今日はスカウトを受けたアイドルグループのライブを見に行く日だ。そして、そのあと契約を結べば・・・晴れて私もアイドル!
お待たせママ。私、やっとアイドルになれるよ。
「ねえ、どう?やっぱ大事な日はオシャレしなきゃだよね!」
第一印象は大事だ。今日の私はアイドルの卵として契約を結びに行くんだから、容姿にも気を使っていることをアピールしないと。明るく、笑顔で、はきはき喋ろう。
「可愛いわよ。」
「まあ、お姉ちゃんは最初から可愛いけどな。」
ミヤコさんの反応も上々。アクアは・・・いつも通りだね。
「ルビー・・・貴方本気なのね?貴方がこれから入ろうとするアイドルの世界は大変なところよ?」
ああ、また始まった。もうこの手の話はアクアからもミヤコさんからも散々聞いてるのに。そんなの分かってるよ。私はそれでもアイドルになりたいって言ってるの。
「売れなくて惨めな思いをするかもしれない。給料面でも厳しい。私生活は常に他人の視線を気にしながら送ることになる。ストーカー被害なんてそこら中にありふれた話。それでも」
「当たり前だよ。」
もう十分だ。良く知ってる。ストーカーだけはちょっと怖いけど。
「私がんばる。だってなれるんだよ!絶対ママみたいになるんだ!」
「・・・本気か?」
「本気だよ。アクア、心配しないで。お姉ちゃんは大丈夫だから。」
アクアとミヤコさんが私の事を心配してくれてるのは嬉しいけど、心配させたいわけじゃない。信用してほしい。
「・・・ならそのグループに入るのはやめなさい。本気なら、ウチの事務所に入りなさい。苺プロは十数年ぶりに新規アイドルグループを立ち上げます。」
え、ウチの事務所?苺プロってことだよね。ママと同じ事務所に入れるってこと?
何度言ってもダメだったのに、なんで今になって急に?いや、すごく嬉しいけど。
「え・・・今何て。」
「ウチの事務所でアイドルやりなさいってことよ。文句ないでしょ?」
「うん。ありがとうミヤコさん!」
「礼ならアクアに言いなさい。私を説得したのはアクアなんだから。」
「アクア、ありがとー!!」
アクアが説得してくれてたんだ!
なるほどねー。やっぱりお姉ちゃんがどこか別の事務所に行っちゃうのが寂しくて耐えられないんだ?可愛い奴。
「この寂しがりやめー!お姉ちゃんがぎゅーってしてあげる!やっぱりアクアはお姉ちゃんがいないとだめだなー。」
「ちょ、やめろよ!そういうんじゃ・・・」
「概ね間違ってないでしょ?」
「ミヤコさんまで!」
ああもう嬉しすぎ!こんなサプライズがあるなんて。苺プロでまたアイドルをやってくれる。しかもそれを説得したのがアクア。何から何までもう、ほんと出来すぎだよ。
・・・
「苺プロ所属!星野ルビーです!!」
苺プロに所属し、晴れて芸能人となった私は、陽東高校の芸能科に入学するための面接を受けている。もちろん、アクアも一緒だ。
「どうだった?」
「多分平気・・・。アクアは?」
「問題ない。万一弾かれるとしたら名前のせいだろうな。」
「あはは!確かに、本名アクアマリンだもんね。本当にいい名前だよね。あくあまりんw」
「人の名前を笑うな!」
面接を終えてアクアとお話ししていると、アクアの持ちネタ、あくあまりんが炸裂する。毎回本当にいいリアクションをしてくれる。ママからもらった名前をバカにしているわけじゃなくて、本当に響きが何とも言えなくてついつい弄っちゃう。アクアもそこは分かっているから、怒ったりはしない。
特に深い意味もない、私達姉弟の鉄板ネタだ。
しかし今日は私とアクア以外にもこの鉄板ネタに反応する人がいた。
「・・・アクアマリン。アクア。」
「え、アクアあの人知り合い?」
「知らんけど。人の名前を笑うやつは許さん。」
声の主はアクアも知らないようだ。制服を着ているから、陽東高校の生徒だろう。小柄な体に赤みがかったつやつやの髪。顔は童顔で動き方も小動物みたいにカワイイ。えっとこういうのなんて言うんだっけ・・・。あ、そうだ、ロリっていうんだ。
ロリ(仮)はずけずけと私の可愛いアクアに歩み寄り、いきなり弟の名前を連呼し始めた。
「星野アクア!!」
「アクア!アクア!」
「貴方、星野アクア!?」
いやほんと何なのこの人。あ、思い出した。
「誰だっけ・・・」
「あれじゃない?重曹を舐める天才子役。」
「10秒で泣ける天才子役!映画で共演した有馬かな!」
「あー久しぶり。ここの芸能科だったのか。」
そうそう。重曹だ。アクアも思い出したみたい。でも心なしかアクアの様子が変だ。柄にもなく緊張してるみたい。
そんなアクアの様子などお構いなしにロリ先輩は話続けてる。
「良かった・・・。ずっとやめちゃったのかと・・・。やっと会えた・・・。」
この雰囲気は一体何なの。めっちゃ重い感情感じるんですけど。私のアクアにただならぬ感情を向けてるんですけど。ちゃっかり肩に手を触れて。
一度共演しただけだよね?
「入るの!?ウチの芸能科!?入るの!?」
「まあな。」
「へー。ここで再会したのも何かの縁ね!先輩である私を存分に頼りなさい!星野アクア。」
「ああ。ありがとうな。」
ちょっと待って。なんで私を置いて二人仲良くなろうとしてるの?アクア、もしかしてロリ先輩のことちょっと良いなとか思ってる?アクアもついにそういうお年頃なの?
今まではママ以外でこんな可愛い子身近に居なかったから、ちょっと警戒しないと。表情をコロコロ変えるロリ先輩は悔しいけど確かにかわいい。さすが芸能人だ。
「私のアクアにそんな馴れ馴れしくしないで。あなたは関係ないでしょ。」
「相変わらずのブラコンねぇ。」
「でもお姉ちゃん、受かったら後輩になるんだぞ。」
「はー・・・。仕方ないなぁ。仲良くしましょロリ先輩。」
「イビるぞマジで!」
私にはキツく当たってくる。やっぱりアクアだけ特別視してるなロリ先輩。マークしておかないと。
アクアにふさわしい女か、お姉ちゃんとして見極める必要がある。
重曹を舐める天才子役こと有馬かなの登場です。私の推しです。
今まではアクアとルビーで交互に書いてきましたが、今後は重曹目線やあかね目線の話も書く予定。誰を語り手にするか迷いますね。