【完結】ルビーがお姉ちゃん   作:座右の銘

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コメディエンヌ不知火フリル

あかねちゃんは食い気味で『アクアを愛でる会』への入会を承諾。目が本気だった。

 

「さて、黒川さんの参加も決まったことだしまずは事の経緯の説明からしましょうか。」

 

あかねちゃんが座ると同時にフリルちゃんが立ち上がり、マイクを持って部屋の中央へ。姿勢よく立ってマイクを口に当て、表情を報道アナウンサーのようにキリッと引き締めれば、残された3人の視線はフリルちゃんに釘付けとなる。

 

さすが国民的美少女。ただ立っただけなのに存在感が凄い。

 

「あれは私がいつものように学校でランチを食べていた時のこと。」

 

寸劇が突然始まった。

 

私とみなみちゃんは慣れたものだけど、隣のあかねちゃんが面白い顔になってる。テレビで見るフリルちゃんは清楚でクールなイメージだけど、プライベートでははっちゃけてるんだよね。

 

今日は個室でカラオケだから、アクセル全開。その分ギャップも凄い。

 

フリルちゃんはやたら上手な物まねを挟みつつ、ノリノリで語り続ける。

 

『でね、昨日はアクアがー』

『やめろってお姉ちゃん! 恥ずかしいから!』

『残念やなぁ。うちはもっと二人の話聞きたいねんけど。』

「と、このように星野姉弟のあんなことやこんなことの話を聞こうとするのですが、常にルビーの隣にはアクアさんが居るため話を遮られてしまうのです。」

 

そうそう。アクアは恥ずかしがり屋だから家の外だと私と仲良くスキンシップを取ってることを隠そうとするんだよね。あんなに可愛いのにもったいない。

 

「そこで私は考えたのです。ならばアクアさんが居ないところで語り合えばいいじゃないかと。私、みなみ、そしてルビーの3人で集まり、アクアさんとルビーお姉ちゃんのあんなことやこんなことの話を気が済むまで聞けばいいじゃないかと。」

 

盛り上がって来た。フリルちゃんの迫真の演技によってただの日常会話もまるで面白い漫画やドラマのように引き込まれるエンターテインメントになっている。

 

これが聞けただけでもカラオケに呼んだ価値があるかも。さすが私の最推し。

 

「しかし! ここである問題が浮上するのです。」

 

一気に雰囲気が変わった。順風満帆に思えたアクアのあんなことやこんなことを話す計画だったけど、これはマズいぞっていう感じが言葉だけじゃなくて表情と声色からも伝わってくる。

 

『でもフリルちゃん。アクア君には可愛い彼女さんが居るやん? 彼女さん抜きでそんな面白そうな話聞くのも悪いんやない?』

「稲妻に打たれたような衝撃でした。」

 

嘘つけ。あの時へらへら笑ってたじゃん。

 

「そう、アクアさんにはそれはそれは美しく才能に溢れ、運命の赤い糸で結ばれた素敵な女性が居るのです。ああなんという失態。今ガチの最終回では見ているこちらが悶絶しそうになるほどの情熱的なキスを披露してくれた黒川さん。東京ブレイドの舞台では刀鬼役のアクアさんに抱きすくめられ、ただ優しく頭を撫でられるだけの時間が実に数十秒。刀鞘派の復権に大きく貢献するとともにアクあかファンの脳を強烈に焼いたあの黒川さん。」

 

フリルちゃん楽しそー。顔を真っ赤にして居心地悪そうにしているあかねちゃんを物凄い目力で見つめてる。ドSだね。

 

「こともあろうに私はそんな黒川さんの存在を失念していたのです!」

『それもそうだね。黒川さんに悪いか。』

『だったらあかねちゃんも呼ぶ? 私仲いいから誘ったら来てくれると思うよ。』

 

そうそう、確かこんな感じの流れであかねちゃんを呼んだんだった。フリルちゃんよく覚えてるなぁ。

 

「ああ、神様仏様ルビー様! こうして私はルビー様のお心遣いによりアクアさんの彼女たる黒川さんをのけ者にするという失態を犯すことなく、こうして最初の会合の実現にこぎつけたのです。」

 

いぇい、私は神様。褒めて遣わす。

 

『それなら大丈夫ね。じゃあラインのグループでも作っておく?』

『いいね! それなら私が作っておくよ。……はい、今二人を招待したから。』

『ありがとなぁ。えっと、これ? 『アクアを愛でる会』ってルビーちゃん、ノリノリやん。』

『あったり前だよ! アクアの可愛いところを心置きなく話せる良い機会だもん! 良いよね、アクア?』

『止めても無駄なんだろ? もう好きにしろよ。あ、頼むから個室でやってくれよ。』

「こうして我々『アクアを愛でる会』が発足することになったのでした。」

 

パチパチパチ。

 

私とみなみちゃんの拍手の音がカラオケボックスに響き渡る。フリルちゃんのコメディエンヌの才能が存分に発揮された素晴らしいお芝居だった。あかねちゃんもちょっと真剣な顔になってるのが笑える。

 

ふう、と息ついて一仕事終えたフリルちゃんが席に戻ってくる。はい、ウーロン茶どうぞ。

 

これであかねちゃんも大体の事情は察しただろう。要するにアクアが恥ずかしがるからアクアの居ないところでかつ個室でお話ししてねって事だ。『アクアを愛でる会』って言う名前はノリでつけた。大きく外れてはないから良いよね?

