「……」
「……」
「……いや待てや! 1人で突っ走りすぎだろテメェは!?」
「……坊やの言いたい事はなんとなく分かったけど。
坊やの能力が本当なんだとしたら睡眠薬を口にしないで、プッチーちゃんと協力して推理する事は出来ないの?」
「ボクの能力は今のままだと証明出来そうにないんです。直感のようなものでして。2人とも信用を得ていないまま推理をしても、また話を止められてしまうから……」
「……」
「ま、待ちたまえ! なんだそれは、私はそんな事では納得出来ない──って待て飲むんじゃない!」
「……まだ全く話終わってねェだろ、なんなんだコイツの思い切りの良さは……」
「……ふぅ。すみません、効き目が現れるのに数分掛かるみたいなので……
それにジルチさんの睡眠薬を飲め、っていうのは乱暴な話ですけど、今すぐにみんなの信用が欲しいなら悪くない手だなって。見ていてわかる通り、プッチーさんは狙われていて今も危険な状況ですから」
「──? プッチーが狙われているんですか?」
「ま、まあこんな感じで集中すると周りが見えなくなるみたいなので、ボクが眠るのを確認したら守ってあげて欲しいんです」
「……アナタねぇ。まだこっちは頭の整理が出来ていないんだけど。
……はぁ、まぁ危険そうだったら体張ってでも止めてあげるわよ……」
「勝手な事を言うんじゃない! 私は推理に必要な事を言っただけだ!」
「……俺が言うのもなんだが、初対面の女に睡眠薬入りのもん飲むよう迫るのは大分イカれてるからな?
つーかよォ、このロリっ子の能力が強力なのは分かるがアテにし過ぎじゃねェか? 今更おせえけど、こういうのはもっと不意打ち気味でいかねェと──
「いえ、それは大丈夫です。むしろ素直な心音をしているので。──ここまで反応が強く出るという事は、プッチーが思うに失敗すると大きなペナルティが待っているのではないでしょうか。」
「…………まぁこんだけの犯罪やらかすような会社なら……パワハラも横行してるわな……」
「ちょっと同情しちゃうわね……」
「ふざけるな! こんな流れはおかしい、私をハメようとしている……! もしかするとこの2人はグルなのではないか!」
「グルを疑うなら1人潰れてくれてラッキーじゃねェか」
「まあまあ、ちゃんとその可能性も最後に考えてあげるから。もう少し落ち着きなさい」
「すみません……頭が痛くなってきて、どうも薬が回ってきたみたいです」
「マジかよテメェ……投げっぱなしにも程があるだろ……
──おいエロじいさん、そのガタイだ。戦えんだろ? 警戒が必要だってよ」
「……ふん、誰に向かって口を聞いている。荒事で若い奴らになんて負けんわ。坊主はとっとと寝ていろ」
「ありがとう、ございます。本当に心強いです」
「ユーマさん」
「……プッチーさん、すみません勝手な事ばかり言って……」
「貴方のおかげで解決出来そうです。ありがとうございました。もう何も心配いりません。後はプッチー達に全てを任せてゆっくりお休み下さい」
ふふっ本当にカッコいいなこの人は……何か問題起こったら無理矢理にでも起こしてもらおうと思ってたけど大丈夫そうだ……後はお願い、します……
◇◇◇◇
「……」
「……」
『もー、いつまで寝てるの! いい加減、ぶっキルよ!?』
「……?」
「終わったわね。──あら? トンネルに入っちゃったわね。そろそろ到着しちゃうわよ?」
「推理通りだとすると駅にカナイ区の警察が詰めかけててもおかしくないですね」
「──帰るぞ。このメガネ野郎が言ってんのが本当なら、マジでアマテラス社はイカれてやがる……このままノコノコ敵地に乗り込む訳にはいかねェな」
「それにプッチーの能力の強力さを知っているニセモノを、カナイ区に引き渡す訳にはいきません」
「……テメェが自分でペラペラ喋ったんだろうが」
「そうね。メインコントロール室に向かいましょう。操作方法が分からなかったら、ニセモノの締め上げお願いね」
「逃げて帰る訳じゃねェからな。準備を万全にして、もう一度戻ってくるからな」
「……締め上げる必要などない。私はこのまま帰ったら間違いなく殺されてしまう……何でも協力するし何でも話すさ……」
「……パワハラってレベルの話じゃなかったみたいね……」
