どうもMEMちょです。
新しくなった我が家の一室で、B小町chの撮影をしてみた。やっぱり一部屋丸ごと撮影用にできると良いね。映しちゃいけないものが全く無いからカメラワークも自由自在。良い動画が作れそうだ。
事務所へのアクセスもちょっとエレベーターに乗って降りるだけ。立地も最高。広いお家にいずれはシュン君にも来てもらって……。
色々と夢の広がるお引越しになっっちゃったねぇ。
というのが本日のメインイベント……ではなく。
撮影が終わった後のいつもの雑談タイム。何の気なしに社長に夏の予定を聞いたらとんでもないことが明らかになり、綺麗な新居に浮かれる気持ちは吹き飛んでしまった。
という訳で本日のメインイベントはこちら。
「今年の夏休みシーズンは全国ツアーをやります。会場はコレ。で、そのライブのチケットの売れ行き次第ではその翌年に東京ドームでのライブを開催するわ」
「社長。正気ですか」
「ええ。来年の年末にドーム公演が目標よ。そのためには今からこれくらいは出来なきゃ困るわ。メムさんだって嬉しいでしょう?」
「んぐおぉぉ……」
「やったねMEMちょ! 夢が叶うよ!」
「これはプレッシャーね……」
変な声が出ちゃったけど仕方がないよね。
なんと全国ツアーをやるんだって。しかもその会場はどれも今まで経験したことのないような大きな所ばかり。そしてその翌年の年末にはドーム公演をやるかも知れないって?
ルビーちゃんは知ってたみたいだけど、かなちゃんと私はこれが初耳。いやぁ、本当にたまげたよ。
JIFの時も驚いたけどさ、それ以上の驚きが待ってるとは思わないじゃん。あれがMAXだと思うじゃん。
軽々と越えてきたよね。
「しゃちょおおぉ……!!! 一生尽くしますぅ……!」
「あらら、やっぱり泣いちゃったね」
「無理も無いわよ。私だってどうすれば良いか分からなくなっちゃったもの」
もうね、ボロ泣きですよ。泣くしかないじゃん、こんなの。
JIF出演が決まった時とは比べ物にならないくらい泣いたよ。あの時はカメラも回ってたし、心の隅っこにはまだ冷静な自分が残ってた。でも今はカメラも回ってないし、自宅だし、B小町メンバーと社長しかいないし……。
気の済むまで泣いたさ。ルビーちゃんやかなちゃんが不思議がるほどに。
「MEMちょ……そこまで泣く?」
「よしよしMEMちょ」
「ううっ、ひっぐ、うあぁぁん。だっでぇ、だっでぇ……」
だって私25でアイドル始めたんだよ? まっさらな新規グループ立ち上げてさぁ。そんで地道に活動続けて卒業するころにはちょっとした規模のライブ開いて、いい思い出作って卒業出来れば万々歳って思ってたんだよ?
え、何? 全国ツアー? 東京ドーム? 意味わかんない。
どうしようお母さんに電話しなきゃ。えっとMEMちゃんねるでも大々的に宣伝して、知り合いのインフルエンサーに声かけて、かなちゃんよしよしして、えっとえっと……どうしよう!
