【完結】ルビーがお姉ちゃん   作:座右の銘

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ミヤえもーん!早く私をアイドルにしてよー!

「緊張してきたー。」

「お姉ちゃんでも緊張するんだな。」

「緊張する必要なんかないわよ。ここは養成所でも撮影所でもなくて普通の学校なんだから。普通にしてればいいのよ。」

 

私、星野ルビーと弟の星野アクアは今日から陽東高校芸能科の1年生だ。

 

教室まで案内してくれるのは、私のアクアとドラマで共演したロリ先輩。この前アクアと二人でパーティーに参加したらしい。私の可愛い弟と最近妙に距離が近くなっている要注意人物だ。

 

私たちの教室は1-F。教室には座席表が張られており、すでに席順が決められているようだった。ちなみにアクアの席は私のすぐ前だ。アクアがなぜか凄い残念そうな顔をしてるけど、気にしない。

 

「ほらアクア、こっちだよ。ちゃんと座席確認して席間違えないようにね。」

「大丈夫だって。高校生にもなって世話焼くなよ。」

 

それにしても凄い世界に来てしまった。

 

右見たら美人!左見たらイケメン!

芸能科って言っても意外と大したことないかもとか思ってたけどそんな事無い。明らかに地元の中学校とは別物!

 

とはいえ・・・?ママの遺伝子を受け継いでる私達も顔では負けてないわけで・・・。

呑まれてなるものか!

 

アクアと共に指定の座席に座る。私の席は窓際の一番後ろ。最高のポジションだ。目の前には可愛い弟。この位置関係なら何かあってもすぐに対応できる。

 

右手には桃色の髪の女の子。芸能科にいるだけあって可愛い。が、それよりも目を引くのは、その張りのある大きな胸。

 

「お姉ちゃん、人の胸をじろじろ見るのは失礼じゃないか?」

「へ?あ、いやぁ、別に見惚れてたとかそういうわけじゃなくてね?」

 

早くも芸能人のオーラに呑まれる私をアクアが助けてくれた。ていうかアクア、ちょっと顔赤いよ?

 

「あ・・・すんませんジロジロみてもうて・・・。めちゃ美形な兄弟さんやなおもて・・・。やっぱり芸能科ってすごいわぁ。」

「いやいや貴方も凄いです・・・。」

 

主に胸が。

 

ふわふわのピンクの髪にぱっちりとした大きな垂れ目。雪のように白い肌と丸みを帯びたしなやかな身体。喋り方もおっとりしてて、すごい女性的というか、色気を感じる。

 

これヤバいな。この色気で迫られたらアクアなんて簡単に落とされてしまう。

 

「モデルさん?」

「あ・・・せやねん、一応。うち寿(ことぶき)みなみいいます。よろしゅー。」

「俺は星野アクア。こっちは双子の姉のルビーだ。よろしくな。寿さん。」

「ちょ、アクア。何勝手に挨拶してるの。いくらみなみちゃんが可愛いからってホイホイ付いていっちゃだめだからね?」

「は?別にいいじゃねぇか。高校生にもなってお姉ちゃんに友達を作ってもらうとか恥ずかしいんだよ。」

 

アクアの言い分も分からなくはないけど、初手からこんなグラマーなモデルに声を掛けるのもどうかと思う。隣に暇そうな男がいるじゃん。なんでわざわざ後ろ向いてこっちの会話に混ざってくるかなぁ?

 

ロリ先輩ともなんか距離が近いし、いきなりモデルさんに声かけるし、ついにアクアもそういうお年頃というわけだ。ロリ系もボンキュッボンもいけるとは、ストライクゾーンも広い。そういえば次の仕事が決まったと報告してきたけど、その仕事はなんと恋愛リアリティショーだった。

 

悪い女に引っかからないよう、私が目を光らせておかないと。

 

「まぁまぁルビーちゃん。さすがに弟さんが可哀そうやない?アクア君、うちは気にせんから、仲良くしようなぁ。」

「寿さん・・・。ありがとう。」

「ストップ!一旦ストップ!なんで早くも良い雰囲気になってるの!?」

「うるさいなぁ。お姉ちゃんは静かにしてくれよ!」

 

やばい、やばい、やばい。

 

私が厳しくした一瞬の隙を狙ってアクアに救いの手を差し伸べて信頼を勝ち取る高等テク・・・!

