのが、ただの睡眠薬だと確信しているプッチー君にとってはだが。

 強力な能力を持ったプッチー君が抜けてしまうのはリスクと言えばリスクだが、確実な証拠さえあれば私が解決してみせよう。超探偵の君達はこれだけの手掛かりを貰っておいて、まだ解決する自信がないのかな?」

 

 ……マズい、本格的にプッチーさんを狙っている。怪しまれるリスクを無視してここまで強引に話を持っていくのは、プッチーさんさえ何とかすれば逃げられると考えているからか……? つまりまだボク達は真相から遠い位置にいるんじゃないか? もしそうならプッチーさんをここで退場させる訳には──

 

「……通常より早いこの鼓動の音は、まさかプッチー自身から?」

 

 ……小声で何か言ってるっ……!? 良かった、全然聞いてない……! 今は相当大事な話をしてるところだから、全然良くはないんだけど良かった……!

 

「……どうしたのだね? ここで飲まないのならプッチー君の話はなんの証明にもなりそうにないが? 飲み物に何も入っていないという事になると、アマテラス社を疑う事すらミスリードに思えてくる」

 

「アマテラス社が用意した列車の大事な部分が不備だらけなのは確かだろうが!?」

「──それだけでは根拠が弱い事くらい君にも分かっているだろう?」

 

 ……ひどい理屈だ。周りは全員、今日初めて会った人間なんだぞ……!? 体格だってこの中では小さな女性だ。

 それに、この中で誰よりも推理を進めてくれて、みんなを救ってくれたのに睡眠薬を飲めだなんて──痛っ! え? 痛い痛い! ペチペチしないで! 何ですかプッチーさん?

 

「──ッ! この手を、離せ……!」

「……ええ!?」

 

 また急にキレた!? って離してしまったけど飲んじゃダメですよプッチーさん! これは犯人の狙いでっ……あ、手汗の方でしたか……すみません本当に気が利かず……

 プッチーさんが1番ピンチのはずなのに乙女心って……

 

 ……なんか、今の、凄く良かったな。肩の力が一気に抜けてくれた。うん、この人は死なせたくないなって心から思えた。

 落ち着いて考えてみると……犯人がここまで自分の立場を犠牲にして、身体能力の劣るプッチーさんにこだわるとなると、狙いは推理の停滞、時間稼ぎで決まりかな。

 

 となるとボクがする事は、犯人に時間稼ぎをさせず、推理を進められるプッチーさんの信用を高めて周りに味方になってもらう事。そして犯人からのヘイトも分散させる、とかかな。

 ……うん、出来そうだ。デメリットは……少しボクが危険かもしれないけど、このなんだか可愛い人が犠牲になるよりはずっと気分は楽だと思う。

 ──よし、これでいこう。

 

「ちょっと待って下さい! 飲み物に睡眠薬が本当に入っていたらプッチーさんの事は信用出来るって話になるんですか?」

 

「……ふぅ。やれやれ、よく考えてもみたまえ。……仕方ない、1から説明するとだね──

「あ、いやそれは大丈夫です! ボクもそう思ってはいたんですが、ジルチさんもそう考えていてくれているのか知りたかっただけなんです!」

 

「……そうだな。他にも考えられる事はあるにはあるが、無色の睡眠薬を大量に使っているなら消していい可能性だろう」

 

「良かったです、それが聞けて。──あの、皆さん聞いて下さい。

 ──ニセモノの正体はジルチさんです」

 

「……」

「……は?」

「……え? 坊や急にどうしたの?」

「……どういう事だ? 私だと?」

 

「ボクの探偵特殊能力を思い出したので使いました。ボク達を眠らせてから何をしようとしていたかまでは分かりませんが、今はカナイ区に到着するまで自分の正体を暴かれないよう、時間稼ぎしていると確信しています」

 

「……」

「……ふざけているのか?」

「おい。──ジャリンコが急にとんでもねェ話を切り出してくるのは今に始まった事じゃねェ。が、流石にここまで意味わかんねェのはイラつくぜ……?」

 

「今は、ボクの能力で本当の事が分かるとしか言えません。ただ、ジルチさんが犯人とすると怪しい点はいくつもあります。ボクの能力だけで証明するには、あともう少しだけ手掛かりが足りないんです……」

 

「……いいから、一息に全部言っちゃいなさい。また殴られちゃうわよ?」

「は、はい、ありがとうございます。──そうですね、それとは別に、ボクには犯人が分かっているので、プッチーさんは本当の事しか言っていないのも分かるんです。なので……突然ですけどこのコーヒーはボクが飲みます」

 

「──!? ユーマさん?」

 

「最初から思っていた事なんです。プッチーさんの能力があればニセモノ騒動なんてすぐ片付くんじゃないかと。それを皆が口にしなかったのはプッチーさんを信用していいか分からなかったからですよね?

 ……大丈夫です、信用しても。これからボクがコーヒーを飲んで証明します。それで、もう終わらせちゃいましょう」




何度も改稿してすみません。
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