「くぁwせdrftgyふじこlp」
「MEMちょが壊れた! 先輩! ぎゅってするよ!」
「無理も無いわ……。ほら、元気だしなさい」
頭クーリングなう……
妹二人にサンドイッチされてなでなでぎゅーってしてもらい、やっとのことで錯乱状態を脱出することに成功。ありがとう妹達。
「とにかく! 今年の夏は全国を飛び回って忙しくなるわよ。覚悟しておいて頂戴ね」
「了解です……!」
「はーい!」
「分かったわ」
社長からの重大報告は以上。興奮冷めやらぬままの解散となった。
撮影で集まっていた皆はぞろぞろと帰っていく。まぁ社長とルビーちゃんは同じフロアの部屋だから徒歩0分で会いに行けるんだけどね。とにかく今日のお仕事はお終いだ。
自室のソファーで一人、冷静になった頭で考えを巡らせる。
やっぱりちょっと混乱気味。
確かに全国ツアーを組めるだけの知名度はあるし、観客の動員も見込める。壱護さんやミヤコさんを始めとした、旧B小町のライブの運営を支えてきたスタッフが残っているから大きな会場でも問題は起きないだろう。
今のB小町にはそれだけの力がある。そこを疑う人は居ない。
でもその一員に自分が居ることが未だに信じられずにいる。27歳のアイドルなんて、本当に数えるほどしか居ないのに。
スマートフォンを取り出し、画面を見つめる。
そこに映し出されたのは、初ライブ、JIFの時に撮った可愛い妹達のとスリーショット。初めて本物の衣装を着て、舞台に立って、20分間の夢の時間を過ごした直後に撮った思い出の一枚。
この写真は私の一生の宝物だ。
これだけでも私はもう自分の人生に悔いがないって思えるくらいに幸せだった。その先なんて、考えもしなかったのに。
「もっと凄い思い出が出来ちゃうのかなぁ。お姉ちゃん、ますます燃えてきちゃうよぉ」
本気出さなきゃ。そう思った。
MEMちゃんねるは閉鎖だ。そして空いた時間はアスリートのごとく体を鍛えてアンチエイジング。全力で年齢を誤魔化し続ける。全てをB小町に捧げる覚悟で生きて行くんだ。
アイドルとして拾ってくれた恩は、一生かけて返す。そう、決めたから。
やったらあ、なんだって。
可愛い妹達の為ならエンヤコラ。
・・・
「では社長、よろしくお願いします」
「ええ、初めましょう」
「よろしくね」
真新しい事務所の一室でアンチエイジングに関する講義が始まった。ホワイトボードの前に立つのはスーツ姿のミヤコさんにジャージ姿のぴえヨン。
一方、机に座る受講者は私一人。
何と豪勢な講義だろう。
「さて、苺プロの為にもメムさんには出来るだけ長くアイドルをやってもらいたいと思ってる訳だけど、そのためには若さを保つための努力がこれまで以上に必要になってくるわ。覚悟は良いわね?」
「勿論です。私としても一秒でも長くアイドルやっていたいので」
「良い覚悟だ。しごきがいがあるね」
社長がアンチエイジングのプロなのは言わずもがな。○○歳になった今でも美女と呼ぶにふさわしい美貌を維持している。芸能界を探したってここまで綺麗な○○歳は中々居ないだろう。
そしてぴえヨンだ。覆面筋トレ系ユーチューバーとして長くトップを走り続けるマッチョ。
筋トレ系ユーチューバーが皆若々しい見た目をしているのはなんとなく気づいてた。体を鍛えている人は皆肌がきれいで姿勢も整ってる。その中でも筋トレ系は群を抜いてその傾向が強いように思う*1。
ぴえヨンの年齢を聞いたときはさすがに耳を疑ったよ。
「まず単刀直入に言うのだけれど、メムさんは何も考えずに私とぴえヨンに付いて来なさい。健康の為に色々悩むのもあまりよくないから。私は趣味でやってるから良いけど、アンチエイジングを目的にして欲しくはないの」
「はぁ。そうですか」
栄養とか運動とか、そういう説明が続くのかと思ったら全くそんなことは無かった。
社長がホワイトボードに書き込み始めたのは、私の生活スケジュール。何時に起きてご飯を食べて、何曜日にトレーニングをするとか、そういう感じ。