この子、出来る。

 

「・・・あの、お二人さん?そろそろ周りからの視線もきついし・・・一旦落ち着かへん?」

「ああ、ごめん寿さん。お姉ちゃんがうるさくて。」

 

入学早々、私は芸能科の名物、ブラコンお姉ちゃんとしてその名が知れ渡るのだった。

 

・・・

 

昼休み。私達姉弟とみなみちゃんは、教室中から向けられる好奇の目を避けるように学校の中庭へ避難していた。

 

「ああもう、お姉ちゃんが相変わらずなせいで、高校でも悪目立ちしてるよ。」

「まぁまぁアクアさん。ルビーちゃんほどは目立ってへんから安心して?それに、もっと目立つ人おったやん。」

 

私たち姉弟よりも目立つ人。その人は初回の授業が始まる頃に遅れて現れた。

 

『すみません、今日番宣で朝の生放送あって・・・。入学式くらいは出たかったんですけど・・・。』

 

月9のドラマで大ヒット。歌って踊れて演技もできるマルチタレント。美少女という言葉を聞いたら殆どの人がまず思い浮かべる不知火フリル。

 

「今最推しだよ!!」

「興味ない、俺の最推しは今も昔もアイだけだし。」

「そりゃ私もそうだけど・・・。それはそれ、これはこれ!あっ・・・!ほら!あそこに実物!はぁー遠目でもかわいー。」

「まじでただのファンじゃん。俺たちクラスメイトだろ?」

「だってぇ。」

 

偶然通りかかる不知火フリルを遠目に発見。やっぱり可愛い。

 

推しの可愛さに悶えていると、アクアが突然不知火フリルの方向へと歩き出す。

まさか、声を掛けるつもりだろうか。

 

「こんにちは。不知火さん。同じクラスの星野アクアだ。姉がアンタのファンでな。仲良くしてやってくれ。」

「ちょっ!」

 

本当に話しかけた。こんな積極的なアクアは見たことがない。手当たり次第に可愛い女子に話しかけまくってる。いかに思春期とはいえ、これはどうなんだろう。欲望が制御できてないんじゃないか。

 

しかも何を言うかと思えば、私と仲良くしてくれって。もしかして意趣返しのつもり?

 

一方、突然話しかけられた不知火フリルは動じることなくアクアを見つめ返す。やっぱり大物ってすごいな。どっしり構えているというか、心に余裕があるというか。

 

「貴方知ってる。『今日あま』に出てた人?」

「・・・よく知ってるな。そんな話題にもならなかったのに・・・。」

「ちょっと界隈(かいわい)で話に上がってて、見た。良かった。」

「・・・ありがとう。」

「ねぇ、あのシーンの演出は貴方が考えたの?最後のシーンだけまるで別物だった。」

「考えたというか・・・勝手にアドリブを入れさせてもらったんだ。ひどい現場だったからな。まぁ、有馬の実力を考えればあれくらいの画は撮れるはずなんだよ。俺は場を整えただけだ。」

「ストップ!一旦ストップ!みなみちゃんだけでは飽き足らず、不知火フリルとも仲良くなろうとして!」

 

ああもう、なんで不知火さんもアクアの話に食いつくかなぁ。このペースでアクアが女の子に声かけまくったらどうなっちゃうの?芸能界って恐ろしい。大変な世界にアクアを入れてしまった。

 

「ああ、あなたがお姉ちゃんね。噂通りのブラコン。」

「うぐぅ!」

「良いぞ不知火さん。もっと言ってくれ。」

 

私の味方はどこにもいない。

 

「アクアさん。貴方、もしかして五反田監督のお弟子さん?」

「そうだけど・・・。なんでそのことを?」

「マネージャーが言ってた。今年から凄い新人の役者が出てくるって。あの五反田監督が子供の頃から手塩にかけて育ててきた秘蔵っ子。貴方だったんだ。」

「そうか。なんだか知らないところで有名になってるみたいだな・・・。」

「共演する日も近いかもね。よろしく。」

「ああ。その時はよろしくな。」

「あっ・・・そちらの方はミドジャンの表紙で見たことあります。みなみさんでしたっけ。」

「はい!」

 

すご・・・。二人とも不知火フリルに認知されてる・・・。

 

ていうかアクアって業界では結構話題になってるの?すごいなぁ・・・。アクアが役者の世界で有名になってくれるのは嬉しいけど、お姉ちゃんとしては寂しい気持ちもある。

 

「貴女は、」

「えと・・・」

「ごめんなさい。何をしてる方ですか?」

 

次は私の番か。あれ?ちょっと待って。私って一応芸能人だけど、何か仕事したっけ?

