【完結】ルビーがお姉ちゃん   作:座右の銘

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B小町の3分間クッキング

「はい、という訳で今回の企画は、お菓子作りでーす! 皆準備は良いかな?」

「はーい!」

「もちろん。バッチリよ」

 

今日はB小町chの企画でお菓子作りだ。

 

動画撮影が出来る綺麗なキッチンのスタジオをお借りしているんだけど、明らかにいつもより予算をかけているように見える。先輩もMEMちょもスタジオの設備の良さに驚いている様子だ。もちろん私も。

 

いやぁ、BIGになったものだ。これだけやっても確実に黒字になる自信があるから出来る事なんだよね。100万人パワー、恐るべし。

 

「よーし、じゃあお姉ちゃんから企画の説明だぁ! 名付けて……つーちゃんを一番笑顔に出来るお菓子を作れるのは誰だ!? 選手権ーー!!」

「やぁみんな。ツクヨミだよ。今日は皆が作ったお菓子を審査させてもらう。私の為にも是非美味しいお菓子を作ってくれたまえ」

絶対負けない

「ちょっとルビー、目がマジよ。ほら笑顔笑顔」

「もう、先輩ったら妬いてるの? 大丈夫だよちゃんと先輩にも美味しいお菓子作ってあげるから♪」

「そういう意味じゃない。てか私も作るし何ならアンタよりおいしいお菓子作ってやるんだから! 今日ばかりはツクヨミちゃんの笑顔は私の物よ!」

絶対負けない

「さぁて、良い感じに盛り上がってまいりましたぁ! それじゃあ位置について下さーい。今からレシピを渡すので、ここにある材料と道具を使ってお菓子を完成させましょう。調べるの禁止! 誰かに聞くのも禁止! 自分の力だけで完成させるんだぁ! ではスタート!」

 

つーちゃんのお姉ちゃんは私だぁ! 負けるもんか!

 

MEMちょからレシピを受け取り、中身を確認。なになに……どうやら私が作るのはクッキーみたいだね。写真には赤いジャムを乗せた星形のクッキーが映ってる。星野ルビーの名前からイメージしたのかな?

 

よし、作るぞぉ。

 

まずはバターを混ぜる? こんな感じかな?

 

とりあえずバターをぐちゃぐちゃに混ぜてみる。何の道具を使って混ぜるのが正しいのかは知らないから、とりあえずその辺にあったヘラみたいなやつを使った。

 

卵も溶いておいて、バターと混ぜる。するとなんだかもったりした感じになって来た。でこの後は薄力粉をいれるって書いてあるけど……薄力粉? 粉……だよね多分。でも粉の入った容器が沢山あるんですけど。

 

ああこれか。ちゃんと薄力粉って書いてあった。それも加えてさらに混ぜ混ぜすると……生地の完成だ。いいね、お菓子作りっぽい感じがしてきたよ。

 

ちらっと隣を見てみれば先輩もMEMちょも良い感じに進んでいるみたいだ。

 

「順調順調♪ どう先輩? 上手く進んでる?」

「当たり前でしょ? レシピが手元にあるんだからその通りにやれば良いのよ」

「MEMちょはどう? 美味しいの作れそう?」

「うーん、いけるんじゃない? レシピもあるんだし、そうそう変なものは出来ないと思うよぉ」

 

そう言いながらMEMちょは軽量スプーンに山盛りに盛った砂糖をバサッっとボウルに放り込んだ。

 

あ、これはヤバい奴だ。さてはすりきりって言葉を知らないな? この分だと他の材料の計量もぐちゃぐちゃになってると見ていいね。きっと酷い味になってるはずだ。

 

これはつーちゃんに審査してもらう前にMEMちょに味見させよう。リアクションが楽しみだ。

 

「……ルビー、MEMちょって」

「うん、お菓子作らせちゃいけない人だね」

 

妹二人は長女の新たな一面を知るのだった。

 

さて、お菓子作りに戻らないと。えっと何々……? 手でひとまとめに丸めてラップをかけて1時間冷蔵庫で寝かせるのか。ふーん、結構暇になりそうだね。

 

レシピの通りにして冷蔵庫にセット完了。時間が出来てしまった。つーちゃんの所に行こ。

 

「つーちゃん、お待たせ♥」

「お待たせ♥、じゃないよ全く。まだお菓子作りの途中だろう?」

「良いの良いの。今から1時間は生地を寝かせる時間だから。あっちで遊ぼ♪」

「ならお言葉に甘えるとしようかな」

 

つーちゃんゲット。

 