「……!?」
起きたらなんか物凄い展開になってる……えぇ? ジルチさん縛り上げられてるけど、どこにあったのそのロープ……
「あ? 起きたのか。このメガネとんでもねェやつだったぜ? テメェは気楽でいいよなァ」
「おはよう坊や、ちょっと待っててね。このままカナイ区に向かったら大変そうだから戻る事になったのよ」
「……」
「……あ、すみませんまだ少しボーっとしてて、て、え!? 帰れるんですか!?」
「はい、ユーマさんのおかげです。プッチー達は本当なら死ぬところだったので」
「……ええ!? どういう事ですか!? 一体どういう狙いだったんですか!?」
「……あー、説明は長くなるから後だ。駅に戻るまでにコイツにカナイ区の事について知ってる事を全部聞かなきゃなんねェからな」
「……何もかもを話すさ……世界探偵機構にも全て話す…だから私を保護してくれ……」
……あんなに自信に満ち溢れてたジルチさんが凄い萎びれてる……! 本当にこの数時間で何があったんだ……
いや、今はとにかく話を聞こう。
◇◇◇◇
こうしてボク達は無事に元いた駅に戻ってこれた。長い時間、列車に乗っていたようで、いつの間にか外は土砂降りになっている。通報して駆けつけてくれた世界探偵機構にジルチさんを引き渡し、ようやくボク達は一息つけた。
「つ、辛かった、怖かった……記憶を失くしてすぐにあんな事に巻き込まれるなんて……」
「ふふ、そうね。被害が無かったから大した事ない事件に思えるけど、飲み物を飲んでいればワタシ達焼き殺されていたのよ? ありがとう坊や。アナタは命の恩人よ」
「焼きっ!? ええっ! そんな凄い計画だったんですか!? ……それならボクだって皆さんがいなかったら何も出来ずに殺されていたと思います……」
「……ケッ、俺は警戒して飲まなかっただろうけどなァ。それはそうとジャリンコ。結局テメェの能力は何だったんだ? まさか本当にまた俺と被ってる能力じゃねェよなァ!?」
「は、はい! ボクのは能力を発動している人の近くにいると、その人の能力のほんの一部が使える、というものだと思います! 他にも、えーと───
「……待て。一部が……? そうか貴様か……あの時本官を陥れてくれたのはぁっ!?」
「す、すみません! あの時名乗り出てたらニセモノを追い詰められないと思って!」
「ではあの時の胸の記憶はユーマさんのものだったのですか? お好きなんですか?」
「ふふ、違うわよ? ワタシの胸なんかチラ見しただけで、後は殆どプッチーちゃんの方を見てたんだから」
「……ッ!!」
や、やめて下さい! 疑うのをやめてから、プッチーさんの赤面が凄く可愛く見えてきてるんです……!
「ふん、諸君らと仕事なんて金輪際ごめんだと思っていたが、誤解が解けたならもういい。またカナイ区で会おう」
そう言ってザンゲさんは帰っていった。最後はカッコよかったな。そして本当にごめんなさい。
「ジャリンコ、オメェはどうすんだ? 住む場所も覚えてねェんだったらウチくるか? カナイ区対策はオメェも必要だろ?」
「いえ、結構です。列車で見せた通り、プッチーとユーマさんの能力の相性は良好です。カナイ区対策の為、という事ならプッチーが預かります」
「ああ!? なんでテメェが答えんだ───…
ボクはそもそも、そんな危険な街にはもう行きたくないんだけど。これ絶対聞いてくれないヤツだ……
でも……このままみんなとお別れなんて絶対に嫌だよな。それに、ジルチさんの話……余りにも現実離れした話だった……
ボク達が向かう夜行探偵事務所の所長の事も、アマテラス社の権力者の娘が犯した罪の事も、どれもこのまま放置していい問題じゃない……!
死に神ちゃんと名乗ってるフワフワもうるさいし……行くしかないか……!!
完結です!読んでくださった方、感想くれた方、お気に入りしてくれた方、評価してくれた方、誤字修正して下さった方本当にありがとうございました!!
信じられないかもしれませんが、皆さんのお陰で書いている間、何書くか考えている間、調べている間とめちゃくちゃ楽しかったんです!!
こんなに拙い作品なのに、勇気を出して投稿して心から良かったと思っています!
本当にありがとうございました!