何故そのスケジュールになるのかについての説明は無かった。黙ってついてこいって事だね。
「まず食事だけど、うちで食べなさい。私と同じ食生活をしてもらうわ。そろそろ限界が近いのは私も同じだし」
「何か言いました?」
「何でも無いわ。……で、トレーニングについてはぴえヨンのパーソナルトレーニングに通いなさい。ゴリマッチョにならない範囲で良い感じにしてくれるはずよ。当然普段のダンスレッスンの事も考慮に入れた上でスケジュールは組むから、そこは心配しなくて良いわ」
「分かりました」
「ぴえヨンから何か言う事はあるかしら?」
「うーん、特にないかな。JIFの時にやった特訓から少し強度を落として、アイドル業務に支障が出ない範囲で体づくりをやっていく感じですよね。仕事とボディメイクを両立したいって言うクライアントは沢山いるから、そこは任せてください」
ぴえヨンの不敵な笑みは気にしてはいけない。多分とんでもないことを考えてるんだろうけど、そこは考えちゃいけないのだ。
そんな感じで、私だけ特別メニューでボディメイクに精を出す生活を送ることに。
・・・
翌日。私の新しい生活が始まった。
まずは朝食。引っ越し先の社長宅にお邪魔して斎藤家の朝ご飯を頂く。
「「「「「「いただきまーす」」」」」」
前よりちょっと大きくなったテーブルを5人で囲む。
私の隣には社長夫妻。そして向かい側にはアクたん、ルビーちゃん。二人の肩越しには大きな窓ガラスがあって、そこから東京の景色が一望できる。
まぁ私の部屋と全く同じなんだけども。
机に並ぶ料理はミヤコさん特製のアンチエイジング食。栄養バランスはばっちりだ。私はミヤコさんよりもちょっと多め。普段の運動量が全く違うからこれは当然だね。
それでもルビーちゃんとアクたんより少ないのは年齢を感じて嫌になる。
「今日からMEMちょもうちの子になるの?」
「お姉ちゃん、言い方」
「ご飯の時だけだけどねぇ。まぁご近所さんではあるんだし、今まで以上に付き合いは増えると思うよぉ」
ルビーちゃんの天然発言にも慣れたものだ。私は顔色一つ変えずに言葉を返す。
しかしうちの子かぁ。共同生活を送るアイドルは珍しくも無いし、B小町が3人で同じ部屋に住むって言うのはありな気がするんだよねぇ。このマンションなら事務所も近いし。
いつか相談してみようかな。
「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」
朝食を終えればルビーちゃんとアクたんは学校へ。そして私はぴえヨンの下へ向かう。
「ヤァ」
「おはようございます。よろしくお願いします」
やって来たのはぴえヨンのスタジオに併設されたジム。
鉄とゴムの匂いが漂う無骨な空間だ。床はゴムマットで覆われていて、部屋中に筋トレ器具が置いてある。
中央にどかんと置かれているのは鉄パイプを四角く組んだ箱みたいな装置。鉄の棒が取り付けられていて、上下にスライドするようになっている。
動画で見たことがある。あれは確か人を重りで押しつぶす拷問器具だ。
あっちにあるのはダンベルかな? うんダンベル。でもおかしいなぁ。私の見間違いじゃなければ、あそこにあるダンベルの重さは60kgらしい。私より重いじゃん。
一体誰が使うんだろうねぇ?
ダンベルから視線を外してちらっとぴえヨンを見ると、サムズアップが帰って来た。
「じゃあ始めるよ。準備はいいかい?」
「オッケーです」
という訳でトレーニング開始。まずは軽くトレッドミルで歩いてウォーミングアップしながらメニューの説明。この時点でちょっと「ん?」ってなってたけど、まぁまだ心に余裕はあった。歩いてるだけだからね。
問題はこの次。
何をやったか細かく説明しても良いんだけど、多分つまらない作文になるから省略するね。その代わりにパーソナルトレーニングを受けた感想を一言で表現してみるよ。
死ぬかと思った
「じゃあ次は明後日だね。これからよろしく」
「よ、よろしくお願いしますぅ……」
若さを維持するのもラクじゃないんだねぇ。