しかし一人だけ抜け駆けした私に対し先輩とMEMちょからクレームが飛んできた。良いじゃん別に。たまたま時間が空いただけなんだから。

 

嫉妬は醜いぞ♪

 

「ルビーちゃんずるくない!? お姉ちゃんもそっち行きたいんだけどぉ!」

「お菓子作りに集中しなよ。ほらつーちゃんも何か言ってあげて」

「MEMちょお姉ちゃんのお菓子、楽しみだなー。手を抜かずにちゃんと美味しいお菓子を持ってきてね」

「よっしゃMEMちょお姉ちゃんがんばる!」

 

本当に分かりやすいね。

 

ただ、MEMちょが何を作ってるのかは知らないけど、さっきの砂糖のせいで味がおかしなことになっているのは確定している。つーちゃんの声援でやる気をだしてるMEMちょだけどもう負けは決まってるんだよね。というかつーちゃんに食べてもらえるかも怪しい。

 

空しいなぁ。あんなに頑張ってるのに。

 

「ツクヨミちゃん、私ももう少ししたら暇になるからそっちにお邪魔するわよ。後で一緒に遊びましょう?」

「ああ、待ってるよ」

 

どうやら先輩も待ち時間が発生するレシピだったっぽい。しかもこっちに来るつもりだ。

 

ヤバい。両手に花。最近モテすぎて辛い。

 

しっかし今日のつーちゃんは神様モードを崩さないなぁ。どうしたんだろう? もしかしてまた任務を与えられたのかな?

 

「つーちゃん今日は神様なんだね。また任務?」

「いや、別にそういう事はないよ」

「本当に?」

「本当さ。まぁ、個人的な悩み事はあるんだけどね。でもそれは訳あって君たちには説明できないんだ。だから……」

「だから?」

「甘えさせてほしいな。気持ちが楽になると思うから」

 

ぎゅーっ なでなで

 

「楽になった?」

「なった」

 

言われなくたってそうするつもりだったけど、お願いされたら全力でやらざるを得ないよね。表情も柔らかくなったみたいだし、これでOK。

 

…とはならないみたい。なにやらつーちゃんは悩み事がある様子。しかも神様としての。

 

以前はママを殺した男の復讐に私やアクアを利用するみたいな任務もあったみたいだけど、なんだかんだつーちゃんは任務の詳細は教えてくれなかった。誰が何のためにそんなことをするのか。なんで私が選ばれたのかは分からずじまい。

 

分かったのはつーちゃんが可愛そうな役回りだってことと、任務が失敗したっぽいって事だけだ。

 

で、また何か神様に言われてつーちゃんが悩んでる。今回もやっぱり裏の事情とかは教えてくれない感じなのかな? 神様っていう部分はどうやらガチっぽいし、さすがにただの人間*1には教えちゃいけないことかもあるんだろうな。

 

まぁいいや。つーちゃんは強い子だ。あんまり根掘り葉掘り聞いても困っちゃうだけだろうし、お姉ちゃんは傍に居てあげるだけで良いよね。

 

キッチンでは先輩が何かをオーブンに入れて一息ついている。なるほど焼く時間が暇になるって事ね。

 

「ツクヨミちゃん、来たわよ」

「……」

「残念だったね先輩。つーちゃんはもう私のお姉ちゃん力にメロメロなんだ。今良い感じになってるからちょっと静かにしてて」

「アンタのレシピずるいのよぉ! 材料混ぜたらすぐ冷蔵庫に入れて生地を寝かせるとか、絶対こうするために仕組んでるでしょ!」

「そうだよぉ」

「MEMちょはお菓子作りに集中しなさい! 良いじゃないたまには私がツクヨミちゃんを抱っこしても。ほらルビー、ツクヨミちゃんをこっちにむぐっ

 

つーちゃんをお膝から下ろし、先輩をぎゅっ。

 

MEMちょの演出なら仕方がないね。ギャーギャー騒ぐ先輩を優しく受け止めるルビーお姉ちゃんの活躍、しっかりカメラに収めると良いよ。

 

じたばた暴れる先輩の背中を優しくさすってあげるとすぐに落ち着いてくれた。

 

「先輩落ち着いた?」

「結局こうなるのね」

「かなお姉ちゃん、私で良ければぎゅーってするかい?」

「待ってそういうのじゃないの。やめてそんな憐れんだ目でこっちを見ないで」

「そっちは楽しそうだねぇ!」

「MEMちょも早くこっち来なよー!」

「よっしゃ爆速で仕上げ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

 

キッチンではもうもうと粉が舞ってた。

 

「MEMちょどうしたの!?」

「粉こぼしたー!!」

「頑張れー!」

「頑張るー!」

 