 

さぁ楽しい楽しい女子会の始まりだ。早速アクアの可愛いところを自慢しちゃおう。

 

と思ったらあかねちゃんが割って入ってきた。

 

「まず最初に確認しておきたいんだけど、皆はアクア君の事をどう思ってるわけ?」

「決まってるじゃん。可愛い弟だよ。」

「ルビーちゃんには聞いてない。」

 

目も合わせてくれなかったよ。

 

あかねちゃんの心配は尤もだ。こんなに可愛い女の子二人がアクアと毎日のように仲良くご飯を食べていて、アクアについて語り合うためにわざわざカラオケに集まってるなんて、彼女のあかねちゃんからしたら面白くないだろう。

 

私はお姉ちゃんだしフリルちゃんもみなみちゃんもアクアを男としては見てないんだけどね。どう見ても可愛い弟でしかない。

 

アクアが女の子に惚れられるのは大体私が居ない時だ。中学の頃からそれは変わらないし、先輩もあかねちゃんの時もそうだった。そういう意味ではフリルちゃんとみなちゃんは問題ない。

 

フリルちゃんが顔色一つ変えずに答える。

 

「アクアさんは何というか、推しかな。ルビーとセットでね。この姉弟の絡みは最高すぎる。」

 

良い趣味してるね。B小町chも見てくれてるし、本当に理想的なファンだ。

 

続いてみなみちゃん。

 

「アクア君て可愛いやろ? 何と言うか、カッコつけようとするけど大人になりきれてない感じがええんよ。ルビーちゃんの前ではどうしても甘えちゃうところがもう。」

 

分かる。分かるよみなみちゃん。大人の階段を上りたいけど私が呼んだらすぐ降りてきちゃうんだよね。これでもかなり姉離れは進んだ方だけど。

 

二人の回答を聞き、アクアを褒められた気分の私はどや顔になる。

 

「分かったよ。アクア君の事は狙ってないってことで一応納得した。」

「じゃあやっと始められるね!」

「早くして頂戴。もう待ちきれないわ。」

「じゃあ早速行かせてもらうね。この前添い寝したんだけど、珍しくアクアが無口だったんだよね。」

「初っ端から添い寝とは飛ばすわね。続けて?」

「何でこんなに無口なのかと思って聞いてみても、アクアは答えてくれないの。で、後になってアクアが出演した『深掘れ☆ワンチャン!!』を見てみたらアクアが毒舌クールキャラを演じてて、ビビッと来たわけ。これは新しいキャラづくりの練習だなって。」

 

おおー、ええなーって感じで盛り上がっている。カラオケボックスって声が漏れなくて良いよね。フリルちゃんなんかガッツポーズしながら良く分からないキレイな声で興奮を表現してる。

 

あかねちゃんは表面上は静かだけど、きっと内心はドッキドキだろう。表情に熱気がにじみ出てる。そしてみなみちゃんはひたすら可愛くて癒される。

 

私の話はそろそろクライマックスだ。

 

「でもね、アクアがキャラづくりをしてた理由って言うのは番組の為じゃなかったんだよ。何のためだと思う?」

「ルビーでしょ。」

「ルビーちゃんの気を引きたかったんやろなぁ。」

「ルビーちゃんに頼れる大人ってアピールするためじゃない?」

 

3人とも即答。さすがアクアを愛でる会の会員たちだね。

 

「その通り! あの後また一緒に寝て、その時にアクアに聞いてみたの。最初はクールぶって教えてくれなかったんだけど、ぎゅーってしてあげたらすぐ答えてくれたよ。」

「アクア君………一緒に寝てる時点で作戦失敗してるって気づこうよ……。」

「アクア君らしいなぁ。陥落する瞬間の表情が目に浮かぶみたいやわ。」

「最高ね。」

 

気に入ってもらえたようで何よりだ。3人とも個性豊かに可愛いアクアを想像して見悶えている。この人たちの脳内ではどんなアクアが描き出されているんだろう。取り出して見てみたい気分。

 

「じゃあ次は私が。」

「お、あかねちゃん。」

 

今度は私からマイクを受け取ったあかねちゃんが語り始めた。

 




アクアを愛でる会は前回だけの予定だったんですが、何故か3話目に突入しました。いつ終わるんだろう。
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