今日あまの仕事が終わり、また仕事もなくただ稽古に打ち込む日々だ。
最終回は評判だったとはいえ、全体で見れば今日あまを見ている人なんてほとんどいないし、次の仕事に繋げることは出来なかった。
暇を持て余して今日もエゴサをする。
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Funky Ponkichi
見返してみると
有馬かなの演技だけ
頭一つ抜けてるのが
分かるよな
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フフン!見る人が見れば分かるのよね。
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たらこ
あのストーカー役
演技めちゃキモくて
嫌悪感しか
ないんだけど
よくよく観ると
カオ良くて複雑・・・
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アクア・・・確かにかっこよかったな・・・。
最近、アクアの事ばかり考えてる。恋煩いってやつ?今私、恋した乙女の顔してるんだろうなぁ。あの日からずっとそうだ。気を抜くと今日あまのラストシーンでやったあの顔になってしまう。
乙女の心をこんなにして。アクア、責任取りなさいよ。
あ、スマホにメッセージ来てる。アクアからだ。
『大事な話があるんだけど放課後ちょっと時間作れない?』
・・・・!
なんだろ・・・なんだろ・・・
大事な話とか改まって・・・
ええ~っ?もしかしてそういう?
困るなぁ・・・ええ~っ?
ちょっとお手洗いに寄って、髪は整えておこう。
いや、そういう話って決まったわけじゃないけど・・・念のためね?
大事な話だもんね・・・。
打ち上げパーティーで本気のドレス姿を見てもらったし・・・あり得なくはないわよね?
舞い上がる気持ちをギリギリのところで抑え込みつつ、待ち合わせ場所の公園へと向かう。
「お待た・・・」
「待ってたわ。遅いじゃない。」
「あ゛?永遠に待ってろ・・・。」
お姉ちゃんも一緒かー。これは無いなー。あーちょっとでも期待した私がバカだったわー。
しかも二人の話を聞いてみれば、アイドル活動を早く始めたいだとか、私をアイドルに誘うとか、何やら大変なことをしようとしているみたいだ。さっさと帰って今日あまの最終回でも見ようか。
ルビーが私の方に向き直る。真剣な顔だ。大事な話ってのはまぁ、本当みたいね。
「有馬かなさん。私とアイドルやりませんか?」
「アイドル?何よ急に・・・」
「苺プロでアイドルユニット組む企画が動いてるの。そのメンバーを探してて。有馬さんフリーって聞いたからまぁ・・・有り体に言うとスカウト?」
「・・・これマジな話?」
「大事でマジな話。」
「ちょっと考える時間頂戴。」
いや・・・ナシでしょ。
アイドル活動を始めたら「若手役者枠」の仕事を失い、新陳代謝の激しい「アイドル枠」の仕事がメインになる。アイドル枠で跳ねなかったらどちらの仕事も失う。セルフプロデュース上のリスクが大きすぎる。ただ・・・
星野アクア。この人の天才ぶりは、かつて共演した天才アイドル「アイ」を彷彿させる。アイとは一度仕事をしただけだけど、売れるべくして売れた「本物」だった。
アクアが天才であることに疑いの余地はないけど、実際に私がアクアと共演したのはたったの2回、いや2カットだけ。その2回だけで、彼は凡庸な役者でない、私なんかでは及びもつかない「本物」だと分からされた。
苺プロに入ればアクアと同じ事務所になる。盗める技術が沢山あるはずだ。それにあわよくば、監督とのコネを作れるかもしれない。
そしてアクアの姉である星野ルビー。容姿は抜群に良い。性格も明るくて個性もある。何より、芸能人としての嗅覚がこの子に「可能性」を感じてる。
でも・・・私はアイドルで売れるほど可愛くなんて・・・。
私は無謀な賭けに乗るほど愚かじゃない。ここは断るしかないわね。
「悪いけど」
「頼む、有馬かな。お姉ちゃんとアイドルやってくれ。」
えっ、あんたまでそんなこと言うの?