あれだけ盛大にキッチンを汚してくれれば撮れ高はばっちりだろう。エンディングの後にはお掃除パートも追加だね。頑張れMEMちょ。

 

とりあえず軽くキッチンを掃除してクッキング再開。先輩が焼きあがったお菓子を確認し、一足先につーちゃんの所にやって来た。持ってきたのはスコーンだ。

 

「ツクヨミちゃん、はいどーぞ」

「ありがとう、かなお姉ちゃん。それじゃあ頂くとするよ。ん……美味しい!」

「ふん! これ位私にかかれば当然ね!」

「おおーさすが先輩」

 

先輩は器用で几帳面だし頭も良いから、お菓子作りもお手の物だった。

 

この中では一番お菓子作りの才能があるかもね。でも振舞うんじゃなくて食べさせてもらう方が本人のイメージに合ってるのが惜しいところ。お菓子を作るのはお姉ちゃんと相場が決まってるんだよ!

 

つーちゃんがスコーンを食べてる間に私のクッキーの生地を焼く時間になった。

 

丸い木の棒で軽く引き伸ばして星形の型で型抜きして、オーブンに入れる。後は温度と時間さえ間違えなければ美味しいクッキーの出来上がりだ。ああ、ジャムもあったね。

 

加熱開始。再び暇になった私はつーちゃんの所に戻る。

 

「つーちゃん」

「はいよ」

「よっこらしょ」

 

つーちゃんが立つ。私が座る。つーちゃんが私の膝の上に座る。流れるような動作で完璧なコンビネーションを見せつけちゃおう。

 

ぐぬぬってなる先輩も含めて完璧。良い画が撮れてる。

 

「私のクッキーもあと15分くらいで焼けるよ。楽しみに待っててね」

「はーい」

 

1時間後、すべてのお菓子が出揃った。改めてつーちゃんに3つのお菓子を食べ比べてもらい、順位を付けてもらうのだ。

 

つーちゃんの前には3種類のお菓子。先輩のスコーン、私のクッキー、そしてMEMちょの……あれは何? 粉と、多分牛乳とか卵とかを混ぜて、容器に入れて焼いた感じのやつ。一応MEMちょのレシピも見てるから知ってるんだけど……出来上がったものが違くない?

 

あれをつーちゃんに食べさせるのはちょっと怖いかも。

 

「ねぇMEMちょ。味見はした?」

「するわけないよぉ。つーちゃんが最初に食べなきゃ意味ないでしょ?」

「今すぐ味見して」

「いやぁ、私が先に食べちゃったら…」

「良いから早く」

「ハイ」

 

渋々MEMちょは自分で作ったお菓子を口に入れ……

 

「うおぉぉ……」

「言わんこっちゃない」

 

3位はMEMちょに決定。不戦敗だった。つーちゃんに被害が及ばなくて良かったね。

 

さて、こうなれば私と先輩の一騎打ち。果たしてどっちのお菓子が美味しいのか!?

 

「それじゃあつーちゃん、どうぞ食べてください!」

「いただきます」

 

あーん。ぱく。もぐもぐ。ごっくん。

 

あーん。さく。もしゃもしゃ。ごっくん。

 

私はクッキーを、先輩はスコーンをあーん。つーちゃんがお菓子を食べるのを私と先輩が固唾を呑んで見守る。

 

ただのおやつシーンだけどめっちゃ可愛い。最近は私もユーチューバーとして撮れ高とか意識するようになってきたんだけど、このおやつシーンはバズりそうな予感がする。

 

それぞれのお菓子をちょっとずつ食べ、いよいよ判定の時間。

 

「それではツクヨミちゃん、判定をどうぞぉ!!」

「うーん、これは甲乙つけがたい出来だね。ルビーお姉ちゃんのクッキーは名前通りの星形でイチゴジャムの紅い煌めきが美しい、芸術的な一品だった。かなお姉ちゃんのスコーンは素朴な味だけどとにかく味が良い。寸分たがわぬ計量、温度と時間の調整。レシピを忠実に守った結果だろう。どちらも本当に美味しくて判断に迷うところだ。」

「そこを何とか決めて欲しいんだよねぇ! MEMちょお姉ちゃんからのお願い!」

「うーん仕方がない。本当に難しいところだけど、今回は……ルビーお姉ちゃんのクッキーの勝ちとしよう」

「勝ったーー!!!」

 

という訳で第一回B小町お菓子作り選手権は私の優勝で幕を閉じたのでした。

 

MEMちょは撮影が終わった後でめっちゃ掃除させられてた。

 

*1
※転生者

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