・・・うん。ない。何もしてない。

 

「その・・・今のところ特に・・・」

「そう。えと・・・頑張って?」

 

家に帰った私はミヤコさんに泣きついた。

 

「ミヤえもーーん!早く私をアイドルにしてよー!!」

「せかさないで・・・。アイドルグループ作ります、はいオーディションってわけにもいかないの。ちゃんとしたグループ作るにはちゃんとしたスカウト雇ったり手続きがいるのよ。」

「でもこのままじゃ・・・!このままじゃいじめられる!」

 

あの芸能人ばかりの教室で一人だけ何もしてない一般人が居たらどうなるか・・・!

想像しただけで恐ろしい。

 

「そうそう可愛い子なんて見つからないのよ。意欲のある子は大手のオーディションに粗方持っていかれちゃうし。」

「芸能科に寿みなみちゃんっていう胸バカでかくて可愛い子がいるんだけど・・・。」

「よその事務所の子でしょ駄目。フリーの子ならまだしも・・・事務所間の揉め事は御免よ。」

 

ああもう!誰かいないの!?早くアイドルにならないと虐められる!!

 

「フリーなら・・・居るじゃん。フリーランスで名前が売れてるわりに仕事が無くて・・・顔が可愛い子。」

 

・・・

 

良く手入れされた艶々の髪。あどけなさの抜けない童顔。天然おバカっぽいキャラクター。確かにそう。

 

「長年アイドルを追ってきた私の経験上、ああいう子はコッテリしたオタの人気を滅茶苦茶稼ぐ!」

「視点も分析もなんか嫌だなあ。」

 

私たちの視線の先には、この学校の先輩でありスカウト対象の有馬かなが居た。確かに彼女ならフリーランスだし、顔も可愛いし、アイドルグループのメンバーとして申し分ない。

 

「人気でそうなら良いじゃん。誘うだけ誘ってみたら?」

「いやまあそうなんだけど・・・。ほら、私とロリ先輩はただならぬ因縁があるじゃない?」

「あったか?」

「だってあの人なんか私に対して感じ悪くない!?」

「お姉ちゃんが何度も重曹とか言うからじゃねーの?とにかく呼び出しておくから話だけでもしてみろよ。その上で仲良く出来ないと思うならナシで良いし。」

 

こうして私のアイドルグループの2人目のメンバー候補有馬かなと直接話を付けることとなった。呼び出すのはアクアだ。ちゃっかり先輩の女子と連絡先交換を済ませているが、今はそのことを追求している場合ではない。

 

私のアイドル人生をかけた大一番だ。絶対に失敗は出来ない。

 

何としてもスカウトを成功させて見せる!

 




星野アクア
今年から活動を始める五反田監督の秘蔵っ子として、業界で密かに注目を集めている。実力は本物。あの不知火フリル陣営にもマークされていた。
この春から恋愛リアリティショーに出演することが決まっている。

星野ルビー
今のところ何もしてない自称アイドル。
ブラコンお姉ちゃんとして、地元の小中学校では有名人だった。陽東高校でも早くも有名人になりつつある。

寿みなみ
形の良いGカップの胸が自慢のグラビアモデル。
お姉ちゃんに友達を選ばれるアクアを不憫に思い、助け船を出したら仲良くなった。

不知火フリル
実力も実績も事務所のパワーも申し分ない、売れっ子のマルチタレント。
美少女と言ったら誰もが不知火フリルを思い浮かべるほどの知名度を持つ。
役者としての星野アクアが気になっている。

有馬かな
コッテリとしたオタの人気を滅茶苦茶稼げそうなメンバー候補。
演技、歌、踊り、トーク、顔と、多方面(色気以外)に才能があるので、なんだかんだ言ってアイドルは最適解なのかもしれない。
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