アクアが出来るというなら、まぁ、もしかしたら本当に出来るのかもしれない。私が気づいていないだけで、アイドルの素質があるのかもしれない。彼ならありうる。私に備わったアイドルの素質を見抜いているのかもしれない。
でも、やっぱり私なんかじゃ・・・。
「でも私、そこまで可愛く・・・」
「いや可愛いだろ。」
!!
ちょっとやめてよ。面と向かって可愛とか言わないで。
可愛い、なんて・・・。
「俺も酔狂でアイドルやってくれなんて言わない。有馬はそこらのアイドルよりずっと可愛い。有馬になら大事なお姉ちゃんを預けられると思ってる。」
「えっでも・・・」
「頼む、アイドルやってくれ。」
「む・・・無理!」
「妹っぽくて可愛い。」
「え?」
「頼む。」
「やらないって!」
「有馬の事信頼してるんだ。」
「もうっ!何度言われても無理なものは無理!絶対やらないから!」
「苺プロへようこそ。歓迎します。」
ああ、来てしまった。気づけば目の前の契約書には私の署名とハンコが綺麗に押してある。これ、私がやったのよね・・・。
頭では駄目って分かってるのに、なんで私はいつもこう・・・。
まあいいわ。苺プロの所属ってことは、アクアと一緒に仕事する機会も増えるはず。あいつの仕事を近くで見ることが、私の役者としての経験値になる。
「どのみち何かしらのカンフル剤は必要だったのよ。それに、アクアの近くに居れば盗める技術もあるでしょ。どうせしばらくは暇だろうし、あんたのマネージャーでもやろうかしら。」
「まぁ、お姉ちゃんの為とはいえ、強引に誘って悪かったとは思ってる。俺なんかで良ければ」
「ねぇアクア。可愛い子見たらすぐに仲良くしようとするのやめない?」
「いや別にそういうんじゃ・・・」
ああ、これが噂に聞いたブラコンお姉ちゃんね。一応私もマークされているみたい。
普段は大人びているアクアだけど、ルビーと話すときだけは年相応というか、むしろちょっと幼い印象を受ける。やっぱりルビーの前で見せるあの姿が本当のアクアなんだろう。
「ねぇアクアって次の仕事とか入ってないの?」
「ん・・・あるにはあるよ。ねぇ、アクア?」
「ん?何か渋い顔・・・」
「これ」
「どれどれ・・・えっアクアが恋愛・・・」
ルビーがPCを開いて画面を見せてくる。そこに映っているのはネット番組『今からガチ恋始めます』のタイトル画面。演者の中にはアクアの姿もあった。
ルビーが渋い顔をするわけだ。この姉は重度のブラコンお姉ちゃんとして他の学年まで噂が轟くほどの、押しも押されもせぬ生粋のブラコンだ。アクアが女子に話しかけるたびにまるで子離れできない姑のように騒ぐという。そりゃあ、恋愛リアリティショーに弟が出るのを良く思うわけないわよね。
それに、私だって言いたいことはある。
「アクア、どういうことよ。急に恋愛なんて。」
「いや、今日あまのプロデューサーの鏑木さんに勧められたんだ。人生経験も大事だ、恋は人を変えるってな。俺も役者としての成長に繋がるならと思って、チャレンジしてみたんだ。考えてみれば、恋愛なんかしたことなかったしな。」
何よその言い方。私じゃダメなの?こんなの、私では恋愛にはならない、女として見れないと言われてるようなものじゃない。ああ、結構フレンドリーに話してくれるようになったと思ったんだけどな・・・。
ただの仕事だと言って欲しかった。
星野アクア
今日あまの打ち上げパーティーで見たドレス姿の有馬に見惚れていたのは秘密。
有馬のことは妹みたいで可愛いと思っている。
星野ルビー
今のところ何も仕事してない自称アイドル。でもメンバーは一人増えた。
アクアが勝手に恋リアに出演することを知り、いよいよそういう時期が来たかと同い年の弟の成長を噛み締めている。
有馬かな
元天才子役から元天才子役のアイドルに転身。
ルビーともども相変わらず仕事は無い。
アクアは現役アイドルと付き合うことに非常に強い抵抗があるが、有馬はまだそのことを知らない。